君はトカゲの自切という言葉を聞いたことはあるか?子供のころ「トカゲの尻尾は何度でも生えてくる」と聞いて、無邪気に捕まえたり、尻尾を切ったりした人もいるでしょう。実はトカゲの尻尾が切ってもまた生えてくるという噂は本当です。トカゲは身の危険を感じると尻尾を切ってしまう習性がある。これを”自切”という。トカゲの尻尾には簡単に切れるように特別な切れ目がついているんです。また、トカゲは尻尾が切れてもあとからまた生えてくる。人間は足がなくなってもまた生えてきたりはしないのに、なぜトカゲは尻尾が切れても生えてくるのでしょうか?今回はそんなトカゲの秘密について学生時代、獣医学部で動物のことを勉強していたライターみんちが解説します。

ライター/みんち

学生時代、獣医学部で動物の知識を学んだ。趣味は動物園巡り。最新の記事の情報も集めつつ、初心者にもわかりやすく、質のある情報を提供できるよう、日々奮闘中。

トカゲは尻尾を自切する!?

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自切(じせつ)とは、足やしっぽを自分で切り捨てる行動のこと。敵に襲われた時、自分の身を守るために行います。トカゲの場合、しっぽを切り離すことで有名ですね。

自切とは?

しっぽは脳や心臓と比べると、それほど生きるために必要な部分とは言えません。そのため、しっぽが切り離されるのです。ちなみにトカゲのしっぽは身体から切り離されてもしばらくの間ニョロニョロと動き続けます。敵がしっぽの動きに気を取られている間に自分は逃げるというわけです。

トカゲ以外にも、ミミズやカニのはさみ、バッタの後ろ足などでも自切は見られます。

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尻尾が切れる仕組み

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ここではどのようにしてトカゲのしっぽが切れるのか、詳しくみていきましょう。

その1:尻尾には特別な切れ目がついている

その1:尻尾には特別な切れ目がついている

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トカゲのしっぽには“脱離節(だつりせつ)”と呼ばれる節目があり、切れやすい構造になっているんですよ。トカゲのしっぽの骨は、小さなパーツが並んだような構造になっています。骨同士の間には割れ目があり、これが脱離節です。脱離節には膜で仕切りがあり、骨にくっついている筋肉もこの節目からきれいに離れるような仕組みになっているんですよ。切れ目はちょうどゆで卵の花形切りのようなギザギザな切り口になるそうです。

その2:尻尾は反射的に切れる

実はトカゲが意図的にしっぽを切っているわけではないんですよ。トカゲはしっぽに刺激が来ると、それが背骨の神経に伝わり、しっぽの筋肉が収縮することで切れてしまいます。私たちも、熱いやかんに触ったときとっさに手を引っ込めてしまいますよね?それと同じ原理で、トカゲも自分でしっぽを切ろうと思わなくても勝手に切れてしまうんです。これを反射運動(はんしゃうんどう)といいます。

その3:尻尾から血が出ない理由

「しっぽを切ったら血が出てしまうんじゃ…」と思ってしまいますが、実は大丈夫なんです。しっぽの切断面には出血を防いだり、傷を治す装置が備わっているんですよ。しっぽは切れると切断面の筋肉が収縮することで出血を抑えられるんです。万が一の事態に備えた体のつくりはすごいですね。

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尻尾が再生する仕組み

切れてしまったしっぽはまた生えてきますが、完全に元通りになるわけではありません。一回でも再生したしっぽには本当の骨はできません。骨の代わりに軟骨ができるんです。そのため、再生したしっぽをレントゲンで撮影すると骨は見えないんですよ。

特徴1:再生した尻尾には骨がない!

また、再生したしっぽは見た目でも判断することができます。体色が異なっていたり、元のしっぽに比べ、長さが短くなっていたりすることがあるんですよ。まれに、再生がうまくいかず、2,3本のしっぽになってしまう例もあるそうです。

特徴2:再生には特殊な遺伝子が働いている

切れてしまったしっぽは一体どのようにして元通りになるのでしょうか?

しっぽがまた生えてくる理由は、しっぽを生やすための特殊な遺伝子が働いているから。しっぽが切り離されると、むき出しになった状態の筋肉の部分に徐々にふくらみができるのですが、これは再生芽とよばれます。この再生芽の形成に関わっているのが筋肉に含まれる神経幹細胞という細胞。この細胞は、将来色々な細胞に変身できるスゴものなんです。このおかげで、再生芽は徐々に伸びていって新しいしっぽを作ることができるんですね。

特徴3:再生にはたくさんのエネルギーが必要

トカゲのしっぽは切れても再生する能力を持っていますが、実際にはとてもエネルギーを使うため大変なことなんです。そのため、しっぽの再生はせいぜい1~2回が限界。しっぽには大切な栄養源が入っているため、切れてなくなってしまうと栄養状態が悪くなり、体調を崩してっしまったり、メスの場合、卵を産めなくなってしまうなどの支障が出てしまいます。

また、一度とれてしまったしっぽが元通りの大きさになるのにかかる期間は種類によってさまざまですが、中には8か月かかるものも。しっぽは切れても再生しますが、トカゲにとってはとても損なことなので、トカゲを見つけてもむやみに切ったりしないようにしてくださいね。

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再生医療への応用

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トカゲがしっぽを再生するメカニズムは、人間の再生医療の現場でも応用できないかと、研究が進められています。トカゲに似ている生き物、イモリを知っていますか?イモリはトカゲ以上の再生能力を持っています。トカゲの場合、再生するのはしっぽだけですが、イモリは目や足、心臓や脳の一部などを切り取っても再生するのです。まだ、その詳しいメカニズムは解明されていませんが、いつか治療によってイモリのように失った手足を元通りに治すことができるようになるかもしれません。

トカゲはスゴい再生能力の持ち主

ここまで読んでいただきありがとうございました。今回はトカゲがしっぽを自切するときの詳しいメカニズムについて解説してきました。トカゲは身の危険を感じると反射的にしっぽが勝手に切れてしまうこと、再生して生えたしっぽには骨が入っていないなんて驚きでしたね。また、しっぽを再生させる能力が再生医療の研究に応用されているなんてトカゲは私たちの健康を守る可能性を秘めたスゴい動物なんですね。

こんな事実を知ってしまうと、つい好奇心でトカゲを見つけたらしっぽを切ってしまいたくなってしまいますが、トカゲにとっては大変ご迷惑なことです。また、同じ爬虫類でトカゲの仲間でも自切をしないトカゲもいます。ですので、むやみにトカゲのしっぽを切らないようにしましょうね。自分の身体を犠牲にして懸命に生きるトカゲさんたちをどうか優しく見守ってあげてくださいね。

画像使用元:いらすとや

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トカゲの尻尾は自切する!?また生えてくる仕組みは?詳しいメカニズムについて獣医学部卒ライターがわかりやすく解説!

君はトカゲの自切という言葉を聞いたことはあるか?子供のころ「トカゲの尻尾は何度でも生えてくる」と聞いて、無邪気に捕まえたり、尻尾を切ったりした人もいるでしょう。実はトカゲの尻尾が切ってもまた生えてくるという噂は本当です。トカゲは身の危険を感じると尻尾を切ってしまう習性がある。これを”自切”という。トカゲの尻尾には簡単に切れるように特別な切れ目がついているんです。また、トカゲは尻尾が切れてもあとからまた生えてくる。人間は足がなくなってもまた生えてきたりはしないのに、なぜトカゲは尻尾が切れても生えてくるのでしょうか?今回はそんなトカゲの秘密について学生時代、獣医学部で動物のことを勉強していたライターみんちが解説します。

ライター/みんち

学生時代、獣医学部で動物の知識を学んだ。趣味は動物園巡り。最新の記事の情報も集めつつ、初心者にもわかりやすく、質のある情報を提供できるよう、日々奮闘中。

トカゲは尻尾を自切する!?

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自切(じせつ)とは、足やしっぽを自分で切り捨てる行動のこと。敵に襲われた時、自分の身を守るために行います。トカゲの場合、しっぽを切り離すことで有名ですね。

自切とは?

しっぽは脳や心臓と比べると、それほど生きるために必要な部分とは言えません。そのため、しっぽが切り離されるのです。ちなみにトカゲのしっぽは身体から切り離されてもしばらくの間ニョロニョロと動き続けます。敵がしっぽの動きに気を取られている間に自分は逃げるというわけです。

トカゲ以外にも、ミミズやカニのはさみ、バッタの後ろ足などでも自切は見られます。

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