
放射性崩壊ってどんな現象?核分裂との違いや放射線のエネルギー、半減期の計算方法を理系ライターが5分でわかりやすく解説!
放射性崩壊の種類と生じる放射線

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放射性崩壊は原子核が安定するために一部を切り離す現象ですが、切り離されるものによって3種類に分類可能です。
具体的には、原子核からヘリウムの原子核と同等の塊を切り離すα崩壊、中性子が電子を切り離して陽子になるβ崩壊、電磁波としてエネルギーのみ放出するγ崩壊に分かれます。
原子核の陽子数や中性数が変化することがあるのが放射性崩壊の特徴です。
陽子、中性子の組成を核種といい、実は元素の種類は核種が持つ陽子数(原子番号)で決まるんですね。また中性子数の変動は、元素の種類そのものは同一の別物質、同位体(アイソトープ)を生成します。
では、3種類の崩壊によって核種がどのように変化するのか、それぞれのメカニズムや生じる放射線についてより詳しく見ていきましょう。
α崩壊はヘリウム原子核を放出
α崩壊では、陽子2個と中性子2個からできる粒子、つまりヘリウム原子の核と同一のものを放出します。α線と呼ばれる放射線は、α崩壊にともなって放出されるヘリウム原子核のことです。
α崩壊では、原子核の陽子数が減る(原子番号が変わる)ため、反応前後で元素の種類が変化します。具体的にはα崩壊を起こすと、陽子数としては2つ、質量数としては4つ低い別の分子に変化するんですね。
α線は、ほかの放射線と比べて質量が大きいため持っているエネルギーが高いです。そのぶん別原子に邪魔されやすく紙一枚あれば進行を止められますが、その分表面にエネルギーが集中するので注意が必要になります。
またα線は陽子を含むため電荷があり、高いエネルギーで別原子が持つ電子に衝突、電子をはじき出してしまうんです。放射線によって別原子が持つ電子が外れるはたらきを電離作用といいます。
β崩壊は中性子が電子を放出
β崩壊は、原子核を構成する陽子が中性子に、もしくは中性子が陽子に変化する現象です。中性子が電子を放出して陽子になる、陽子が電子を受け取り中性子となる、陽子が+の電荷をもつ陽電子を放出して中性子になるの3通りの反応があります。
β崩壊は、陽子と中性子の数を均一にし、反発力と核力のバランスを取るために起こるものです。またα崩壊と同様に、β崩壊でも陽子の数が変化するので元素の種類が変わりますね。
陽電子を放出するものをβ+崩壊、電子を放出するものをβ–崩壊ともいいます。β+崩壊で放出される陽電子をβ+線、β–崩壊で放出される電子をβ–線といい、それらを総称したものがβ線です。
β線はα線と比べて質量が小さいので別原子を透過しやすく、電荷を持つので電離作用も持ちます。
γ崩壊はエネルギーのみを電磁波として放出
原子核にかかる反発力や核力によるエネルギーのほか、原子核自体の運動エネルギーを放出する現象がγ崩壊です。具体的には、γ崩壊では余剰エネルギーが電磁波(光)に形を変えて放出されます。
γ崩壊で放出される電磁波がγ線です。γ崩壊では、原子核を構成する粒子が変化しないので元素そのものも変化しません。
γ線は粒子ではないため質量を持たず、α線やβ線と比べてもエネルギーが低いぶん、別原子を簡単に透過します。また、電磁波なので電子にも影響し、電離作用も持つ放射線です。
γ線は、エネルギーを電子に吸収され電子が飛び出す(β線となる)などさまざまな現象が原因で、次第に消滅していきます。
放射性物質の半減期とその計算方法
放射性物質は次第に放射性崩壊を起こして、安定した別の物質になるということは、時間が経てば放射性物質は自然に減少することになります。
ある放射性元素がいつ放射性崩壊を起こすかについては、反発力と核力のバランスが絶えず変化しているため、確率的にしか判断できません。しかし、原子が大量にある状況(物質を構成している状況)では、全体で見ると放射性崩壊の発生頻度が均一化され、安定して減少すると考えることができます。
シンプルに考えれば、原子が多いほど時間単位の崩壊頻度は上がりますね。そのことを式にすると
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