今回のテーマはホタルがなぜ光るのかについて学習していこう。
ホタルは夏の川辺を照らす幻想的な存在ですね。このホタルはいったい何のために光っているのでしょうか。どのような仕組みで光っているのかも含めてこれを機にホタルがなぜ光るのかについて、他の光る生物も含めて学んで行こうじゃないか。
大学で生物を学び、現在は食品メーカーの研究員であるライター、ハナイグチに解説してもらおう。

ライター/ハナイグチ

大学で生物学を学び、現在は食品メーカーの研究員として勤務している。

サプリメントの広告を見るとついつい有効成分の含有量や作用機序を調べてしまう。

ホタルは何のために光るの?

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幻想的なホタルの光。自然のイルミネーションなんていわれたりもします。ホタルはいったいなんのために光っているのでしょうか。

ホタルが生まれてから大人になるまでの生活環も含め、ホタルが光る理由について解説したいと思います。

ホタルの生活環

ホタルと一口に言っても実はホタルは約2000種類も存在します。こんなにたくさんいるって知ってましたか?そのうち日本に生息しているのは50種程度、さらにその中で光るホタルは20種程度です。すべてのホタルが光るわけではなかったんですね。

日本の光るホタルはゲンジボタルヘイケボタルが有名。これは源氏と平家の名前からとったと言われているんです。ホタルの種類によって生活環は異なりますので、ここでは代表としてゲンジボタルの生活環について解説したいと思います。

卵として生まれるのは7月中旬頃。生まれてから次の年の4月の中旬頃まで川の中で幼虫として過ごします。1年の殆んどを水中で過ごすことになるんですね。それから川沿いの土の中にもぐり6月中旬ごろまで蛹として過ごします。そしていよいよ成虫となって飛び立ち、パートナーを探して産卵するのです。成虫となってからの寿命は1週間程度と言われていますので儚い命ですよね。

理由①求愛のため

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いよいよホタルは何のために光っているのかという問いに答えてきましょう。ホタルが光るのは主に求愛のためです。オスは強い光でメスにアピールしているんですね。光り方のパターンは種によって異なると言われていて、ゲンジボタルは2~4秒に1回光るのに対してヘイケボタルは0.5~1秒に一回光ります。このように光り方のパターンは種ごとのアイデンティティなのです。オスしかひからないのかというとそうではありません。メスも光るのですが、オスが一斉に同じタイミングで点滅するのに対して、メスはすこしズレて点滅するのだそう。だから異性をみつけやすいのです。一斉に点滅するなんてすごいですよね。リズム音痴なオスのホタルとかいないんでしょうか。

さらに不思議なことに、同じ種であっても地域によってテンポが異なるケースがあるようです。

ゲンジボタルは西日本の場合は2秒に1回点滅、東日本では4秒に1回点滅するのだそう。人間もホタルも西日本の方がせかせかしているんでしょうか…。

\次のページで「理由②警戒のため」を解説!/

理由②警戒のため

ホタルは求愛中の個体だけでなく、産卵を終えたメスやサナギや幼虫、卵までもが発光します。実はこの時期の発光の役割というのはよくわかっていません。

一説には警戒のために光っているのではないかと考えられています。

ホタルはどうやって光るの?

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ホタルは求愛や警戒のために光るということがわかりましたね。ではホタルはいったいどうやって光っているのでしょうか?

ここではホタルが光る仕組みを解説していきたいと思います。

ルシフェリンとルシフェラーゼによって発光

ルシフェリンとルシフェラーゼによって発光

image by Study-Z編集部

ホタルの光はルシフェリンという物質がルシフェラーゼという酵素によって反応することで起きる発光反応です。これをL-L反応と呼びます。

ルシフェラーゼやルシフェリンというのは総称で生物によって様々な種類が存在するんですよ。この中で、ホタルがもっているのはホタルルシフェリン、ホタルルシフェラーゼです。

それぞれのルシフェリン、ルシフェラーゼによって微妙に反応は異なります。基本的にはルシフェリンがルシフェラーゼと酸素と結合することによって高エネルギー状態となり、そこから低エネルギー状態に変化する際に発光反応としてエネルギーを放出する、というのがL-L反応による基本的な発光メカニズムです。

昔はもっといた?ホタルが減った理由

昔は今よりもたくさんのホタルがいたと言われています。ホタルが減った理由は人間による環境破壊です。ホタルは環境破壊の影響を受けやすいのですがそれは何故だと思いますか?

\次のページで「実は結構いる!光る生物」を解説!/

ホタルの生活環として最初は水、次は土、最後は空中を飛ぶという説明をしましたよね?そのどこか1つでも汚染されてしまうとホタルは生きていけないのです。だからホタルは環境破壊の影響を受けやすいと言えます。

また、ホタルは強い光を受けると光ることができなくなってしまうそうです。なので、都会の明るい環境では光ることができず、オスとメスのコミュニケーションが阻害されてしまいます。

こういった理由で、昔よりもホタルの数が減少しているのです。

実は結構いる!光る生物

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ホタル以外にも実は光る生物はたくさんいます。そのなかからいくつか紹介したいと思います。

1.ウミホタル

一つ目はウミホタルです。海にすんでいる小さな生物で、カニやエビ、ミジンコの仲間。大きさは3ミリほどで刺激を受けると発光します。夜にウミホタルがいる海に飛び込むとあたり一面が一斉に光り輝きとっても美しい光景が広がるんですよ。

ただ、飛び込んだ本人よりも岸から眺めている人の方が綺麗な景色を堪能できるというところが何とも言えないところですね。

このウミホタルの発光もルシフェリンとルシフェラーゼによるものです。

2.ヒカリゴケ

ヒカリゴケは高地の倒木のカゲなどに生えています。美しいエメラルドグリーンに光って見えるのですが、これはルシフェリンとルシフェラーゼの反応ではありません。

細胞が光を集めやすいレンズの様な構造になっていて、葉の葉緑体に光が反射することで光って見えるのです。これは日影で生きていくヒカリゴケが効率よく光を取り入れるための生きる知恵。

\次のページで「3.オワンクラゲ」を解説!/

3.オワンクラゲ

最後はオワンクラゲ。オワンクラゲが光る仕組みは少し複雑なので細かい説明は省きますが、重要なのは『緑色蛍光タンパク質(GFP:Green Fluorescent Protein)』が関与しているという点です。下村脩氏(米ボストン大学医学校名誉教授)が発見し、ノーベル賞を受賞したことで有名ですね。このGFPは生物系の研究分野において大変有用なタンパク質で、GFPを生物の細胞に組み込むことで生きたまま生体反応を観察することができました。これによって研究は飛躍的な発展を遂げたため、ノーベル賞を受賞したんですね。

ホタルが光るのはプロポーズのため!

ホタルが光る主な理由は繁殖期にオスとメスがコミュニケーションをとり、パートナーとなって子孫をのこすためです。このように生物において「すごく派手」とか「すごく特徴的な形をしている」などユニークな特徴は異性から好かれやすいなどの繁殖目的であることがとても多いんですよ。そのくらい生物にとって子孫を残すというのは重要なことなんですね。これが人間に置き換わると必ずしも子供が必要だという価値観はありませんが、モテたいという欲求があるのが至極当たり前の感情のようです。

(出展:いらすとや)

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理科環境と生物の反応生物

ホタルはなぜ光るの?その理由やメカニズム、他にも光る生物がいる?理系研究員がわかりやすく解説

今回のテーマはホタルがなぜ光るのかについて学習していこう。
ホタルは夏の川辺を照らす幻想的な存在ですね。このホタルはいったい何のために光っているのでしょうか。どのような仕組みで光っているのかも含めてこれを機にホタルがなぜ光るのかについて、他の光る生物も含めて学んで行こうじゃないか。
大学で生物を学び、現在は食品メーカーの研究員であるライター、ハナイグチに解説してもらおう。

ライター/ハナイグチ

大学で生物学を学び、現在は食品メーカーの研究員として勤務している。

サプリメントの広告を見るとついつい有効成分の含有量や作用機序を調べてしまう。

ホタルは何のために光るの?

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幻想的なホタルの光。自然のイルミネーションなんていわれたりもします。ホタルはいったいなんのために光っているのでしょうか。

ホタルが生まれてから大人になるまでの生活環も含め、ホタルが光る理由について解説したいと思います。

ホタルの生活環

ホタルと一口に言っても実はホタルは約2000種類も存在します。こんなにたくさんいるって知ってましたか?そのうち日本に生息しているのは50種程度、さらにその中で光るホタルは20種程度です。すべてのホタルが光るわけではなかったんですね。

日本の光るホタルはゲンジボタルヘイケボタルが有名。これは源氏と平家の名前からとったと言われているんです。ホタルの種類によって生活環は異なりますので、ここでは代表としてゲンジボタルの生活環について解説したいと思います。

卵として生まれるのは7月中旬頃。生まれてから次の年の4月の中旬頃まで川の中で幼虫として過ごします。1年の殆んどを水中で過ごすことになるんですね。それから川沿いの土の中にもぐり6月中旬ごろまで蛹として過ごします。そしていよいよ成虫となって飛び立ち、パートナーを探して産卵するのです。成虫となってからの寿命は1週間程度と言われていますので儚い命ですよね。

理由①求愛のため

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いよいよホタルは何のために光っているのかという問いに答えてきましょう。ホタルが光るのは主に求愛のためです。オスは強い光でメスにアピールしているんですね。光り方のパターンは種によって異なると言われていて、ゲンジボタルは2~4秒に1回光るのに対してヘイケボタルは0.5~1秒に一回光ります。このように光り方のパターンは種ごとのアイデンティティなのです。オスしかひからないのかというとそうではありません。メスも光るのですが、オスが一斉に同じタイミングで点滅するのに対して、メスはすこしズレて点滅するのだそう。だから異性をみつけやすいのです。一斉に点滅するなんてすごいですよね。リズム音痴なオスのホタルとかいないんでしょうか。

さらに不思議なことに、同じ種であっても地域によってテンポが異なるケースがあるようです。

ゲンジボタルは西日本の場合は2秒に1回点滅、東日本では4秒に1回点滅するのだそう。人間もホタルも西日本の方がせかせかしているんでしょうか…。

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