冷たいモノと聞くと何を想像する?氷やドライアイスを想像する人がほとんどでしょう。
今回はドライアイスを紹介していきます。

ドライアイスは、生活の中で見かける一番冷たいモノといってもいいでしょう。
ですが、冷たすぎるがゆえにドライアイスを触ると「やけど」を起こすぞ。

今回はドライアイスの特徴と、冷たすぎるため起きる「低温やけど」について、化学に詳しいライターリックと一緒に紹介していくぞ!

ライター/リック

高校生で化学にハマり、大学院までずっと化学を勉強してきた化学オタク。今は化学メーカーで働きながら化学の楽しさを発信する。

ドライアイスってどんな物質

image by iStockphoto

冷たいモノと聞くと何を想像しますか。多くの方が「氷」を想像すると思います。さらに冷たいモノとなると…「ドライアイス」や「液体窒素」を想像しますよね。液体窒素は簡単に手に入らないので、私たちの生活の中で手に入る一番冷たいモノは「ドライアイス」だと思います。アイスクリームを買って持ち帰るとき、ドライアイスを一緒に入れてくれることがありますよね。

冷たいモノの代表「氷」は水でできています。では、ドライアイスって何でできているかご存じですか。ドライアイスは、実は「二酸化炭素」でできています。二酸化炭素って、気体では?と思いますよね…実は二酸化炭素はずっと冷やしていくと気体から固体へ状態変化するんです。

ドライアイスの温度は-○○℃

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二酸化炭素は常温常圧では気体の物質ですが、ずっと冷却していくとある温度で固体に変化するんです。その温度は-78.5℃。-78.5℃を境目にして二酸化炭素は気体から固体へ変化するんですね。

ここで一つ気になりませんか?

一般的に温度が下がっていくと、気体→液体→固体の順に変化していきますよね…水を想像すると分かりやすいです。水蒸気を冷やすと水滴にり、さらに冷やすと氷になる。一方で、二酸化炭素は-78.5℃で気体→固体に変化し、ドライアイスを温めていくと、固体→気体へ変化します。

では、液体の二酸化炭素は、存在しないんでしょうか?実は、そんなことはありません。圧力(0.5MPa以上)をかけた状態で二酸化炭素を冷却していくと、-56.6℃で気体→液体に変化するんです。そのため、二酸化炭素の融点は-56.6℃、沸点は-78.5℃と定義されていますが、融点は常温常圧では観測できません。さらに、常圧では固体から気体へ変化するので、沸点ではなく昇華点と表現する方が正しいんです。

昇華とは…固体から液体を経由せずに気体へ状態変化すること。常温常圧で昇華する物質はとても珍しいんですよ。

ドライアイスからでる白い煙の正体は

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ドライアイスを見ると、周りからもくもく白い煙が出てきてないですか?さらにドライアイスに水をかけると…一気に白い煙が上がります。この煙の正体は何なんでしょう。ドライアイスは二酸化炭素からできているんだから、二酸化炭素では?と思うかもしれませんが、実は違うんです!二酸化炭素は無色透明の気体なので、色がついてみてることはありません。

白い煙の正体は、水分です。約-79℃の超低温のドライアイスに触れた水蒸気はすぐに冷えてしまいます。その水分がドライアイスからもくもくと上がってくる白い煙の正体なんです。ただ、白い煙が氷だけでできているのか、液体の水なのか、両方が混ざった状態なのか、実はまだはっきり分かっていないんですよ。

\次のページで「ドライアイスはここで使われている!」を解説!/

ドライアイスはここで使われている!

ここからは、ドライアイスの用途をご紹介していきます。大体想像できると思いますが…ドライアイスはやっぱり「冷やすこと」に特化しています!

・ 食品の保冷剤

・ 遺体の保存

・ ワクチンの輸送

冷たいドライアイスでやけど!?

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「やけど」は、熱いモノを触ってしまったときに起きることだと思いますよね。実はドライアイスを触っても「やけど」してしまいます。「低温やけど」してしまうんです。「低温やけど」は凍傷とも呼ばれています。

「やけど」も「低温やけど」も皮膚や細胞にダメージを与えてしまうことは同じです。冷たいモノを触ると、細胞内の温度が急に下がり、細胞内の水が凍り付いてしまいます。水は、氷ると液体の時よりも体積が増えるので、細胞が壊れてしまうんです。

また、私たちの身体は、温度が下がると、体内の熱を逃がさないように、血管が収縮して血行を悪くします。血行が悪い状態が続くと、細胞は活動に必要な血液を得られなくなり、死んでしまうんです。ドライアイスは-79℃と超低温なので、少し触れただけでも血管が一気に収縮し、細胞内部の水が凍ってしまい、低温やけどを負ってしまいます。

ドライアイスを扱うときのポイント

ドライアイスを扱うときのポイント

image by Study-Z編集部

とっても冷たいドライアイスは、扱うときも注意が必要です。ただ、日常生活で使うドライアイスはアイスクリームやケーキをお持ち帰りするときに使うくらいですよね。小さなカケラくらいのドライアイスなので、注意するポイントも少ないですが、大きなドライアイスの塊を扱う場合は気をつけてほしいポイントがいくつかあります。

まずは、「絶対に素手で触らないこと」です。これは先ほどご紹介しましたが、ドライアイスは素手で触るとと「低温やけど」します。必ず乾いた皮の手袋をつけてから扱ってください。

次は、「容器に入れて密封しないこと」です。ドライアイスは固体の二酸化炭素のことでしたよね。室温でも、冷凍庫に入れておいても、ドライアイスは固体から気体へ昇華します。固体から気体へ状態変化するとき、体積は約800倍に膨張するので、ドライアイスを入れた容器を密封してしまうと、内圧が上がりすぎて、容器が破裂する危険があるんです!

最後に、「室内で扱うときは換気すること」です。ドライアイスが昇華すると気体の二酸化炭素になります。なので、密閉された室内で換気せずにドライアイスを扱うと二酸化炭素の濃度がどんどん上がってしまうんです。最悪の場合、酸欠になって死んでしまいます…

\次のページで「冷たすぎて危険!?不思議な物質「ドライアイス」をチェック」を解説!/

二酸化炭素は消火剤としても使われています。火は燃えあがるときに酸素を使うので、周りに酸素がないと燃えることができません。火元に二酸化炭素を多量に吹きかけると火の回りに酸素がなくなり、火も酸欠になって、消えてしまうんです!

冷たすぎて危険!?不思議な物質「ドライアイス」をチェック

今回は私たちが日常で目にする最も冷たい物質「ドライアイス」の特徴と危険性をご紹介しました。

ドライアイスは二酸化炭素が固化した、とても冷たい物質です。モノを冷やすためにとても便利な物質ですが、「冷たすぎる」「二酸化炭素で構成されている」ため、危険な一面もあります。実際、ドライアイスを扱う場合は十分に注意してください!

テストでも時々見かけるドライアイス。特に固体から気体へ変化する「昇華」を扱う問題には、ほぼ必ずドライアイスが登場します。ぜひチェックしておいてくださいね!

" /> ドライアイスでやけどするのはどうして?注意点や低温やけどの特徴を元理系大学院生が紹介 – Study-Z
化学理科

ドライアイスでやけどするのはどうして?注意点や低温やけどの特徴を元理系大学院生が紹介



冷たいモノと聞くと何を想像する?氷やドライアイスを想像する人がほとんどでしょう。
今回はドライアイスを紹介していきます。

ドライアイスは、生活の中で見かける一番冷たいモノといってもいいでしょう。
ですが、冷たすぎるがゆえにドライアイスを触ると「やけど」を起こすぞ。

今回はドライアイスの特徴と、冷たすぎるため起きる「低温やけど」について、化学に詳しいライターリックと一緒に紹介していくぞ!

ライター/リック

高校生で化学にハマり、大学院までずっと化学を勉強してきた化学オタク。今は化学メーカーで働きながら化学の楽しさを発信する。

ドライアイスってどんな物質

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冷たいモノと聞くと何を想像しますか。多くの方が「氷」を想像すると思います。さらに冷たいモノとなると…「ドライアイス」や「液体窒素」を想像しますよね。液体窒素は簡単に手に入らないので、私たちの生活の中で手に入る一番冷たいモノは「ドライアイス」だと思います。アイスクリームを買って持ち帰るとき、ドライアイスを一緒に入れてくれることがありますよね。

冷たいモノの代表「氷」は水でできています。では、ドライアイスって何でできているかご存じですか。ドライアイスは、実は「二酸化炭素」でできています。二酸化炭素って、気体では?と思いますよね…実は二酸化炭素はずっと冷やしていくと気体から固体へ状態変化するんです。

ドライアイスの温度は-○○℃

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二酸化炭素は常温常圧では気体の物質ですが、ずっと冷却していくとある温度で固体に変化するんです。その温度は-78.5℃。-78.5℃を境目にして二酸化炭素は気体から固体へ変化するんですね。

ここで一つ気になりませんか?

一般的に温度が下がっていくと、気体→液体→固体の順に変化していきますよね…水を想像すると分かりやすいです。水蒸気を冷やすと水滴にり、さらに冷やすと氷になる。一方で、二酸化炭素は-78.5℃で気体→固体に変化し、ドライアイスを温めていくと、固体→気体へ変化します。

では、液体の二酸化炭素は、存在しないんでしょうか?実は、そんなことはありません。圧力(0.5MPa以上)をかけた状態で二酸化炭素を冷却していくと、-56.6℃で気体→液体に変化するんです。そのため、二酸化炭素の融点は-56.6℃、沸点は-78.5℃と定義されていますが、融点は常温常圧では観測できません。さらに、常圧では固体から気体へ変化するので、沸点ではなく昇華点と表現する方が正しいんです。

昇華とは…固体から液体を経由せずに気体へ状態変化すること。常温常圧で昇華する物質はとても珍しいんですよ。

ドライアイスからでる白い煙の正体は

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ドライアイスを見ると、周りからもくもく白い煙が出てきてないですか?さらにドライアイスに水をかけると…一気に白い煙が上がります。この煙の正体は何なんでしょう。ドライアイスは二酸化炭素からできているんだから、二酸化炭素では?と思うかもしれませんが、実は違うんです!二酸化炭素は無色透明の気体なので、色がついてみてることはありません。

白い煙の正体は、水分です。約-79℃の超低温のドライアイスに触れた水蒸気はすぐに冷えてしまいます。その水分がドライアイスからもくもくと上がってくる白い煙の正体なんです。ただ、白い煙が氷だけでできているのか、液体の水なのか、両方が混ざった状態なのか、実はまだはっきり分かっていないんですよ。

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