小ぶりでもしっかり存在感をほこる真珠。真珠が貝からできることは聞いたことがある人もいるでしょう。しかし、貝の中でどのようにして真珠ができているのかは知っているか?真珠は、貝に寄生虫や砂などの異物が入ることによって形成される。つまり、貝が異物から身を守るために、貝殻の成分で包み込んでできたものが真珠なんです。今回はそんな真珠について形成される仕組みやその成分、歴史などを学生時代、獣医学部で動物のことを勉強していたライターみんちが解説していこう。

ライター/みんち

学生時代、獣医学部で動物の知識を学んだ。趣味は動物園巡り。ライターとして、初心者にもわかりやすく、質のある情報を提供できるよう、日々奮闘中。

真珠は貝から作られる!

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真珠と言えば、丸くて可愛らしい高級感のあるつぶ。小さいわりにしっかりと存在感をほこる宝石のイメージがありますよね。そんな真珠ですが、どのようにして作られるのか知っていますか?

真珠は貝の体内で生成される宝石で、生態鉱物(バイオミネラル)とも呼ばれます。日本ではアコヤ貝を使って真珠を養殖しているところがほとんどですね。今回はそんな真珠の生産方法について詳しく見ていきましょう。

貝が真珠を形成する仕組み

貝は中に異物が入ることで真珠を形成します。一体どういうことかというと、貝の中に侵入物があった際、それを異物と判断し、貝殻の成分で異物を包み込んでしまうのです。それが真珠となって誕生するんですよ。貝が異物排除のためにとる行動で真珠が作られるなんて驚きですね。ここからはもっと詳しく真珠が作られる仕組みを解説していきましょう。

1.貝に異物が入り込む

真珠は貝の外套膜(がいとうまく)という部位の働きによって形成されます。まず、貝の外套膜部分に寄生虫や砂のかけらなどの異物が入り込んできます。異物が入ると貝は刺激され外套膜の表面が破けてしまいます

2.外套膜が真珠袋を形成する

2.外套膜が真珠袋を形成する

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破けた膜の一部は異物と一緒に膜の中に取りこまれ、膜は異物を包み込むような形になり、これを真珠袋と呼びます。袋の内側では真珠質という成分が分泌され、これは貝殻の内側と同じ成分をしているんですよ。こうして、異物の周りに貝がらと同じ成分の層が包み込むことで真珠が形成されるんですね。真珠として採取されるまでには大きさにより7か月から2年半もの時間がかかります

\次のページで「養殖真珠も同じ仕組みでできている」を解説!/

このように貝は体内に入った異物を貝殻の成分で包み込むことで自分の身体を守ろうとしていたんですね。それが結果的に真珠という形で人間に採取されるようになりました。

ちなみに異物が貝の中に入るのは偶然によるため、自然の貝から天然の真珠が見つかる確率は1000分の1程度。養殖以外で真珠を見つけるのはかなりレアなんですね。

養殖真珠も同じ仕組みでできている

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この仕組みを利用して、養殖真珠も作られるんですよ。方法としては、人工的に貝の外套膜に異物を入れておくことで、貝が真珠を形成するという仕組み。ちなみに真珠形成のためになくてはならない異物ですが、これはと呼ばれます。

養殖真珠の核にはドブガイという二枚貝の貝がらを丸く成形したものを使うんですよ。この核自体には商品としての価値はなく、この核に真珠層が形成されることで真珠としての価値が生まれます

養殖真珠の産業化に最初に成功したのは日本の伊勢志摩だと言われています。その他にも、日本では愛媛県の宇和海、長崎県の対馬での養殖が盛んです。

ただし、すべての真珠が美しく育つわけではありません。形や大きさ、色、状態などが選別され、商品になるのはごく一部なんです。こうして選び抜かれた真珠だけがネックレスやブローチなどの装飾品に仕上がるんですね。

\次のページで「真珠の成分・構造は?」を解説!/

真珠の成分・構造は?

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真珠ならではの光沢感や輝きにはその構造に秘密があるんですよ。詳しく見ていきましょう。

主成分:炭酸カルシウム

真珠は93%が炭酸カルシウムでできています。貝殻や卵の殻、チョークなどと同じ成分です。真珠とチョークが一緒の成分だったなんてなんだか信じられませんね。

構造:レンガのような層

真珠は炭酸カルシウムの結晶がレンガ状に重なっているような構造をしているんですよ。こうした結晶の層のことを真珠層と呼びます。

結晶の1つ1つはコンキオリンというタンパク質によってくっつけられており、このタンパク質の中に含まれる色素により真珠の色がピンク、シルバー、ゴールド、ブラックなどに見えるんですよ。この層が何層にも重なることで、それぞれの層から光が反射することで真珠は虹色の輝きに見えるんですね。

真珠を形成する貝ってどんなもの?

異物の周りに層を形成して身を守る習性がある貝は1000種類以上いるといわれていますが、美しい真珠を形成するのはアコヤ貝、シロチョウ貝、クロチョウ貝など限られた貝だけです。

日本では真珠の養殖に用いられる貝としてほとんどがアコヤ貝が使われています。日本のアコヤ真珠はほかのものに比べると形がよく、色や照りが特に美しいことで有名です。海外ではフィリピンではシロチョウ貝、オーストラリア、インドネシア、タヒチなどではクロチョウ貝、中国では二枚貝といったように、世界ではアコヤ貝以外の貝でも真珠の生産は盛んなんですね。

真珠は最古の宝石

真珠は世界最古の宝石とも呼ばれています。真珠は「月のしずく」「人魚の涙」とも呼ばれ、古くから貴重な品として扱われてきました。エジプトでは紀元前から真珠の存在は知られており、クレオパトラが酢溶かして飲んだという伝説もありますね。世界の他の地域でも、中国では紀元前2300年ごろ、ローマでは紀元前3世紀ごろから真珠が宝飾品として用いられていたと考えられています。

日本も昔から真珠の産地として有名でした。『魏志倭人伝』にも太古の日本が中国に真珠を5000個も送ったことが記されています。そのため真珠は日本最古の輸出品のひとつとも言われているんですよ。また、江戸時代にはアコヤ貝の真珠が薬としても使用されており、日本の各地で採取されていたと言われています。当時は「たま」「しらたま」「まだま」などと呼ばれていたそうです。

貝が真珠を作るのは自己防衛のため!

今回は貝がどのようにして真珠を作っているのかについてお話してきました。貝が真珠を作るのは、異物を殻で包み込んで無効化するためだったこと、養殖真珠は核を入れて作られていることなどを学びましたね。また、真珠の輝きの秘密にはレンガ状の構造が関係していることも学びました。普段何気なく身に着けていた真珠ですが、意外な生産方法や、特別な光沢の秘密について知ると、その物の価値に改めて気づくことができますね。今回の記事を読んで、少しでも真珠の魅力について発見ができたら嬉しいです。最後まで読んでいただきありがとうございました。

画像使用元:いらすとや

" /> 貝から真珠ができるのはなぜ?形成のメカニズムや構造・種類について獣医学部卒ライターがわかりやすく解説! – Study-Z
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貝から真珠ができるのはなぜ?形成のメカニズムや構造・種類について獣医学部卒ライターがわかりやすく解説!

小ぶりでもしっかり存在感をほこる真珠。真珠が貝からできることは聞いたことがある人もいるでしょう。しかし、貝の中でどのようにして真珠ができているのかは知っているか?真珠は、貝に寄生虫や砂などの異物が入ることによって形成される。つまり、貝が異物から身を守るために、貝殻の成分で包み込んでできたものが真珠なんです。今回はそんな真珠について形成される仕組みやその成分、歴史などを学生時代、獣医学部で動物のことを勉強していたライターみんちが解説していこう。

ライター/みんち

学生時代、獣医学部で動物の知識を学んだ。趣味は動物園巡り。ライターとして、初心者にもわかりやすく、質のある情報を提供できるよう、日々奮闘中。

真珠は貝から作られる!

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真珠と言えば、丸くて可愛らしい高級感のあるつぶ。小さいわりにしっかりと存在感をほこる宝石のイメージがありますよね。そんな真珠ですが、どのようにして作られるのか知っていますか?

真珠は貝の体内で生成される宝石で、生態鉱物(バイオミネラル)とも呼ばれます。日本ではアコヤ貝を使って真珠を養殖しているところがほとんどですね。今回はそんな真珠の生産方法について詳しく見ていきましょう。

貝が真珠を形成する仕組み

貝は中に異物が入ることで真珠を形成します。一体どういうことかというと、貝の中に侵入物があった際、それを異物と判断し、貝殻の成分で異物を包み込んでしまうのです。それが真珠となって誕生するんですよ。貝が異物排除のためにとる行動で真珠が作られるなんて驚きですね。ここからはもっと詳しく真珠が作られる仕組みを解説していきましょう。

1.貝に異物が入り込む

真珠は貝の外套膜(がいとうまく)という部位の働きによって形成されます。まず、貝の外套膜部分に寄生虫や砂のかけらなどの異物が入り込んできます。異物が入ると貝は刺激され外套膜の表面が破けてしまいます

2.外套膜が真珠袋を形成する

2.外套膜が真珠袋を形成する

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破けた膜の一部は異物と一緒に膜の中に取りこまれ、膜は異物を包み込むような形になり、これを真珠袋と呼びます。袋の内側では真珠質という成分が分泌され、これは貝殻の内側と同じ成分をしているんですよ。こうして、異物の周りに貝がらと同じ成分の層が包み込むことで真珠が形成されるんですね。真珠として採取されるまでには大きさにより7か月から2年半もの時間がかかります

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