今回は「通信衛星」について解説していきます。

通信衛星は人工衛星の一種で、地球上のデバイスと衛星の間のデータ通信に特化したものになっているぞ。身近なところでは、スマートフォンの位置情報サービスやBS放送などの技術が、通信衛星を利用している。今回は、通信衛星の仕組みから、それを用いた応用技術まで徹底解説するつもりです。ぜひ、この機会に通信衛星についての理解を深めてくれ。

地学に詳しいライター通りすがりのペンギン船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。エネルギー工学、環境工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。人口衛星によるリモートセンシングについて学んだこともある。

通信衛星について詳しく学ぼう!

小惑星探査機 はやぶさ2 CGモデル.jpg
Go Miyazaki - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, リンクによる

スマートフォンの位置情報サービスやテレビのBS放送は、私たちの生活の一部となっており、今や手放すことができない存在になっています。そして、これらのサービスを提供する上で不可欠になるものが通信衛星です。この事実を知るだけでも、通信衛星の技術がいかに重要であるかが理解できますよね。

今回の記事では、通信衛星とはそもそも何なのか通信衛星は具体的にどのような分野で利用されているのか、といった点を深堀りしていきます。それでは早速、解説をはじめていきますね。

通信衛星とは?

通信衛星とは?

image by Study-Z編集部

人工衛星のうち、電波による無線通信を目的として打ち上げられたものが通信衛星に分類されます。ちなみに、多くの通信衛星はマイクロ波帯の電波を用いていますよ。また、通信衛星以外には、リモートセンシングを目的とした観測衛星などがあります。

かつて、通信衛星の目的は、地上や海底に張り巡らされた通信網が行き届いていない地域の人々に情報を伝達することにありました。しかしながら、近年は位置情報サービスのようにすべての人を利用対象にしている通信衛星も多くなってきています。

通信衛星の軌道

続いて、宇宙に打ち上げられた通信衛星がどのような軌道を描いて地球を周回しているのかを学んでいきましょう。比較的古い通信衛星の軌道は、静止軌道準静止軌道になっています。このようになっている理由は、地球上から見て常に同じ場所に通信衛星が存在していると電波の受信が簡単にできるからです。

ですが、近年になって電波の送受信を行う装置の高性能化が進み、地球上から見て通信衛星が同じ位置に存在する必要性が少なくなってきました。このような事情から、低軌道の通信衛星が登場するようになりました。地球から近い距離にある低軌道の通信衛星を用いることで、高速の衛星通信の実現が期待されているのです

\次のページで「世界各国が打ち上げる通信衛星」を解説!/

世界各国が打ち上げる通信衛星

通信衛星は経済活動・安全保障を支える重要な要素の1つになっており、世界各国が通信衛星の打ち上げを行っています。位置情報システムだけをとっても、米国のGPS・EUのガリレオ・ロシアのグロナス・中国の北斗・日本のみちびきなど、数多くの通信衛星が存在していますよ。

また、通信衛星の打ち上げにかかるコストが小さくなってきており、近年は民間企業や大学が通信衛星を運用するケースも増えてきました。今後、通信衛星をはじめとした宇宙利用のハードルはさらに下がると考えられていますよ。

通信衛星の用途

ここからは、通信衛星がどのような用途で使われているのかを考えていきましょう。今回は具体的に、位置情報システムテレビ放送電話インターネット通信における通信衛星の活用方法について述べます。

以上のような具体的な事例を知ることで、通信衛星についての理解を深めることができるでしょう。ぜひ、それぞれの事例でどのようなデータを通信衛星でやり取りしているのかに注目し、記事を読み進めてみてください

その1.位置情報システム

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位置情報システムを利用することで、私たちは簡単に自分の位置を確認することができます。現在、位置情報システムはカーナビドローンなどの技術において必要不可欠なものになっていますよね。

位置情報システムでは、スマートフォンなどに搭載される受信機と複数の通信衛星間の距離を電波で即位することで、受信機の位置を割り出します。このシステムは米軍よって開発され、1993年に民間利用へ転用されました。

その2.テレビ放送

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通信衛星はテレビ放送にも利用されています。BS放送やCS放送のチャンネルの電波は、宇宙から届き、各家庭に設置されたパラボラアンテナで受信されますよ。日本では、1989年にアナログBS放送が始まり、その後にチャンネル数を増やしていきました。

衛星放送の最大の貢献は、地上波放送の届かない過疎地に住む人々にリアルタイムで情報を届けることが可能になったことにあります。衛星放送の普及によって、世界中の人々に最新の情報が届くようになったのですね。

\次のページで「その3.電話」を解説!/

その3.電話

image by iStockphoto

通信衛星によって提供されるサービスの中には、電話もあります。衛星電話は、電話機と通信衛星の間で回線を確立する仕組みになっており、電話線がない場所であっても電話サービスが利用可能です。

それゆえ、船舶内に設置する公衆電話には、衛星電話が採用されるケースが多くなっています。また、衛星電話は地上の電話インフラの影響を受けにくいので、災害時の緊急電話サービスにも利用されていますよ。

その4.インターネット通信

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近年、通信衛星を用いたインターネット回線が登場するようになりました。他のサービスと同じように、回線が開通していない過疎地の人々に、インターネット通信を提供することが主な目的です。しかしながら、従来の静止軌道を描く通信衛星によるインターネット通信は、安定性に欠けるというデメリットがありました。

そこで、複数の低軌道衛星を連携させて運用することで、高速インターネット通信を提供するサービスが発案されました。現在、低軌道衛星による通信サービスの研究開発が非常に活発になっていますよ。

通信衛星の今後

通信衛星を含む宇宙産業の市場規模は年々大きくなっており、今後も通信衛星の技術は進化を続けると考えられています。最後のチャプターでは、この点について議論を深めましょう。

具体的には、今後発達することが期待されている「衛星コンステレーション構想」について述べます。また、未来における安全保障と通信衛星の関係性についても考えますよ。

\次のページで「衛星コンステレーション構想」を解説!/

衛星コンステレーション構想

従来の技術では、1つの通信衛星と1つの受信機の間に通信を確立させることが主流で、宇宙空間に存在する複数の通信衛星同士が通信を行うことはありませんでした。一方、次世代技術として期待される「衛星コンステレーション構想」では、複数の通信衛星の間で通信を行うことが当たり前になります。

つまり、複数の衛星が互いに連携および協調した状態で運用を行うことが可能になるのです。これによって、静止軌道ではない低軌道に通信衛星を打ち上げることができるようになります。それにより、通信衛星のあらゆるデータ通信が高速化されますよ

安全保障の鍵となる通信衛星

通信衛星の技術は、国家の安全保障を確保する上で非常に重要になる技術です。戦争をはじめとする有事の際、地上のインフラは真っ先に破壊されるので、安定した通信環境を確保するために通信衛星が必要になります。

しかしながら、近年になって通信衛星を打ち落とす技術が確立しつつなるようになると、衛星を守る仕組みを作る必要になってきました。このような背景から、2018年、アメリカ軍の部隊に宇宙軍が設立されたのです

通信衛星について学ぶ意義

近年、報道の中で自動運転・ドローン・IoTといった最先端技術に関するキーワードを目にすることが多くなりました。実は、これらの技術を実用化する上で、通信衛星は必要不可欠な存在になっているのです。このような背景からも、今後も通信衛星への期待が高まっていくことは間違いないでしょう。

この記事では、そのような通信衛星に関する知識をコンパクトにまとめました。ぜひこの記事を読んで、通信衛星について詳しく学んでみてくださいね。

" /> GPSやBS放送を支える通信衛星とは?その用途や将来性について現役理系学生ライターが5分でわかりやすく解説 – Study-Z
地学宇宙物理理科電磁気学・光学・天文学

GPSやBS放送を支える通信衛星とは?その用途や将来性について現役理系学生ライターが5分でわかりやすく解説

今回は「通信衛星」について解説していきます。

通信衛星は人工衛星の一種で、地球上のデバイスと衛星の間のデータ通信に特化したものになっているぞ。身近なところでは、スマートフォンの位置情報サービスやBS放送などの技術が、通信衛星を利用している。今回は、通信衛星の仕組みから、それを用いた応用技術まで徹底解説するつもりです。ぜひ、この機会に通信衛星についての理解を深めてくれ。

地学に詳しいライター通りすがりのペンギン船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。エネルギー工学、環境工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。人口衛星によるリモートセンシングについて学んだこともある。

通信衛星について詳しく学ぼう!

小惑星探査機 はやぶさ2 CGモデル.jpg
Go Miyazaki投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, リンクによる

スマートフォンの位置情報サービスやテレビのBS放送は、私たちの生活の一部となっており、今や手放すことができない存在になっています。そして、これらのサービスを提供する上で不可欠になるものが通信衛星です。この事実を知るだけでも、通信衛星の技術がいかに重要であるかが理解できますよね。

今回の記事では、通信衛星とはそもそも何なのか通信衛星は具体的にどのような分野で利用されているのか、といった点を深堀りしていきます。それでは早速、解説をはじめていきますね。

通信衛星とは?

通信衛星とは?

image by Study-Z編集部

人工衛星のうち、電波による無線通信を目的として打ち上げられたものが通信衛星に分類されます。ちなみに、多くの通信衛星はマイクロ波帯の電波を用いていますよ。また、通信衛星以外には、リモートセンシングを目的とした観測衛星などがあります。

かつて、通信衛星の目的は、地上や海底に張り巡らされた通信網が行き届いていない地域の人々に情報を伝達することにありました。しかしながら、近年は位置情報サービスのようにすべての人を利用対象にしている通信衛星も多くなってきています。

通信衛星の軌道

続いて、宇宙に打ち上げられた通信衛星がどのような軌道を描いて地球を周回しているのかを学んでいきましょう。比較的古い通信衛星の軌道は、静止軌道準静止軌道になっています。このようになっている理由は、地球上から見て常に同じ場所に通信衛星が存在していると電波の受信が簡単にできるからです。

ですが、近年になって電波の送受信を行う装置の高性能化が進み、地球上から見て通信衛星が同じ位置に存在する必要性が少なくなってきました。このような事情から、低軌道の通信衛星が登場するようになりました。地球から近い距離にある低軌道の通信衛星を用いることで、高速の衛星通信の実現が期待されているのです

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