今回のテーマは「アリの生態」というキーワードについて学習していこう。
アリは日常生活において身近な存在ですが、このアリはどのような生態なのかよくしらないのではないでしょうか?これを機会にアリの生態について、アリの中での役割分担やアリの種類も含めて学んで行こうじゃないか。
大学で生物を学び、現在は食品メーカーの研究員であるライター、ハナイグチに解説してもらおう。

ライター/ハナイグチ

大学で生物学を学び、現在は食品メーカーの研究員として勤務している。

サプリメントの広告を見るとついつい有効成分の含有量や作用機序を調べてしまう。

アリの社会は完全分業制

image by iStockphoto

アリの巣には大量のアリが住んでいます。小さいころアリの巣に小枝を突っ込んだりとちょっかいを出した結果、大量のアリの逆襲にあったという方もいるのではないでしょうか。

このようにアリは集団で協力し合って生活しているのですが、その役割はそれぞれきっちり分業されています

その通り!女王アリと働きアリとでも役割が違いますし、働きアリの中でも色々な業務が割り振られていて分業しているんです。

このように分業して生活する昆虫を社会性昆虫と呼び、アリはその代表例。他にはハチなどが挙げられますね。それではどのような役割に分業しているのか解説したいと思います。

女王アリ

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まずは女王アリです。この言葉は良く耳にするのではないでしょうか。女王アリの役割はズバリ産卵です。産んで産んで産みまくる、とにかく子孫を増していくのが女王アリの役割なんですね。

女王アリは遺伝的に決まっているわけではなく環境要因によって決定します。どのような要因が女王アリたらしめるのでしょうか。ミツバチの場合はローヤルゼリーを与えられた個体が女王バチになるのですが、アリについてはどうすれば女王アリになるのか詳しいことが未だ解明されておりません。まだまだ自然には不思議なことがいっぱいです。

ちなみに女王アリは次に記載する働きアリに比べてとっても長命。働きアリの寿命が3年程度であるのに対し、女王アリは10年くらい生きます。

女王というくらいですから1つの巣に1匹のみいるというイメージですが、実は複数存在する場合も少なくありません。複数存在する経緯としては、巣の外で交尾した女王アリが元の巣に戻ってくる場合や次世代の女王アリが同じ巣の中にいるオスと交尾をする場合などがあります。

\次のページで「働きアリ」を解説!/

働きアリ

働きアリ

image by Study-Z編集部

圧倒的に数が多いのが働きアリです。そして意外なことに働きアリの性別はメスのみ。ところが女王アリと違って働きアリは基本卵を産む能力はありません。例外として女王アリが不在であったり、死んでしまったりと子孫繁栄の危機が訪れた際には産めるようになる種も存在します。

働きアリという名前のとおり、このアリたちは生涯様々な仕事をし続けます。興味深いのはその仕事内容が年齢によって異なることです。生まれたばかりの若い個体は幼虫や卵のお世話、もう少し成長すると巣の維持、そして最後は巣の外にでてエサの調達を担います。このように年齢によって役割を分担することを齢間分業と言うんですよ。この年齢による分業、実はとってもシビアな理由があるんです。

それは「老いた個体が危険な巣の外で死んでしまっても集団全体にとって損失が少ない」という理由です。なんだか世知辛いですよね…。

働きアリの生態には他にも興味深いところがあります。それは働きアリの中でも「すごく働き者のアリ」と働きアリのくせに「サボりがちなアリ」がいるということです。なんだか人間みたいですね。さらに興味深いのはこの両者をそれぞれ選抜して別の集団にしてみると、そのなかでまた「働くアリ」と「サボるアリ」にわかれるということです。なんとも摩訶不思議。

オス

働きアリはメスばかりということはオスの役目は何なのでしょうか。オスの仕事は交尾をすることです。そして交尾のあとは力を使い果たして死んでしまいます。オスとメスの産み分けは受精卵か未受精卵かで決定するということは知っていますか。受精卵から生まれるのがメス。未受精卵から生まれるのがオスです。なのでオスはメスと比べて染色体の数が半分しかないことになります。

\次のページで「アリはどうやって意思疎通するの?」を解説!/

アリはどうやって意思疎通するの?

人間は他の人とコミュニケーションをとる際には言葉を使用しますよね。言葉を話すことができないアリはいったい何を使って意思疎通を図るのでしょうか。それはフェロモンです。フェロモンというとお色気ムンムンというのをイメージしてしまうかもしれませんが、それではありません。アリは揮発性の化学物質である様々なフェロモンを分泌することで他の個体とコミュニケーションをとっているのです。

それでは具体的にどのようなフェロモンを使っているのか見てみましょう。

警報フェロモン

警報フェロモンは巣の中に外敵が侵入した時に分泌されます。この情報を受け取った巣穴のアリ達は一斉に臨戦態勢になるわけです。

道しるべフェロモン

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道端で、綺麗な列になって歩いているのを見たことがありませんか?これは道しるべフェロモンによるものです。エサを見つけた個体はそこまでの道の目印として道しるべフェロモンを分泌しながら歩きます。フェロモンは揮発性の物質なので時間がたつと消えてしまうのですが、後をついてきた個体がさらに上書きするように道しるべフェロモンを分泌することで強固な目印となるのです。

こんなにいる!アリの種類

アリには様々な種類が存在し、世界中でなんと12908種類も報告されています。こんなにたくさんの種類がいたなんて驚きですよね。この章では様々な種類のアリについて解説したいと思います。

ハネアリの正体は?

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たまに羽が生えたアリを見かけることがありますが、そのようなアリを総称してハネアリと呼びますが、ハネアリという種類のアリなのではなく、同じ種類のアリでも羽が生えているものと生えていないものが存在します。

それではハネアリの正体はいったい何なのでしょうか。それは交尾をするために相手を探し求めている女王アリとオスアリです。巣穴の外で交尾相手を探すために移動手段として羽を生やしているんですね。無事に相手と交尾を終えた後、オスアリは前述のように死んでしまい、女王アリは自ら羽を取り除き新たに自分の巣を作り始めるのです。

このように新しく巣を作ることを営巣と言います。そうして卵を産み、新しい集団が生まれるのです。

身近なアリ

日本でよく見られるメジャーなアリはクロオオアリやクロヤマアリです。どちらも日本全国に広く分布しています。クロオオアリの方が大きくて、働きアリだと1cm程度、女王アリは2cm弱とかなり大型。対してクロヤマアリは働きアリは5mm程度で女王アリでも1cm程度の大きさしかありません。

この2種はもともと日本に存在した種なのですが、途中から日本に入ってきてしまったアリも存在しており、このようにもともとその地域にはいなかったにも関わらず、人間の活動によって他の地域から入ってしまった種を外来種と呼びます。日本にいるアリの外来種で問題となっている種として知られているのがアルゼンチンアリやヒアリです。

どちらも南米が原産で、アルゼンチンアリは今や世界的な害虫として知られており、攻撃性が高いために他のアリや昆虫を攻撃してしまい生態系に影響を与えてしまいます。ヒアリが日本で確認されたのは2017年と最近のこと。ヒアリはアルカロイド系の毒を持っているため、噛まれると激しい痛みとともに水疱上に腫れてしまいます。最悪の場合アナフィラキシーショックを起こすこともあるため深刻な被害に繋がる可能性があるのです。

他にも家を食べるアリとしてシロアリが知られていますが、アリと言いつつ厳密に言うとアリの仲間ではありません。社会性昆虫であることは一緒なのですが、どちらかというとアリよりもゴキブリに近い生き物なんですよね。

人間にとってアリは害虫でもありますから時には駆除が必要なときもあります。スプレーや毒入りの置きエサなど様々なタイプがありますのでトライしてみてください。

アリは社会性昆虫

アリは集団で生きていくためにきっちり仕事を分業して生活している社会性昆虫です。極限まで合理性を追求した形態であるがゆえに、年老いた個体を優先的に死の危険が伴う仕事に送り出すなど、人間に置き換えると残酷に思われる一面もあります。アリに限らず生き物の生態はそれぞれ生き抜くための戦略が詰まっているのでなかなか面白いですよね。

(出展:いらすとや)

" /> 完全分業制の集団!アリの生態とは?フェロモンやハネアリなどの種類について理系研究員がわかりやすく解説 – Study-Z
理科生物

完全分業制の集団!アリの生態とは?フェロモンやハネアリなどの種類について理系研究員がわかりやすく解説

今回のテーマは「アリの生態」というキーワードについて学習していこう。
アリは日常生活において身近な存在ですが、このアリはどのような生態なのかよくしらないのではないでしょうか?これを機会にアリの生態について、アリの中での役割分担やアリの種類も含めて学んで行こうじゃないか。
大学で生物を学び、現在は食品メーカーの研究員であるライター、ハナイグチに解説してもらおう。

ライター/ハナイグチ

大学で生物学を学び、現在は食品メーカーの研究員として勤務している。

サプリメントの広告を見るとついつい有効成分の含有量や作用機序を調べてしまう。

アリの社会は完全分業制

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アリの巣には大量のアリが住んでいます。小さいころアリの巣に小枝を突っ込んだりとちょっかいを出した結果、大量のアリの逆襲にあったという方もいるのではないでしょうか。

このようにアリは集団で協力し合って生活しているのですが、その役割はそれぞれきっちり分業されています

その通り!女王アリと働きアリとでも役割が違いますし、働きアリの中でも色々な業務が割り振られていて分業しているんです。

このように分業して生活する昆虫を社会性昆虫と呼び、アリはその代表例。他にはハチなどが挙げられますね。それではどのような役割に分業しているのか解説したいと思います。

女王アリ

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まずは女王アリです。この言葉は良く耳にするのではないでしょうか。女王アリの役割はズバリ産卵です。産んで産んで産みまくる、とにかく子孫を増していくのが女王アリの役割なんですね。

女王アリは遺伝的に決まっているわけではなく環境要因によって決定します。どのような要因が女王アリたらしめるのでしょうか。ミツバチの場合はローヤルゼリーを与えられた個体が女王バチになるのですが、アリについてはどうすれば女王アリになるのか詳しいことが未だ解明されておりません。まだまだ自然には不思議なことがいっぱいです。

ちなみに女王アリは次に記載する働きアリに比べてとっても長命。働きアリの寿命が3年程度であるのに対し、女王アリは10年くらい生きます。

女王というくらいですから1つの巣に1匹のみいるというイメージですが、実は複数存在する場合も少なくありません。複数存在する経緯としては、巣の外で交尾した女王アリが元の巣に戻ってくる場合や次世代の女王アリが同じ巣の中にいるオスと交尾をする場合などがあります。

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