「白金」と聞いて何をイメージするでしょうか。多くの人はジュエリーや装飾品をイメージするでしょう。

「白金」はテストで出題されることは少ないが、とても重要な元素です。
ジュエリーや装飾品としてのイメージが強いが、それ以外にも特に工業分野で重要な用途がある。それが「自動車の排ガス浄化システム」への利用や、環境に配慮した新しい自動車「燃料電池車」への利用です。

今回は「白金」の特徴とどんなところで使われているのか、化学に詳しいリックと一緒に解説していきます。

ライター/リック

高校生で化学にハマり、大学院までずっと化学を勉強してきた化学オタク。今は化学メーカーで働きながら化学の楽しさを発信する。

白金ってどんな物質?

白金ってどんな物質?

image by Study-Z編集部

白金は原子番号78番、元素記号はPtと書き、第10族元素に分類されます。周期表の第3族から第11族の元素は遷移元素とも呼ばれていて、高校化学では扱うことが少ない金属元素です。遷移元素に分類される金属はとても複雑ですが、面白い反応をするものもたくさんあるんですよ!

白金(Pt)は英語で「プラチナ」と呼ばれ、単体は銀白色の金属として存在します。融点は1768℃、沸点は3825℃、酸に対して強い耐食性があるのが特徴で、比重は21.45とすべての元素の中で3番目に高いんです。

化学的にとても安定なので、金や銀と同じように宝飾品として扱われます。

白金(Pt)の使用用途は宝飾品だけではありません。工業用に使われることが多く、主に自動車の排ガス浄化装置や燃料電池の触媒に使われます。白金は触媒としての能力が高いので、化学を勉強すると、白金を触媒にして反応を進める論文も見かけますよ。

プラチナは日本語で「白金」と書きます。白金は英語にすると「ゴールドホワイト」ですよね。

実は、宝飾品で「ゴールドホワイト」というものが使われていますが、これは、金をベースにした合金で、白金とは別物です。ややこしいですが…

白金は「貴金属」であり「レアメタル」

image by iStockphoto

貴金属という言葉、聞いたことありませんか?「貴金属」は希少性が高く化合物を作りにくい金属の総称です。この条件を満たす金属は意外と少なく、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、レニウム(Re)の9元素を一般的に貴金属元素と呼んでいるんです!

ここで疑問に思う方もいるかもしれませんが、「レアメタル」って聞いたことないですか?実は、「レアメタル」と「貴金属」は別モノなんです!稀少な金属であることは変わりませんが…

レアメタルは国際的に定義が定まっているわけではありませんが、埋蔵量が少なく稀少だが、現在工業用の需要があり、今後も需要の増加が予想される金属として、経済産業省が31種類の鉱物をレアメタルとして定義しています。白金(Pt)は「貴金属元素」にも「レアメタル」にも分類されているんです。とにかく稀少性が高く、工業的にも非常に重要な元素だということがわかりますね。

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白金はこんなところで産出される

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まずは、白金(Pt)の産出国を見ていきましょう。白金(Pt)はレアメタルの中でも希少性が特に高く、採掘ができるエリアは限られています。

2020年時点では産出国1位は南アフリカで産出量は約112トン。2位はロシア、3位はジンバブエ、4位はカナダと続いていきますが、南アフリカの産出量が世界シェアの約70%を占めており、世界で生産されるプラチナの半分以上は南アフリカで産出されています。

その理由は、南アフリカの「ブッシュフェルト」にある巨大な岩体です。ココには白金族元素を多く含む地層が見つかっており、多くの白金族元素が産出されています。

白金族元素とは、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)の6つの元素を総称した呼び方です。物理的性質や化学的性質がよく似ているので、ひとまとまりにして呼んでいます。

さらに、どれも希少な金属で、鉱石1トン当たり数グラム程度しか含まれていません。だいたい指輪1個分ですね…

日本でも白金は産出できる!?

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実は、白金(Pt)は日本でも見つかっています。北海道の天塩川や石狩川、新潟県でもごく少量ですが、白金(Pt)が存在が確認されているんです。

さらに、世界的に見ても白金の使用量が多い日本では、スクラップからプラチナなどの貴金属を取り出し、再度利用する「リサイクル」が盛んですよね。装飾品や電子機器、精密機器などには白金をはじめ様々な貴金属が使われています。しかも純度の高い状態で…なので、日本は都市鉱山としても注目されているんです!

白金はこんなところで使われます

ここからは、白金がどんなところで使われているのか、ご紹介していきます。白金の使われる主な用途は次の6つ。中でも多いのが使用量が多いのが「自動車部品への利用」です。

・パソコンやテレビなどの電化製品

・自動車の部品

・ペースメーカーやカテーテルなどの医療機器

・ジュエリー、宝飾品

・白金ナノコロイドなどの美容分野

・万年質のペン先

自動車の排ガス浄化システムに使われる白金

白金(Pt)は自動車の排ガス浄化システムに使われます。日本中どこを見回しても自動車は走っていますよね。ガソリン車やディーゼル車はガソリンや軽油をエンジンで燃やして走っているので、排気ガスの中には「一酸化炭素(CO)」や「硫黄酸化物(SOx)」、「窒素酸化物(NOx)」が含まれています。これらの酸化物には有害な物質もあるので、排気ガスを浄化してあげることが必要不可欠なんです。

白金(Pt)やロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)を混ぜた混合物を排気ガスの通り道にコーティングしておくことで、排気ガス中に含まれている有害物質を無害化して空気中に放出しています。

燃料電池に使われる白金

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実は、白金(Pt)は未来の自動車技術を担う重要な物質なんです。それが「燃料電池への利用」。白金(Pt)は燃料電池に必要不可欠な物質なんです。

燃料電池は、次世代のエネルギー供給源として注目されています。その理由は、電気エネルギーを取り出すとき、生成されるのは「水」だけで、二酸化炭素や窒素酸化物、硫黄酸化物など有害な物質や地球温暖化を進める物質を生成しないクリーンなエネルギーといえるからです。

自動車用燃料電池や家庭用燃料電池も開発が進み、トヨタ自動車から発売されている「MIRAI」は次世代の自動車として注目されています。

私たちの生活に必要不可欠な白金を学ぶ

今回は白金(Pt)の特徴と使用用途をご紹介しました。ジュエリーや装飾品に使われるイメージが強い白金(Pt)ですが、実は自動車や電化製品など私たちの生活を支える、とても大切な元素なんです。さらに、現在の自動車にも未来の自動車にも必要な元素なんですよ!

テストであまり出題されることはない元素ですが、この機会にぜひ白金(Pt)の特徴をチェックしてみてください!

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化学理科

白金とはどんな物質?読み方や特徴、プラチナとの違いを理系ライターが詳しくわかりやすく解説!

「白金」と聞いて何をイメージするでしょうか。多くの人はジュエリーや装飾品をイメージするでしょう。

「白金」はテストで出題されることは少ないが、とても重要な元素です。
ジュエリーや装飾品としてのイメージが強いが、それ以外にも特に工業分野で重要な用途がある。それが「自動車の排ガス浄化システム」への利用や、環境に配慮した新しい自動車「燃料電池車」への利用です。

今回は「白金」の特徴とどんなところで使われているのか、化学に詳しいリックと一緒に解説していきます。

ライター/リック

高校生で化学にハマり、大学院までずっと化学を勉強してきた化学オタク。今は化学メーカーで働きながら化学の楽しさを発信する。

白金ってどんな物質?

白金ってどんな物質?

image by Study-Z編集部

白金は原子番号78番、元素記号はPtと書き、第10族元素に分類されます。周期表の第3族から第11族の元素は遷移元素とも呼ばれていて、高校化学では扱うことが少ない金属元素です。遷移元素に分類される金属はとても複雑ですが、面白い反応をするものもたくさんあるんですよ!

白金(Pt)は英語で「プラチナ」と呼ばれ、単体は銀白色の金属として存在します。融点は1768℃、沸点は3825℃、酸に対して強い耐食性があるのが特徴で、比重は21.45とすべての元素の中で3番目に高いんです。

化学的にとても安定なので、金や銀と同じように宝飾品として扱われます。

白金(Pt)の使用用途は宝飾品だけではありません。工業用に使われることが多く、主に自動車の排ガス浄化装置や燃料電池の触媒に使われます。白金は触媒としての能力が高いので、化学を勉強すると、白金を触媒にして反応を進める論文も見かけますよ。

プラチナは日本語で「白金」と書きます。白金は英語にすると「ゴールドホワイト」ですよね。

実は、宝飾品で「ゴールドホワイト」というものが使われていますが、これは、金をベースにした合金で、白金とは別物です。ややこしいですが…

白金は「貴金属」であり「レアメタル」

image by iStockphoto

貴金属という言葉、聞いたことありませんか?「貴金属」は希少性が高く化合物を作りにくい金属の総称です。この条件を満たす金属は意外と少なく、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、レニウム(Re)の9元素を一般的に貴金属元素と呼んでいるんです!

ここで疑問に思う方もいるかもしれませんが、「レアメタル」って聞いたことないですか?実は、「レアメタル」と「貴金属」は別モノなんです!稀少な金属であることは変わりませんが…

レアメタルは国際的に定義が定まっているわけではありませんが、埋蔵量が少なく稀少だが、現在工業用の需要があり、今後も需要の増加が予想される金属として、経済産業省が31種類の鉱物をレアメタルとして定義しています。白金(Pt)は「貴金属元素」にも「レアメタル」にも分類されているんです。とにかく稀少性が高く、工業的にも非常に重要な元素だということがわかりますね。

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