コバルトという元素を知っているか?
名前は聞いたことありますが、どこに使われているかはあまり知られていないでしょう。

コバルトは直接見ることはほとんどないが、生活の中になくてはならない元素です!
特に重要な使用用途はリチウムイオン二次電池だ!

今回は、コバルトの特徴と使用用途を化学に詳しいライターリックと一緒に解説していきます。

ライター/リック

高校生で化学にハマり、大学院までずっと化学を勉強してきた化学オタク。今は化学メーカーで働きながら化学の楽しさを発信する。

コバルトとはどんな物質?

コバルトとはどんな物質?

image by Study-Z編集部

コバルトって、聞いたことはあるけど、どんな物質でどんな性質があるのか…あんまり知らないですよね。まずは、「コバルトがどんな物質なのか」ご紹介していきますね。

コバルトは原子番号27の元素で、元素記号はCoです。見た目は銀白色の金属で、元素周期表では第9族の元素なので遷移元素に分類されます。鉄よりも酸化されにくく、酸にも塩基にも強いのが特徴です。

融点は1495℃、沸点は2927℃。リチウムイオン二次電池電池の正極に使われていて、工業的にすごく重要な元素なんですよ!

コバルトはここで産出されている

image by iStockphoto

コバルトはリチウムイオン二次電池の正極に使われていて、工業的にとても重要なので「レアメタル」に分類されています。パソコン、スマホ、家電製品のバッテリーなどにも使われていますし、世界中で普及が進んでいるEV車に欠かせません。

そんなコバルトの産出地域はかなり偏っています。実は、世界で生産されるコバルトの50%以上が1つの国に偏っているんです。それが「コンゴ共和国」。コンゴ共和国はアフリカに位置しています。

コンゴ共和国の他には、中国、カナダ、ロシアなどが産出国として挙げられますが、産出量はいずれもそれほど多くないのが現状です。

今後、IT化の加速やEV車の急速な普及によって、世界中でコバルトの争奪戦が起き、コバルトの枯渇につながるのではないか。という懸念もあります。コバルトは、工業的に重要な金属ですが、1つの国に生産が依存してることがレアメタルに分類されている大きな理由です。

\次のページで「新たな紛争鉱物「コバルト」」を解説!/

新たな紛争鉱物「コバルト」

image by iStockphoto

世界中の生産量の半分以上を担っているコンゴ共和国。ここは、国の情勢的にも不安定で紛争地域に区分されます。紛争地域の資源や鉱物から得られる利益は武装勢力や反政府勢力の資金源となる可能性が指摘され、さらに、紛争に伴う児童労働や強制労働などの人権侵害や環境破壊などの問題も。

そんな地域の鉱物は「紛争鉱物」に指定されています。

紛争鉱物はこれまでスズ(Tin)、タンタル(Tantal)、タングステン(Tungsten)、金(Gold)の4種類でしたが、新しくコバルトやマイカ(雲母)も紛争鉱物に分類されるようになりました。

紛争鉱物の取引は特に慎重になる必要があります。そのため日本の企業は採掘業者・製錬業者を特定して、武装勢力や反政府勢力へ資金が流れないように責任をもって調達を行っているんです。

コバルトの用途をご紹介

先ほど少しご紹介しましたが、ここからはコバルトの用途についてまとめていきます。そのあと、代表的な使われ方をピックアップしてご紹介していきますね!

・合金材料

・リチウムイオン電池の正極材料

・色を表現するための顔料

・ビタミンB12

リチウムイオン電池に必要なコバルト

image by iStockphoto

コバルトの最も有名な使用用途が「リチウムイオン二次電池」への利用です。コバルトとリチウムの化合物のコバルト酸リチウム(LiCoO2)がリチウムイオン二次電池の正極材に使われています。

コバルトってレアメタルなのに…どうして、正極材にコバルトを使うの?って思いませんか。

それは…高い電位と大きなエネルギー密度を確保するためなんです。コバルト酸リチウムを正極に使い、黒鉛を負極に使うことで、高容量・高出力のリチウムイオン二次電池をつくりだすことができるんですよ。

けれど、コバルトは稀少な金属…なので、リチウムイオン二次電池は急速に進化を遂げているんです。正極にコバルトを用いない新しい二次電池が次々に研究・開発されています。コバルトをマンガンや鉄、ニッケルに置き換えたリチウムイオン二次電池も開発・実用化されているんですよ。

\次のページで「色を付けるために必須なコバルト」を解説!/

リチウムイオン電池の開発は、大きな発明であり、2019年にリチウムイオン電池の概念を開発した「スタンリー・ウィッティンガ氏」正極の材料を開発した「ジョン・グッドナイフ氏」、負極の材料を開発した「吉野彰氏」の3人がノーベルか化学賞を受賞しました。

色を付けるために必須なコバルト

image by iStockphoto

コバルトブルーって聞いたことないですか?すごくキレイな青色ですが、この青色を表現しているのも実はコバルトなんです。金属と色は意外と関係が深くて、いろんな金属がいろんな色を表現するために使われているんですよ!

コバルトブルーの正体は、酸化コバルトと酸化アルミニウムを1200℃付近で焼成してできるアルミン酸コバルトCoO・xAl2O3という成分です。

美しい青色で、とても耐久性が高いため、陶磁器の釉薬や印刷インキ・塗料の顔料などに使われています。

ミネラルとしてのコバルト

image by iStockphoto

ここまで、金属としてのコバルトをご紹介してきましたが、コバルトにはもう一つの顔があります。それがミネラルとしてのコバルトです。コバルトは人体に必要不可欠な元素なんですよ!

ビタミンB12って聞いたことありませんか?聞きなれないビタミンだと思いますが…私たちの身体に必要不可欠なビタミンなんです。

補酵素(酵素をサポートする成分)のビタミンB12は、アミノ酸や核酸、葉酸の代謝に関わっています。さらに、赤血球の生産や脳神経や血液細胞など、体内の組織の機能や発達を正常に維持するために必要な栄養素なんですよ!

ビタミンB12の化学式はC63H88CoN14O14Pと書きます。コバルトを中心としてすごく複雑な錯体を形成しているんです。

ビタミンB12が欠乏すると、血液や細胞をうまく作り出すことができなくなってしまうので、貧血や筋力低下などの症状が現れます。ビタミンB12を体内で作り出すことはできないので、食事から摂取するしかありません。なので、コバルトは健康な身体を維持するために摂取しなければならない成分として、「必須ミネラル」に分類されているんですよ!

工業的に重要なコバルト、ただ調達にはリスクも…

今回はコバルトの用途や特徴をご紹介しました。リチウムイオン二次電池に必要不可欠なコバルトですが、実は調達には大きな懸念があるんです。今後EVの普及やさらなるIT化が進めば、コバルトの枯渇がどんどん加速するかもしれません。

そのためにも、リチウムイオン電池のさらなる研究と進化が必要です。リチウムイオン電池はこれからの時代を作っていく技術であることは間違いありません。

ぜひリチウムイオン電池とコバルトをチェックしてみてください!

" /> コバルトってどんな物質? リチウム電池との関係や産出国は?理系ライターが詳しくわかりやすく解説! – Study-Z
化学理科

コバルトってどんな物質? リチウム電池との関係や産出国は?理系ライターが詳しくわかりやすく解説!



コバルトという元素を知っているか?
名前は聞いたことありますが、どこに使われているかはあまり知られていないでしょう。

コバルトは直接見ることはほとんどないが、生活の中になくてはならない元素です!
特に重要な使用用途はリチウムイオン二次電池だ!

今回は、コバルトの特徴と使用用途を化学に詳しいライターリックと一緒に解説していきます。

ライター/リック

高校生で化学にハマり、大学院までずっと化学を勉強してきた化学オタク。今は化学メーカーで働きながら化学の楽しさを発信する。

コバルトとはどんな物質?

コバルトとはどんな物質?

image by Study-Z編集部

コバルトって、聞いたことはあるけど、どんな物質でどんな性質があるのか…あんまり知らないですよね。まずは、「コバルトがどんな物質なのか」ご紹介していきますね。

コバルトは原子番号27の元素で、元素記号はCoです。見た目は銀白色の金属で、元素周期表では第9族の元素なので遷移元素に分類されます。鉄よりも酸化されにくく、酸にも塩基にも強いのが特徴です。

融点は1495℃、沸点は2927℃。リチウムイオン二次電池電池の正極に使われていて、工業的にすごく重要な元素なんですよ!

コバルトはここで産出されている

image by iStockphoto

コバルトはリチウムイオン二次電池の正極に使われていて、工業的にとても重要なので「レアメタル」に分類されています。パソコン、スマホ、家電製品のバッテリーなどにも使われていますし、世界中で普及が進んでいるEV車に欠かせません。

そんなコバルトの産出地域はかなり偏っています。実は、世界で生産されるコバルトの50%以上が1つの国に偏っているんです。それが「コンゴ共和国」。コンゴ共和国はアフリカに位置しています。

コンゴ共和国の他には、中国、カナダ、ロシアなどが産出国として挙げられますが、産出量はいずれもそれほど多くないのが現状です。

今後、IT化の加速やEV車の急速な普及によって、世界中でコバルトの争奪戦が起き、コバルトの枯渇につながるのではないか。という懸念もあります。コバルトは、工業的に重要な金属ですが、1つの国に生産が依存してることがレアメタルに分類されている大きな理由です。

\次のページで「新たな紛争鉱物「コバルト」」を解説!/

次のページを読む
1 2 3
Share: