君は「単孔類」という言葉を聞いたことがあるか?単孔類は哺乳類で唯一、卵を産む動物なんです。代表例はカモノハシ。オーストラリアの水辺に穴を掘って生活している生き物です。なぜ単孔類は卵を産むのでしょうか?それは生物の進化の歴史が関係している。哺乳類は爬虫類から進化したが、中でも単孔類は進化の最も早い段階で分岐したと考えられている。今回はそんな原始的な哺乳類「単孔類」について、学生時代、獣医学部で動物のことを学んでいたライターみんちが解説していきます。

ライター/みんち

学生時代、獣医学部で動物の知識を学んだ。趣味は動物園巡り。ライターとして、初心者にもわかりやすく、質のある情報を提供できるよう、日々奮闘中。

単孔類は卵を産む哺乳類!?

image by iStockphoto

単孔類(たんこうるい)は哺乳類の中で唯一、卵を産む哺乳類です。卵を産む動物と言えば、鳥類や爬虫類のイメージがありますが、哺乳類の中にも卵を産む種類がいるなんて驚きですね。

単孔類はオーストラリアとニューギニア島の一部にしか生息していません。

単孔類は別名で、単孔目(たんこうもく)、一穴目(いっけつもく)、カモノハシ目とも呼ばれます。そんな不思議な呼ばれ方をする理由を詳しくみていきましょう。

単孔類の特徴1:総排出腔がある

単孔類とは読んで字のごとく、「あな(孔)がひとつ(単)」という意味。これは、単孔類の特徴である総排出腔(そうはいしゅつこう)と呼ばれる器官が由来になっています。

総排出腔というのは、糞や尿が排泄される場所と精子や卵の排出口が一緒になっている器官のこと。これは、爬虫類や鳥類にみられる特徴なのですが、実は哺乳類である単孔類にもあるんです。

単孔類の特徴2:卵を産む

先述したように、単孔類は卵を産む生き物です。卵を産む動物は”卵生”といわれます。卵生の動物は魚類や両生類、爬虫類、鳥類、昆虫など哺乳類以外のほとんどの生物が卵生です。それなのに哺乳類である単孔類も卵生だなんて驚きですね。一般的な卵を産む動物たちのように卵を温めて子供を孵化させるんですよ。

\次のページで「単孔類の特徴3:乳腺がある」を解説!/

単孔類の特徴3:乳腺がある

「なぜ鳥類や爬虫類の特徴を持っているのに哺乳類に分類されているんだ…?」と疑問に思った方もいるかもしれません。

単孔類が哺乳類である証拠に、母乳で子供を育てるという特徴があります。単孔類には乳首はありませんが、乳腺という分泌腺があり、汗のように滲み出した液が母乳なんです。生まれたばかりの赤ちゃんは母乳をなめとって栄養にしています。

単孔類は生きた化石

単孔類は生きた化石

image by Study-Z編集部

単孔類は進化の過程で、2億年以上前という非常に早い段階で他の哺乳類から分岐した動物です。哺乳類は爬虫類から進化した動物。そのため総排出腔や卵生といった特徴は、爬虫類から進化したときの名残りなんですね。また、体温調節能力が低いという特徴もあります。単孔類は現生の哺乳類の中でも最も原始的なグループといえますね。

単孔類の仲間はたった2種類!

単孔類の仲間はカモノハシ科ハリモグラ科の2グループのみで構成されています。カモノハシ科は1属1種、ハリモグラ科は2属4種で、単孔類全体ではたった5種しか存在しません。ここからは、単孔類の仲間であるカモノハシとハリモグラについて詳しく見ていきましょう。

カモノハシ:水辺で生活

image by iStockphoto

カモノハシは体長40~50cmで、アヒルのようなくちばしやビーバーのようなしっぽが特徴の動物です。寿命は10年ほど。平べったいボディに小さな目が愛嬌たっぷりですね。半水生動物で、生息地はオーストラリア東部とタスマニアの寒冷な高地や熱帯雨林、山間部、湖など広範囲。水かきのある前足で水辺に穴を掘って住んでいます。巣穴の入り口は直径30cmほど。ザリガニや小魚などを食べる肉食動物です。

メスは繁殖期になると産卵と子育てに向けて巣の拡張工事を始めます。なんと最大20mもの長さのトンネルを掘って、その奥に枯葉を敷いてベッドを作るんですよ。母親は2~4週間ほどの妊娠期間を経て、1~3個の卵を産み落とします。

哺乳類といえど、他の動物のように卵を温めるんですよ。くちばしとしっぽがくっつくように、小さく身体をまるめて卵を抱きます。卵は1週間前後で孵化し、赤ちゃんは母親の乳腺からにじみ出る母乳で大きく育つんですね。子供は4か月ほで成体になり、独り立ちするんです。

ハリモグラ:陸上で生活

image by iStockphoto

ハリモグラも単孔類の仲間です。体長は30~45cmで、寿命は40~50年と、身体の大きさのわりに意外と長生きなんですね。タスマニアやオーストラリア、ニューギニアの森林や乾燥地帯、熱帯雨林などに生息しています。まるっこいフォルムに長い鼻先がチャーミングで可愛らしいです。タスマニアでは、ハリモグラと遭遇するのはそんなに珍しくないそうですよ。

ハリモグラは2000万年~5000万年前に単孔類の祖先から進化したと言われています。全部でハリモグラ、ニシミユビハリモグラ、ヒガシミユビハリモグラ、デビットキョウミユビハリモグラの4種。

同じ単孔類でもカモノハシと大きく異なるのが、陸上での生活に適応しているところ体中のトゲは体毛が変化したもので、爪や亀の甲羅と同じケラチンという成分でできています。体毛といえど実際はとても硬いため、下手に触ると刺されてしまうので気を付けてくださいね。

ハリモグラは産卵時、仰向けに寝転がって卵を産みます。卵をおなかの上で転がして、ぎゅっと包み込むようにして卵を温めるんです。ハリモグラは有袋類ではありませんが、腹部に収縮する筋肉がついており、皮膚で袋のようなヒダをつくることができるんですよ。そこに卵を収納して温めるんですね。抱卵期間は10日間。赤ちゃんは卵歯という歯を使って柔らかい殻を破って孵化します。なんと歯は生後1~2日でなくなってしまうんですよ。

単孔類にはどこに行ったら会える?

日本でカモノハシを飼育している施設はありませんが、オーストラリアでは動物園や国立公園で出会うことができます。ハリモグラは日本の動物園でも飼育されていますよ。ぜひ機会があったら見てきてくださいね。

似たような動物:有袋類

哺乳類は祖先から3種類の形態に進化しました。その中でも、単孔類のように独特な性質をもつ哺乳類がいます。それは有袋類です。有袋類はカンガルーやオポッサム、フクロモモンガなどのようにお腹の袋で子育てをする動物ですね。有袋類は人間や他の哺乳類のように発達した胎盤をもっていないため、子供は未熟な状態で生まれて育児嚢(いくじのう)とよばれるお腹の袋で育ちます。袋の中には乳頭があり、子供は母親の母乳で栄養をとって成長するんですね。

有袋類はオーストラリアに住むイメージですが、実は南アメリカ大陸にも生息するんですよ。しかし、南アメリカではそこまで有袋類が繫栄しているとはいえません。約300年前に南アメリカは北アメリカと接続しました。そのとき高機能な胎盤をもつ有胎盤類が侵入してきたことで有袋類は衰退してしまったんです。現在の南アメリカ大陸には、オポッサム目とケノレステス目の2目のみが生息しています。

単孔類は進化の歴史を象徴する動物

ここまで読んでいただきありがとうございました。今回は単孔類について解説してきました。カモノハシやハリモグラは”哺乳類なのに卵を産むこと”や、”哺乳類が進化してきた歴史を象徴する生き物である”ことを学びましたね。今回の記事を読んで、現在生息している動物たちがどんな歴史をたどって今に至るのかなどを考えてみるの面白いかもしれません。単に「かわいいなあ」と思うだけではなく、動物の豆知識を知っておくと実際に見たときの価値が大きく変わると思います。ぜひ、動物園などを訪れた際は今回学んだことを思い出してみてください。

" /> 単孔類ってどんな動物?進化の歴史や生きた化石カモノハシについて獣医学部卒ライターがわかりやすく解説! – Study-Z
理科生態系生物生物の分類・進化

単孔類ってどんな動物?進化の歴史や生きた化石カモノハシについて獣医学部卒ライターがわかりやすく解説!

君は「単孔類」という言葉を聞いたことがあるか?単孔類は哺乳類で唯一、卵を産む動物なんです。代表例はカモノハシ。オーストラリアの水辺に穴を掘って生活している生き物です。なぜ単孔類は卵を産むのでしょうか?それは生物の進化の歴史が関係している。哺乳類は爬虫類から進化したが、中でも単孔類は進化の最も早い段階で分岐したと考えられている。今回はそんな原始的な哺乳類「単孔類」について、学生時代、獣医学部で動物のことを学んでいたライターみんちが解説していきます。

ライター/みんち

学生時代、獣医学部で動物の知識を学んだ。趣味は動物園巡り。ライターとして、初心者にもわかりやすく、質のある情報を提供できるよう、日々奮闘中。

単孔類は卵を産む哺乳類!?

image by iStockphoto

単孔類(たんこうるい)は哺乳類の中で唯一、卵を産む哺乳類です。卵を産む動物と言えば、鳥類や爬虫類のイメージがありますが、哺乳類の中にも卵を産む種類がいるなんて驚きですね。

単孔類はオーストラリアとニューギニア島の一部にしか生息していません。

単孔類は別名で、単孔目(たんこうもく)、一穴目(いっけつもく)、カモノハシ目とも呼ばれます。そんな不思議な呼ばれ方をする理由を詳しくみていきましょう。

単孔類の特徴1:総排出腔がある

単孔類とは読んで字のごとく、「あな(孔)がひとつ(単)」という意味。これは、単孔類の特徴である総排出腔(そうはいしゅつこう)と呼ばれる器官が由来になっています。

総排出腔というのは、糞や尿が排泄される場所と精子や卵の排出口が一緒になっている器官のこと。これは、爬虫類や鳥類にみられる特徴なのですが、実は哺乳類である単孔類にもあるんです。

単孔類の特徴2:卵を産む

先述したように、単孔類は卵を産む生き物です。卵を産む動物は”卵生”といわれます。卵生の動物は魚類や両生類、爬虫類、鳥類、昆虫など哺乳類以外のほとんどの生物が卵生です。それなのに哺乳類である単孔類も卵生だなんて驚きですね。一般的な卵を産む動物たちのように卵を温めて子供を孵化させるんですよ。

\次のページで「単孔類の特徴3:乳腺がある」を解説!/

次のページを読む
1 2
Share: