この記事では「手が付かない」について解説する。

端的に言えば「手が付かない」の意味は「物事に集中できないこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「手が付かない」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「手が付かない」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「手が付かない」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「手が付かない」の意味は?

「手が付かない」には、次のような意味があります。

「手に付かない」に同じ。
「内部の動揺やら、外部の束縛やらで、一切—◦なかった」〈漱石・門〉

出典:デジタル大辞泉(小学館)「手が付かない」

心が他に奪われてその事に集中できない。「うれしくて仕事が—◦ない」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「手に付かない」

この言葉は、「他に気になることがあって、集中が出来ない」という意味の慣用表現です。引用の通り、「手付かない」としても同じ意味になります。一緒に覚えましょう。

「気になること」は、精神的な心配事でも外部的な要因でも構いません。皆さんも、目の前のことに集中しなければいけないのに色々な理由でできない、なんてことはありますよね。どんな理由が出てくるか、想像してみてください。

また、集中できないことを想像すると悪い事のようにも思えますが、「嬉しすぎるて」集中できないパターンも。そのため、この表現だけでは良い事あったのか悪い事があったのかは判断できませんので、その点も早合点しないようにしましょう。

「手が付かない」の語源は?

次に「手が付かない」の語源を確認しておきましょう。「手」はもちろん身体の一部としての手のことでもありますが、それに付随した色々な意味を持つ単語でもあります。

たとえば「手が足りない(=働くもの・人)」「手が無い(=手段)」など、多くの表現が存在していますね。ここには手を使って何かを行う=労働するという意味合いが共通しています。

このことから、「手が付かない」も「働くための手」が「付かない=集中できない」で、「やるべきことに取り組めない」という意味を表す慣用表現として定着したと考えられるのです。

なお、語句が似ている表現として「手が付けられない」というものもありますが、こちらは「どうしようもできない」という意味で別のもの。混同しないように注意してくださいね。

\次のページで「「手が付かない」の使い方・例文」を解説!/

「手が付かない」の使い方・例文

「手が付かない」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・となりで一緒に勉強をしている彼女だが、表情を見るにテレビのランキング結果ばかり気にしていて宿題に手が付かないのは一目瞭然だ。

・大好きなアイドルの関連書籍の発売日前後は、あの姉妹揃って練習に手が付かないとコーチが嘆いている。

・研究会の月間発表だというのに、先日実施された健康診断の結果が気になって担当編集者はどうにも手が付かないようだった。

「物事に集中が出来ない」というニュアンスが伝わりますでしょうか。この表現が出てきた際に押さえたいポイントは、「集中すべき物事」と「集中できない理由」の二つがあること。どちらも文脈で重要になる要素ですので、しっかり押さえるようにしましょう。

また他のことに集中できなくなるくらいですから、「集中できない理由」が、ささやかではなく大きなものであることも読み取れます。

逆に、たとえば「学校に行く途中でちょっといいことがあって、勉強に手が付かない」のような言い方はチグハグになってしまうでしょう。用法が適切かどうかにも注目したいところです。

「手が付かない」の類義語は?違いは?

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「手が付かない」の類義語は「身(み)が入らない」がいいでしょう。

「身が入らない」

「身が入らない」は「物事に一生懸命になれない、集中して取り組めない」という意味の慣用表現です。

「身」には「自分自身、その人の全力」といったニュアンスがあり、「自身の力が入らない=集中できない」と「手が付かない」と同様の意味を持ちます。「手が付かない」の言い換えとして選択させる問題もあるかもしれません。ここで一緒に覚えてしまいましょう。

\次のページで「「手が付かない」の対義語は?」を解説!/

日本語検定のウェブサイトを作っていたのだが、大手企業が参入してお客を取られてしまい、更新に身が入らなくなってしまった。

「手が付かない」の対義語は?

「手が付かない」の対義語は「心血(しんけつ)を注ぐをそそぐ」「神経を注ぐ」がいいでしょう。似た表現のため、一緒に解説します。

「心血を注ぐ」「神経を注ぐ」

「心血を注ぐ」は「全力でことに取り組むこと」、「神経を注ぐ」は「一心に集中する」という意味の慣用表現です。

「手」「身」を使った表現を紹介してきましたが、さらに「心血」「神経」も登場しました。身体に関する様々なものを使って「取り組む」表現があるのは面白いところですね。

意味の違いとしては「心血」のほうが「思いっきり、パワフルに」、「神経」が「細かいところまで」という特徴があります。読みも似ているためしっかり使い分けられるようにしてください。

・地元で評判の工事会社は、仕事に心血を注ぐ職人さんのおかげでとても良い家を仕上げてくれる。

・妹は来月あるそろばん検定の対策のため、毎日何時間もひとりきりで練習に神経を注いでいる。

「手が付かない」の英訳は?

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「手が付かない」の英訳は「too ~ to concentrate on」で表すことができます。

「too ~ to concentrate on」

これは「~すぎて、集中できない」という意味になるフレーズです。「too ~ to」は受験でも頻出の「~すぎて、できない」構文ですね。英語には「手が付かない」をそのまま言い表せる表現がないため、こちらを紹介しました。

副詞や形容詞を修飾する「too」には、「あまりも~すぎる(すぎて、できない)」と強い意味からの否定を表せるため、「大きな理由」によって集中できない「手が付かない」を表すのに適していると言えるでしょう。

動詞部分の「concentrate on(集中する)」は、「settle down(落ち着く)」などに変えても構いません。文脈から適した単語を選べるようにしましょう。

\次のページで「「手が付かない」を使いこなそう」を解説!/

Dad is too worried about his daughter to concentrate on work.
お父さんは娘が心配すぎて仕事が手に付かない。

「手が付かない」を使いこなそう

この記事では「手が付かない」の意味・使い方・類語などを説明しました。

類義語、対義語のところでも記載しましたが、人間の体を使った似た表現がたくさんありましたね。しかも、紹介したものはどれも「仕事」や「物事」に取り掛かる際に使える言葉。

日本人にとって「仕事」と「身体」は切っても切り離せない意識があったことも思わせるものでした。他にもどんな似た表現があるのか、調べてみるときっと勉強になりますよ。

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国語言葉の意味

【慣用句】「手が付かない」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校講師がわかりやすく解説!

この記事では「手が付かない」について解説する。

端的に言えば「手が付かない」の意味は「物事に集中できないこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「手が付かない」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「手が付かない」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「手が付かない」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「手が付かない」の意味は?

「手が付かない」には、次のような意味があります。

「手に付かない」に同じ。
「内部の動揺やら、外部の束縛やらで、一切—◦なかった」〈漱石・門〉

出典:デジタル大辞泉(小学館)「手が付かない」

心が他に奪われてその事に集中できない。「うれしくて仕事が—◦ない」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「手に付かない」

この言葉は、「他に気になることがあって、集中が出来ない」という意味の慣用表現です。引用の通り、「手付かない」としても同じ意味になります。一緒に覚えましょう。

「気になること」は、精神的な心配事でも外部的な要因でも構いません。皆さんも、目の前のことに集中しなければいけないのに色々な理由でできない、なんてことはありますよね。どんな理由が出てくるか、想像してみてください。

また、集中できないことを想像すると悪い事のようにも思えますが、「嬉しすぎるて」集中できないパターンも。そのため、この表現だけでは良い事あったのか悪い事があったのかは判断できませんので、その点も早合点しないようにしましょう。

「手が付かない」の語源は?

次に「手が付かない」の語源を確認しておきましょう。「手」はもちろん身体の一部としての手のことでもありますが、それに付随した色々な意味を持つ単語でもあります。

たとえば「手が足りない(=働くもの・人)」「手が無い(=手段)」など、多くの表現が存在していますね。ここには手を使って何かを行う=労働するという意味合いが共通しています。

このことから、「手が付かない」も「働くための手」が「付かない=集中できない」で、「やるべきことに取り組めない」という意味を表す慣用表現として定着したと考えられるのです。

なお、語句が似ている表現として「手が付けられない」というものもありますが、こちらは「どうしようもできない」という意味で別のもの。混同しないように注意してくださいね。

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