
植物が光を感じて花芽形成を制御する仕組みとは?

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ここまで短日植物の特徴や光周性について解説しましたが植物は一体どのような仕組みで光を感じているのでしょうか?そして花芽形成に適した光周期であると認識した際に花成を促進している物質はなにか、それぞれ詳しく学習しましょう。
光受容体「フィトクロム」が光を感じている!

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植物が自然環境で光環境を認識する時には光受容体を用いています。植物の光受容体は数種類ありますが、その中で最も有名なのは赤色の光を受容する「フィトクロム」です。フィトクロムは赤色の光の波長を区別して認識していて、赤色光と遠赤色光をそれぞれ認識できます。そしてフィトクロムは赤色光を吸収するとPfr型(活性型)、遠赤色光を吸収するとPr型(不活性型)に変化するという特徴を持っているんです。
太陽光には赤色光も遠赤色光も含まれていますが、光合成に必要なのは赤色光で遠赤色光は使われません。すなわち太陽光が当たっている葉では赤色光を吸収してフィトクロムがPfr型になり、反射された遠赤色光は光が当たっていない(=陰になっている)葉のフィトクロムに吸収されるためPr型になります。このような仕組みで植物は光を感じているのです。
植物ホルモン「フロリゲン」が花芽形成を誘導している!

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植物は花芽形成に適した光周期であると認識すると、葉で「フロリゲン」と呼ばれる植物ホルモンを合成します。フロリゲンは花芽形成を誘導する働きがあり、長日植物と短日植物のどちらにも存在しているんです。このフロリゲンが師管を通って茎頂分裂組織(けいちょうぶんれつそしき)と呼ばれる葉や茎や花など植物の地上部をつくり出す組織に運ばれ、花芽の形成が開始されます。実はフロリゲンは植物が花を咲かせる時期をどのように決めているのかを研究している過程で発見され、フロリゲンの量を調節することで花芽形成を早めたり遅くしたりすることで開花する時期をずらす研究も行われているんですよ。フロリゲンの研究は日本の研究者の活躍も大きく、花芽形成以外にも働くことが分かってきている非常に面白い植物ホルモンです。
人工的に日長を変えて開花時期を調整するキクの電照栽培
キクの電照栽培を知っていますか?電照栽培とは植物の光周性を利用して、光を当てる時間を人為的に調節して花芽の形成を促進したり抑制したりすることによって開花時期を調整する栽培方法です。
キクは通常は秋にしか花が咲きませんが、電照栽培を行うことで開花時期を調節し、年間を通して出荷することができます。具体的な方法としては花芽ができる前の時期の夕方〜夜にかけて光を当てることで、人工的に日照時間を長くして開花時期を遅らせるのです。このような処理をすることで、菊の需要が多いお正月などの冬の時期でもつぼみの状態で菊を出荷でき、購入者の元に届く時には花が咲いた状態となります。電照栽培はキク以外にもイチゴやレタスなどの果物や野菜に利用されていて、私たちが年間を通して美味しい野菜が食べられるよう植物の光周性を上手に使った栽培方法なのです。