今回は植物の根毛について学習していこう。植物の根には地上部を支える働きや水分・養分を吸収する働きなどがありますが、根毛にはどのような役割があるか知っているでしょうか?また、中学校の理科で主根と側根、ひげ根について学習したと思うが、これらと根毛にはどのような違いがあるかをしっかりと理解できているでしょうか?根については混同しやすいところもあるので、これらの内容についてしっかり学習した後、少し発展的な根毛の形成に関わる遺伝子についても学んでいこう。
大学院で植物の研究していた、生物に詳しいライターAnnaと一緒に解説していきます。

ライター/Anna

大学で生物学について幅広く学び、大学院では植物の研究をしていた。生物学の楽しさをたくさんの人に広められるよう日々勉強中。

根毛は水や養分を効率良く吸収する役割がある!

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植物の根は土に張り巡らされ、植物の身体を支えるだけでなく生きるために必要な水分や栄養を吸収しています。

根毛(こんもう)とは植物の根の表面に生えている産毛のような細い毛のことです。発芽したばかりの植物だと生えたての根に細い根毛がびっしり生えているのが観察できると思います。根毛は根の表面積を広げて効率良く水や養分を吸収する役割があり、根毛で吸収された水や養分は根の中心にある中心柱(ちゅうしんちゅう)を通って植物の身体全体へ運ばれるのです。また、根毛は細いので土の粒の間に入り込んで根が土から抜けにくくする働きや土壌の微生物と相互作用する働きもあるんですよ。

間違えられやすい主根と側根、ひげ根とは?

中学の理科では主根(しゅこん)や側根(そっこん)、ひげ根について学習しますがこれらと根毛は非常に間違えられやすいです。主根と側根、ひげ根がどういった構造や特徴を持つ根なのか学習しながら根毛との違いを理解しましょう。

主根と側根

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根の種類はつくりによって大きく2種類に分かれています。1つ目は主根と側根です。主根とは中心にある太い根のことで、主根から側根が左右に伸びています。被子植物のうち双子葉植物と呼ばれる植物は根のつくりが主根と側根になっているんですよ。ちなみに双子葉植物とは被子植物のうち子葉と呼ばれる最初に生える葉の枚数が2枚の植物のグループで、アサガオやタンポポなどが双子葉植物です。

主根と側根は土から抜けにくいため、身体が大きい植物でもしっかりと支えることができます。樹木のように身体が大きい植物の根は主根と側根からできていますね。一方、主根が傷ついたり土から抜けたりしてしまうと、側根も同様にダメージを受けてしまうという短所もあります。

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ひげ根

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2つ目はひげ根です。ひげ根は茎の下部から細くひげ状に伸びているのが特徴で、被子植物のうち単子葉植物と呼ばれる子葉が1枚の植物グループは根のつくりがひげ根になっています。単子葉植物の例として挙げられるのはトウモロコシやユリなどです。

ひげ根は主根・側根とは異なり、土の深いところまで伸びていくことはできませんが横方向にも伸びるため、水分や養分を効率良く吸収できたり、土から抜けてしまってもまた根が生えやすいという特徴があります。

根毛は主根・側根、ひげ根から生えている!

根毛は主根・側根、ひげ根から生えている!

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主根と側根、ひげ根について理解できたところで根毛との違いを見ていきましょう。

主根・側根とひげ根は根のつくりのことでしたね。根毛は主根と側根やひげ根のどちらにも見られるもので、根の表面に生えています。つまり根毛は双子葉植物や単子葉植物どちらにも生えているということですね。また主根と側根、ひげ根と異なり根毛の寿命は一般的に数日から数週間とかなり短いです。根毛が死ぬと同時に新しく根毛の細胞が根の先端から作られるため、常に同じ場所に根毛が生え続けます。根毛は植物の植え替えなどでかなり抜けてしまうため、すぐに生えるような仕組みがきちんとあるんですね。

ちなみに根の先端には根の分裂組織である根端分裂組織があり、ここから根が伸びていきます。根端分裂組織は根冠という組織で保護されているんですよ。根冠にはコルメラ細胞という細胞があり、この中にはアミロプラストという色素体があります。このアミロプラストが重力方向に移動することで、根は重力の方向を感知することができるため根はきちんと地中へと伸びていくんですよ。

根毛を形成する遺伝子とは?

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根毛を形成する遺伝子は植物の研究によく用いられるモデル植物のシロイヌナズナで研究が進められています。

根毛は根の表面にびっしり生えているように見えますが、実はシロイヌナズナの根の表面には根毛をつくる細胞(根毛細胞)とつくらない細胞(非根毛細胞)があります。そして根毛細胞と非根毛細胞の数を調節することで環境に適応していると言われているんです。

根毛を作るのはCPC遺伝子と呼ばれる遺伝子であることが分かっていて、CPC遺伝子が壊れている変異体では根毛の数が減少し、CPC遺伝子を過剰発現する変異体では根毛の数が増加することが明らかになっています。また、CPCタンパク質は非根毛細胞で作られてから根毛細胞に細胞間移行することが分かっていたり、CPCとは逆に根毛をなくす遺伝子であるWER遺伝子という遺伝子も分かっているんですよ。CPC遺伝子は根毛を作る働きがあるのにもかかわらず非根毛細胞で作られてから根毛細胞に運ばれているというのは非常に不思議な現象ですが面白いですよね。

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地上に根を伸ばす植物がいる!?

普通、根といえば地中に伸びているものをイメージしますよね?今回解説したように、根は基本的に土に張り巡らされていて植物の身体を支えたり、土から水分や養分を吸収する役割があります。しかし、実は地中ではなく地上に伸びる根もあるんです。地上にある根は「気根」と呼ばれ、呼吸根や付着根など様々な種類があります。

呼吸根はマングローブなど湿地帯の植物に見られ、水が多くて呼吸がしづらい地中よりも呼吸がしやすい地上に根を出すことでガス交換を行うことが知られているんですよ。付着根は壁や樹木など自分以外のものにくっついて身体を支えるために出す根のことで、つる植物に見られます。付着根には根毛が生えていて、壁や樹木にくっつくために働いているそうです。

植物の構造の中では少し地味な根ですが、植物を支えたり成長に必要なものを吸収するために活躍しているので機会があれば注目してみてくださいね。

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体の仕組み・器官理科生物

植物の根毛とは?間違えやすい主根と側根やひげ根との違いについても理系ライターが分かりやすくわかりやすく解説

今回は植物の根毛について学習していこう。植物の根には地上部を支える働きや水分・養分を吸収する働きなどがありますが、根毛にはどのような役割があるか知っているでしょうか?また、中学校の理科で主根と側根、ひげ根について学習したと思うが、これらと根毛にはどのような違いがあるかをしっかりと理解できているでしょうか?根については混同しやすいところもあるので、これらの内容についてしっかり学習した後、少し発展的な根毛の形成に関わる遺伝子についても学んでいこう。
大学院で植物の研究していた、生物に詳しいライターAnnaと一緒に解説していきます。

ライター/Anna

大学で生物学について幅広く学び、大学院では植物の研究をしていた。生物学の楽しさをたくさんの人に広められるよう日々勉強中。

根毛は水や養分を効率良く吸収する役割がある!

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植物の根は土に張り巡らされ、植物の身体を支えるだけでなく生きるために必要な水分や栄養を吸収しています。

根毛(こんもう)とは植物の根の表面に生えている産毛のような細い毛のことです。発芽したばかりの植物だと生えたての根に細い根毛がびっしり生えているのが観察できると思います。根毛は根の表面積を広げて効率良く水や養分を吸収する役割があり、根毛で吸収された水や養分は根の中心にある中心柱(ちゅうしんちゅう)を通って植物の身体全体へ運ばれるのです。また、根毛は細いので土の粒の間に入り込んで根が土から抜けにくくする働きや土壌の微生物と相互作用する働きもあるんですよ。

間違えられやすい主根と側根、ひげ根とは?

中学の理科では主根(しゅこん)や側根(そっこん)、ひげ根について学習しますがこれらと根毛は非常に間違えられやすいです。主根と側根、ひげ根がどういった構造や特徴を持つ根なのか学習しながら根毛との違いを理解しましょう。

主根と側根

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根の種類はつくりによって大きく2種類に分かれています。1つ目は主根と側根です。主根とは中心にある太い根のことで、主根から側根が左右に伸びています。被子植物のうち双子葉植物と呼ばれる植物は根のつくりが主根と側根になっているんですよ。ちなみに双子葉植物とは被子植物のうち子葉と呼ばれる最初に生える葉の枚数が2枚の植物のグループで、アサガオやタンポポなどが双子葉植物です。

主根と側根は土から抜けにくいため、身体が大きい植物でもしっかりと支えることができます。樹木のように身体が大きい植物の根は主根と側根からできていますね。一方、主根が傷ついたり土から抜けたりしてしまうと、側根も同様にダメージを受けてしまうという短所もあります。

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