寒い日の朝、吐いた息が白くなることは当たり前ですね。ですが、「どうして寒い日に吐いた息は白くなるんだ?」
一見簡単な疑問に聞こえるかもしれないが、実はしっかりと説明できる大人は少ないでしょう。
この原理を知っていると、「雲のでき方」も説明できるようになるぞ。

今回は「なぜ寒い日に吐いた息は白くなるのか」、そして「どうやって雲ができるのか」という疑問の答えを化学に詳しいリックと一緒に紹介していきます。

ライター/リック

高校生で化学にハマり、大学院までずっと化学を勉強してきた化学オタク。今は化学メーカーで働きながら化学の楽しさを発信する。

私たちの周りにある「水」

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私たちの周りには常に「水」がありますよね。人間の体の約70%は水です。濡れた洗濯物や洗った食器が乾くのは、「液体」の水滴が蒸発して「気体」の水蒸気へ変わったからですよね。そして私たちの吐く息には、常に水蒸気が含まれています。

人の吐く息には、常に水蒸気が含まれているんです。

どうして寒いと息は白くなるのか

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さて、ここから本題の「どうして寒い日に吐く息は白くなるのか」を解説していきます。ポイントは「温度差」、「湿度」、「ちり」の3つ。1つずつ見ていきましょう。

温度差があるほど息は白くなりやすい

空気には、温度によってため込める水蒸気の量に違いがあります。暖かい空気は水蒸気をたくさん含むことができて、冷たい空気は水蒸気を少ししかため込むことはできません。これは、感覚的に分かりますよね。ちなみに、空気中にため込むことができる水蒸気量の限界を「飽和水蒸気量」といい、温度が高くなれば飽和水蒸気量が増え、低くなれば飽和水蒸気量は小さくなっていきます。

飽和水蒸気量よりも多くの水蒸気が空気中に存在すると、空気が水蒸気を含める量の限界を超えるので、限界を超えた分は水滴の水に変化して出てくるんです。

人の体内で温められた空気には、多くの水蒸気が含まれていますよね。ただ、それが口から出た瞬間に外気の温度はグッと下がるので、飽和水蒸気量もグッと小さくなるんです。そして飽和水蒸気量を超えた分が水滴になって白く見えるんですよ。

\次のページで「湿度が高いほど息が白くなりやすい」を解説!/

湿度が高いほど息が白くなりやすい

息が白くなるかどうかは、温度だけでなく、湿度も関係してきます!先ほどご紹介した「飽和水蒸気量」は湿度とすごく関係が深いです。飽和水蒸気量を超えると水滴に変化する…ということは、飽和水蒸気量へ近づくと湿度はどんどん高くなるんです!

湿度が高いと、すぐにその温度の飽和水蒸気量になってしまうので、息が白くなりやすいということです。ちなみに…人間の体温は36℃くらいですよね。36℃の飽和水蒸気量から考えると外気温が13℃くらいまで冷えていると、吐いた息は白くなってきます。

空気が汚れているほど息が白くなりやすい?

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息が白くなる時、水蒸気が冷やされて突然水滴に変化したように見えますよね。けれど、水蒸気が水滴に変化するためには温度や湿度ともう一つ大切なキーワードがあります。それが「核」があること。核とは、水蒸気が水滴に変わるときのきっかけになるモノなんです。

私たちの周りには空気中にたくさんの塵やほこりがフワフワと浮いています。この塵やほこりが核の役割を果たし、水蒸気中の水分子はくっつくのをきっかけにして水滴へ変化するんです。

南極では息は白くならない!?

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実は、地球上でもっとも寒い南極では、息は白くなりません。ポイントは水蒸気が水滴へ変わるときに必要な核の存在です。普通だったら、空気中に漂っているちりやほこりを核にするんですが…南極にはそれがありません。

南極は私たちの生活している環境よりもずっと空気がキレイで澄み切っているんですよ!なので、南極で息が白くなれば、それは南極の空気中にチリやほこりが増えてきたということ。南極の空気が汚染されたサインかもしれません…

雲ができるのも仕組みは同じ!

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息が白くなるのは、透明な水蒸気が冷やされて、水滴になることが原因でしたよね。実はこれ、「空に浮かぶ雲」や「遠くにモヤモヤして見える霧」ができるのも同じメカニズムなんですよ。

太陽の光で地表が温められると川や海の水も温められ、水は水蒸気へ変化していきます。空気中の水蒸気の量が増えていくわけですね。地表と上空では、上空の方が気温が低く、100mごとに約0.6℃気温は下がるんです。

地表付近で温められた水蒸気は上空へ上がっていき、上空で冷えると、小さな水滴や氷の結晶になります。これが集まると雲になるんです。

空に浮かぶ雲は、小さな水滴や氷の集まったモノなんですよ。水蒸気が集まるほど、水滴も大きく成長していきますよね。大きくなりすぎた水滴はやがて雨になって地上へ落ちていきます。そして、また地上で温められて水蒸気へ変わっていく…こうやって水は地球上で常に循環しているんです。

実は、霧がメカニズムも雲と同じ。「雲」と「霧」の区別は上空で水蒸気が冷やされてできたものが「雲」、地表付近で水蒸気が冷やされてできたものが「霧」という程度なんです。

\次のページで「雲は実は白くない!?」を解説!/

雲は実は白くない!?

雲は実は白くない!?

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雲や霧、そして白く見える息はの正体は「水蒸気が冷えてできた小さな水滴だ」とご紹介しました。ここで、こんな疑問が浮かびませんか?「水は透明なのにどうして雲や霧は白く見えるのか?」実際これは多くの子どもが疑問に思うことですよね。ここからは、どうして雲や霧が白く見えるのかをご紹介していきますね!

雲が白い理由を簡単に説明すると…「雲に光が当たると、その光があちこちに散乱されるから」というのが雲が白く見える理由です。図を見てもらうと分かりやすいかもしれません。空に浮かんでいる雲は空気中に浮かんでいる小さな水滴や氷の結晶が無数に集まってできています。その粒子は空気中の分子(酸素分子や窒素分子)に比べてとても大きいですよね。

雲に太陽の光が当たると、波長の長い光も波長の短い光も進む方向が変わります。雲であちこちに散乱した光が私たちの目に届くので、雲は私たちの目には白く見えるんです。

空が青い理由もこの理由とよく似ていて、青色の光の進む方向が変わっている(青色の光が散乱している)からなんですよ。

白い雲も透明な水蒸気も全部「水」、姿を変える水の面白さ

今回は「息が白くなる理由」「雲ができる理由」を解説しました。どちらも原理は同じで、ポイントは「温度」「湿度」「核」の3つ!

私たちの吐いた気、水たまり、海や川…そこから出たすべての水蒸気が空気中を漂い、上空で雲になります。雲の中の水滴は雨になってまた地表へ降ってくる。地球上を水は姿・形を変えながらずっと循環しているんです。

空に浮かぶ雲も私たちの吐いた息もすべて「水」ですが、見た目は全然違いますよね。地球を循環する水がどんな姿をしているのか、1部分だけを切り取ってもすごく奥が深くて「水」の面白さがわかります。

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意外と知らない!なぜ寒いと白い息が出るの?ポイントは温度と湿度!理系ライターがわかりやすく解説します!


寒い日の朝、吐いた息が白くなることは当たり前ですね。ですが、「どうして寒い日に吐いた息は白くなるんだ?」
一見簡単な疑問に聞こえるかもしれないが、実はしっかりと説明できる大人は少ないでしょう。
この原理を知っていると、「雲のでき方」も説明できるようになるぞ。

今回は「なぜ寒い日に吐いた息は白くなるのか」、そして「どうやって雲ができるのか」という疑問の答えを化学に詳しいリックと一緒に紹介していきます。

ライター/リック

高校生で化学にハマり、大学院までずっと化学を勉強してきた化学オタク。今は化学メーカーで働きながら化学の楽しさを発信する。

私たちの周りにある「水」

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私たちの周りには常に「水」がありますよね。人間の体の約70%は水です。濡れた洗濯物や洗った食器が乾くのは、「液体」の水滴が蒸発して「気体」の水蒸気へ変わったからですよね。そして私たちの吐く息には、常に水蒸気が含まれています。

人の吐く息には、常に水蒸気が含まれているんです。

どうして寒いと息は白くなるのか

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さて、ここから本題の「どうして寒い日に吐く息は白くなるのか」を解説していきます。ポイントは「温度差」、「湿度」、「ちり」の3つ。1つずつ見ていきましょう。

温度差があるほど息は白くなりやすい

空気には、温度によってため込める水蒸気の量に違いがあります。暖かい空気は水蒸気をたくさん含むことができて、冷たい空気は水蒸気を少ししかため込むことはできません。これは、感覚的に分かりますよね。ちなみに、空気中にため込むことができる水蒸気量の限界を「飽和水蒸気量」といい、温度が高くなれば飽和水蒸気量が増え、低くなれば飽和水蒸気量は小さくなっていきます。

飽和水蒸気量よりも多くの水蒸気が空気中に存在すると、空気が水蒸気を含める量の限界を超えるので、限界を超えた分は水滴の水に変化して出てくるんです。

人の体内で温められた空気には、多くの水蒸気が含まれていますよね。ただ、それが口から出た瞬間に外気の温度はグッと下がるので、飽和水蒸気量もグッと小さくなるんです。そして飽和水蒸気量を超えた分が水滴になって白く見えるんですよ。

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