バナジウムという元素の名前を聞いたことあるか?
「バナジウム天然水」が有名ですが、実はバナジウムは工業的にも使われている重要な元素です。
その用途は…「鉄鋼への添加」や「触媒」です。

今回はバナジウムの用途と特徴を化学に詳しいライターリックと一緒に解説していきます。

ライター/リック

高校生で化学にハマり、大学院までずっと化学を勉強してきた化学オタク。今は化学メーカーで働きながら化学の楽しさを発信する。

バナジウムって何?その特徴とは

バナジウムって何?その特徴とは

image by Study-Z編集部

まずは、バナジウムがどんな元素なのがをご紹介していきますね。バナジウムとは、原子番号23の元素で、元素記号はVです。見た目は灰色っぽい金属で、周期表で見てみると5族なので、「遷移元素」に当てはまります。

金属の中では柔らかいほうで、たたくと伸びやすいのが特徴ですね。融点は1917℃、沸点は3420℃といわれていますが、融点が1890℃や1915℃、沸点が3000℃や3350℃などの実験値もあるんですよ。

酸・アルカリ、水には反応しませんが、濃硝酸や濃硫酸、フッ酸には溶けます。用途は鋼を作るための製鋼添加材として使われることが多いですが、触媒としても重要な性質があるんです。詳しくは後程ご紹介していきますね!

バナジウムはここで産出されている

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ここからは、バナジウムの産出に注目してご紹介していきますね。バナジウムには「鉱石」としての姿と「ミネラル」としての姿があり、産出できる場所も変わってきます。まずは「鉱石」としてのバナジウムを見てみましょう。

バナジウム鉱石の主要生産国は中国・ロシア・南アフリカの3か国です。実はこの3か国だけで世界の生産量の90%以上を占めています。ちなみに、日本のバナジウム鉱石の1番の輸入相手国は中国で2018年は日本が輸入したバナジウム鉱石のうち、半分近くは中国から輸入したものだったんです!

「ミネラル」としてのバナジウムがどこで採れるのかは、後で詳しくご紹介しますね!

バナジウムの用途とは?

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バナジウムにはたくさんの用途があります。まずは、用途をまとめていきますね!

・ 製鋼添加材としてのバナジウム

・ 触媒としてのバナジウム

・ ミネラル成分としてのバナジウム

\次のページで「製鋼添加材としてのバナジウム」を解説!/

製鋼添加材としてのバナジウム

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工業的に使われているバナジウムの8割以上が「製鋼添加材」として使われています。まず、鋼とは、鉄に炭素やニッケル・クロムなどを加えた合金のことです。純粋な鉄に比べて強靭で加工性に優れているのが特徴で、生産量もとても多く、世界の金属材料生産量の90%以上は鋼ともいわれています。

よく耳にするステンレスも鋼の一種。ステンレスは鉄に一定量以上のクロムと炭素を混ぜた鋼で、クロムが表面で不働態被膜を形成するため、内側の金属が保護されてさびにくいのが特徴です。

食器や調理器具、医療機器や自動車部品など、様々な場面で使われています。そしてステンレスよりもさらにさびにくいのが、「モリブデンバナジウム鋼」です。鋼にバナジウムとモリブデンを添加することで、鋼の強度と耐摩耗性を高めてくれます。

通常のステンレスよりも丈夫で切れ味が持続しやすい特徴があり、包丁や医療用メスに使われているんですよ。

触媒としてのバナジウム

1900年代前半にバナジウムの触媒作用が発見されました。それ以来、バナジウムを使った触媒反応は広く利用されるようになっていったんです。教科書で出てくるのは「接触法」と「ベンゼンからマレイン酸、ナフタレンからフタル酸を作る反応」ですね。

接触法は濃硫酸を製造する工業的な方法で、二酸化硫黄を酸化して三酸化硫黄を作るとき「五酸化二バナジウム」を触媒として使います。また、ベンゼン環を開環するときにも五酸化二バナジウムを触媒として使うんです!

ミネラルとしてのバナジウム

バナジウム天然水って、聞いたことないですか?先ほどまでは金属としてのバナジウムを紹介してきましたが、バナジウムにはもう一つが顔があります。

それが、「ミネラル」としてのバナジウムです。生体内の酵素にバナジウムが使われている例が多く発見されていて、生体の働きにバナジウムが重要であると考えられています。

そして…2000年代に入り、バナジウムを含有したミネラルウォーターが販売されるようになり、健康食品として注目されるようになっていきました。

バナジウム天然水って…なに?

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ミネラル成分としてのバナジウムは海や湖、河川など水源地の土や植物の中にある成分です。

バナジウムが溶け込んでいる水をバナジウム天然水といいうんですが…バナジウムを含有した水はどこでも採れるわけではありません。市販されているバナジウム天然水の多くは、富士山麓で採水されることが多いです。

人の生命活動に必要なミネラル成分は5大栄養素の一つで、生活の中で必ず接種しないといけません。ミネラルの中でもナトリウム、カリウム、マグネシウムなどは健康維持に必要な「必須ミネラル」に分類されていますが、バナジウムはまだ研究結果が不十分なので、「必須ミネラル」には分類されていません。

バナジウム天然水の効果とは

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ここからは、バナジウム天然水を摂取することで期待できる効果をご紹介していきますね。「血糖値を低下させる効果」や「血管の調子を整えて血液の改善効果」「便秘の改善効果」などが期待できます。

ただし、これらは人に対して効果のある研究結果がまだ不十分なので、あくまでも効果が期待できるかも…?くらいに留めておいてください。

\次のページで「バナジウムってとりすぎるとまずい?」を解説!/

バナジウムってとりすぎるとまずい?

健康面でも美容面でも効果が期待できるバナジウムですが、摂取量の上限があるのか…少し気になりませんか?「必須ミネラル」に分類されていない日本では、摂取量の上限は明確な基準はありません。ただ、アメリカの食事摂取基準では、「1日当たり1.8mg以下」と設定されています。

1.8mgって…少ないと感じるかもしれませんが、バナジウム天然水を2リットル程度飲んでも大きく下回るので、摂取量の上限を超えてしまう心配はしなくて大丈夫です。

ただ、バナジウムは水以外に食品にも含まれています。その食品はひじき・昆布などの「海藻類」やアサリ・しじみなどの「貝類」です。バナジウム水と一緒に食べるときは、ちょっと注意が必要かもしれませんね…それでも、その食品を食べすぎない限り、1.8mgはほぼ超えません。

水には「軟水」と「硬水」があります。バナジウムなどのミネラル成分を多く含む水は「硬水」ですが、硬水は飲みすぎたり、身体に合っていないと「下痢」や「吐き気」など逆に体調を崩してしまうこともあるので、注意が必要です。

工業用にも人体にも重要な「バナジウム」をチェック

今回は、バナジウムの「特徴」と「どこで使われているか」をご紹介しました。実は工業的にも、人体にも、重要な元素でいろんなところで使われているんです。特に「接触法」で使われるバナジウムはよくテストでも出題されます。

また、バナジウムが人体にどんな効果があるのか、これからもっと研究が進んでいくと思いますから、ぜひチェックしてみてください!

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化学理科

バナジウムとは?特徴や効果・食品や水との関係や副作用までを理系ライターがわかりやすく解説!

バナジウムという元素の名前を聞いたことあるか?
「バナジウム天然水」が有名ですが、実はバナジウムは工業的にも使われている重要な元素です。
その用途は…「鉄鋼への添加」や「触媒」です。

今回はバナジウムの用途と特徴を化学に詳しいライターリックと一緒に解説していきます。

ライター/リック

高校生で化学にハマり、大学院までずっと化学を勉強してきた化学オタク。今は化学メーカーで働きながら化学の楽しさを発信する。

バナジウムって何?その特徴とは

バナジウムって何?その特徴とは

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まずは、バナジウムがどんな元素なのがをご紹介していきますね。バナジウムとは、原子番号23の元素で、元素記号はVです。見た目は灰色っぽい金属で、周期表で見てみると5族なので、「遷移元素」に当てはまります。

金属の中では柔らかいほうで、たたくと伸びやすいのが特徴ですね。融点は1917℃、沸点は3420℃といわれていますが、融点が1890℃や1915℃、沸点が3000℃や3350℃などの実験値もあるんですよ。

酸・アルカリ、水には反応しませんが、濃硝酸や濃硫酸、フッ酸には溶けます。用途は鋼を作るための製鋼添加材として使われることが多いですが、触媒としても重要な性質があるんです。詳しくは後程ご紹介していきますね!

バナジウムはここで産出されている

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ここからは、バナジウムの産出に注目してご紹介していきますね。バナジウムには「鉱石」としての姿と「ミネラル」としての姿があり、産出できる場所も変わってきます。まずは「鉱石」としてのバナジウムを見てみましょう。

バナジウム鉱石の主要生産国は中国・ロシア・南アフリカの3か国です。実はこの3か国だけで世界の生産量の90%以上を占めています。ちなみに、日本のバナジウム鉱石の1番の輸入相手国は中国で2018年は日本が輸入したバナジウム鉱石のうち、半分近くは中国から輸入したものだったんです!

「ミネラル」としてのバナジウムがどこで採れるのかは、後で詳しくご紹介しますね!

バナジウムの用途とは?

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バナジウムにはたくさんの用途があります。まずは、用途をまとめていきますね!

・ 製鋼添加材としてのバナジウム

・ 触媒としてのバナジウム

・ ミネラル成分としてのバナジウム

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