栄養満点で朝食やおやつなどにもってこいのバナナ。ところで君はバナナの種を見たことはあるか?きっと見たことない人が多数でしょう。普通、植物や果物は種で数を増やしていくが、私たちが目にするほとんどのバナナには種がない。しかし実は、野生のバナナにはちゃんと種があるんです。ではどうやって種のないバナナが誕生したのか、なぜ種がないのに数を増やせるのかについて、大学時代、生物学を学んでいた農家出身ライターみんちが解説していきます。

ライター/みんち

実家が農家で、幼いころから生物学に興味を持ち、大学は獣医学部で動物や農学を学んだ。趣味は動物園巡り。ライターとして、初心者にもわかりやすく、質のある情報を提供できるよう、日々奮闘中。

フルーツの王様「バナナ」

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ねっとりした甘さが特徴のフルーツの王様「バナナ」安価で手ごろなのに栄養価値が高くダイエットや健康食品として重宝されています。暖かい東南アジアが原産地で、日本で消費されるバナナの95%がフィリピン産です。しかし意外にも、世界的な生産量の第1位はインド、2位が中国、インドネシアと続きます。世界では年間7千万トンも消費されており、色んな国の人から愛されているフルーツなんですね。

バナナの種はどこにある?

皆さんはバナナの種を見たことはありますか?実は普段、何気なく食べているバナナでもよ~く観察してみると種を見つけることができるんですよ。バナナを輪切りにして、断面を見てみてください。小さな黒いつぶつぶが見えますよね。実はその黒い小さなつぶがバナナの種の名残りなんです。では本来の種はどこに行ってしまったのか?次の章で詳しく解説していきましょう。

野生のバナナは種だらけ!

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野生のバナナは私たちが普段食べているものとは大きく異なります。現在育てられているバナナのほとんどは品種改良されたものですが、フィリピンの山奥には野生のバナナがまだ残っているそうですよ。野生のバナナは実が小さく、小豆ほどの大きさの種がチョコチップのようにたくさん入っています。サイズも小さく、普通のバナナの4分の1くらいの大きさです。とても食べにくそうですが、東南アジアの一部では今でも食べられているそうですよ。

バナナは突然変異で誕生

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普段、私たちが食べている種なしバナナは紀元前5000~1万年ごろに誕生しました。種なしバナナは三倍体でできています。三倍体の植物は子孫を残す能力が低いです。”子孫を残すのが困難”ということは、植物の子孫のもとである”種をつくれない”ということですね。

種なしのバナナは食べられる部分が多く、都合がよかったため大切に育てられるようになり、種のないバナナが定着していったと考えられます。同じような仕組みで他の種のない果物も作られるんですよ。バナナ以外にスイカやミカン、ぶどうなどがありますね。これらの種のないフルーツも、バナナと同じような仕組みで育てられます。

\次のページで「三倍体とは?」を解説!/

三倍体とは?

三倍体とは?

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三倍体とは、通常2本で構成される染色体の本数が何かの拍子で3本で構成された染色体のこと。私たち人間や植物は有性生殖という方法で子孫を残しますね。有性生殖を行う生物の染色体は2本で1セットで構成されており、二倍体といいます。これは私たちが子供を残すときに両親からの染色体を1本ずつもらって、2本で1セットの新しい染色体が生まれた状態です。それが突然変異や遺伝子操作などにより、3本で構成された染色体が誕生したとき、三倍体と言われます。このような仕組みで誕生した三倍体のバナナが「種なしバナナ」だったというわけです。

種がないのにどうやって増える?

普通、植物を増やすためには種が必要ですよね。しかし、種のないバナナはどのようにして年間7千万トンものの量を生産することができるんでしょうか?種がなくても子孫を残す方法を学んでいきましょう。

吸芽を利用する

種のないバナナを増やす方法として、茎の根っこにある吸芽(きゅうが)と呼ばれる新芽を使います。吸芽は親のバナナの根本から生えた小さな芽です。吸芽は切り取られると、次世代の株として2か月ほどかけて苗になり、大きな畑に植え替えられて成長します。3年ほど育てると実をつけ、今度は親となり新たな吸芽を根元につけるんです。このようにして、吸芽を利用してバナナは数を増やすことができるんですね。

家庭でバナナを育てるには

家庭でバナナを育ててみたいと思いませんか?最近は様々な植物や果物の苗が販売されていますよね。日本では沖縄でも三尺バナナという品種が栽培されています。背丈が小さめのバナナもあるので、条件さえ満たせば、あなたも家庭でバナナを育てることができますよ。

バナナを育てるための条件

バナナの苗木を育てる時には、以下の条件をクリアする必要があります。

豊富な太陽光  ・20℃~30℃の温度  ・広めの空間  ・たっぷりの水

バナナは熱帯地方の植物のため、気温管理は大変重要です。耐寒性が弱く、温度が低いと実をつけないため、東北などの寒い地域で実をつけさせたい場合は冬季は室内で冬越しさせるようにしましょう。生育中は水をたっぷり与えてあげるのもポイントです。また、苗を管理できるような広い敷地と、日光が当たりやすい向きや場所も確保しましょう。バナナは家庭菜園でも育てることができます。肥料や水の管理を怠らないようにすれば、立派な実をつけれくれることでしょう。野菜とはまた一味違った栽培を楽しんでみてください。

バナナで幸せホルモンアップ

最後に、バナナのすごい秘密をご紹介しましょう。健康食品やダイエット食品としても知られるバナナですが、身体の健康のみならず、精神的にも安定させる力があることが分かったのです。そこでキーワードになるのが「セロトニン」というホルモン。セロトニンは幸せホルモンとも呼ばれ、感情のコントロールや精神の安定に関わっています。バナナにはビタミンB6が多く含まれており、セロトニンを増やすために必要なトリプトファンという物資と結びつくことでセロトニンを合成しているんです。バナナのビタミンB6含有量は他の果物に比べても非常に高く、安価で気軽に手に入るため、セロトニンアップにおすすめの食材ともいえますね。

\次のページで「食べ物の見方を変えてみよう」を解説!/

食べ物の見方を変えてみよう

ここまで読んでいただきありがとうございました。今回の記事では、「バナナの種は突然変異によってなくなったこと」、「バナナは吸芽を利用して数を増やしている」などを紹介しました。また、本来の野生のバナナにはたくさん種がついていることや、バナナに精神を安定させる効果があったなんて驚きでしたね。当たり前に口にしていたバナナにこんなたくさんの秘密があったなんて興味深いです。バナナを食べ物としてだけでなく、「植物」という観点から見てみてみるのも案外面白いですね。食物を生産する過程を知ることで、食生活が豊かになるはずです。

画像使用元:いらすとや

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バナナの種を見たことある?種がなくても増える理由とは?バナナの秘密を生物学部卒ライターがわかりやすく解説!

栄養満点で朝食やおやつなどにもってこいのバナナ。ところで君はバナナの種を見たことはあるか?きっと見たことない人が多数でしょう。普通、植物や果物は種で数を増やしていくが、私たちが目にするほとんどのバナナには種がない。しかし実は、野生のバナナにはちゃんと種があるんです。ではどうやって種のないバナナが誕生したのか、なぜ種がないのに数を増やせるのかについて、大学時代、生物学を学んでいた農家出身ライターみんちが解説していきます。

ライター/みんち

実家が農家で、幼いころから生物学に興味を持ち、大学は獣医学部で動物や農学を学んだ。趣味は動物園巡り。ライターとして、初心者にもわかりやすく、質のある情報を提供できるよう、日々奮闘中。

フルーツの王様「バナナ」

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ねっとりした甘さが特徴のフルーツの王様「バナナ」安価で手ごろなのに栄養価値が高くダイエットや健康食品として重宝されています。暖かい東南アジアが原産地で、日本で消費されるバナナの95%がフィリピン産です。しかし意外にも、世界的な生産量の第1位はインド、2位が中国、インドネシアと続きます。世界では年間7千万トンも消費されており、色んな国の人から愛されているフルーツなんですね。

バナナの種はどこにある?

皆さんはバナナの種を見たことはありますか?実は普段、何気なく食べているバナナでもよ~く観察してみると種を見つけることができるんですよ。バナナを輪切りにして、断面を見てみてください。小さな黒いつぶつぶが見えますよね。実はその黒い小さなつぶがバナナの種の名残りなんです。では本来の種はどこに行ってしまったのか?次の章で詳しく解説していきましょう。

野生のバナナは種だらけ!

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野生のバナナは私たちが普段食べているものとは大きく異なります。現在育てられているバナナのほとんどは品種改良されたものですが、フィリピンの山奥には野生のバナナがまだ残っているそうですよ。野生のバナナは実が小さく、小豆ほどの大きさの種がチョコチップのようにたくさん入っています。サイズも小さく、普通のバナナの4分の1くらいの大きさです。とても食べにくそうですが、東南アジアの一部では今でも食べられているそうですよ。

バナナは突然変異で誕生

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普段、私たちが食べている種なしバナナは紀元前5000~1万年ごろに誕生しました。種なしバナナは三倍体でできています。三倍体の植物は子孫を残す能力が低いです。”子孫を残すのが困難”ということは、植物の子孫のもとである”種をつくれない”ということですね。

種なしのバナナは食べられる部分が多く、都合がよかったため大切に育てられるようになり、種のないバナナが定着していったと考えられます。同じような仕組みで他の種のない果物も作られるんですよ。バナナ以外にスイカやミカン、ぶどうなどがありますね。これらの種のないフルーツも、バナナと同じような仕組みで育てられます。

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