この記事では「該当」と「当該」の違いについて考えてみたいと思う。
どちらも同じ2つの漢字を使っている、いわば前後の並びが違う熟語です。そのため、それぞれの漢字が持つ意味は当たり前ですが同じになるものの、意味や使い方はどうなるのか気になるよな。
そんな「該当」と「当該」の違いと言えば、ずばり"あてはまる"対象などですが、調べてみると他にもいろいろな違いがあるみたいです。
今回はそんな2つの違いを、少女向け小説家兼ライターのさらささらと一緒に解説していきます。

ライター/さらささら

少女向け小説家兼ライター、神社や名所を訪ねるのが趣味。お話のネタにするため様々な雑知識を集め、わかりやすい言葉で説明。

「該当」と「当該」は2つの漢字を入れ替えただけ?

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私たちが使う日本語には漢字が同じだったり、読み方や意味などが似ている言葉がたくさんありますね。ところが、同じ漢字を使っていながら全く意味が違っていたり、微妙にニュアンスがずれている場合も多々あります。

こうした言葉の中に、「該当」と「当該」という二文字熟語がありますが、これらは共通する2つの漢字を前と後ろに"入れ替えた"だけなのでしょうか?

そんな疑問を、次の項目から色々と掘り下げてみました。

「該当」は条件にあてはまること

「該当」は「がいとう」と読みます。意味は「ある一定の条件にあてはまること」、「要件に適合すること」などです。

形成する文字を分解すると、
■該:「あたる、あてはまる」←※「該当」での意味、「その」
■当:「あてはまる」
……といった意味合いを持ちます。
漢字を見比べて頂ければ分かる通り「該当」は同じ意味合いの漢字を連ねた二文字熟語で、これは次に説明する「当該」も同様です。

また、「該当」は後ろに「~する」などを付けた動詞、後ろに「名詞」を付けた「連体詞=話し言葉」にもなります。

【該当の例文】該当+動詞
・この法案に該当する案件だ。
・横断歩道近くの駐車は交通違反に該当する。
・該当者は集まって下さい。

【該当の言い回し例】該当+名詞
・該当する人
・該当する場合
・該当者
・該当事件……など。

「該当の類語」
・当てはまる
・一致
・適合
・条件を満たす
・噛み合う……など。

「当該」は"その"のかしこまった表現

「当該」は「とうがい」と読みます。言葉が持つ意味としては「それのことにあたること、その受け持ち(=自分たちの仕事など)」です。

形成する文字を分解すると、
■当:「あてはまる」
■該:「あたる、あてはまる」、「その」←※「当該」での意味
……といった意味合いを持ちます。

前後しますが、「該」の持つ意味で「その」のかしこまった表現が「当該」です。そのため、ビジネスシーンなどの場面で多く使われます。

また、「当該」は連体詞(他の言葉を装飾し説明する)として名詞の頭に使って修飾するため、例えば「当該商品」や「当該の商品」はあっても、「当該する商品」のような使い方はしません。※「該当する商品」なら大丈夫です。

\次のページで「ビジネスシーンでの「当該」と「該当」の使い方」を解説!/

【当該の例文】
・当該マラソンコースは上級者向けです。
・不正が発覚した当該選手は名簿から抹消された。
・当該の地域は住民流出に歯止めが利かない。

【当該の言い回し例】連体詞
・当該事件
・当該商品
・当該物件……など。

「当該の類語」
・その
・例の
・件の
・関係する
・相当する……など。

ビジネスシーンでの「当該」と「該当」の使い方

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「当該」と「該当」のどちらもビジネスシーンでよく聞く言葉ですね。そこでこちらでは、ビジネスや役所など公共のかしこまった場で使う「当該」と「該当」を調べてみました。

「当該」はかしこまった使い方をする

皆さんも学校や役所などの書類で「当該」を目にしても、友人や肉親など気安い相手との会話ではほとんど使う事はないでしょう。

「当該」は「当該商品」や「当該期間」など、「当該〇〇」というかしこまった使い方です。先ほども少し触れましたが、「当該」=丁寧に表現することができるため、ビジネス文書や資料の他に官公庁の発表、テレビやラジオのニュース、新聞などで多く見かけます。政府見解や宮内庁の発表を思い出せばピンとくるのではないでしょうか。

例えば、コンペなどで発表するとき「デザインAを紹介します」と話した後に、「当該のコンセプトは」と言えばコンペの参加者は皆が「デザインAのことだ」と分かりますね。つまり、この場合「当該=デザインA」なので、「当該」=「それ」の丁寧(かしこまった)な言い方と言う訳です。

【ビジネス文章】
・この度、弊社が請け負った丘陵地開発について詳細な内容をご説明させて頂きます。当該プロジェクトの施工は2022年4月より着工予定。」
→丘陵地開発=当該プロジェクト

「該当」は物事を当てはめ、はっきりさせる

「該当」は、ある条件、事例、資格などに当てはめる時に使います。そのため、「該当する=YES」「該当しない=NO」のように物事がはっきり伝えることができるので、明確な意思表示に有効です。そのため「この企画書は今回の案件に該当しません(=企画書がダメである)」や「貴方たちはグループ研修の対象者に該当する(=研修に参加できる)」のように、"どちらなのか"がすぐにわかります。

逆に、やんわりと伝えたい時には「該当」を使うの控えた方がよいでしょう。

\次のページで「2文字熟語の前後を入れ替えた言葉」を解説!/

2文字熟語の前後を入れ替えた言葉

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「当該」と「該当」以外にも、2文字熟語で前後の漢字を入れ替えても成り立つ言葉はたくさんあります。

一例として
「火花・花火」「末期・期末」「会社・社会」「数字・字数」「外国・国外」「中心・心中」「国王・王国」「女王・王女」…などが挙げられるでしょう。

こうしていくつもの例文を並べ・比べてみるうちに、それぞれの漢字が持つ意味は同じでも、熟語として成立してる内容は大きく変わってしまうのがわかるかと思います。

例えば「末期・期末」はどちらも"終わり"を意味しますが、末期は人生など概念的なものに対し、期末はある決まった期間の終わり頃です。反対に「外国・国外」だと、"国の外"と言う意味ではかなり近いかもしれませんね。

【同じ漢字を前後を変えて使った2文字熟語】
「作動・動作」「名作・作名」「材木・木材」「実現・現実」「長身・身長」「食間・間食」
「車外・外車」「外野・野外」「科学・学科」「液体・体液」「部下・下部」「陸上・上陸」
「情事・事情」「和平・平和」「事故・故事」「家出・出家」「分子・子分」「進行・行進」
「配分・分配」「色気・気色」「部外・外部」「中年・年中」「数日・日数」「奇数・数奇」

他にも色々あるかと思いますので、熟語辞典などで確認してみて下さい。

こちらでは「該当」と「当該」の違いをまとめてみました。

■「該当」
・条件や資格などに当てはまること。
【使い方】
連体詞や動詞として名詞の頭に置いて使います。
例)「該当商品」、「該当する商品」どちらOK。

■「当該」
・対象となっている事柄に直接関係があるものを指す。そのもの。
・「対象=その(指示語)」のかしこまった表現。
【使い方】
連体詞として名詞の頭に置いて使います。
例)「当該商品」、「当該の商品」…OK
  「当該する商品」…NG ←このような「当該」の使い方は出来ません。

「当該」と「該当」の使い方をマスターしてステップアップ!

「当該」と「該当」2つの言葉を耳にすると、なんだか堅苦しいイメージを持たれる方がいるかもしれません。どちらもあまりくだけた内容には合わない言葉なので、使い方に躊躇してしまいそうです。

しかし、これらの意味をきちんと理解し、TPOに合わせた使い方が出来たのなら、貴方に対する周りの評価は変わるでしょう。さらに、それは間違いなく貴方自身のスキルアップに繋がるはずです。

難しかったり、使いづらい言葉にも躊躇せず、次なるステップアップに挑みましょう。

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言葉雑学

3分でわかる該当と当該の違い!意味やビジネスシーンで使われる例文などを小説家兼ライターがわかりやすく解説

この記事では「該当」と「当該」の違いについて考えてみたいと思う。
どちらも同じ2つの漢字を使っている、いわば前後の並びが違う熟語です。そのため、それぞれの漢字が持つ意味は当たり前ですが同じになるものの、意味や使い方はどうなるのか気になるよな。
そんな「該当」と「当該」の違いと言えば、ずばり”あてはまる”対象などですが、調べてみると他にもいろいろな違いがあるみたいです。
今回はそんな2つの違いを、少女向け小説家兼ライターのさらささらと一緒に解説していきます。

ライター/さらささら

少女向け小説家兼ライター、神社や名所を訪ねるのが趣味。お話のネタにするため様々な雑知識を集め、わかりやすい言葉で説明。

「該当」と「当該」は2つの漢字を入れ替えただけ?

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私たちが使う日本語には漢字が同じだったり、読み方や意味などが似ている言葉がたくさんありますね。ところが、同じ漢字を使っていながら全く意味が違っていたり、微妙にニュアンスがずれている場合も多々あります。

こうした言葉の中に、「該当」と「当該」という二文字熟語がありますが、これらは共通する2つの漢字を前と後ろに”入れ替えた”だけなのでしょうか?

そんな疑問を、次の項目から色々と掘り下げてみました。

「該当」は条件にあてはまること

「該当」は「がいとう」と読みます。意味は「ある一定の条件にあてはまること」、「要件に適合すること」などです。

形成する文字を分解すると、
■該:「あたる、あてはまる」←※「該当」での意味、「その」
■当:「あてはまる」
……といった意味合いを持ちます。
漢字を見比べて頂ければ分かる通り「該当」は同じ意味合いの漢字を連ねた二文字熟語で、これは次に説明する「当該」も同様です。

また、「該当」は後ろに「~する」などを付けた動詞、後ろに「名詞」を付けた「連体詞=話し言葉」にもなります。

【該当の例文】該当+動詞
・この法案に該当する案件だ。
・横断歩道近くの駐車は交通違反に該当する。
・該当者は集まって下さい。

【該当の言い回し例】該当+名詞
・該当する人
・該当する場合
・該当者
・該当事件……など。

「該当の類語」
・当てはまる
・一致
・適合
・条件を満たす
・噛み合う……など。

「当該」は”その”のかしこまった表現

「当該」は「とうがい」と読みます。言葉が持つ意味としては「それのことにあたること、その受け持ち(=自分たちの仕事など)」です。

形成する文字を分解すると、
■当:「あてはまる」
■該:「あたる、あてはまる」、「その」←※「当該」での意味
……といった意味合いを持ちます。

前後しますが、「該」の持つ意味で「その」のかしこまった表現が「当該」です。そのため、ビジネスシーンなどの場面で多く使われます。

また、「当該」は連体詞(他の言葉を装飾し説明する)として名詞の頭に使って修飾するため、例えば「当該商品」や「当該の商品」はあっても、「当該する商品」のような使い方はしません。※「該当する商品」なら大丈夫です。

\次のページで「ビジネスシーンでの「当該」と「該当」の使い方」を解説!/

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