微生物、とりわけ細菌(バクテリア)についての記事はいくつかありますが、様々な細菌が存在するんです。今日はその中でも、好気(こうき)性細菌について説明していきます。医学系大学の研究室でバクテリアの培養、遺伝子解析実験に携わってきたきたというライターmimosa(ミモザ)と一緒に解説していきます。

ライター/mimosa

もともと文系出身で、独学で生物学、生化学を勉強し、現在医学系研究所の研究アシスタントとして理系の世界へ飛び込んだ。理科が苦手な方へも興味を持ってもらうべくわかりやすい説明を心掛けている。

生物学上の分類

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今回は好気性細菌について説明していきますが、まずは好気性細菌が生物学上、何の仲間でどのような位置づけなのかを確認していきましょう。生物学上の分類は、大きなまとまりから、ドメイン、界、門、網、目、科、属、種の階級の順番になっています。最初に、ドメインから見ていきましょうね。

3ドメイン説上の細菌の位置

3ドメイン説上の細菌の位置

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今回は、アメリカの生物学者のウーズによって提唱された3ドメイン説を基に説明していきますね。

どの生物とどの生物が遺伝子的に仲間か、ということを、細胞の中の小サブユニットリボソームRNAや伸長因子Tuと伸長因子Gという遺伝子の翻訳の際に関わる2種類のタンパク質を用いて分類していますよ。分類されたドメインは、図のように真核生物、真正細菌、古細菌の3つです。私たちヒトは真核生物に属しますよ。

真正細菌と古細菌

真正細菌と古細菌に共通するのは、どちらも単細胞生物であり原核生物であるということですよ。

それぞれ例を挙げると、真正細菌には、大腸菌、肺炎球菌、結核菌、ビフィズス菌、納豆菌などががあります。聞いたことがあるものばかりですね。古細菌には、好塩菌、好熱菌、好酸菌、好アルカリ菌などがいます。

古細菌は基本的には感染症の原因にはなりません。古細菌は、自然の中の極端な条件下の環境中に住んでいて発育するのですよ。好塩菌は塩分濃度の高いところ、好熱菌は火山の噴出口付近の100度超える場所、好アルカリ菌は、pH10以上の高度のアルカリ性の場所に住んでいますよ。

好気性細菌とは何か

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まずは、「好気性」という言葉の意味から説明しますね。好気性とは、細菌が生きるために体内の代謝で酸素を必要とし、酸素がある中でないと増殖しないものを言います。

真正細菌にも古細菌にも好気性のものは存在しますよ。それらは「好気性微生物」と呼ばれます。このことから、好気性細菌は、好気性微生物の中の好気性細菌という位置づけになりますね。「酸素」がこのトピックでのキーワードになりますよ。

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好気性細菌の誕生

生物の進化において、好気性細菌はどのように進化したのでしょうか。好気性細菌は、地球上にラン藻類が誕生し、大気中に酸素が存在し増加し始めてから誕生したとも学説では考えられています。ラン藻類は藻類ですが、これはシアノバクテリアと言う、光合成をする微生物の集まりなんですよ。

そのシアノバクテリアは、ミトコンドリアを取り込んで進化したのではないかとも言われているので、好気性細菌は、ミトコンドリアの祖先とも言われていますよ。

細菌が育つ環境

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細菌の分類について説明しますね。分類ばかりで似たような表現が多く出ていることに注意してくださいね。細菌が育つ環境によって、3つに分けることができますよ。

酸素がなければ生育不可能な好気性菌。酸素があってもなくても生育可能な通性嫌気(けんき)性菌。代謝に酸素を利用せず酸素があると生育不可能な偏性嫌気性菌の3つに分けられますよ。微生物も私たちと同じで、呼吸をしているのです。

好気性細菌を利用したバイオテクノロジー

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好気性細菌は、私たちの生活に密接にかかわっていますよ。好気性細菌を利用した昔ながらのバイオテクノロジーの一部を紹介しますね。

活性汚泥法

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活性汚泥法は聞いたことがない人がほとんどかと思いますが、これは今や私たちの生活になくてはならないバイオテクノロジーです。これは、下水などの排水や汚水の浄化方法ですよ。

日本の下水道の普及率(2020年3月時点)はほぼ8割程度とのことです。日本で下水の整備が本格的に始まったのは第二次世界大戦後のことでなんですよ。工業廃水や生活排水をそのまま川や海に流すと環境汚染が起こります。そうならないためにも、下水の整備が必要でした。

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活性汚泥法の利用

活性汚泥法の利用

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工業廃水や生活排水は、下水道を通って、汚水処理場へ送られます。そこで、活性汚泥を使って排水を浄化していくのですが、活性汚泥とは、人為的に好気性微生物などを培養し含ませた汚泥のことですよ。この好気性細菌を含む好気性微生物は、酸素を与えると排水の有機物を分解してくれます。活性汚泥は比重が水より重いので、下に沈み、下に沈んだ活性汚泥は、また排水の浄化のために再利用され、上澄みは殺菌や脱色をして安全に河川に放流されていますよ。

活性汚泥法は一見、クリーンでエコな方法に思えるかもしれませんが、除去した有機物の50%ほどは再利用されず、余剰汚泥と呼ばれる廃棄物になってしまうのだそうですよ。

食品加工に生かされる

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食品加工で使用される好気性細菌には、納豆菌があります。納豆菌は、言うまでもなく、大豆を発酵させますよ。学名には"natto"と入っているのですよ。納豆菌は、イネの藁にたくさん生息していています。だから昔の納豆は、藁に入っているのですね。

ちなみに、酵母菌は真菌類の仲間なので、好気性細菌ではありませんが、好気性の微生物であり、たくさん食品の発酵に関わっていますよ。パンやワインの製造には欠かせませんね。

「好気性」は酸素は必要不可欠

ウーズが提唱した3ドメイン説で分類すると、真核生物、真正細菌、古細菌の3つに分かれます。細菌も古細菌も「細菌」という言葉が入っていますが、異なるものです。

真正細菌や古細菌は、遺伝に関わる物質を分析し、遺伝的に類似性があるかどうか分類したもの。「好気性」や「嫌気性」という言葉は、それ自身が生きていく環境、条件のことですね。

細菌と言ったら、病気をおこしそうと思いがちですが、下水のような汚水を浄化させる作用や、食材を発酵させ、食卓におなじみの納豆がやパンなどができるのです。

細菌などの微生物はまだわからないことばかりなので、研究が進んで私たちの暮らしも環境も豊かになるようになればいいですね。

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理科生物

3分で簡単!空気中で育つ「好気性細菌」について医学系研究アシスタントがわかりやすく解説

微生物、とりわけ細菌(バクテリア)についての記事はいくつかありますが、様々な細菌が存在するんです。今日はその中でも、好気(こうき)性細菌について説明していきます。医学系大学の研究室でバクテリアの培養、遺伝子解析実験に携わってきたきたというライターmimosa(ミモザ)と一緒に解説していきます。

ライター/mimosa

もともと文系出身で、独学で生物学、生化学を勉強し、現在医学系研究所の研究アシスタントとして理系の世界へ飛び込んだ。理科が苦手な方へも興味を持ってもらうべくわかりやすい説明を心掛けている。

生物学上の分類

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今回は好気性細菌について説明していきますが、まずは好気性細菌が生物学上、何の仲間でどのような位置づけなのかを確認していきましょう。生物学上の分類は、大きなまとまりから、ドメイン、界、門、網、目、科、属、種の階級の順番になっています。最初に、ドメインから見ていきましょうね。

3ドメイン説上の細菌の位置

3ドメイン説上の細菌の位置

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今回は、アメリカの生物学者のウーズによって提唱された3ドメイン説を基に説明していきますね。

どの生物とどの生物が遺伝子的に仲間か、ということを、細胞の中の小サブユニットリボソームRNAや伸長因子Tuと伸長因子Gという遺伝子の翻訳の際に関わる2種類のタンパク質を用いて分類していますよ。分類されたドメインは、図のように真核生物、真正細菌、古細菌の3つです。私たちヒトは真核生物に属しますよ。

真正細菌と古細菌

真正細菌と古細菌に共通するのは、どちらも単細胞生物であり原核生物であるということですよ。

それぞれ例を挙げると、真正細菌には、大腸菌、肺炎球菌、結核菌、ビフィズス菌、納豆菌などががあります。聞いたことがあるものばかりですね。古細菌には、好塩菌、好熱菌、好酸菌、好アルカリ菌などがいます。

古細菌は基本的には感染症の原因にはなりません。古細菌は、自然の中の極端な条件下の環境中に住んでいて発育するのですよ。好塩菌は塩分濃度の高いところ、好熱菌は火山の噴出口付近の100度超える場所、好アルカリ菌は、pH10以上の高度のアルカリ性の場所に住んでいますよ。

好気性細菌とは何か

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まずは、「好気性」という言葉の意味から説明しますね。好気性とは、細菌が生きるために体内の代謝で酸素を必要とし、酸素がある中でないと増殖しないものを言います。

真正細菌にも古細菌にも好気性のものは存在しますよ。それらは「好気性微生物」と呼ばれます。このことから、好気性細菌は、好気性微生物の中の好気性細菌という位置づけになりますね。「酸素」がこのトピックでのキーワードになりますよ。

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