今回は「物質量」をテーマにして紹介していきます。
物質量は高校化学の初めに学習する、化学の基礎になる考え方です。
化学が苦手な学生はまずここで躓いてしまう。物質量の概念が理解できないと十中八九、化学に苦手意識を持つでしょう。
今回は物質量の考え方や化学反応とどう関わっているのか、化学に詳しいライターリックと一緒に解説していきます。
ライター/リック
高校生で化学にハマり、大学院までずっと化学を勉強してきた化学オタク。今は化学メーカーで働きながら化学の楽しさを発信する。
高校生を苦しめる「物質量」とは
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物質量とは何なのか、ネットで調べてみるとこのような説明をよく見かけます。
「物質を取り扱う際に、物質の量をモル(mol)の単位で表した量を物質量という。」
正直、この説明を読んだだけで「なるほど、そういうことか!」となる人はいないと思います。まず、物質量はSI単位系にも登録されている「単位」です。どうゆうこと?と思いますよね。
物質量の単位は(mol)を使います。質量(g)や時間(s)と同じで、「1円の重さは1g」、「1分は60秒」日常であたり前に使っている単位と同じなんですよ。ただ、普段の生活では、物質量を考えることはほとんど…いえ、全くありません。物質量は科学の分野でしか使わないんです。なじみがないところが、物質量(mol)が難しく感じる原因だと思います。
「質量数12の炭素は1(mol)で12(g)だ」という計算を高校化学ですぐに習いますよね。けれど、よくわからない…という方も多いと思います。なので、ここからは物質量の考え方と求め方をご紹介していきますね。
物質量の考え方をご紹介
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そもそもどうして、物質量という考え方が生まれたのか…その理由は、「原子や分子が小さすぎるから」。原子や分子は小さすぎて1粒ずつで考えにくいから、まとまりを作って考えよう!というのが物質量の考え方なんです。
なので、まずはまとまりを作ってあげる必要があります。そこで、6.02×1023個の原子・分子が集まったひとまとまりを1molと定義してあげたんです。身の回りの感覚と合わせるなら、お米が1mol集まると6.02×1023粒、石を3.01×1023個集めたらそこに石が0.5molあることになります。
つまり、物質量(mol)とは原子や分子、イオンなどの粒子を簡単に数えるための新しい単位だということです。
そんな単位、本当に必要なの?と疑問に思うかもしれません。実際に理科の実験をするときを思い出してみてください。化学反応は粒子1個ずつが反応していきますが、粒子1個を測り取るなんてことなんて不可能ですよね。
だからこそ、目に見える質量(g)と目には見えない粒子の数を変換する必要があります。なので、物質量(mol)という新しい単位を使って、6.02×1023個というひとまとまりを作ってあげることが大切なんです。
アボガドロ定数とは
先ほどから出てきている、「6.02×1023」という数字にも名前があるんです。6.02×1023個をアボガドロ数といい、6.02×1023(/mol)という数値をアボガドロ定数といいます。テストで使うときは、この数は問題に書かれているので、覚える必要はありません。
どこからこの数字が出てきたの?と疑問に思った方のために、もう少し詳しくご紹介していきますね!
アボガドロ定数の定義とは
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なぜアボガドロ数が6.0×1023(/mol)なのかを解説していきます。基準になっているのが、質量数12(陽子と中性子の合計が12)の炭素原子です。この炭素原子だけを集めて、1粒ずつ天秤に乗せていくとします(あくまで仮定の話ですよ)。質量数12の炭素がピッタリ12gになったときの炭素原子の個数が6.0×1023個で1molと基準を決めたんです。
この考え方をほかの原子や分子にも応用していきます。質量数27のアルミニウム原子を27g集めると粒子は6.0×1023個というわけです。質量数16の酸素原子を8g集めると、粒子の数は3.0×1023個。つまり、質量数27のアルミニウム原子は27gで1mol、質量数16の酸素原子は8gで0.5molと定義したんです。
物質量の計算方法はこれだけ
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物質量の概念をご紹介したところで、ここからは計算方法をご紹介していきます。物質量をどうやって求めればいいのか…基本は質量を原子量・分子量・式量で割ること。これがすべてです。ちなみに、1molあたりの質量のことをモル質量g/molといいます。
少し練習してみましょう。水分子の分子量は18。なので、水分子が1molあったら18gの水があるということです。9gの水があったら、9(g)÷18=0.5(mol)なので、0.5molの水分子があるということですね。
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