メタンハイドレートという言葉を聞いたことがあるでしょうか。

メタンハイドレートとは…「燃える氷」とも呼ばれる新しいエネルギー源だ!実は日本周辺の海底に大量に存在しているぞ!

今回は日本のエネルギー問題を解決するかもしれない「メタンハイドレート」とはどんな物質なのか、化学に詳しいリックと一緒解説していくぞ!

ライター/リック

高校生で化学にハマり、大学院までずっと化学を勉強してきた化学オタク。今は化学メーカーで働きながら化学の楽しさを発信する。

メタンハイドレートとは

Burning hydrate inlay US Office Naval Research.jpg
パブリック・ドメイン, リンク

まずは、メタンハイドレートがどんな物質なのか、ご紹介していきますね。

メタンハイドレートとは、メタン分子が水分子に囲まれた、包接水和物の固体です。見た目は氷ですが、氷の中にメタンが閉じ込められているので、火を近づけると燃えます。なので、「燃える氷」とも呼ばれているんですよ。

メタンは、石油や石炭に比べて燃焼時の二酸化炭素の排出量が少ないので、地球温暖化対策としても有効な新しいエネルギー源とされているんです。ただし、メタンは化石燃料の1種なので、太陽光発電や風力・水力発電のような再生可能エネルギーには含まれません。

メタンってどんな物質?

メタンってどんな物質?

image by Study-Z編集部

ここでは少しだけ、メタンとはどんな物質なのか、ご紹介していきます。メタンは炭素1つに水素4つがくっついた化合物で化学式はCH4です。

融点は-183℃、沸点は-162℃で、常温常圧では無色、無臭の気体として存在します。天然ガスの主成分で、日本では都市ガスとして使われているんですよ。

沸点が-162℃とかなり低温なので、メタンガスや天然ガスは液体にするのがとても難しいんです。天然ガスは液体の状態で船で輸送されますが、天然ガスを運ぶタンカーのタンク内は実は、-162℃の超低温に保たれています。

そして、地上のタンクに貯められた天然ガスは都市ガスとして家庭や工場などに運ばれますが、液体にして運ぶことはできないので、パイプラインを通って、気体の状態で運ばれるんです!

燃焼時の二酸化炭素の排出量が石油や石炭に比べて少ないメタンですが、メタンガス自体は強力な温室効果ガスで、同量の二酸化炭素の20倍~70倍の温室効果をもたらすともいわれているんですよ!メタンガスは、地球温暖化を加速させてしまうんです。

確かに石油や石炭に代わる化石燃料になるかもしれませんが、メタンガスをそのまま空気中に放出させてしまうのは、地球温暖化の加速につながってしまいます。

メタンハイドレートは日本でも採れる!?

メタンハイドレートがどこで採れるかというと…実は日本近海の海底にもたくさん眠っています。水とメタンを混ぜただけでは、メタンハイドレートはできませんが、低温かつ高圧の条件下、つまり海底や永久凍土の中で長い年月をかけると少しずつ形成されていくんです。

日本のエネルギー自給率はとても低いのは知っていますか?2015年の日本のエネルギー自給率はなんと7%!資源の乏しい日本は、ほとんどのエネルギー源を海外からの輸入に頼っているんですね。

メタンハイドレートは日本のエネルギー問題も解決する重要なエネルギー源になるかもしれません。

だったら、石油みたいに海底に井戸を掘って採掘すればいいのでは?と思うかもしれませんが、実はそんなに簡単ではないんです…次は、メタンハイドレートの産出の課題をご紹介していきますね。

\次のページで「産出までには課題がいっぱい?」を解説!/

産出までには課題がいっぱい?

image by iStockphoto

ここからは、メタンハイドレートを産出するまでの課題をご紹介していきます。日本のエネルギー問題を解決するかもしれない「メタンハイドレート」は、新しいエネルギー源として有用だと注目はされていますが、まだ商業化には至っていません。

そこには、産出に大きな課題があります。

メタンハイドレートは「燃える氷」とも呼ばれているように、見た目は「氷」です。同じように海底から採掘する石油は液体で、井戸を掘ってあげると噴き出してくるため、比較的簡単に産出ができます。

ただ、メタンハイドレートは氷なので、井戸を掘ってあげても噴き出して吐きません。なので、メタンハイドレートを産出するために新しい技術の開発が必要なんです。

さらに、コストも大切ですよね。まだ研究段階のメタンハイドレートを安定して産出するためには膨大なコストがかかります。現状でコストを比較すると、天然ガスを海外から購入する方が安いので、「天然ガスを海外から買った方がお得」なんですよ…

世界のトップを走る日本の研究とは

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メタンハイドレートの産出方法の確立が急がれる現在ですが、日本の研究は世界のトップを走っています。国内のメタンハイドレート研究を引っ張っているのが、日本の研究機関の一つ「産業技術総合研究所」です。

産業技術総合研究所は国と協力して南海トラフに眠る「メタンハイドレート」の調査から産出のための試験まで行っているんですよ。

メタンハイドレートを効率的に生産する方法として「減圧法」を採用しています。これは、メタンハイドレートが眠る砂層まで掘削した井戸の中の水をポンプくみ上げて、周囲の圧力を減らすことで、メタンハイドレートを水とメタンに分解してから一緒にくみ上げる方法です。

くみ上げられた水とメタンを分離してメタンだけを回収することで、メタンハイドレートからエネルギー源のメタンを得る方法として注目されているんですよ。

地震が多い日本で採掘は危険?

メタンハイドレートは海底の地層から掘り出して産出します。海底の地層から物質をとりだすので、当然、地層には変化が起きますよね。

そして、日本は、世界的にも有名な地震大国です。しかも、メタンハイドレートが多く眠るのは南海トラフ地震が心配される海域なんですよ。「メタンハイドレートの産出で地震が引き起こされるのでは」「地震に井戸やポンプが耐えられるか」など、懸念点も多く議論されています。

メタンハイドレートはいつ頃実用化されるのか

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日本のエネルギー自給率を改善するかもしれない「メタンハイドレート」ですが、実用化にはあとどのくらい時間がかかるんでしょうか。

2021年11月に経済産業省からメタンハイドレートの研究開発実施スケジュールが発表されました。それによると、「2023年から2027年の間に、民間企業が主導する商業化に向けたプロジェクトが開始されることを目指す」とありました。

もうすぐ、民間企業も参画したプロジェクトが開始されるようですが…まだコスト的にも環境負荷的にも、解決しなければいけないことが多いので、メタンハイドレートが実用化されるのはまだまだ先のように思います。

\次のページで「日本のエネルギー問題を解決するエネルギー源?」を解説!/

日本のエネルギー問題を解決するエネルギー源?

今回は「メタンハイドレート」がどんな物質かをご紹介しました。

メタンハイドレートは、日本近海に存在しているので、日本のエネルギー問題を解決する救世主になるかもしれません。

ただ、技術的な問題地震という日本特有の問題も相まって実用化にはまだ時間がかかりそうです。今後「脱石油」が加速する中でメタンハイドレートの実用化も加速していくと思います。ぜひ、チェックしてみてください!

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化学理科

メタンハイドレートとは?実用化されると日本を救うかもしれない重要物質を理系ライターがわかりやすく解説!


メタンハイドレートという言葉を聞いたことがあるでしょうか。

メタンハイドレートとは…「燃える氷」とも呼ばれる新しいエネルギー源だ!実は日本周辺の海底に大量に存在しているぞ!

今回は日本のエネルギー問題を解決するかもしれない「メタンハイドレート」とはどんな物質なのか、化学に詳しいリックと一緒解説していくぞ!

ライター/リック

高校生で化学にハマり、大学院までずっと化学を勉強してきた化学オタク。今は化学メーカーで働きながら化学の楽しさを発信する。

メタンハイドレートとは

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まずは、メタンハイドレートがどんな物質なのか、ご紹介していきますね。

メタンハイドレートとは、メタン分子が水分子に囲まれた、包接水和物の固体です。見た目は氷ですが、氷の中にメタンが閉じ込められているので、火を近づけると燃えます。なので、「燃える氷」とも呼ばれているんですよ。

メタンは、石油や石炭に比べて燃焼時の二酸化炭素の排出量が少ないので、地球温暖化対策としても有効な新しいエネルギー源とされているんです。ただし、メタンは化石燃料の1種なので、太陽光発電や風力・水力発電のような再生可能エネルギーには含まれません。

メタンってどんな物質?

メタンってどんな物質?

image by Study-Z編集部

ここでは少しだけ、メタンとはどんな物質なのか、ご紹介していきます。メタンは炭素1つに水素4つがくっついた化合物で化学式はCH4です。

融点は-183℃、沸点は-162℃で、常温常圧では無色、無臭の気体として存在します。天然ガスの主成分で、日本では都市ガスとして使われているんですよ。

沸点が-162℃とかなり低温なので、メタンガスや天然ガスは液体にするのがとても難しいんです。天然ガスは液体の状態で船で輸送されますが、天然ガスを運ぶタンカーのタンク内は実は、-162℃の超低温に保たれています。

そして、地上のタンクに貯められた天然ガスは都市ガスとして家庭や工場などに運ばれますが、液体にして運ぶことはできないので、パイプラインを通って、気体の状態で運ばれるんです!

燃焼時の二酸化炭素の排出量が石油や石炭に比べて少ないメタンですが、メタンガス自体は強力な温室効果ガスで、同量の二酸化炭素の20倍~70倍の温室効果をもたらすともいわれているんですよ!メタンガスは、地球温暖化を加速させてしまうんです。

確かに石油や石炭に代わる化石燃料になるかもしれませんが、メタンガスをそのまま空気中に放出させてしまうのは、地球温暖化の加速につながってしまいます。

メタンハイドレートは日本でも採れる!?

メタンハイドレートがどこで採れるかというと…実は日本近海の海底にもたくさん眠っています。水とメタンを混ぜただけでは、メタンハイドレートはできませんが、低温かつ高圧の条件下、つまり海底や永久凍土の中で長い年月をかけると少しずつ形成されていくんです。

日本のエネルギー自給率はとても低いのは知っていますか?2015年の日本のエネルギー自給率はなんと7%!資源の乏しい日本は、ほとんどのエネルギー源を海外からの輸入に頼っているんですね。

メタンハイドレートは日本のエネルギー問題も解決する重要なエネルギー源になるかもしれません。

だったら、石油みたいに海底に井戸を掘って採掘すればいいのでは?と思うかもしれませんが、実はそんなに簡単ではないんです…次は、メタンハイドレートの産出の課題をご紹介していきますね。

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