この記事では「子葉」について解説していくぞ!
子葉と聞くと、中学校で学習したことを思い出す人もいるかもしれませんね。植物の子葉は双子葉植物と単子葉植物で違いがあることを覚えている人も多いでしょう。しかしいざ子葉の働きを問われると、答えに困る人もいるかもしれない。植物の分類をおさらいしながら、子葉の役割について学んでいこう。
この記事では大学院で植物の研究をしていた理系院卒ライターtomato1121と解説していきます。

ライター/tomato1121

大学と大学院で学んだことを元に、生物の楽しさを伝えたいと思いライターになる。生物学の知識を分かりやすく伝え、多くの人に興味を持ってもらえるように日々奮闘中。

種子植物は裸子植物と被子植物に分けられる

image by iStockphoto

植物の分類からおさらいしていきましょう。まず、種子を作って次世代に子孫を残す植物を種子植物といいます。種子植物には構造の違いから、裸子植物被子植物に分類されますね。

裸子植物とは

裸子植物は胚珠がむき出しになっている植物です。胚珠に花粉が付着すると、花粉は胚珠にある穴(珠孔)から胚珠に入ります。すると花粉からは花粉管が伸び、その中で精細胞がつくられ、卵細胞と受精に至るのです。受精すると胚珠は種子になりますね。

代表的な裸子植物の例としては、イチョウ、ソテツ、マツなどがあります。

イチョウやソテツは花粉から精細胞ではなく、精子をつくる植物です。春に受粉した花粉は胚珠の花粉室という場所に入ります。そこから秋にかけて花粉室で精子を形成。鞭毛を使って卵細胞まで泳げるようになります。受粉してから精子の形成、受精に至るまでは約5か月かかるそうです。

被子植物とは

被子植物は胚珠のまわりが子房という組織で包まれている植物です。次世代の子孫になりうる大事な胚珠を、子房で保護しているようにも思えますね。

さて、被子植物は受粉したあとに花粉管を伸ばします。その花粉管内では、2つの精細胞がつくられることは覚えていますか。その2つの精細胞は胚珠の中の卵細胞と中央細胞にそれぞれ受精する重複受精という形式をとるのです。

受精した中央細胞は胚乳になります。受精した卵細胞は胚になり、やがて子葉や幼根、胚軸、幼芽へと分化。胚珠は種子となります。この重複受精は被子植物が進化の過程で獲得した、独特の現象なのです。

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裸子植物の子葉

Two month age sprouts of siberian pine.jpg
Sergey S. Dukachev - My Canon EOS 400D, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

ところで、裸子植物の子葉については授業で習ったことはないですよね。写真などでも、見たことがある人は少ないかもしれません。

実は裸子植物の子葉の枚数は植物によって、さまざまなのです。例えばイチョウやソテツなどは2枚。マツやスギは3枚以上の子葉を形成し、多子葉植物と呼ばれています。被子植物とは違い、子葉の枚数が同じ仲間の中でも異なるため、それ以上に分類はされていないようです。

人間や動物の赤ちゃんと同じで、植物の子葉も小さくてかわいいですよね。

被子植物の子葉

被子植物の子葉

image by Study-Z編集部

被子植物は普通、子葉が1枚の単子葉植物と、子葉が2枚の双子葉植物に分類されます。双子葉植物の芽生えを、小学1年生では双葉(ふたば)という言葉で学習するようです。

まずは最初に分類の説明から。植物は種子の成熟過程で胚乳がなくなる種類(無胚乳種子)と、胚乳に栄養を蓄える種類と(有胚乳種子)があります。双子葉植物は無胚乳種子がほとんど。実は、無胚乳種子と有胚乳種子で、それぞれで子葉が担う役割が異なるのです。

さらには無胚乳種子の中でも子葉が地中に残る地下子葉性の植物と、子葉が地上に出る地上子葉性の植物があります。それぞれについて子葉の役割をみていきましょう。

双子葉植物の子葉の役割1:栄養分の貯蔵

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双子葉類の無胚乳種子の子葉の役割として、栄養分の貯蔵を行う種類があります。発芽してから本葉で光合成が行われるまでに必要な栄養分が、子葉に蓄えられているのです。

地下子葉性の植物としてはドングリの仲間のコナラ、マメ科のエンドウ、ソラマメなど。これらの子葉は地中で種皮を付けたままの状態で、地上の茎や本葉に栄養を送る役割があります。もちろん光合成も行いません。

地上子葉性で代表的なものはマメ科のダイズやインゲンなどがあります。こちらの子葉も同様に栄養分を貯蔵していますが、子葉が地上に出るというところが大きな違いです。インゲンは成長とともに子葉の養分を使い、しぼんでいくことが簡単に観察できます。ダイズは本葉のように葉を大きく展開するわけではありませんが、緑化して光合成をすることも知られている植物です。

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双子葉類の子葉の役割2:光合成を行う

無胚乳種子の地上子葉性には、光合成をおこなって栄養を作り出す役割を果たしている種類もあります。アサガオやキュウリなどのウリ科、ダイコンなどのアブラナ科の植物などがありますね。発芽後には子葉を大きく展開して光合成をおこないます。小学生のときに、アサガオの観察をしたことがある人は多いのではないでしょうか。

そして、双子葉類で有胚乳種子である例としてよく挙げられるのがカキノキ。有胚乳種子は胚乳をもち、胚乳に蓄えられている養分を使用して発芽する植物です。

単子葉類の子葉の役割

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単子葉類はほとんどが有胚乳種子です。イネ科のイネ、ススキ、トウモロコシ、ユリ科のユリ、チューリップなどが該当します。種子の大部分が胚乳で占められている、つまり私たちが食べているお米やトウモロコシの大部分は胚乳ということです。

子葉については、単子葉植物は1枚で、細長い形状をしていること、ご存じのかたは多いですよね。実はイネ科の子葉は子葉鞘(または幼葉鞘などともいいます)と、胚盤という2つの部分から成り立っているのです。よく皆さんがイメージされる単子葉植物の子葉は子葉鞘の部分で、これは本葉の部分を守る働きをしています。そして見えていない胚盤の部分は、地中で胚乳の栄養を吸収して地上に送る役割を担っているのです。

環境に合わせて進化をとげてきた植物たち

この記事では植物の分類をおさらいし、子葉の役割や機能について解説いたしました。ひとことで子葉と言っても地上に出るものだけでなく、地下で人知れず栄養を送り続けている種類もあるなんて、ご存じでしたか。胚乳の有無や子葉の役割など、長い年月を経て、進化しながら生存してきたことが分かりますね。

また、植物も生き物ですから、例外もあります。ここで紹介しきれなかった植物で、どの項目にも当てはまらないような植物も出てくるかもしれません。

身の回りに何気なく存在している植物ですが、一度子葉にも目を向けてみると、おもしろいかもしれませんね。

" /> 子葉の役割について説明できる?植物の分類もあわせて理系院卒ライターが5分でわかりやすく解説! – ページ 2 – Study-Z
理科生態系生物

子葉の役割について説明できる?植物の分類もあわせて理系院卒ライターが5分でわかりやすく解説!

裸子植物の子葉

Two month age sprouts of siberian pine.jpg
Sergey S. Dukachev – My Canon EOS 400D, CC 表示-継承 3.0, リンクによる

ところで、裸子植物の子葉については授業で習ったことはないですよね。写真などでも、見たことがある人は少ないかもしれません。

実は裸子植物の子葉の枚数は植物によって、さまざまなのです。例えばイチョウやソテツなどは2枚。マツやスギは3枚以上の子葉を形成し、多子葉植物と呼ばれています。被子植物とは違い、子葉の枚数が同じ仲間の中でも異なるため、それ以上に分類はされていないようです。

人間や動物の赤ちゃんと同じで、植物の子葉も小さくてかわいいですよね。

被子植物の子葉

被子植物の子葉

image by Study-Z編集部

被子植物は普通、子葉が1枚の単子葉植物と、子葉が2枚の双子葉植物に分類されます。双子葉植物の芽生えを、小学1年生では双葉(ふたば)という言葉で学習するようです。

まずは最初に分類の説明から。植物は種子の成熟過程で胚乳がなくなる種類(無胚乳種子)と、胚乳に栄養を蓄える種類と(有胚乳種子)があります。双子葉植物は無胚乳種子がほとんど。実は、無胚乳種子と有胚乳種子で、それぞれで子葉が担う役割が異なるのです。

さらには無胚乳種子の中でも子葉が地中に残る地下子葉性の植物と、子葉が地上に出る地上子葉性の植物があります。それぞれについて子葉の役割をみていきましょう。

双子葉植物の子葉の役割1:栄養分の貯蔵

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双子葉類の無胚乳種子の子葉の役割として、栄養分の貯蔵を行う種類があります。発芽してから本葉で光合成が行われるまでに必要な栄養分が、子葉に蓄えられているのです。

地下子葉性の植物としてはドングリの仲間のコナラ、マメ科のエンドウ、ソラマメなど。これらの子葉は地中で種皮を付けたままの状態で、地上の茎や本葉に栄養を送る役割があります。もちろん光合成も行いません。

地上子葉性で代表的なものはマメ科のダイズやインゲンなどがあります。こちらの子葉も同様に栄養分を貯蔵していますが、子葉が地上に出るというところが大きな違いです。インゲンは成長とともに子葉の養分を使い、しぼんでいくことが簡単に観察できます。ダイズは本葉のように葉を大きく展開するわけではありませんが、緑化して光合成をすることも知られている植物です。

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