氷と塩が合わさると2つの熱が発生する?
氷を使って飲み物の温度を下げるとき使われるのは「融解熱」でしたよね。氷から水へ融解するとき周りから熱を奪うので、温度が下がりました。そこに塩が合わさると、さらにもう一つ「溶解熱」が発生します。
溶解熱とは、溶媒に物質が溶けるときに発生する熱のことです。水に塩や砂糖が溶けるときに、実は熱が発生しています。「ホントに熱なんて発生しているの?」と不思議に思うかもしれませんが、実は物質が溶媒に溶ける前と後では、溶液の温度は変わっているんです。そして、溶解熱は溶質によって「発熱」か「吸熱」か変わります。
物質が液体に溶解するときに発生または吸収する熱量のことを溶解熱といいます。気体や液体が水に溶解するときは「発熱」することが多いですが、固体が溶解するときは「発熱する場合」と「吸熱する場合」があるんです。
硫酸や水酸化ナトリウムが水に溶解するとき、発熱しますが、一方で、食塩や塩化アンモニウムが水に溶解するときは吸熱します。
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溶解熱と融解熱の合わせ技で温度が下がる
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氷に塩をかけると、まず氷が融解して水に変化します。この時、融解熱が周りから熱を奪いますよね。そして、融解した水に塩が溶解する際の溶解熱は吸熱です。塩は水に溶けるとき、周りから温度を奪いながら溶解します。
塩が水に溶けるとき、さらに周りから熱を奪うんです。「融解熱」と「溶解熱」の合わせ技で、より熱を奪い、温度を下げることができるんですね。ちなみに、氷と塩を使って温度を下げると、-20℃程度まで温度を下げることができます。
どうして0℃で水は凍らないのか
ここで勘の鋭い人はこんな疑問が浮かぶかもしれません。「そもそも水の融点は0℃だから、-20℃まで温度が下がれば水が凍ってしまうのでは?」。実は、-20℃になっても塩が溶けた水は氷りません。これは凝固点降下と呼ばれる現象で、不純物が溶けた水の凝固点は低くなります。
どの程度、凝固点が低くなるかは、溶けている不純物のモル濃度から計算できるんです。溶けている不純物の量が多い(モル濃度が大きい)ほど、凝固点降下度は高くなります。つまり凝固点は低くなっていくんです。
2つの熱の合わせ技!温度が下がるだけでも化学の原理が使われている!
今回は「氷が温度を下げることができる理由」と「氷と塩をあわせることでさらに温度を下げることができる理由」を解説しました。
一般的な現象として、知っている方も多いと思いますが、実は「融解熱」「溶解熱」「凝固点降下」という化学のワードがたくさんちりばめられています。化学を使えば、どうしてその現象が起きるのか?が説明できるんですね。