この記事では「泣きを入れる」について解説する。

端的に言えば「泣きを入れる」の意味は「許しを請うこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「泣きを入れる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「泣きを入れる」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「泣きを入れる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「泣きを入れる」の意味は?

「泣きを入れる」には、次のような意味があります。

1 泣きついてわびをいい、許しを求める。哀願する。「借金が返せなくて—・れる」
2 相場の暴騰・暴落のとき、売り方または買い方が相手方に対して、相当の値段での解約を頼む。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「泣きを入れる」

この言葉は「許しを求める」または「泣くほどに、何かをお願いすること」を意味する慣用表現です。

ただ「謝る」だけではなく、「泣くほど必死に」言い訳をしたり頼み込んだりと、何かを強く求めることが多いのに要注意。謝るのは前提で、その先で相手に何かをして欲しいという要求がよく表れます。見逃さないようにしましょう。

なお、引用の2の意味「取引の解約を頼むこと」もあるのですが、専門用語のため入試レベルで問われることはあまりありません。ただこちらも「相手に何かをお願いをする」ため、意味は文脈からも判断できるはず。もし出題されても、落ち着いて対処しましょう。

「泣きを入れる」の語源は?

次に「泣きを入れる」の語源を確認しておきましょう。「泣き」はそのまま「悲しい気持ちや動作のこと」で、「入れる」は「外側から何かを作用させること」。「横槍を入れる」などの表現を聞いたことがあるでしょう。

「泣きを入れる」に近い表現としては「詫びを入れる」もありますね。本来、許してもらえないところに「泣き・詫び=感情的なこと」を持ち出し、相手の心に作用させてOKをもらう、というのがこの言葉の肝なのです。

そのため、実際に涙を流す必要もありません。相手の心に訴えるようなことを言うだけでも「泣きを入れる」になります。動作をする人も、子供から大人まで広く使える表現です。

特に周囲との繋がりに敏感とも言われる日本では、「泣きを入れ」てコミュニケーションをしようとするのは、よく見られる光景かもしれません。自分の周りでもそんなことがないか想像してみてくださいね。

\次のページで「「泣きを入れる」の使い方・例文」を解説!/

「泣きを入れる」の使い方・例文

「泣きを入れる」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

・携帯を落としてしまいランキングアプリにログインできなくなって、デイリーボーナスを逃した僕は、サービスを運営している一般社団法人に泣きを入れたが、当然認めてもらえなかった。

・爆発的な感染症の拡大という事態のため、病院からの納品契約や価格更新が遅れに遅れたものの、それで泣きを入れられたどうしようもできないと業者の友人がボヤいていた。

・投資家には株価が急落した際のリスクを回避する方法がいくつかあるものの、一般的に責任の多くは当人にあり、往生際が悪いと誰にも泣きを入れられない状態になることもある。

「相手にお願いを、それも強いお願いをしている」というニュアンスが伝わりますでしょうか。お願いをしている人の「どうしても、そこをなんとか」という気持ちが込められているのを読み取りましょう。

ただ、最終的には相手の「情」に訴えることで結果を変えようとしていますので、場合によっては少し「ずるい」意味合いを帯びてくる場合もあることには注意。

たとえば「試験の悪い点数を許して欲しい」や「借金の返済期限を延ばして欲しい」などなど「泣きを入れる」場面を想像してみると、そもそもの良くない結果は本人に大きく責任があることも考えられます。

どんな理由や気持ちで「泣きを入れ」ているのかについて複雑な事情があることもあり、しっかり背景まで読み取る必要がある表現です。

「泣きを入れる」の類義語は?違いは?

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「泣きを入れる」の類義語は「平身低頭(へいしんていとう)」を紹介します。

「平身低頭」

「平身低頭」は「ひれ伏して、頭を深く下げてぺこぺこすること」を意味する四字熟語です。「泣きを入れる」との違いは、こちらは「ひたすら謝る。恐れ入る」というニュアンスが強く、何かをお願いする部分はあまり出てこない点。

使われている感じの通り「身を平らにして」「頭を低くする」わけですから、地面と平行になるくらいひれ伏しているイメージです。深く強い謝罪を表したい時には、こちらの言葉を使うといいでしょう。

\次のページで「「泣きを入れる」の対義語は?」を解説!/

研究会のための重要な資料を紛失してしまった私は、とにかく平身低頭して謝ることしかできなかった。

「泣きを入れる」の対義語は?

「泣きを入れる」の対義語は「問答無用(もんどうむよう)」を紹介します。

「問答無用」

「問答無用」は「議論をしても何の意味もないこと」を意味する四字熟語です。

「問答」は「問うこととと答えること」で、それが「無用=対話する必要はない」ということを意味しています。相手に謝って交渉しようとする「泣きを入れる」とは正反対に、完全に対話を拒否する強い表現と言えるでしょう。

マンガやドラマで「問答無用!」なんてセリフを聞いたことがある人も多いと思いますが、実はこんな意図がある言葉だったのです。漢字を分解して考えると、よくわかりますね。

難しいと評判のあの日本語検定では、漢字の読み方を間違えたら問答無用で失格になってしまうらしい。

「泣きを入れる」の英訳は?

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「泣きを入れる」の英訳は「beg one for mercy」で表すことができます。

「beg one for mercy」

これは「one(人)に、慈悲や親切を乞う」という意味のフレーズです。

動詞「beg」だけでも「請う、懇願する」という意味がありますが、「for mercy(慈悲・親切を)」と付けることで、より相手に対して配慮を求めていることを表現できるでしょう。

ちなみに「beg」は「beg+人+for+物」「beg+物+ from+人」と、語順によって前置詞が変わる点にも注意したい単語ですよ。

\次のページで「「泣きを入れる」を使いこなそう」を解説!/

He begged the teacher for mercy to sweeten the exam results.
彼は試験結果を甘くしてくれるよう、先生に泣きを入れた。

「泣きを入れる」を使いこなそう

この記事では「泣きを入れる」の意味・使い方・類語などを説明しました。時代劇などで割とある、お百姓さんが取り立てに対して土下座をして期限を延ばしてもらおうとするシーンも「泣きを入れる」動作。

頭をひたすら下げてお願いするのがあまり珍しく感じられないのは、そんなやり取りが昔からよくあったからなのでしょうか。ただ現代であっても、何度も何度もやっていたら効果は半減。「泣きを入れる」なら、本当に必要なその時だけにしたいものですね。

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国語言葉の意味

【慣用句】「泣きを入れる」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校講師がわかりやすく解説!

この記事では「泣きを入れる」について解説する。

端的に言えば「泣きを入れる」の意味は「許しを請うこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

教師や講師としても教えることに関わってきた「やぎしち」を呼んです。一緒に「泣きを入れる」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/やぎしち

雑学からビジネス文章まで手掛ける現役ライター。国語の中学・高校教諭の資格も持ち、予備校講師の経験も。言葉を大切にした文章を心掛けている。

「泣きを入れる」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「泣きを入れる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「泣きを入れる」の意味は?

「泣きを入れる」には、次のような意味があります。

1 泣きついてわびをいい、許しを求める。哀願する。「借金が返せなくて—・れる」
2 相場の暴騰・暴落のとき、売り方または買い方が相手方に対して、相当の値段での解約を頼む。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「泣きを入れる」

この言葉は「許しを求める」または「泣くほどに、何かをお願いすること」を意味する慣用表現です。

ただ「謝る」だけではなく、「泣くほど必死に」言い訳をしたり頼み込んだりと、何かを強く求めることが多いのに要注意。謝るのは前提で、その先で相手に何かをして欲しいという要求がよく表れます。見逃さないようにしましょう。

なお、引用の2の意味「取引の解約を頼むこと」もあるのですが、専門用語のため入試レベルで問われることはあまりありません。ただこちらも「相手に何かをお願いをする」ため、意味は文脈からも判断できるはず。もし出題されても、落ち着いて対処しましょう。

「泣きを入れる」の語源は?

次に「泣きを入れる」の語源を確認しておきましょう。「泣き」はそのまま「悲しい気持ちや動作のこと」で、「入れる」は「外側から何かを作用させること」。「横槍を入れる」などの表現を聞いたことがあるでしょう。

「泣きを入れる」に近い表現としては「詫びを入れる」もありますね。本来、許してもらえないところに「泣き・詫び=感情的なこと」を持ち出し、相手の心に作用させてOKをもらう、というのがこの言葉の肝なのです。

そのため、実際に涙を流す必要もありません。相手の心に訴えるようなことを言うだけでも「泣きを入れる」になります。動作をする人も、子供から大人まで広く使える表現です。

特に周囲との繋がりに敏感とも言われる日本では、「泣きを入れ」てコミュニケーションをしようとするのは、よく見られる光景かもしれません。自分の周りでもそんなことがないか想像してみてくださいね。

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