この記事では「長者の万灯より貧者の一灯」について解説する。

端的に言えば長者の万灯より貧者の一灯の意味は「形式より真心の方が大切であることのたとえ」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

塾講師を経験したナギセを呼んです。一緒に「長者の万灯より貧者の一灯」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ナギセ

塾講師経験のあるライター。もちろん国語も教えた経験あり。国語好きを生かし、楽しく解説する。

「長者の万灯より貧者の一灯」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「長者の万灯より貧者の一灯」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「長者の万灯より貧者の一灯」の意味は?

「長者の万灯より貧者の一灯」には、次のような意味があります。

金持ちの多くの寄進よりも、貧しい者の心のこもったわずかの寄進のほうが功徳が大きい。形式よりも真心が大切であるということのたとえ。貧者の一灯。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「長者(ちょうじゃ)の万灯より貧者の一灯」

あまり聞かない表現かもしれませんね。「万灯」は「まんとう」、「一灯」は「いっとう」と読みます。形より心がこもっていることの方が大切であるということです。皆さんは形式にとらわれて、そこに込めるはずの心をどこかに置いてきてしまってはいませんか?

「長者の万灯より貧者の一灯」の語源は?

次に「長者の万灯より貧者の一灯」の語源を確認しておきましょう。

お釈迦様が阿闍世王(あじゃせおう)に招待され、説法をしました。祇園精舎に帰る際、帰り道の大量の灯篭に王が灯をともしてくれます。そのときに貧しい老婆が現われ、自分も灯篭をあげようと思い、貧しいながらも工面してやっと灯をともしました。

すると、王のともした灯は油が亡くなって消えましたが、この老婆の灯は一晩中消えなかったのです。このような故事から由来しています。

\次のページで「「長者の万灯より貧者の一灯」の使い方・例文」を解説!/

「長者の万灯より貧者の一灯」の使い方・例文

「長者の万灯より貧者の一灯」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.お金持ちの先輩が多額の寄付金を出した。貧しい彼女も少ないバイト代の中からわずかばかり寄付をしたようだ。寄付金をもらった人々はとてもうれしそうである。長者の万灯より貧者の一灯だな。

2.「募金してきたんだ。まあ500円だけだけど。」

「いいじゃないの。長者の万灯より貧者の一灯って言うでしょ。心がこもってればいいのよ。」

贈り物は、内容や量で見栄を張ったものではなく、心を込めて少しでも何か贈りたいという気持ちが大事ですよね。相手を思い、何かをしたいという気持ち、大切にしていきたいです。

「長者の万灯より貧者の一灯」の類義語は?違いは?

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「長者の万灯より貧者の一灯」の類義語にはどのようなものがあるのでしょうか。早速見ていきましょう!

その1「志は木の葉に包め」

真心がこもっているなら、贈り物は木の葉に包むようなわずかなものでもよいということを表した慣用句です。贈り物の内容や量より、心がこもっているかどうかを大事にするということですね。

「志は笹の葉に包め」や「志なら松の葉に包め」とも言います。「心持ちは椎の葉」という類義語もあり、こちらはたとえ椎の葉に包むようなわずかなものでも、贈る人の真心さえこもっていればよいという意味です。

「志は木の葉に包めと言うだろう。金額は気にするな。」

\次のページで「その2「気は心」」を解説!/

その2「気は心」

額や量は少ないが、真心をこめているということを表した慣用句です。また、ほんの少しではあっても人に尽くせば心が安らぐものであり、真心の一端を表すものだという意味もあります。

贈り物をするときなどに使われる言葉ですが、最近はあまり使われませんね。

1.「気は心と言いますので、少しお値引きいたします。」

2.気は心だ。ほんのわずかでも何か贈り物をしておく方がよい。

「長者の万灯より貧者の一灯」の対義語は?

「長者の万灯より貧者の一灯」の対義語にはどのようなものがあるのでしょうか。見ていきましょう!

「上辺をつくろう」

内実とは違った見せかけのようすをつくることです。上辺はもともとは物の表面のことを指します。そこから、見せかけのようすや事情を指すようになったのです。「長者の万灯より貧者の一灯」が形式より真心を大切にすることのたとえであるのに対し、「上辺をつくろう」は真心や中身はおろそかにし、表面上のことだけ仕上げるという違いがあります。

1.「上辺をつくろうばかりじゃ、今にみんな離れていくよ。」

2.どんなに上辺をつくろっても、彼女を振り向かせることはできなかった。

3.上辺をつくろったものの、彼には見破られてしまった。

「長者の万灯より貧者の一灯」の英訳は?

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「長者の万灯より貧者の一灯」の英訳にはどのようなものがあるのでしょうか。見ていきましょう!

その1「A poor man's penny is better appreciated than a millionaire's pounds.」

上から順に説明していきますね。poorは貧乏なという意味です。pennyは通貨の単位のこと、もしくはわずかなお金のことを指します。better ○○ than~で~より○○という意味です。appreciateは高く評価する、ありがたく思うという意味になります。

millionaireは百万長者、大富豪のことです。poundsもpennyのように単位のことを表しています。1ペニーは日本円で言うと1円玉、1ポンドは日本円で言うところの100円玉です。

そこで、直訳すると「貧乏な男性の1ペニーは、大富豪の1ポンドよりもありがたい。」となります。

\次のページで「その2「A widow's mite.」」を解説!/

He just started working. He gave me a present, though he has little money. A poor man's penny is better appreciated than a millionaire's pounds.

(訳:働き始めたばかりでまだいくらも持っていないはずなのに彼は僕にプレゼントをくれた。長者の万灯より貧者の一灯だよ。)

その2「A widow's mite.」

widowとは未亡人のことです。miteはごく小さいものや少額の金のことを指します。そのため直訳すると「未亡人のわずかなお金」となるのです。ここでは未亡人は貧女ととらえられ、一般的に「貧女(貧者)の一灯」と訳します。

ちなみに未亡人という言葉は相手を傷つける恐れがあるので、面と向かって使わないようにしましょう。

「長者の万灯より貧者の一灯」を使いこなそう

この記事では「長者の万灯より貧者の一灯」の意味・使い方・類語などを説明しました。聖書に「寡婦の献金」というエピソードがあります。まさにこの慣用句とリンクするようなエピソードなので、ぜひ調べてみてください。

長者の万灯より貧者の一灯ですから、わずかなものでかまいません。これを機に何か贈り物をしてみても楽しいですね。

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【慣用句】「長者の万灯より貧者の一灯」の意味や使い方は?例文や類語を元塾講師がわかりやすく解説!

この記事では「長者の万灯より貧者の一灯」について解説する。

端的に言えば長者の万灯より貧者の一灯の意味は「形式より真心の方が大切であることのたとえ」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

塾講師を経験したナギセを呼んです。一緒に「長者の万灯より貧者の一灯」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ナギセ

塾講師経験のあるライター。もちろん国語も教えた経験あり。国語好きを生かし、楽しく解説する。

「長者の万灯より貧者の一灯」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「長者の万灯より貧者の一灯」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「長者の万灯より貧者の一灯」の意味は?

「長者の万灯より貧者の一灯」には、次のような意味があります。

金持ちの多くの寄進よりも、貧しい者の心のこもったわずかの寄進のほうが功徳が大きい。形式よりも真心が大切であるということのたとえ。貧者の一灯。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「長者(ちょうじゃ)の万灯より貧者の一灯」

あまり聞かない表現かもしれませんね。「万灯」は「まんとう」、「一灯」は「いっとう」と読みます。形より心がこもっていることの方が大切であるということです。皆さんは形式にとらわれて、そこに込めるはずの心をどこかに置いてきてしまってはいませんか?

「長者の万灯より貧者の一灯」の語源は?

次に「長者の万灯より貧者の一灯」の語源を確認しておきましょう。

お釈迦様が阿闍世王(あじゃせおう)に招待され、説法をしました。祇園精舎に帰る際、帰り道の大量の灯篭に王が灯をともしてくれます。そのときに貧しい老婆が現われ、自分も灯篭をあげようと思い、貧しいながらも工面してやっと灯をともしました。

すると、王のともした灯は油が亡くなって消えましたが、この老婆の灯は一晩中消えなかったのです。このような故事から由来しています。

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