
今回は有機水銀がキーワードです。
水銀は常温で液体の不思議な金属で、主に「金属水銀」「無機水銀」「有機水銀」の3つに分けられる。
有機水銀は、今ではほとんど使われていない物質ですが、絶対に学ぶべき物質です!その理由は「公害」です。
多くの人を苦しめてしまった「公害」を引き起こした原因物質が「有機水銀」です。
今回は有機水銀とはどんな物質なのか、そして有機水銀が引き起こした公害を化学に詳しいライターリックと一緒に解説していきます。
ライター/リック
高校生で化学にハマり、大学院までずっと化学を勉強してきた化学オタク。今は化学メーカーで働きながら化学の楽しさを発信する。
水銀とはどんな物質?
まずは、水銀がどんな物質か紹介していきます。水銀は原子番号80番の元素で、元素記号はHg。融点は約-39℃、沸点は約358℃、常温・常圧で凝固しない唯一の金属元素です。液体なのに金属という、とても不思議な物質ですね。銀のような白い光沢があることから名前がついています。
水銀は農薬に使われていた時もありますが、毒性や環境への負荷が非常に高いため、現在は環境基準や土壌汚染対策法などで、環境への放出が厳しく制限されている金属です。
水銀の種類は3種類

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水銀には金属水銀、有機水銀、無機水銀があります。人体に毒性が高い水銀ですが、特に毒性の高いのは有機水銀です。金属水銀は体温計や蛍光灯に、無機水銀は防腐剤や塗料に使われています。有機水銀は医薬品や農薬として使われていましたが、強い毒性のため、現在は使われていません。
金属水銀は誤って飲み込んだとしても消化器官から吸収されないので、現在も温度計や蛍光灯などに使われています。一方で、有機水銀、無機水銀はその毒性から現在は、よほど特殊な条件でない限り使用されていません。
3つの水銀の違いとは

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水銀には3つの種類があることを先ほど紹介しましたが、3つの違いも紹介していきます。まず、金属水銀は金属としての水銀です。化学式もHgですね。
次に有機水銀とは、炭素-水銀(C-Hg)結合を持つ有機金属化合物です。代表的な化合物はメチル水銀や酢酸フェニル水銀などがあります。無機水銀は炭素-水銀結合を持たない水銀化合物です。塩化水銀や酸化水銀、硫化水銀などがあります。
有機水銀が引き起こした「公害」とは

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水銀で最も有名なことは「公害」だと思います。学校の授業で必ず学習しますよね。まずは日本の4大公害を思い出してください。「水俣病」「新潟水俣病」「イタイイタイ病」「四日市ぜんそく」でしたよね。日本の高度経済成長期には、重化学工業化のために人の健康よりも経済発展が優先されてしまった時期がありました。その時期に起きてしまった、被害の大きな公害を4大公害とまとめています。
4大公害のうち、「イタイイタイ病」はカドミウムが、「四日市ぜんそく」は硫黄酸化物が、「水俣病」と「新潟水俣病」は有機水銀化合物のメチル水銀が原因物質だったんです。
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