今回はマンガンについて紹介していきます。マンガンと聞くと、マンガン乾電池を想像するでしょう。
確かに、マンガンは乾電池の正極によく使われている。それ以外にも、ある材料の原料として多用されているぞ!
中学の化学実験では触媒としても使われ、さらに、マンガンは人体にとっても重要な元素です!

今回はマンガンの工業的な用途と体内での重要な役割を化学に詳しいライターリックと一緒に解説していきます。

ライター/リック

高校生で化学にハマり、大学院までずっと化学を勉強してきた化学オタク。今は化学メーカーで働きながら化学の楽しさを発信する。

マンガンはどんな金属?

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マンガンは原子番号25番の金属元素で、元素記号はMnと書きます。周期表で見ると、第7族元素に属する「遷移金属元素」ですね。

マンガンの名前は「磁石」を意味するラテン語の「Magnes」が由来だそうです。単体は常磁性で、磁場を与えてあげると磁性を示しますが、磁石にくっつくほどではありません。ただ、マンガンの合金には磁石に引き寄せられる強磁性を示すものもあるんです。

工業的に重要な元素に位置付けられており、マンガン乾電池やアルカリ乾電池など電池の正極材料、マンガン鋼の材料など幅広く使われています。マンガンの使用用途は後から詳しく紹介していきますね。

マンガンはここで産出されている!

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ここからは、マンガンの産出に注目していきましょう。マンガンは単体として産出されることはなく、軟マンガン鉱(MnO2)や菱マンガン鉱(MnCO3)など鉱物として産出されます。化学式を見てわかるかもしれませんが、軟マンガン鉱は酸化マンガン鉱物、菱マンガン鉱は炭酸塩マンガン鉱物です。

世界のマンガン産出量を見ると、「中国」「南アフリカ」「オーストラリア」の産出量が多く、3ヵ国で世界生産量の70%以上を占めています。ちなみに、日本ではマンガン鉱石の産出は行われておらず、100%を海外からの輸入に頼っている状態です。主な輸入先は南アフリカとオーストラリアで特に輸入量の60%以上は南アフリカからなんですよ。

マンガンは「産業上重要性が高いが、産出地に偏りがあり供給体制が脆弱である」とされ、レアメタルに分類されています。そのため、国際情勢の急変などに備えて、国内消費量の最低60日分を国家備蓄すると決められているんです。

マンガンの用途をご紹介

ここからは、マンガンの用途を紹介していきます。その後、重要なポイントを詳しく紹介していきますね。

・ マンガン乾電池、アルカリ乾電池の正極材

・ マンガン鋼の原料

・ 触媒や酸化剤

・ 人体に必須のミネラル成分

\次のページで「マンガン鋼の原料として使われる」を解説!/

マンガン鋼の原料として使われる

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工業向けマンガンのほとんどはマンガン鋼の生産に使われています。マンガン鋼とは、ステンレス鋼からクロムの含有量を減らして、マンガンの添加量を多くした鋼のことです。高価なクロムの使用量を減らしてマンガンの使用量を増やしているので、まず値段が安く作れることがメリット。さらにマンガンを添加することで、耐摩耗性や機械的強度の高い鋼を作ることができます。

添加するマンガンの量を調整することで、機械的強度や耐摩耗性をコントロールできるので、製鋼所で目的に合ったマンガン鋼が作られているんです!さらに、材料の軽量化と高い機械的強度を実現するために、モリブデンを添加したマンガンモリブデン鋼も開発されています。マンガンモリブデン鋼は自転車のフレーム材料に使われているんですよ。

クロムの含有量が少ないため、耐酸化性はステンレス鋼より劣ります(ステンレス鋼よりさびやすい)。ですが、機械的な強度が高いため、車の車軸や橋梁、大型構造物の骨組みなどに使用されています。

マンガンは人体にも必須な元素だった!

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先ほどまでは金属マンガンの用途を紹介してきましたが、ここからはミネラルのマンガンを紹介していきます。マンガンは私たちの身体を健康に保つために必須のミネラル成分なんです。特に肝臓や膵臓、血液中に多く存在しています。

体内でのマンガンの働きを一覧でまとめましたので、ぜひチェックしてみてください。

1.酵素を活性化する(酵素の構成成分)

2.血液が作られるのを促進する

3.骨を強くする

4.脳にある「下垂体」を活発にする

5.生殖機能の低下を防止する

マンガンが不足すると、骨格の異常やたんぱく質などの代謝異常、ホルモン異常、生殖能力の低下など様々な身体の異常が起きる可能性があります。なので、マンガンは必須ミネラルに分類されており、普段の生活で食事やサプリメントから摂取する必要があるんです。

マンガンが多く含まれる食材とは

ここからは、マンガンを上手に摂取するために、マンガンが多く含まれている食品を紹介していきます。おすすめは玉露などの茶葉から抽出したお茶です。玄米ご飯、シジミやアサリなどの貝類にも多く含まれています。

マンガンの1日の摂取量の目安は成人男性は1日4.0mg、女性は1日3.5mg。1日の上限摂取量は男女ともに11mgと設定されています。マンガンは先ほど紹介した食品以外にも多くの食品に含まれているので、健康な人の通常の食事で不足することはまずありません。不足することはありませんが、逆に摂りすぎると危険なんでしょうか。

現在分かっている中では、マンガンの過剰摂取が健康上問題になる可能性は低いです。ただ、ミネラル成分の摂取量と人の健康状態は科学的に分からないことも多いので、摂りすぎには気をつけてください。

\次のページで「テストで出題されるポイント「二酸化マンガンの触媒作用」」を解説!/

テストで出題されるポイント「二酸化マンガンの触媒作用」

テストで出題されるポイント「二酸化マンガンの触媒作用」

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ここからは、テストで狙われるマンガンの特徴を紹介していきます。それは…「過酸化水素水から酸素を発生させる反応」です。これは、中学の化学で頻出なので絶対にチェックしておいてほしい反応なんですよ。

過酸化水素から水と酸素ができる反応なので、一見反応式自体は簡単に見えますよね。過酸化水素の分解反応は二酸化マンガンを入れると激しく進みます。この反応のポイントは「二酸化マンガンの働き」です。二酸化マンガンは「触媒」として働きます。

触媒とは何なのか、どうして触媒があると反応が進むのかはここでは省略しますが、別の記事で紹介しているので、興味のある人はぜひ調べてみてください!

工業分野にも人体にも必須元素「マンガン」を学ぶ

今回は金属元素のマンガンの特徴とミネラルのマンガンの特徴を紹介しました。

製鋼業界では、鋼の性質を調整するためマンガンは特に重要な元素です。そして、体内でもミネラルとしてのマンガンは重要な役割をしています。病気やケガを予防するためにも、マンガンを摂取することを意識してみるといいかもしれまんせん。

さらに、二酸化マンガンを触媒に使う「過酸化水素の分解反応」はほぼ必ず、テストで出題されるポイントです。絶対にチェックしておいてください。

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化学理科

マンガンとはどんな物質?工業用途と体内での重要な働きを理系ライターがわかりやすく解説



今回はマンガンについて紹介していきます。マンガンと聞くと、マンガン乾電池を想像するでしょう。
確かに、マンガンは乾電池の正極によく使われている。それ以外にも、ある材料の原料として多用されているぞ!
中学の化学実験では触媒としても使われ、さらに、マンガンは人体にとっても重要な元素です!

今回はマンガンの工業的な用途と体内での重要な役割を化学に詳しいライターリックと一緒に解説していきます。

ライター/リック

高校生で化学にハマり、大学院までずっと化学を勉強してきた化学オタク。今は化学メーカーで働きながら化学の楽しさを発信する。

マンガンはどんな金属?

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マンガンは原子番号25番の金属元素で、元素記号はMnと書きます。周期表で見ると、第7族元素に属する「遷移金属元素」ですね。

マンガンの名前は「磁石」を意味するラテン語の「Magnes」が由来だそうです。単体は常磁性で、磁場を与えてあげると磁性を示しますが、磁石にくっつくほどではありません。ただ、マンガンの合金には磁石に引き寄せられる強磁性を示すものもあるんです。

工業的に重要な元素に位置付けられており、マンガン乾電池やアルカリ乾電池など電池の正極材料、マンガン鋼の材料など幅広く使われています。マンガンの使用用途は後から詳しく紹介していきますね。

マンガンはここで産出されている!

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ここからは、マンガンの産出に注目していきましょう。マンガンは単体として産出されることはなく、軟マンガン鉱(MnO2)や菱マンガン鉱(MnCO3)など鉱物として産出されます。化学式を見てわかるかもしれませんが、軟マンガン鉱は酸化マンガン鉱物、菱マンガン鉱は炭酸塩マンガン鉱物です。

世界のマンガン産出量を見ると、「中国」「南アフリカ」「オーストラリア」の産出量が多く、3ヵ国で世界生産量の70%以上を占めています。ちなみに、日本ではマンガン鉱石の産出は行われておらず、100%を海外からの輸入に頼っている状態です。主な輸入先は南アフリカとオーストラリアで特に輸入量の60%以上は南アフリカからなんですよ。

マンガンは「産業上重要性が高いが、産出地に偏りがあり供給体制が脆弱である」とされ、レアメタルに分類されています。そのため、国際情勢の急変などに備えて、国内消費量の最低60日分を国家備蓄すると決められているんです。

マンガンの用途をご紹介

ここからは、マンガンの用途を紹介していきます。その後、重要なポイントを詳しく紹介していきますね。

・ マンガン乾電池、アルカリ乾電池の正極材

・ マンガン鋼の原料

・ 触媒や酸化剤

・ 人体に必須のミネラル成分

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