今回は「鯨類」をキーワードに学んでいこう。

クジラの仲間にはどんな特徴があるのでしょうか?分類学上の「鯨類」の立ち位置や、鯨類にふくまれる具体的な生物についてみていこうじゃないか。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおう。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

鯨類は”クジラのなかま”

鯨類(げいるい、くじらるい)とは、名前の通りクジラのなかまが含まれている生物のグループです。

生物の分類学上の鯨類については、すこし経緯を説明しなくてはいけません。以前、クジラのなかまは「ほ乳類(ほ乳綱)のクジラ目に属する生物」といえました。

ところが近年、クジラのなかまとウシのなかま(ウシ目または偶蹄目)の近縁性が指摘されるようになり、分類群の見直しが行われたのです。

その当たりの話は、この記事の最後にまたふれましょう。

いずれにせよ分類は見直され、それまでのクジラ目とウシ目を一つの目にまとめた鯨偶蹄目(げいぐうていもく)というグループを考えるのが主流になりました。

とはいえ、これまでのクジラ目というグループは直観的にもわかりやすいので、そのままの名称で使い続けている人もいます。

この記事では、分類学上の位置づけはあまり気にせず、一般的な「鯨類」「クジラのなかま」を紹介していくことにしましょう。

鯨類の特徴は?

クジラといえばその姿かたちが思い浮かぶ人がほとんどだと思いますが、改めて鯨類の特徴をピックアップしていきましょう。

水中に住む哺乳類!

鯨類は、私たちと同じほ乳類。ほ乳類のほとんどは陸上に生息していますが、鯨類は水中に生息する動物です。両生類や魚類ではありませんので、鰓(えら)呼吸ではなく、肺で呼吸します。

\次のページで「泳ぎに適した姿」を解説!/

そうですね。ただ、鯨類の中には淡水に生息しているものいますから、覚えておきましょう。

鯨類は進化の歴史の中で、一度陸上に進出したあと、水中に戻っていった生物だと考えられています。

泳ぎに適した姿

水中での生活を選んだ鯨類の祖先は、その形態を環境に適した形に変化させていきました。

前脚はヒレに、尾は尾ビレになり、体毛は消失。鼻は頭頂部に位置するようになり、水中にいても頭の上だけ水面に出せば呼吸ができるようになったのです。頭頂部に位置するようになった鼻は噴気孔(ふんきこう)といわれます。

生物の進化には、本当にびっくりさせられますよね。

わたしたち人間とは、生態も姿も大きく異なる進化を遂げた生き物ですが、骨格を見ると共通点がみられます。

イルカも鯨類

さて、具体的な鯨類の紹介に入る前に、イルカの話もしておきましょう。

イルカは、クジラと同じくらいよく知られた水中に生息する哺乳類ですよね。じつは、このイルカも鯨類のなかまなのです。

image by iStockphoto

クジラとイルカって、姿がよく似ていると思いませんか?じつは、「分類学上はクジラとイルカの違いは明確ではない」といわれるんです。

\次のページで「現生の鯨類は大きく2つのグループに分けられる」を解説!/

一般的な認識に基づけば、「鯨類の中でも大きいものがクジラ、小さめのものがイルカ」といわれますね。

のちほど詳しく述べますが、現生の鯨類はハクジラ類ヒゲクジラ類に大別されます。ハクジラ類の中でも、体長がおよそ4mより小さいものをイルカとよぶことが多いようです。

現生の鯨類は大きく2つのグループに分けられる

では、鯨類に含まれる生物について、もう少し詳しく見ていきましょう。

現生(=現在の地球上に生息している)の鯨類は、大きく2つのグループに分けることができます。ハクジラ類とヒゲクジラ類です。

”歯”か”ひげ”か?

”歯”か”ひげ”か?

image by Study-Z編集部

ハクジラ類とヒゲクジラ類を分けるわかりやすい特徴が、口にあります。

ハクジラ類は口内に鋭い””をもつ鯨類です。魚やイカなどを獲物として食べるものが多いですね。

一方、ヒゲクジラ類は髭板(ひげばん)とよばれる、櫛(くし)のような構造をもちます。これは、ヒゲクジラ類の主食がオキアミやプランクトンなどの小さな生物であるためです。

小さなプランクトンなどを食べるために、頑丈な歯があってもあまり意味がありませんよね。ヒゲクジラ類は髭板で小さな生物をこしとって食べているのです。

ハクジラ類

歯をもつ鯨類のハクジラ類。

大きなものではマッコウクジラがいます。オスは20m近く、メスは12~14mほどになる種で、大きな頭が特徴的です。

イルカのような小型の種が比較的多いハクジラ類の中では大きな方といえます。世界の海のあちこちで見られますが、日本の沿岸にも姿を現すことがあるんですよ。

image by iStockphoto

ハクジラ類に多いのが小型の種、つまりイルカのなかまです。ハンドウイルカ、カマイルカ、ネズミイルカ…ちょっと変わったところでは、シロイルカ(ベルーガ)やスナメリなどもいますね。カワイルカは淡水に生息します。

そうそう、”4m”より大きな個体が多いですが、イッカクシャチもハクジラ類の仲間です。

\次のページで「ヒゲクジラ類」を解説!/

ヒゲクジラ類

ヒゲクジラ類はハクジラ類より種数が少なく、現在みられるのは世界でもわずか14種といわれています。絶滅の危機に瀕しているものいるのが現状です。

image by iStockphoto

進化が生み出した素晴らしい生き物たちですから、なんとか海を守っていきたいですよね。

ヒゲクジラ類に含まれるものには、シロナガスクジラミンククジラ、ザトウクジラ、コクジラ、セミクジラなどがいます。大型のものが多いです。

「クジラ目」から「鯨偶蹄目」へ

はじめにも少し触れましたが、「昔からクジラ目とよばれてきた分類群は、偶蹄目(ウシ目)とまとめて鯨偶蹄目にした方がよい」という考え方が、近年主流になってきました。

これは、DNAなどの分子レベルでの分析を実施した結果などに基づいています。また、化石の研究からも、偶蹄目との関係が言及されるようになってきているのです。

image by iStockphoto

それまで偶蹄目(ウシ目)として独立していた中では、カバの仲間が鯨類に近い、といわれているんです。カバも水中で過ごす時間の長い哺乳類ですが、クジラの親戚だなんて…生物の進化というのは本当に面白いと思いませんか?

海に囲まれた日本だからこそ、身近な鯨類。

日本は海に囲まれた国。古来より、捕鯨など鯨類を利用する文化が根付いてきた海洋国であり、今でも調査研究が頻繁に行われています。

また、水族館では飼育されているイルカを間近で見ることができますし、最近はホエールウォッチングのように、自然界の鯨類を身近に感じられる機会が提供されることも増えました。

この記事の内容を参考に、ぜひ鯨類の観察にチャレンジしてみてください。

イラスト使用元:いらすとや

" /> クジラもイルカも「鯨類」のなかま!特徴や種類を学ぼう!現役講師がわかりやすく解説します – Study-Z
理科生物生物の分類・進化

クジラもイルカも「鯨類」のなかま!特徴や種類を学ぼう!現役講師がわかりやすく解説します

今回は「鯨類」をキーワードに学んでいこう。

クジラの仲間にはどんな特徴があるのでしょうか?分類学上の「鯨類」の立ち位置や、鯨類にふくまれる具体的な生物についてみていこうじゃないか。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらおう。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

鯨類は”クジラのなかま”

鯨類(げいるい、くじらるい)とは、名前の通りクジラのなかまが含まれている生物のグループです。

生物の分類学上の鯨類については、すこし経緯を説明しなくてはいけません。以前、クジラのなかまは「ほ乳類(ほ乳綱)のクジラ目に属する生物」といえました。

ところが近年、クジラのなかまとウシのなかま(ウシ目または偶蹄目)の近縁性が指摘されるようになり、分類群の見直しが行われたのです。

その当たりの話は、この記事の最後にまたふれましょう。

いずれにせよ分類は見直され、それまでのクジラ目とウシ目を一つの目にまとめた鯨偶蹄目(げいぐうていもく)というグループを考えるのが主流になりました。

とはいえ、これまでのクジラ目というグループは直観的にもわかりやすいので、そのままの名称で使い続けている人もいます。

この記事では、分類学上の位置づけはあまり気にせず、一般的な「鯨類」「クジラのなかま」を紹介していくことにしましょう。

鯨類の特徴は?

クジラといえばその姿かたちが思い浮かぶ人がほとんどだと思いますが、改めて鯨類の特徴をピックアップしていきましょう。

水中に住む哺乳類!

鯨類は、私たちと同じほ乳類。ほ乳類のほとんどは陸上に生息していますが、鯨類は水中に生息する動物です。両生類や魚類ではありませんので、鰓(えら)呼吸ではなく、肺で呼吸します。

\次のページで「泳ぎに適した姿」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: