今回は固有種について学んでいきます。固有種とは島など特定の地域にしか生息していない生物種のことです。固有種にはその地域ならではの独自の進化を遂げてきたものが多い。そのため地球の生物資源の豊かさを象徴するものであり、歴史的な観点から見ても非常に重要な存在である。日本には多数の固有種が生息しており、意外と身近な生き物も固有種だったりします。しかし、現在、固有種は絶滅の危機に瀕しており、世界中で野生動物を守るための取り組みが行われている。今回はそんな固有種について、学生時代、獣医学部で動物のことを勉強していたライターみんちが解説していきます。

ライター/みんち

学生時代、獣医学部で動物の知識を学んだ。趣味は動物園巡り。ライターとして、初心者にもわかりやすく、質のある情報を提供できるよう、日々奮闘中。

固有種は特定の地域にのみ生息する生物!

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固有種とは特定の地域にのみ生息する生物のこと。特産種と同じ意味ですね。ただし、存在する範囲があまりに広い場合には固有種とは呼ばないので注意しましょう。

動物の固有種が多い国世界1位はインドネシアで、なんと295種もの数が存在するんですよ。2位はオーストラリア、3位はマダガスカルと続きます。それでは固有種が多い国にはどんな特徴があるのでしょうか?固有種が生まれる条件とはどんなものがあるのかみていきましょう。

固有種は地理的な隔離によって誕生した

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固有種は地理的な隔離によって誕生したと考えられています。“地理的な隔離”とは、大陸が分裂したり、火山活動によって新たに形成された島のように、大きな大陸から独立して存在する場所のことです。どうして隔離された場所で固有種が生まれるのかというと、空間が制限されていることが関係しています。

独立した島では動物が生きるためのスペースに限りがありますね。しかし動物が繁殖して数を増やしていくうちに生活する場所が少なくなってしまいますよね。すると生物間ですみかを狙って争いが起きます。その争いに勝てた生物はそのまま住み続ければよいのですが、負けた生物は今までの環境とは違った時間や場所、食事などをしなければなりません。こうして新たな生活に順応していくことで、その土地ならではの新たな固有種が誕生したというわけです。

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こうして小さな島々では固有種が多く誕生しました。固有種が1つの地域の中に占める割合は、大陸移動などを調査するための指標にもなっているんですよ。その地域に占める固有種の数が、その土地がどれくらい前に近くの島から分裂したのかを判断する材料になるんです。つまり、その土地の固有種が多ければ多いほど、その島が古い時代に隣接する島から分離したということですね。固有種は歴史を学ぶ上でも重要役割をはたしているんですね。

日本は固有種の宝庫

日本の固有種は100種以上

日本は固有種の宝庫だということを知っていますか?その数はなんと131種ニホンカモシカやクロウサギ、オオサンショウウオなど日本中にかなり多くの固有種が存在しているんですよ。様々な生物が生息している島として有名なガラパゴス諸島は110種なので、日本には実に多くの固有種がいることがわかりますね。

固有種と聞くとなんとなく離島などに行かなければ出会えないかと思ってしまいますが、意外と身近なところにもいるんですよ。その例としてアオダイショウがいます。おばあちゃんの家や田舎の道端で見たことがある人もいるのではないでしょうか。アオダイショウは沖縄県意外に幅広く分布するヘビで、大きいものなら2m近くの長さになるものもいるそうですよ。

また、意外な例ではシシャモも日本の固有種なんですよ。シシャモは北海道の太平洋沿岸に分布する日本の固有種です。何気なく食卓に上がっているシシャモですが、日本の固有種だったなんてなんだか恐れ多いですね。

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日本は自然に恵まれている

日本は自然に恵まれている

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日本にこんなに多くの種が存在する理由として、日本が島国であることが関係しています。日本は7000もの離島からなる島国です。日本は大昔、大きな大陸と何度もくっついたり離れたりしながら今の形になりました。また、日本列島は南北に長く、寒冷地~温帯、亜熱帯地域まであるため様々な気候が見られますね。さらに山脈も多く、標高差や寒暖差が激しいという特徴もあります。このように豊富な自然環境が日本の多様な固有種を生み出したと考えられているんです。

固有種は絶滅の危機に瀕している

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このように貴重な生物資源である固有種ですが、実は今、世界中で絶滅の危機に瀕しています。その原因は乱獲や森林伐採など、人間の活動によるものがほとんどです。

乱獲や森林伐採が原因に

密猟や密輸などは本来、法律上違法行為とされています。しかし、アフリカゾウの象牙やサイの角、動物の毛皮などは先進国で高値で取引されており、現在でも密猟や乱獲をする人は後を絶ちません。IUCN(国際自然保護連合)の「レッドリスト」によれば、3000種以上の動植物が捕獲や採取などの影響を受け、絶滅の危機に瀕しています。

また、森林は主な動物の生息地であり、陸上生物の3分の2が住んでいるといわれています。しかし、紙製品の製造や先進国への輸出目的で世界中で森林がなくなってるんです。そのせいで毎日100種もの生物が絶滅しているとも言われているんですよ。これら以外にも外来種の侵入や地球温暖化などが原因で世界各地の野生動物が絶滅の危機に瀕しているといわれています。

固有種を守るための取り組み

貴重な生物資源である固有種。彼らをを守るために、現在、世界中でさまざまな取り組みがされています。1973年には絶滅危惧種の違法取引を禁止する国際条約としてワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)が採択されました。ワシントン条約では動物の保護はもちろん、毛皮や角、牙などの動物を使った加工品や装飾品の取引も禁止するもので、多数の国が賛同しています。

さらに近年話題のSDGsでも絶滅危惧の保護に触れています。持続可能な開発目標(SDGs)とは2015年に国連サミットで採択された持続可能でより良い世界を2030年までに目指す国際目標のことです。このように大きな条約にも問題を取り入れることで、さらに絶滅危惧種の存在に注目が集まってきそうですね。

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貴重な固有種を守っていこう

ここまで読んでいただきありがとうございました。今回は固有種をキーワードに解説してきましたね。固有種とはその地域にしか生息しない貴重な生き物のこと。固有種の存在は、地球の豊かな自然環境を象徴するものであり、また大陸の歴史を物語る大切な役割もあります。日本も多数の島からなる島国のため、貴重な固有種が数多く存在することがわかりましたね。そんな固有種ですが、現在は乱獲や森林伐採などによって絶滅の危機に瀕しています。豊かな自然や貴重な生物たちを守っていくためにも、無理やり生き物を捕まえたり、ペットを逃がしたりしない、川や森にごみを捨てない、動物をつかった加工品などを海外のお土産などで飼わないようにするなど私たちにできることから少しずつ実践していきましょうね。一人一人の小さな努力で野生動物たちを守っていきましょう。

画像使用元:いらすとや

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理科生き物・植物生態系生物

日本は固有種の宝庫!誕生の秘密や絶滅の対策例などについて獣医学部卒ライターがわかりやすく解説!

今回は固有種について学んでいきます。固有種とは島など特定の地域にしか生息していない生物種のことです。固有種にはその地域ならではの独自の進化を遂げてきたものが多い。そのため地球の生物資源の豊かさを象徴するものであり、歴史的な観点から見ても非常に重要な存在である。日本には多数の固有種が生息しており、意外と身近な生き物も固有種だったりします。しかし、現在、固有種は絶滅の危機に瀕しており、世界中で野生動物を守るための取り組みが行われている。今回はそんな固有種について、学生時代、獣医学部で動物のことを勉強していたライターみんちが解説していきます。

ライター/みんち

学生時代、獣医学部で動物の知識を学んだ。趣味は動物園巡り。ライターとして、初心者にもわかりやすく、質のある情報を提供できるよう、日々奮闘中。

固有種は特定の地域にのみ生息する生物!

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固有種とは特定の地域にのみ生息する生物のこと。特産種と同じ意味ですね。ただし、存在する範囲があまりに広い場合には固有種とは呼ばないので注意しましょう。

動物の固有種が多い国世界1位はインドネシアで、なんと295種もの数が存在するんですよ。2位はオーストラリア、3位はマダガスカルと続きます。それでは固有種が多い国にはどんな特徴があるのでしょうか?固有種が生まれる条件とはどんなものがあるのかみていきましょう。

固有種は地理的な隔離によって誕生した

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固有種は地理的な隔離によって誕生したと考えられています。“地理的な隔離”とは、大陸が分裂したり、火山活動によって新たに形成された島のように、大きな大陸から独立して存在する場所のことです。どうして隔離された場所で固有種が生まれるのかというと、空間が制限されていることが関係しています。

独立した島では動物が生きるためのスペースに限りがありますね。しかし動物が繁殖して数を増やしていくうちに生活する場所が少なくなってしまいますよね。すると生物間ですみかを狙って争いが起きます。その争いに勝てた生物はそのまま住み続ければよいのですが、負けた生物は今までの環境とは違った時間や場所、食事などをしなければなりません。こうして新たな生活に順応していくことで、その土地ならではの新たな固有種が誕生したというわけです。

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