突然ですが、クマやヘビなどが寒い冬を乗り越えるために冬眠をするのは知っているな?しかし「夏眠」があることは知っているか?夏眠は生物が夏の厳しい暑さを乗り越えるためにとる行動です。夏眠をする動物の中には体液で膜を張って乾燥を防ぐなど、変わった方法をとるものもいる。しかし、冬眠と夏眠とでは目的や中身が少し違うんです。そんな夏眠について、今回は生物例を挙げながら、夏眠と冬眠の違いについて、学生時代、獣医学部で動物のことを勉強していたライターみんちが解説していきます。

ライター/みんち

学生時代、獣医学部で動物の知識を学んだ。趣味は動物園巡り。ライターとして、初心者にもわかりやすく、質のある情報を提供できるよう、日々奮闘中。

夏眠は暑さと乾燥対策のために行う

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夏眠とは、暑く乾燥する夏の時期に生物が活動を停止すること。簡単にいえば、冬眠の夏バージョンといったところです。冬眠は馴染みのある言葉でしたが、夏眠という言葉があったなんて驚きですね。

夏眠をする生物は、熱帯や乾燥地帯に住む魚類や爬虫類、両生類、昆虫類などがいます。哺乳類では一部の小型のネズミなど、意外と夏眠をする生物は多いんですね。

私たちも夏の暑い時間に活動すると脱水症状を引き起こしたり、熱中症になってしまったりしていますよね。熱帯や乾燥地帯に住む生物も、暑い時期に活動すると体力をかなり消耗してしまいます。そのため、暑いときに動き回るよりも、涼しい場所でおとなしく眠っているほうが効率的というわけですね。

夏眠と冬眠では目的が違う!

夏眠と冬眠ではその目的が異なります。「単に季節が違うだけで、どちらもただ眠っているだけなんじゃない?」と思う人もいるかもしれません。たしかにどちらも過酷な環境を耐え忍ぶためにとる行動ではありますが、冬は食料不足対策、夏は水分不足対策のためにそれぞれの方法をとるんですよ。

冬眠は食料の温存のため

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まずは冬眠をする動物とその理由を解説していきましょう。

冬眠をする動物にはクマやリス、コウモリ、ハムスターなどがいますね。これらの動物は冬の間、食料がなくなってしまうために冬眠をします。これらの動物は哺乳類であり、哺乳類の特徴として、恒温性という体温を一定に保つ働きがあります

しかし体温を一定に保つためには多くのエネルギーが必要です。そのエネルギーを確保するためには食料が必要なのですが、冬になるとエサとなる植物などは枯れてしまい、十分なエネルギーを確保できません。

そのため、冬の間は巣穴の中で眠り、余計なエネルギーを使わないようにしているのです。ちなみに冬眠中の動物には、体温を低く保つ仕組みも備わっているんですよ。クマの体温は通常37℃ほどあるのですが、冬眠中は30℃にまで体温を下げられるんです。こうすることでさらに恒温性のために使われるエネルギーを節約できるのですね。

夏眠は水分の温存のため

夏眠は水分の温存のため

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冬眠が冬の食料不足対策なのに対して、夏眠は暑さや乾燥によって起こる水分不足を防ぐために行われます。砂漠では夏の時期、1か月以上雨が降らない地域も。そうすると動物たちは飲むための水はもちろん、体内の水分までもが失われてしまいます。人間は体内の水分の10%以上がなくなると死にいたることも。また、皮膚が濡れている動物は水分がどんどん乾いてしまい、干からびて死んでしまいますよね。そうならないようにするためにも、夏眠は大変重要なのです。

夏眠する生き物をみていこう

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ここからは夏眠する生き物にはどんなものがいるのか、みていきましょう。

ハイギョ:尿を大量に蓄積

ハイギョはその名の通り、肺を持つ魚です。魚はふつうエラで呼吸をしますが、この魚は肺を持っているんですよ!昔の魚はもともと肺をもっていたそうですが、現在存在する魚の中でも肺をもつものは多くありません。そのためハイギョは生きた化石とも呼ばれています。

そんな珍しい魚ハイギョですが、夏の間、夏眠をする生物としても有名です。ハイギョは沼地や湿地帯に住んでおり、普段はエラで呼吸していますが、肺でも呼吸するために何度か水面に出てきます。

しかし乾季になると沼から水分がなくなり泥状になります。そうすると彼らは泥の中に隠れて自分の体液で繭を作り始めるんですよ。繭には空気が通るための穴が開いており、彼らはそこから酸素を取り込んで呼吸ができるのです。

またハイギョは夏眠中、尿をしません。尿を出すということは身体の水分を排出してしまうことにつながるためです。夏眠を終えるころの体内には通常の2倍以上もの量の尿素がたまっています。これは動物にとっては致命的な量。しかし無理をしてでも体内に水分を残しておかないと身体の水分を保てないのです。そして夏眠から目覚めるとたまっていた分の尿を一気に排出します。単に夏の間眠るだけのように思えますが、危険と隣り合わせで眠っていたのですね。

カエル:身体に膜をつくる

カエルと言えば、夏の道端で干からびて死んでいるのを見たことがある人もいるでしょう。カエルは水を飲まないかわりに皮膚から水を取り入れているため、カエルにとって乾燥は大変危険です。そんな彼らも夏になると夏眠をとる生物なんですよ。

例えば西アフリカガエル。このカエルはあえて太陽の光を浴びに行くという驚きの対策をするんです。彼らは乾季になると、まず背の高い植物を見つけそこに登ります。そして手足を皮膚の中にしまい込んだら体液で身体を覆い、日光浴を始めるんです。彼らの皮膚細胞には虹色素胞が含まれており、これが光を反射するため、太陽光からの熱吸収を防いでくれるという仕組みなんですよ。なんとも驚きの方法ですね。

\次のページで「ハリネズミ:心拍数を下げる」を解説!/

ハリネズミ:心拍数を下げる

最近はペットでも人気になってきているハリネズミ。主にペットとして飼われているヨツユビハリネズミはアフリカ大陸の赤道付近の乾燥地帯に住む種です。そのため夏眠する習性があるんですよ。

ペットで飼っているハリネズミでも、室温が30℃を超えると夏眠してしまうことがあります。動物は夏眠や冬眠をすると心拍数が下がり、眠っているのか死んでいるのかわからない状態になります。眠りから覚める時に問題なく心臓が動いてくれればよいのですが、時にはうまく回復せず、そのまま死んでしまう場合があります。そのためペットで飼っているハリネズミは絶対に夏眠や冬眠をさせないようにしましょう。これはハムスターでも同様です。

植物だって夏眠する?!

夏眠をするのは動物だけではありません。植物だって夏眠をするんですよ。地中海地方では夏に雨が少なくなるため、多くの植物が夏眠をするんです。日本でもフクジュソウヒガンバナなどが挙げられます。

普通、多くの植物は春に芽を出し、夏には強く降り注ぐ太陽をいっぱいに浴びて成長しますよね。しかし、夏眠をする植物は日光の争奪戦には参加せずに、夏に葉を枯らして栄養を蓄えます。そして他の植物が徐々に枯れていく秋ごろから花を咲かせ、たくさんの日光を独り占めするんですよ。身体いっぱいに太陽を浴びるための賢い戦略なんですね。

夏眠はただの夏バテじゃない!

ここまで読んでいただきありがとうございました。夏の間に生物が眠りにつく「夏眠」。冬眠は知っていても夏眠という言葉は今回の記事で初めて知ったという人もいたのではないでしょうか。一見、夏バテしてしまっているんじゃないかとも思われますが、実は生物が過酷な季節をのりこえるための工夫だったんですね。人間も夏眠できたらいいのにと思いますが、残念ながら人間にはその機能は備わっていません。暑い夏でも寒い冬でも仕事や勉強が嫌になってしまいますが、人間ならではの知恵と工夫でなんとか乗り切っていきましょうね。

画像使用元:いらすとや

" /> 3分でわかる夏眠!冬眠との違いや暑さや乾燥から身を守る工夫やとは?獣医学部卒ライターがわかりやすく解説! – Study-Z
理科環境と生物の反応生き物・植物生物

3分でわかる夏眠!冬眠との違いや暑さや乾燥から身を守る工夫やとは?獣医学部卒ライターがわかりやすく解説!

突然ですが、クマやヘビなどが寒い冬を乗り越えるために冬眠をするのは知っているな?しかし「夏眠」があることは知っているか?夏眠は生物が夏の厳しい暑さを乗り越えるためにとる行動です。夏眠をする動物の中には体液で膜を張って乾燥を防ぐなど、変わった方法をとるものもいる。しかし、冬眠と夏眠とでは目的や中身が少し違うんです。そんな夏眠について、今回は生物例を挙げながら、夏眠と冬眠の違いについて、学生時代、獣医学部で動物のことを勉強していたライターみんちが解説していきます。

ライター/みんち

学生時代、獣医学部で動物の知識を学んだ。趣味は動物園巡り。ライターとして、初心者にもわかりやすく、質のある情報を提供できるよう、日々奮闘中。

夏眠は暑さと乾燥対策のために行う

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夏眠とは、暑く乾燥する夏の時期に生物が活動を停止すること。簡単にいえば、冬眠の夏バージョンといったところです。冬眠は馴染みのある言葉でしたが、夏眠という言葉があったなんて驚きですね。

夏眠をする生物は、熱帯や乾燥地帯に住む魚類や爬虫類、両生類、昆虫類などがいます。哺乳類では一部の小型のネズミなど、意外と夏眠をする生物は多いんですね。

私たちも夏の暑い時間に活動すると脱水症状を引き起こしたり、熱中症になってしまったりしていますよね。熱帯や乾燥地帯に住む生物も、暑い時期に活動すると体力をかなり消耗してしまいます。そのため、暑いときに動き回るよりも、涼しい場所でおとなしく眠っているほうが効率的というわけですね。

夏眠と冬眠では目的が違う!

夏眠と冬眠ではその目的が異なります。「単に季節が違うだけで、どちらもただ眠っているだけなんじゃない?」と思う人もいるかもしれません。たしかにどちらも過酷な環境を耐え忍ぶためにとる行動ではありますが、冬は食料不足対策、夏は水分不足対策のためにそれぞれの方法をとるんですよ。

冬眠は食料の温存のため

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まずは冬眠をする動物とその理由を解説していきましょう。

冬眠をする動物にはクマやリス、コウモリ、ハムスターなどがいますね。これらの動物は冬の間、食料がなくなってしまうために冬眠をします。これらの動物は哺乳類であり、哺乳類の特徴として、恒温性という体温を一定に保つ働きがあります

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