突然ですが、ヘビはなぜ脱皮するのか知っているか?「成長して皮がはちきれそうだから脱皮する」と勘違いしている人もいるが、実はそれは間違いなんです。ヘビの脱皮は、皮膚を古いものから新しいものに変えるために行われている。そんなヘビの皮膚はケラチンという特別な成分でできているぞ。ヘビが全身でするんと脱皮できるのには、このケラチンの分泌が大きく関わっているんです。今回はそんなヘビの皮膚のしくみや脱皮の謎について学生時代、獣医学部で動物のことを勉強していたライターみんちが解説していこう。

ライター/みんち

学生時代、獣医学部で動物の知識を学んだ。趣味は動物園巡り。ライターとして、初心者にもわかりやすく、質のある情報を提供できるよう、日々奮闘中。

蛇が脱皮するのは皮膚を更新するため!

ヘビの脱皮と聞くと「身体は成長したのに皮膚が小さいままだから皮を脱ぐ」みたいなイメージを持っている人が多いかと思います。しかし実は間違いなんですよ。

ヘビが脱皮をするのは皮膚を更新するため。どういうことかというと、動物の皮膚では常に新しい細胞が作られています。そのため、古くなった皮膚を脱ぎ捨てて、新しい皮膚に更新するために脱皮をするんです。

蛇が脱皮をする仕組みとは?

image by iStockphoto

ヘビが脱皮をするのは古い皮膚を脱いで、新しい皮膚を表面に出すためだということがなんとなくイメージできましたか?ここからはヘビの皮膚の構造や脱皮のしくみについて詳しく解説していきましょう。

\次のページで「皮膚の主成分はケラチン」を解説!/

皮膚の主成分はケラチン

まずはヘビの皮膚がどのようなつくりなのかを理解していきましょう。ヘビやトカゲなどの爬虫類の皮膚はすこし硬くてうろこのような質感がありますよね。

これはケラチンという成分でできているから。ケラチンは18種類のアミノ酸から構成される硬質のタンパク質で、うろこや爪、髪の毛の成分です。爬虫類の皮膚はこのケラチンでできているため、外部からの異物や身体の水分の蒸発を防ぎ、乾燥から身を守ることができるのですね。

表皮は死んだ細胞の集まり

動物の皮膚は、外側から順に「角質層」「顆粒層」「有棘層」「基底層」の4層からなります。その中でもケラチンで構成されているのは一番表面にある「角質層」

これは、基底層が細胞分裂を行うことによって生産した細胞が、皮膚の表面まで押し上げられたものです。表皮ではケラチンが分泌されており、細胞はこれを吸い取ると死んでしまいますそれらが表面に集まってできたものが角質層(ケラチン層)だったのです。

蛇の脱皮はケラチン分泌が関係している

同じ爬虫類でも、ヘビやトカゲは脱皮をしますが、ワニやカメで脱皮をする話は聞いたことがありませんよね。両者とも爬虫類で、同じ皮膚の構造をしているはずなのに、ヘビのような脱皮をする生物としない生物の間にはどんな違いがあるのでしょうか?

答えはケラチン分泌の休眠期間の有無が関係しています。先ほどヘビの表皮からはケラチンが分泌されているといいましたね。ケラチンが分泌されることで細胞はケラチン層を形成します。こうして皮膚の角質層が作られるわけですが、脱皮をしないワニやカメの場合、ケラチンの分泌は継続的に起きています

image by Study-Z編集部

一方で、ヘビやトカゲの場合、分泌に休眠期間があるのです。休眠期間があると、「ケラチン分泌」→「角質層形成」→「休眠」→「ケラチン分泌」→「角質層形成」→「休眠」→…というサイクルで角質層が形成されています。休眠があることで、古い層と新しい層の間にすき間ができるため、その間の空間からペロンと皮がむける仕組みなんですよ

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蛇の脱皮の特徴

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では蛇の脱皮の特徴についてみていきましょう。

1.目も脱皮する

なんとヘビは目も脱皮をするんですよ。ヘビには瞼(まぶた)がなく、目を守るための皮がついているだけなんですよ。

ヘビは脱皮が近づくと、目が白濁します。脱皮の前には、表面の皮膚と内側の新しい皮膚の間に分泌液が満たされるのですが、その分泌液が目の間にも満たされることで、目が白く濁ったように見えるんです。

この時期のヘビは食欲がなくなり、気が荒くなることがあるので、ペットでヘビを飼っている人は、目の白濁が見られたら触ったりするのは控えましょうね。

2.全身まるごと脱皮する

蛇は個体差にもよりますが、月に1、2回ほど脱皮をします。ヘビの抜け殻を見たことがある人ならわかるかと思いますが、ヘビは全身をまるごと脱皮するんですよ。

蛇が脱皮をするときには、まず頭部を石や壁などにこすりつけ摩擦で最初のひと剥きをします。それができたら、そこからはまるで靴下を脱ぐようにスルスルを皮を脱いでしまうんですよ。だいたい30分~1時間ほどで終了です。脱皮した後のヘビの抜け殻はきれいに一枚の皮になっているんですよ。

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脱皮不全に要注意!

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蛇はきれいに全身を脱皮するといいましたが、まれに抜け殻が細切れになっている場合があります。これは脱皮不全と呼ばれ、湿度不足、栄養不足、加齢によるものなどが原因です。その多くは湿度不足によるものであるため、ペットで飼育している場合は、霧吹きなどを活用して湿度を適切に保つようにしましょう。

脱皮不全を起こすと、ヘビの身体に抜け殻がくっついたままの状態になり、そこから皮膚が壊死してしまうことがあります。そのままの状態でも時間がたつと取れることもありますが、飼育している場合は万が一のために取り除いてあげましょう。

蛇以外に脱皮する生物は?

トカゲも脱皮をする生き物として知られています。しかし、ヘビのようにするりと全身を一気に脱皮するわけではありません。トカゲは皮膚が新しくできたところから、古い皮膚がボロボロと剥がれ落ちるように脱皮します。

冒頭でワニやカメは脱皮しないといいましたが、実際には、古くなった角質層が定期的に剥がれ落ちています。カメは甲羅が、ワニはウロコがぺりっと剥がれ落ちるんですよ。ヘビのようにきれい剥がれ落ちないので脱皮とは言い難いですが、考えてみれば私たち人間の垢も古くなった角質層ですから、すべて同じ原理だったんですね。

脱皮は新しい皮膚に生まれ変わる行為!

ここまで読んでいただきありがとうございました。今回はヘビが脱皮をする理由についてお話してきました。ヘビは古い角質層を脱ぎ捨て、新しい角質層にするために脱皮をするということがわかりましたね。また、ヘビの皮膚はケラチンという成分でできており、その分泌に「休眠期間があるかないかの違い」がヘビのように全身で脱皮できるかどうかの違いに関わってくるということもわかりました。今回の記事を読んで、ヘビの脱皮は「身体が大きくなったから脱ぎ変える」というイメージとは違うということがご理解いただければ幸いです。私たちが垢を落とすように脱皮も行われていると知ると、なんだか脱皮が身近な存在に感じられますね。動物園などでも、展示中のヘビが脱皮の真っ最中だったということもあります。ヘビが苦手だという人もいるかもしれませんが、ヘビの抜け殻が展示されている場所もあるので機会があればぜひ注目してみてくださいね。

画像使用元:いらすとや

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理科生き物・植物生物

蛇はなぜ脱皮するの?その仕組みや皮膚の構造についても獣医学部卒ライターがわかりやすく解説!

突然ですが、ヘビはなぜ脱皮するのか知っているか?「成長して皮がはちきれそうだから脱皮する」と勘違いしている人もいるが、実はそれは間違いなんです。ヘビの脱皮は、皮膚を古いものから新しいものに変えるために行われている。そんなヘビの皮膚はケラチンという特別な成分でできているぞ。ヘビが全身でするんと脱皮できるのには、このケラチンの分泌が大きく関わっているんです。今回はそんなヘビの皮膚のしくみや脱皮の謎について学生時代、獣医学部で動物のことを勉強していたライターみんちが解説していこう。

ライター/みんち

学生時代、獣医学部で動物の知識を学んだ。趣味は動物園巡り。ライターとして、初心者にもわかりやすく、質のある情報を提供できるよう、日々奮闘中。

蛇が脱皮するのは皮膚を更新するため!

ヘビの脱皮と聞くと「身体は成長したのに皮膚が小さいままだから皮を脱ぐ」みたいなイメージを持っている人が多いかと思います。しかし実は間違いなんですよ。

ヘビが脱皮をするのは皮膚を更新するため。どういうことかというと、動物の皮膚では常に新しい細胞が作られています。そのため、古くなった皮膚を脱ぎ捨てて、新しい皮膚に更新するために脱皮をするんです。

蛇が脱皮をする仕組みとは?

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ヘビが脱皮をするのは古い皮膚を脱いで、新しい皮膚を表面に出すためだということがなんとなくイメージできましたか?ここからはヘビの皮膚の構造や脱皮のしくみについて詳しく解説していきましょう。

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