この記事ではナメクジとカタツムリの違いについてみていきます。どちらも梅雨など雨が降っているときによく見かけるイメージがある生き物ですね。違いはずばり殻の有無のようですが、生態や寿命など調べてみるといろいろ違いがあるみたいです。
今回はそんなナメクジとカタツムリの違いを、そもそもどんな生物であるのか確認しつつ、生き物好きライター田嶋と一緒に解説していきます。

ライター/田嶋あこ

生き物の観察が好きなWebライター。様々な生き物をモチーフにしたイラストなどを描いている。様々な視点から違いを詳しく解説していく。

ナメクジとカタツムリの1番わかりやすい違いは?

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ナメクジとカタツムリの姿を想像してみてください。とっても似ていますが、あるパーツだけかなりハッキリとした違いがあります。ピンときましたか?そのパーツこそが、ナメクジとカタツムリを見分ける最大のポイントです。さっそく確認していきましょう!

殻があるかないか

ナメクジとカタツムリの1番わかりやすい違いは「殻」があるかないかです。実はどちらも先祖は同じ生き物。進化していく過程で、殻がある種類とない種類に分かれました。

ちなみに殻があるほうがカタツムリで、ないほうがナメクジと見分けることができます。別の生き物なので、ナメクジに殻を与えたとしても、カタツムリにはなりません。

ただナメクジの中には「コウラナメクジ」という、背中に小さな殻を持った種類もいます。今は別の生き物であるナメクジとカタツムリが、元々は同じ生き物であったことがよくわかりますね。

またカタツムリのトレードマークである殻ですが、ヤドカリのように生まれた後に見つけて背負っている訳ではありません。生まれたときから既に付いているのです。

殻はカタツムリから分泌される「炭酸カルシウム」から作られているもの。中には、心臓・肺・腸・生殖器などの内蔵が詰まっています。無理やり殻を外すとカタツムリが死んでしまうので、扱いには注意が必要です。

ナメクジとカタツムリの詳しい違い

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ナメクジとカタツムリは先祖は同じですが、今はそれぞれ違う生き物として区別されています。殻の他にどんなところが違うのか、分類・生態・エサ・寿命と産卵の4点をみていきましょう。

ナメクジとカタツムリの「分類」の違い

ナメクジとカタツムリは「軟体動物門腹足鋼(なんたいどうぶつもんふくそくこう)」に分類される生き物です。

腹足鋼はお腹の部分が足になっていて、這うようにして歩くという特徴があります。ちなみにアワビ・サザエ・ウミウシなども同じです。ナメクジとカタツムリは、その中でナメクジ科とカタツムリ科に分かれます。

ナメクジは進化していく過程で背中の殻が退化してなくなった種類。敵から身を守ってくれる殻をなくした代わりに、狭い隙間などに逃げられるようになりました。殻を成長させなくていいので、エネルギーを全て自分の体にだけ注ぐことができるのも特徴となります。

カタツムリは陸に生きる巻貝の総称です。殻は敵から隠れて自分を守るだけでなく、乾燥することを防ぐ役割も。殻は傷ついて割れても自然に修復されます。

それぞれの仲間もチェックしてみましょう。

\次のページで「ナメクジとカタツムリの「生態」の違い」を解説!/

ナメクジの仲間
・チャコウラナメクジ
・ノハラナメクジ
・フタスジナメクジ
・マダラコウラナメクジ
・ヤマナメクジ など

カタツムリの仲間
・ウスカワマイマイ
・オナジマイマイ
・ニッポンマイマイ
・ヒダリマキマイマイ
・ミスジマイマイ など

ナメクジとカタツムリの「生態」の違い

ナメクジとカタツムリは乾燥に弱い生き物。ヌメヌメとした粘液で体を覆い皮膚が傷つかないようにしていますが、生息している場所にも特徴があるのです。

ナメクジはジメジメとした湿気を含む場所でよく見かけます。昼間は落ち葉の中や草花の陰で過ごしていることがほとんどで、活動するのは主に夜です。曇りや雨の日などは、日中でも姿を見かけることもあります。

カタツムリも乾燥に弱く、雨がよく降る6〜8月以外はあまり活動しません。天気がいい日は、日の当たらないところで休んでいることが多いです。個体によりますが、冬や夏はずっと眠りについているものも。

またナメクジとカタツムリは性別がありません。雌雄同体(しゆうどうたい)といって、1つの体に両方の生殖器を持っている生物なのです。

あまり活発に動けない中で子孫を残すため、このような体の作りになったという説があります。他の個体と接触できない場合などは、1匹しかいない状況でも卵を産むことがあるようです。

ナメクジとカタツムリの「エサ」の違い

ナメクジとカタツムリですが、エサについてはあまり違いがありません。どちらも「歯舌(しぜつ)」という、歯が何万個もついたおろし金状の舌を使って削ぎ取るようにしてエサを食べます。雑食性という点も同じです。

エサとして主に食べているのは、花・葉っぱ・野菜・果実・コケなど。また、炭酸カルシウムを補給するためにコンクリートを食べることもあります。塀などに集まっている姿をたまに目にしますが、コケではなく壁自体を食べていることもあるだなんて驚きですね。

ナメクジとカタツムリの「寿命・産卵」の違い

個体差はありますが、ナメクジとカタツムリの寿命には少し違いがあります。産卵についてもご紹介するので併せてみていきましょう。

ナメクジの寿命と産卵時期
寿命:約1年〜3年
産卵時期:冬〜春にかけて

カタツムリの寿命と産卵時期
寿命:約3年〜4年
産卵時期:春〜夏にかけて

ナメクジは冬から春にかけて透明の卵を土の中に産みます。一度に産む卵の数は50個ほどで、一生のうちに4回ほど産卵することも。

梅雨の時期になると赤ちゃんも地上に出てきます。2〜3年生きて産卵を終えたナメクジは、6月頃にそのまま死んでしまうことが多いです。

カタツムリは春から夏にかけてが産卵時期。一度に30個〜60個ほどの卵を土の中に産みます。赤ちゃんが出てくるのは20日〜30日と、ナメクジより早いです。

またカタツムリは体が大きければ大きいほど寿命も長くなる傾向にあります。10年以上生きた個体もいるほどです。殻も成長とともに大きくなるので、殻の筋を見るとおおよその年齢がわかってきます。

\次のページで「エスカルゴはカタツムリと違うの?」を解説!/

エスカルゴはカタツムリと違うの?

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レストランなどで、メニューに「エスカルゴ」という名前を見たことがある方もいらっしゃると思います。殻の見た目がカタツムリに似ているので気になった方も多いはずです。そんなエスカルゴとカタツムリについて、違いがあるのかどうかをご説明していきます。

実はどちらも同じ

「Escargot(エスカルゴ)」はフランス語でカタツムリのことを指します。つまりエスカルゴ=カタツムリということ。日本では調理用のカタツムリをエスカルゴと呼ぶことが多いですが、フランスでは野生のカタツムリもエスカルゴと呼ばれています。

「まさか、フランスでは野生のカタツムリも食べるの!?」と驚いてしまうかもしれませんが、そういうことではありません。料理に使われるカタツムリは、寄生虫がつかないように衛生管理された場所で人間によって育てられたものだけです。

主に食用にされているのは、リンゴマイマイ・プティグリ・グログリの3種。大きくて人気が高いのはリンゴマイマイですが、よく食べられているのは養殖ができるプティグリやグログリです。

代用としてアフリカマイマイが使われることもあります。

野生のカタツムリ・ナメクジを触ったり食べたりするのは危険!?
 
カタツムリやナメクジには、「広東住血線虫(かんとんじゅうけつせんちゅう)」という恐ろしい寄生虫が潜んでいる可能性があります。この寄生虫は基本的にネズミに寄生していますが、幼虫が入ったネズミの糞をナメクジやカタツムリが食べていることがあるのです。
 
幼虫を体内に取り入れたナメクジやカタツムリを傷のある手で触ったり、生で食べたりしてしまうと人間にも寄生します。体に入った寄生虫が脳・脊髄の血管・髄液などに広がることで、髄膜脳炎などの症状が。
 
感染してから1週間ほどで嘔吐・下痢・腹痛の症状が出始め、頭痛・発熱・痙攣・感覚障害なども発症します。失明や知的障害などの後遺症が残ったり、最悪の場合は死に至ることも。
 
寄生虫は加熱することで処理できますが、食用でないものは基本的に口にしない方がいいと言えるでしょう。また、野菜などについていた粘液から寄生されることもあるようです。
 
ナメクジやカタツムリがついていた可能性のある野菜を生で食べる際は、しっかり洗うようにしてくださいね。触った後も手洗いを忘れずに!

ナメクジとカタツムリに塩をかけたらどうなる?

子どもの頃に、ナメクジやカタツムリに塩をかけたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか?じんわりと水分がでてきて、溶けていっているように見えますよね。

実際はどうなっているのか、また何故そうなるのかを解説していきます。さっそく見ていきましょう。

体が縮んでしまう

ナメクジやカタツムリに塩をかけたとき、溶けていくように見えますが、実際は体が縮んでいます。理由は体の約85%が水分で出来ているから。

ナメクジやカタツムリの皮膚は水を通しやくなっており、塩をかけると体の水分が塩に移ってしまいます。そのためどんどん水分が抜けて縮んでしまうのです。

小さく縮んだナメクジやカタツムリに水をかけると、完全ではありませんが大きさは戻ります。塩だけではなく砂糖でも同じ現象がおきるので、気になる方はチェックしてみてください。

ただ、駆除する為に塩を使うのはあまりおすすめできません。退治するためにはかなりの量の塩が必要になります。

プランターなどにもよく姿を現すので、ナメクジやカタツムリから家庭菜園を守りたいときなどは、専用の殺虫剤を使用するといいでしょう。

\次のページで「「殻」があるかどうかで見分けてみよう」を解説!/

「殻」があるかどうかで見分けてみよう

ナメクジとカタツムリを見分ける最大のポイントは「殻」です。殻のない方がナメクジで、殻のある方がカタツムリと覚えておけば見分けは簡単になります。

どちらも梅雨など湿気の多いときに活発に動く生き物なので、雨が降っているときを狙って探してみるのもいいでしょう。のんびり動く様子を見ているのも面白いですよ。

ただ、寄生虫がついている場合があるので無闇に触るのは危険です。安全面を考えると、触りたい気持ちをグッと堪えて観察までにとどめておいた方がいいと言えるでしょう。

またカタツムリに関しては、日本だけでも800種類ほど生息していると言われています。お家の近くにはどんな種類のものがいるのか、ぜひ調べてみてくださいね。

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生き物・植物雑学

ナメクジとカタツムリの違いは殻だけ!?生態・寿命・エスカルゴとの違いまで生き物好きライターが詳しくわかりやすく解説

この記事ではナメクジとカタツムリの違いについてみていきます。どちらも梅雨など雨が降っているときによく見かけるイメージがある生き物ですね。違いはずばり殻の有無のようですが、生態や寿命など調べてみるといろいろ違いがあるみたいです。
今回はそんなナメクジとカタツムリの違いを、そもそもどんな生物であるのか確認しつつ、生き物好きライター田嶋と一緒に解説していきます。

ライター/田嶋あこ

生き物の観察が好きなWebライター。様々な生き物をモチーフにしたイラストなどを描いている。様々な視点から違いを詳しく解説していく。

ナメクジとカタツムリの1番わかりやすい違いは?

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ナメクジとカタツムリの姿を想像してみてください。とっても似ていますが、あるパーツだけかなりハッキリとした違いがあります。ピンときましたか?そのパーツこそが、ナメクジとカタツムリを見分ける最大のポイントです。さっそく確認していきましょう!

殻があるかないか

ナメクジとカタツムリの1番わかりやすい違いは「殻」があるかないかです。実はどちらも先祖は同じ生き物。進化していく過程で、殻がある種類とない種類に分かれました。

ちなみに殻があるほうがカタツムリで、ないほうがナメクジと見分けることができます。別の生き物なので、ナメクジに殻を与えたとしても、カタツムリにはなりません。

ただナメクジの中には「コウラナメクジ」という、背中に小さな殻を持った種類もいます。今は別の生き物であるナメクジとカタツムリが、元々は同じ生き物であったことがよくわかりますね。

またカタツムリのトレードマークである殻ですが、ヤドカリのように生まれた後に見つけて背負っている訳ではありません。生まれたときから既に付いているのです。

殻はカタツムリから分泌される「炭酸カルシウム」から作られているもの。中には、心臓・肺・腸・生殖器などの内蔵が詰まっています。無理やり殻を外すとカタツムリが死んでしまうので、扱いには注意が必要です。

ナメクジとカタツムリの詳しい違い

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ナメクジとカタツムリは先祖は同じですが、今はそれぞれ違う生き物として区別されています。殻の他にどんなところが違うのか、分類・生態・エサ・寿命と産卵の4点をみていきましょう。

ナメクジとカタツムリの「分類」の違い

ナメクジとカタツムリは「軟体動物門腹足鋼(なんたいどうぶつもんふくそくこう)」に分類される生き物です。

腹足鋼はお腹の部分が足になっていて、這うようにして歩くという特徴があります。ちなみにアワビ・サザエ・ウミウシなども同じです。ナメクジとカタツムリは、その中でナメクジ科とカタツムリ科に分かれます。

ナメクジは進化していく過程で背中の殻が退化してなくなった種類。敵から身を守ってくれる殻をなくした代わりに、狭い隙間などに逃げられるようになりました。殻を成長させなくていいので、エネルギーを全て自分の体にだけ注ぐことができるのも特徴となります。

カタツムリは陸に生きる巻貝の総称です。殻は敵から隠れて自分を守るだけでなく、乾燥することを防ぐ役割も。殻は傷ついて割れても自然に修復されます。

それぞれの仲間もチェックしてみましょう。

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