今回の記事では、「展示動物」について学習していこう。

君たちが「展示動物」と聞いてまず思いつくのは、動物園や水族館の動物ではないか?もし、その動物たちがストレスを感じているかもしれないと言われたらどう思うでしょうか?具体例を見ながら、展示動物の定義から展示動物が抱える問題とそれに対する日本と海外で行われている解決策について考えていこう。

大学で動物福祉について勉強した農学部卒ライターの園(その)と一緒に解説していきます。

ライター/園(その)

数学は苦手だけれど、生物と化学が得意な国立大学農学部卒業の元リケジョ。動物の中でも特に犬が好きで、趣味は愛犬をモフることらしい。分かりやすく面白い情報を発信していく。

展示動物とはどんな動物?

image by iStockphoto

展示動物は、展示動物の飼養及び保管に関する基準(平成16年4月30日 環境省告示第33号)に基づき次のように定められています。

展示動物の飼養及び保管に関する基準

(4)展示動物 次に掲げる動物をいう。
 ア 動物園、水族館、植物園、公園等における常設又は仮設の施設において飼養及び保管する動物(以下「動物園動物」という。)   

イ 人との触れ合いの機会の提供 、興行又は客よせを目的として飼養及び保管する動物(以下「触れ合い動物」という。)

 ウ 販売又は販売を目的とした繁殖等を行うために飼養及び保管する動物(畜産農業に係るもの及び試験研究用又は生物学的製剤の製造の用に供するためのものを除く。以下「販売動物」という。) 

エ 商業的な撮影に使用し、又は提供するために飼養及び保管する動物(以下「撮影動物」という。)

 

出典:環境省.“展示動物の飼養及び保管に関する基準”.

https://www.env.go.jp/hourei/18/000273.html,(参照 2022/2/18

展示動物はなぜ問題になっているのか

人と同じように、動物にも感情があり欲求があります。野生動物は、自然の中で暮らし、自身のチカラで自由に欲求を満たすことができるでしょう。一方で、展示動物は食べるものから住むところまで人に決められ、自身の自由に欲求を満たすことができません。

そのため、人には、人の都合で飼育している動物の欲求を満たす(つまり、動物福祉に配慮する)義務があります

よって、私が考える展示動物が問題視される理由は以下の2つです。

1つは、展示動物の中心が野生動物であり、人が飼育するうえで、限られたスペースで本来暮らす自然と同じ環境を作り出すことが難しいこと。もう1つは、営利目的で飼育されるという展示動物の側面から、命としてではなく商品(モノ)として扱われることが多いため、動物福祉に対する義務感が薄いことが挙げられます。

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展示動物のキーポイント「5つの自由」とは?

展示動物のキーポイント「5つの自由」とは?

image by Study-Z編集部

1960年代のイギリスにおいて、家畜の劣悪な環境を改善し、福祉に配慮するべきだという考えから、動物福祉の具体的な基準として「5つの自由」が定められました。今では家畜だけでなく、人が飼育するすべての動物に対して守られるべき基準として国際的に認められています。

「5つの自由」

  1. 飢えと渇きからの自由
  2. 不快からの自由
  3. 痛み・傷害・病気からの自由
  4. 正常な行動を表現する自由
  5. 恐怖や抑圧からの自由

「5つの自由」の観点から考える展示動物の問題事例

ここでは、動物福祉の基準である「5つの自由」の観点から考える展示動物の問題事例を見ていきましょう。

動物園や水族館の動物に見られる常同行動

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あなたは、動物園で同じところを行ったり来たりしているトラを見たことがありませんか?私は子供のころ、この行動を見て「トラは人が来て嬉しいんだ」と思っていました。しかし、これは常同行動と言われるもので、ストレスや不安などが原因で起こるものです。

コンクリートで囲まれ十分な広さが確保されていない環境で暮らす動物園の動物は、「5つの自由」のうち”不快からの自由”と”正常な行動を表現する自由”が守られているとは言えないでしょう。

サーカスでショーを行う動物への虐待

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サーカスでショーを楽しむ中、ゾウを指揮する人が持つブルフックに注目する人はほとんどいないでしょう。ブルフックとは棒の先に金属の鉤(かぎ)がついている道具で、ゾウに芸をさせるときに皮膚に刺したりひっかけたりするものです。もし、ゾウが楽しんで自発的に芸をやるのであれば、痛みや不快感を与える道具は必要ありません

ブルフックなどで強制的に芸をやらされている動物は、「5つの自由」のうち”痛み・傷害・病気からの自由”と”恐怖や抑圧からの自由”が奪われています。

ペットショップに商品を供給するためのパピーミル

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パピーミルとは、コストをかけずに商品(犬や猫)を大量生産し、儲けることしか考えていない悪徳ブリーダーのこと。そのため、狭いケージで必要最低限の食事が与えられ、病気になっても治療してもらえず、ろくに掃除もされない不衛生な環境で一生を終える犬がいます。

このようなパピーミルでは、「5つの自由」のすべてが守られていません。

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問題解決のための日本と海外での取り組み

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近年、展示動物が抱える問題に対する世間の関心が高まるのに合わせて、問題解決のため世界中で様々な取り組みが行われています。ここでは、日本と海外の法整備の現状と行われている対策について見ていきましょう。

日本の法整備と行われている対策

日本は、ヨーロッパと比べて動物愛護後進国と言われています。徐々に諸外国を見習って改善されてはいますが、まだまだ動物愛護先進国のレベルに追いついていないのが現状です。

例えば、動物を守るための法律として「動物の愛護及び管理に関する法律」が1973年に制定され、その後も改正を続けてきました。しかし、その法律には、展示や販売の際の適正な基準が設けられている段階で、展示動物の商用利用自体が禁止される段階にまでは至っていません。

そのような中、日本で行われている対策の一例として紹介したいのは、旭山動物園を代表とする行動展示についてです。行動展示とは、動物の習性を自然に引き出し、その行動を観察できるようにした展示方法のこと。動物の欲求を満たし活動的にさせることで、従来の展示方法で飼育される動物と比べてストレスが軽減されると考えられます

行動展示は、旭山動物園の成功と動物福祉に配慮できるということから、ほかの動物園でも取り入れられていきました。

海外の法整備と行われている対策

諸外国、特にヨーロッパでは動物愛護に対する社会的関心が高く、日本より早く法の整備に着手してきました。

例えば動物保護先進国のドイツでは、1933年に「動物保護法」が制定され、2002年には憲法に「動物保護」が導入されるなど、動物に関する法制度が数多く整備されているのです。また、ギリシャをはじめとするヨーロッパの多くの国々では、サーカスにおける動物の商用利用を禁止しています。

そこで紹介したいのがドイツを拠点に活動するサーカス。その名は『Circus Roncalli』。ショーでは生きた動物が出演しない代わりに、3Dホログラムの動物が人々を楽しませています。

この取り組みの成功は、「動物のショーがあってこそのサーカス」という当たり前を変え、サーカスで使用される動物の虐待問題を解決する一歩となるでしょう。

展示動物が抱える問題を解決するために私たちができること

近年、動物福祉への関心が高まり、世界で多くの人々が展示動物の抱える問題解決のために動いています。しかし、現状はすべての展示動物が幸せに暮らしているとは言えません。

法の整備など国レベルでの解決策は上記で紹介してきました。対して、個人レベルで私たちができることは、現実を知り、心が動いたこと(疑問におもったことやマイナスの感情を持ったことなど)を発信することです。

この記事で展示動物の問題について知ったあなた!気づいたことを周りの人に伝えていきましょう。あなたの行動が展示動物の未来を変えるかもしれません。

イラスト使用元:いらすとや

" /> 展示動物とは?動物のストレスが問題に?社会問題と解決策について農学部卒ライターが徹底わかりやすく解説! – Study-Z
理科生物社会

展示動物とは?動物のストレスが問題に?社会問題と解決策について農学部卒ライターが徹底わかりやすく解説!

今回の記事では、「展示動物」について学習していこう。

君たちが「展示動物」と聞いてまず思いつくのは、動物園や水族館の動物ではないか?もし、その動物たちがストレスを感じているかもしれないと言われたらどう思うでしょうか?具体例を見ながら、展示動物の定義から展示動物が抱える問題とそれに対する日本と海外で行われている解決策について考えていこう。

大学で動物福祉について勉強した農学部卒ライターの園(その)と一緒に解説していきます。

ライター/園(その)

数学は苦手だけれど、生物と化学が得意な国立大学農学部卒業の元リケジョ。動物の中でも特に犬が好きで、趣味は愛犬をモフることらしい。分かりやすく面白い情報を発信していく。

展示動物とはどんな動物?

image by iStockphoto

展示動物は、展示動物の飼養及び保管に関する基準(平成16年4月30日 環境省告示第33号)に基づき次のように定められています。

展示動物の飼養及び保管に関する基準

(4)展示動物 次に掲げる動物をいう。
 ア 動物園、水族館、植物園、公園等における常設又は仮設の施設において飼養及び保管する動物(以下「動物園動物」という。)   

イ 人との触れ合いの機会の提供 、興行又は客よせを目的として飼養及び保管する動物(以下「触れ合い動物」という。)

 ウ 販売又は販売を目的とした繁殖等を行うために飼養及び保管する動物(畜産農業に係るもの及び試験研究用又は生物学的製剤の製造の用に供するためのものを除く。以下「販売動物」という。) 

エ 商業的な撮影に使用し、又は提供するために飼養及び保管する動物(以下「撮影動物」という。)

 

出典:環境省.“展示動物の飼養及び保管に関する基準”.

https://www.env.go.jp/hourei/18/000273.html,(参照 2022/2/18

展示動物はなぜ問題になっているのか

人と同じように、動物にも感情があり欲求があります。野生動物は、自然の中で暮らし、自身のチカラで自由に欲求を満たすことができるでしょう。一方で、展示動物は食べるものから住むところまで人に決められ、自身の自由に欲求を満たすことができません。

そのため、人には、人の都合で飼育している動物の欲求を満たす(つまり、動物福祉に配慮する)義務があります

よって、私が考える展示動物が問題視される理由は以下の2つです。

1つは、展示動物の中心が野生動物であり、人が飼育するうえで、限られたスペースで本来暮らす自然と同じ環境を作り出すことが難しいこと。もう1つは、営利目的で飼育されるという展示動物の側面から、命としてではなく商品(モノ)として扱われることが多いため、動物福祉に対する義務感が薄いことが挙げられます。

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