この記事では「質に取る」について解説する。

端的に言えば質に取るの意味は「貸す保証として担保を取る」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

語学好きで歴史好き、名古屋出身で7年間のライター経験を持つeastflowerを呼んです。一緒に「質に取る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/eastflower

今回の記事を担当するのは語学好きで英語、中国語が得意な7年目のライター、eastflower。「質に取る」の言葉の起源やどんな場面で使えるのかをわかりやすく解説していく。

「質に取る」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速「質に取る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「質に取る」の意味は?

まずは、「質に取る」の国語辞典の意味を見ていきましょう。

1. 質として財物を受け取る。
2. 人質を預かる。人質にする。

出典:日本国語大辞典(精選版)「質に取る」

「質に取る」(しちにとる)人がいるということは、一方で「質に入れる人」がいるわけです。「質に入れる」という行為がされるときは、多くの場合、経済的にピンチに陥ったときでしょう。「質に入れる」の「質」(しち)とは、現在の言葉で言えば「担保」(たんぽ)のことです。

お金を貸す側の人のことを「債権者」(さいけんしゃ)と呼び、お金を借りる側のことを「債務者」(さいむしゃ)と呼んでいます。親や親族など近い関係でなければ、他人は口約束だけでお金は貸してくれません。お金を貸す側は、きちんとお金が回収できるように、また、不利益が生じないようにするために、債務者が返せなかった場合の罰則を定めた上でお金を貸すのです。罰則は、違約金という追加のお金であったり、不動産である場合の差し出しというのも少なくありません。例えば、債務者が借金を返せなかった場合に債権者が優先的に弁済(べんさい)を受ける権利、いわゆる民法に基づく抵当権をつける場合もあります。第三者の保証人を立てて、回収できない場合には、保証人がお金を支払う旨を借用文書に記載する場合もありますね。

「質に取る」の語源は?

次に「質に取る」の語源を確認しておきましょう。
「質に取る」は、「質屋がお金を貸す保証として借り手から担保を納めさせること」ですが、「質に取る」という言葉ができたのは、江戸時代以降だと考えられています。もちろん、それ以前からお金を貸し借りし、それに対して手数料を取るという事業はありました。お金が市場に流通するようになった鎌倉時代には金を貸す事業は存在し、金貸しの事業は当時は「質屋」ではなく、「戸倉」(土蔵)と呼ばれていたようです。「戸倉」を行っていたのは、主に酒屋さんたちで、本業は「酒屋」、「質屋」は副業として営まれていたと考えられています。「質に取る」には、「人質にする」という意味もありますが、人質にする行為は、遠い昔から行われていたようですね。

\次のページで「「質に取る」の使い方・例文」を解説!/

「質に取る」の使い方・例文

「質に取る」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1. 「親戚だからと言って何の保証もなくお金を貸すことにはやはり抵抗がある。不動産屋や物を預けろというような質に取るようなことは言わないが、返せなかった場合にどうするかは、書面で残しておく方がお互いに気持ちがいいだろ。」

2. 「質屋というのも案外悪い商売でもないよ。質に取るというと聞こえは悪いが、急な出費は誰にでも起こりえるものだ。質に取る、質に取られると考えるからなんとなく悪い場所のように響くかもしれないが、本当に困ったとき身近にある物でとりあえずお金に変えられる可能性のある場所として考えて欲しいんだ。」

急にお金が必要になったとき、親類・縁者に借りるというのはすぐに思いつくことですよね。だからといって、近しい仲だからこそ、お金の貸し借りは避けたいと考えるにも自然なことですね。その点、質屋は商売だからドライに話もできるし手っ取り早くお金を調達できる手段だと考えてもいいのかもしれませんね。

「質に取る」の類義語は?違いは?

image by iStockphoto

それでは、「質に取る」の類義語を見ていきましょう。

「借金のかたに取る」

「質に取る」は貸し手がお金を貸すときには、借り手に担保を要求するということでしたね。「質に取る」と同じ意味で使われる表現の一つに「借金のかたに取る」(しゃっきんのかたにとる)があります。「借金のかたに取る」を漢字に直すと「借金の形に取る」となるのです。「借金の形」の「形」(かた)は、この場合、「証拠として残すしるし」、「保証のしるし」、「抵当」の意味として使われているのですね。「借金のかたに取る」は「借り手が借りたお金が返せない時に、貸し手が保証物を受け取る約束をすること」になります。

\次のページで「「質に取る」の対義語は?」を解説!/

「質に取る」の対義語は?

次に「質に取る」の対義語を見ていきましょう。

「帳消しにする」

「質に取る」は、「借り手が定められた期間内に債務(さいむ)を返済できなかった際に質として手渡した担保となる物品や不動産などの所有権が貸し手側に移ること」でした。

しかし、しばしば、話し合いなどの上で貸し手が請求できる権利である債権(さいけん)を放棄する場合も歴史的に見て少なくありません。簡単にいえば、「借金をチャラにすること」があるのです。そんな意味を含む言葉に「借金を帳消しにする」(しゃっきんをちょうけしにする)があります。「借金を帳消しにする」の「帳消しにする」(ちょうけしにする)の元々の意味は、「帳面に記載していた記録を必要がなくなったために棒線で消すこと」でしたが、そこから派生して、「金銭の貸借の関係を消滅すること」、「債務が消えること」の意味として使われるようになりました。貸し手である債権者側から言えば、「債権放棄」(さいけんほうき)がこれにあたります。

「質に取る」の英訳は?

image by iStockphoto

次に「質に取る」の英訳を見ていきましょう。

「as security for a loan」

「質に取る」を英語にするときによく使われる言葉に「as security for a loan」という表現があります。「as security for a loan」の「security」(sɪkjˈʊ(ə)rəṭi)には、「安全」、「無事」「安心」などの意味が最初に頭に浮かぶかもしれませんが、この場合の「security」とは、「負債の支払いに対する保証」という意味で使われるのです。また、「loan」とは、「貸すこと」、「貸付」(かしつけ)という意味ですね。「as security for a loan」全体で、「貸し付けることへの保証として」という意味になります。

「質に取る」という言葉を聞くとなんとなく、貸した方が欲張りで、借りた方はだまされてむしり取られたように感じるのですが、特に時代劇でも江戸が舞台のドラマではそういうシーンが多くあるからかもしれませんね。しかし、英語ではお金を貸す側は当然、その保証を得ることは当たり前であり、債権者と債務者はきちんと納得の上同意し、契約に基づき履行するという認識なのでしょう。

「質に取る」を使いこなそう

この記事では「質に取る」の意味や使い方を見てきました。「質に取る」は、「人質にする」という意味もありますが、現代では、「質として財物などを受け取ること」でしたね。現在の言い方で言えば、「お金を貸す側は原則として担保物を受け取る条件でお金を貸す」ということでした。生きる上で、「タダの物」や「うますぎる話」はあまりないと考えた方がよいのかもしれません。もちろん、急にお金が必要になることもあります。そんなときはどうすれば良いのかを考えて行動することが必要になりますね。

" /> 【慣用句】「質に取る」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

【慣用句】「質に取る」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「質に取る」について解説する。

端的に言えば質に取るの意味は「貸す保証として担保を取る」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

語学好きで歴史好き、名古屋出身で7年間のライター経験を持つeastflowerを呼んです。一緒に「質に取る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/eastflower

今回の記事を担当するのは語学好きで英語、中国語が得意な7年目のライター、eastflower。「質に取る」の言葉の起源やどんな場面で使えるのかをわかりやすく解説していく。

「質に取る」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速「質に取る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「質に取る」の意味は?

まずは、「質に取る」の国語辞典の意味を見ていきましょう。

1. 質として財物を受け取る。
2. 人質を預かる。人質にする。

出典:日本国語大辞典(精選版)「質に取る」

「質に取る」(しちにとる)人がいるということは、一方で「質に入れる人」がいるわけです。「質に入れる」という行為がされるときは、多くの場合、経済的にピンチに陥ったときでしょう。「質に入れる」の「質」(しち)とは、現在の言葉で言えば「担保」(たんぽ)のことです。

お金を貸す側の人のことを「債権者」(さいけんしゃ)と呼び、お金を借りる側のことを「債務者」(さいむしゃ)と呼んでいます。親や親族など近い関係でなければ、他人は口約束だけでお金は貸してくれません。お金を貸す側は、きちんとお金が回収できるように、また、不利益が生じないようにするために、債務者が返せなかった場合の罰則を定めた上でお金を貸すのです。罰則は、違約金という追加のお金であったり、不動産である場合の差し出しというのも少なくありません。例えば、債務者が借金を返せなかった場合に債権者が優先的に弁済(べんさい)を受ける権利、いわゆる民法に基づく抵当権をつける場合もあります。第三者の保証人を立てて、回収できない場合には、保証人がお金を支払う旨を借用文書に記載する場合もありますね。

「質に取る」の語源は?

次に「質に取る」の語源を確認しておきましょう。
「質に取る」は、「質屋がお金を貸す保証として借り手から担保を納めさせること」ですが、「質に取る」という言葉ができたのは、江戸時代以降だと考えられています。もちろん、それ以前からお金を貸し借りし、それに対して手数料を取るという事業はありました。お金が市場に流通するようになった鎌倉時代には金を貸す事業は存在し、金貸しの事業は当時は「質屋」ではなく、「戸倉」(土蔵)と呼ばれていたようです。「戸倉」を行っていたのは、主に酒屋さんたちで、本業は「酒屋」、「質屋」は副業として営まれていたと考えられています。「質に取る」には、「人質にする」という意味もありますが、人質にする行為は、遠い昔から行われていたようですね。

\次のページで「「質に取る」の使い方・例文」を解説!/

次のページを読む
1 2 3
Share: