平安時代日本史鎌倉時代

庶民文学の最高峰「宇治拾遺物語」の由来・内容・評価について元大学教員が5分で解説

『宇治拾遺物語』の多様な内容

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『宇治拾遺物語』は、197の物語を15巻に収めた説話集。説話というのは、神話・伝説・民話・童話などの総称です。『宇治拾遺物語』のうち、80余りの話は『今昔物語』と同じ。また、『江談抄』『打聞抄』『古事談』『十訓抄』など同じころに成立した説話集と類似の作品も多く含まれていて、オリジナルな説話は少ないことが特徴です。

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『宇治拾遺物語』の国際性と多様性

『宇治拾遺物語』には、本朝(日本)・天竺(インド)・震旦(中国)の三国を舞台とした、さまざまな昔話や伝説などが登場。日本で、グローバルな文化が熟成していたことを感じさせます。古来、大陸文化はさまざまな経路で日本に伝来。それらが日本風に変化したお話しも数多くあります。

内容を大きく分けると次のように分類。ひとつめは仏教説話。信仰心を起こすにいたる話・死ぬ時の不思議な体験・神仏の御利益の話・僧にまつわる言い伝えなどです。ふたつめは世俗説話。こっけいな話・芸能にまつわる話・商人の話・盗人の話・恋愛談・鳥獣談などが該当します。三つ目は民間伝承。鬼にコブを取られた話・雀の恩返しなど。絵本に登場する昔話もたくさんあります。

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仏教説話といっても教訓的なものではなし。むしろ、猥雑、こっけい、ユーモラス、エロティックな内容が多く含まれています。当時の人々が信仰心に縛られることなく、自由に人間を描いていることが分かりますね。そういう意味では、お説教的な話の多い中世の説話集では異色の存在と言えそうです。ちなみに、お釈迦様にまつわる話や孔子が盗賊にやり込められる話もあるんですよ。日本にとってインドと中国ははるかな憧れの国だったのでしょう。

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『宇治拾遺物語』の生き生きとした語り口

『宇治拾遺物語』では、当時の人々の暮らし、今と変わらない人間の本質、歓びや悲しみ、醜さなどが生き生きと描かれています。笑いやおかしさをともなう話もたくさん収録。当時の人々のお喋りが蘇ってくるような内容です。

構成は、『今昔物語集』のような統一性や配列の工夫がなく雑であると言われる一方、作品の並べ方は緻密に計算されていると言われることも。愚かな人間と人間が巻き起こす事件を、寛大で温かい視点で描写されているという評価は一致しています。

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文体は和文体に漢語・俗語を使用。同じ言葉や類語を繰り返すと言う形式で、全編を通じて会話文が多く、軽妙な語り口であることが特徴だ。また比叡山の横川の僧都(そうず)がひんぱんに登場。比叡山の僧都に関わりのある人が編纂に関わった可能性もある。

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『宇治拾遺物語』のメッセージ性

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内容的には、平安時代末期に成立した『今昔物語集』を継ぐもの。中世説話集の先駆的な傑作とされています。また、文体的にも新しい文学の出現と高く評価されてきました。仏教、神道、儒教に基づく教訓的な要素を排して、人間の弱さや醜さなどを軽妙に語っている点も評価ポイント。その鋭い風刺性は、現代作家にも大きな影響を与えてきました。

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hikosuke