今日は「純粋培養」について話していく。純粋培養とは、ネットでコトバンクなどで意味を調べると、たくさん意味が載っているが、細菌やカビなどを培養する時の話です。近代の細菌学の発展に貢献した偉人に、ルイ・パスツールやこのことについて、細菌の培養実験に詳しいライターmimosa(ミモザ)と一緒に解説していきます。

ライター/mimosa

もともと文系出身で、独学で生物学、生化学を勉強し、現在医学系研究所の研究アシスタントとして理系の世界へ飛び込んだ。理科が苦手な方へも興味を持ってもらうべくわかりやすい説明を心掛けている。

微生物とは

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細菌は、目には見えない極微小の生物です。細菌(バクテリア)の他に真菌(カビの仲間)、寄生虫、アメーバなどがいますよ。まずは、微生物はどのようなものか説明しますね。一口に微生物と言っても、たくさんの種類に細分化されていますよ。その中でも今回は、原核生物について説明しますね。

原核生物とは

原核生物とは

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原核生物とは、単細胞生物であり、細胞内に、細胞核がない生物のことを言いますよ。原核生物と対の関係にあるのは真核生物ですね。真核生物は細胞内に細胞核がありますよ。私たちヒトも真核生物です。

図のように鞭毛(べんもう)がついているものは、それを船のスクリューのようにして泳ぐことができるのですよ。

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微生物はどこからやってくるのか

微生物はどこからやってくるのでしょうか。

きれいに掃除していても、しらないうちにカビが生えていたりしますよね。食中毒を引き起こす病原菌(黄色ブドウ球菌、サルモネラ菌など)も一体どこから微生物は発生しているのでしょうか。

微生物の自然発生説

微生物ついて研究しようとする学問は今からおよそ300年前に確立しました。オランダのレーウェンフックがはじめて顕微鏡を作成し、小さなものを観察することができるようになったことがきっかけです。それまでは、あらゆる生物が親からではなく、自然と個体が発生するという自然発生説が支持されていましたよ。ミツバチやホタルは草の露から、タコやイカなど海洋生物は、海底から生まれると信じられていたのですよ。これは、古代ローマのアリストテレスの時代から16世紀くらいまで普通に信じられていましたよ。

自然発生説の否定

自然発生説の否定

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1861年に、フランスのパスツールによって、これまでの生物の自然発生説を否定する実験がなされました。使用した器具は、白鳥の首のようなかたちの口の、スワンネック型のフラスコと肉汁を使った実験でしたよ。

実験内容は、丸底フラスコの口をアルコールランプで加熱して、図のようにフラスコの口に溜まった液体がフラスコ内に逆流したり、フラスコ外の空気に触れないような構造のものを用いました。

パスツールが行った実験の概要

上記で説明した、パスツールによるスワンネック型のフラスコを用いた実験の内容について紹介しますね。

まず、スワンネック型のフラスコ内に、微生物が好むものである(微生物がいる可能性あり)肉汁を入れました。それを加熱し、肉汁中の微生物を滅菌します。その際、水蒸気が冷やされ水滴となって、細長い首の部分に溜まるので、フラスコ内と外を空気は出入りできますが、微生物の行き来はできないようになりますよ。このような状態でフラスコを放置しても、フラスコ内に微生物の発生は認められなかったのです。

この実験結果により、微生物の自然発生説が否定されましたよ。

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細菌の培養

細菌の培養

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純粋培養についてお話していきますが、今回は、細菌の培養についてお話していきますね。

細菌の種類

細菌は、乳酸菌や大腸菌などがこれに当たりますよ。これらの細菌で、形状、どのような環境を好むのかで違います。酸素があることろで育ち生存可能なのは、好気性細菌。好気性菌であれば、写真のようにペトリ皿(シャーレともいいます。)などで寒天培地上で培養可能です。

好気性細菌とは逆で、酸素のあるところでは死滅してしまう、偏性嫌気性菌と言うタイプの菌がいますが、こちらは寒天培地上では培養することができませんよ。

分離培養と純粋培養

分離培養と純粋培養

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細菌の培養方法で分離培養という方法がありますここでは、上で述べた好気性細菌の場合について説明しますよ。分離培養とは、様々な種類の細菌の中で、単一の種類の微生物(ここでは好気性細菌)を分離し培養することです。

まず、環境中もしくは患者や動物などの体液、糞便を採取し、寒天培地上に白金耳(はっきんじ)などの道具を使って表面に塗ります。(播種)37℃くらいの環境に半日から一日置くと、寒天状にいろいろな形の丸いものが生えていることに気づくでしょう。これをコロニー(集落)と言いますよ。

細菌の種類によって、色や形が違うので、培養したい細菌のコロニーのみまた白金耳などで拾って、別の寒天培地で培養します。(液体培地の場合もあり。)

これで、単一の細菌を分離培養することができました。そして、分離した単一の細菌を、他の微生物が混入する(コンタミネーション)ことなく培養することを純粋培養と言いますよ。

ロベルト・コッホ

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ロベルト・コッホ(1843年-1910年)は、ルイ・パスツールと共に近代細菌学の開祖とされていますよ。写真の建物は、ドイツのベルリンにある、コッホ研究所ですよ。コッホの功績は実に偉大!コッホは、ドイツの医師であり、細菌学者です。また、恐れられていた伝染病の炭疽(たんそ)菌、結核菌。コレラ菌を最初に発見した人です。

細菌の純粋培養のヒント

培養したい細菌だけを培養するのは至難の業。目には見えないいろいろない種類の細菌がいろいろなところに存在しているからです。よって、他の細菌も混入してしまうコンタミネーションも起こりやすくなりますよ。特定の微生物だけを培養する方法の確立が大切であるとコッホは考えました。

固形物の表面に分離した微生物がたくさん増殖すると、目に見えるほどの塊ができます。これをコロニー(集落)といいますよ。そして、コロニーは一つの微生物から成り立っていることに注目しました。

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細菌の純粋培養法の確立

細菌が育つように調整された液体培地に固化剤として、コッホはゼラチンを用いました。ゼラチンで固めた固形の培地上で特定の微生物のみを純粋に分離して培養する「純粋培養法」を確立しましたよ。

後に、ヘッセという、コッホの共同研究者が固化剤としてゼラチンではなく、寒天を用いています。固化剤に寒天を用いて寒天培地上で培養するのは、現在でもこの方法はスタンダードになっていますよ。

微生物の純粋培養がバイオサイエンスの発展に貢献

古代の微生物学は、アリストテレスの時代から始まり、16世紀まで微生物は親からなどでなく、自然の中から生まれてくるのものであるという自然発生説が信じられていました。肉眼では観察できない極小の生物だからこそ、得体が知れず、研究も進まなかったのです。

近代微生物学の発展に貢献したのが、1861年のパスツールによる実験でした。微生物が行き来することのできない環境では、微生物が発生することはありませんでした。このことにより、微生物の自然発生説が否定されましたよ。

また、コッホやヘッセによって、培養したい細菌だけ培養する純粋培養法を確立したのでした。

たくさんの科学者たちの研究によって、私たちの暮らしを豊かにする細菌培養を応用したバイオサイエンスがもたらされたのですね。

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理科生物細胞・生殖・遺伝

菌やウイルスはどこから生まれてくる?菌の純粋培養とは?について医学系研究アシスタントがわかりやすく解説

細菌の純粋培養法の確立

細菌が育つように調整された液体培地に固化剤として、コッホはゼラチンを用いました。ゼラチンで固めた固形の培地上で特定の微生物のみを純粋に分離して培養する「純粋培養法」を確立しましたよ。

後に、ヘッセという、コッホの共同研究者が固化剤としてゼラチンではなく、寒天を用いています。固化剤に寒天を用いて寒天培地上で培養するのは、現在でもこの方法はスタンダードになっていますよ。

微生物の純粋培養がバイオサイエンスの発展に貢献

古代の微生物学は、アリストテレスの時代から始まり、16世紀まで微生物は親からなどでなく、自然の中から生まれてくるのものであるという自然発生説が信じられていました。肉眼では観察できない極小の生物だからこそ、得体が知れず、研究も進まなかったのです。

近代微生物学の発展に貢献したのが、1861年のパスツールによる実験でした。微生物が行き来することのできない環境では、微生物が発生することはありませんでした。このことにより、微生物の自然発生説が否定されましたよ。

また、コッホやヘッセによって、培養したい細菌だけ培養する純粋培養法を確立したのでした。

たくさんの科学者たちの研究によって、私たちの暮らしを豊かにする細菌培養を応用したバイオサイエンスがもたらされたのですね。

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