「重炭酸ナトリウム」聞いたことあるでしょうか?
実は、この化合物にはもう一つ呼び方がある。それが「炭酸水素ナトリウム」だ!この名前なら聞いたことある人も多いでしょう。

重炭酸ナトリウムは生活の中に密接に関わっている物質で、テストでも頻出です。ぜひチェックしてほしい!

今回は重炭酸ナトリウムの特徴や用途、さらにテストでよく出題されるポイントを化学に詳しいリックと一緒に解説していきます。

ライター/リック

高校生で化学にハマり、大学院までずっと化学を勉強してきた化学オタク。今は化学メーカーで働きながら化学の楽しさを発信する。

重炭酸ナトリウムとは

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重炭酸ナトリウムと聞くと、どんな物質だっけ?とすぐに思い浮かばない方も多いと思います。重炭酸ナトリウムには別の名前があり、それが「炭酸水素ナトリウム」です。炭酸水素ナトリウムは聞き覚えのある方が多いんじゃないでしょうか?中学の理科の実験でも使われる薬品ですね。

重炭酸ナトリウムは、私たちの生活の中にも使われる便利な物質なんです。

まずは…重炭酸ナトリウムってどんな物質?

まずは重炭酸ナトリウムがどんな物質かご紹介していきます。

「重炭酸ナトリウム」はナトリウムイオン(Na+)と炭酸水素イオン(HCO3⁻)がイオン結合した化合物です。常温で白色の結晶で、水に溶けると水溶液は弱アルカリ性になります。

重炭酸ナトリウムはこうやって作られる!

次は、重炭酸ナトリウムの製造方法をご紹介していきますね。重炭酸ナトリウムは「ソルベー法」という方法で工業的に生産されていました。ソルベー法は炭酸ナトリウムを得るための方法ですが、重炭酸ナトリウムも反応の途中で回収できます。1861年にベルギーの化学者のエルネスト・ソルベイによって考案されました。炭酸ナトリウムはガラスの原料になるので、「ソルベー法」は歴史的に見て、とっても大切な生産方法なんです!

そんなソルベー法にも衰退の時はやってきます。1938年にアメリカでトロナという鉱物の巨大な鉱床が発見されました。トロナとは「重炭酸ナトリウム」や「炭酸ナトリウム」が混ざった鉱物です。トロナと精製することで、重炭酸ナトリウムが生産できるので、現在はソルベー法に代わってトロナを精製する手法で重炭酸ナトリウムは生産されています。

\次のページで「食品に添加する重炭酸ナトリウム」を解説!/

食品に添加する重炭酸ナトリウム

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重炭酸ナトリウムは私たちの生活の中にも、たくさん使われています、ここでは3つピックアップしてご紹介してきます。

一つ目は食品へ添加。「重曹」って聞いたことないですか?重曹は、食品添加物として重炭酸ナトリウムを使うときの呼び方なんです。重曹は加熱すると二酸化炭素が出るので、食材に練りこんで加熱すると、食材が膨らみフワフワ、サクサクした生地ができ上がるんですよ。クッキー、パンケーキ、どら焼きなどを膨らませるのに使われます。

ベーキングパウダーとの違いは??

ここで一つ疑問が生まれないでしょうか?生地に練りこんで加熱するのはいつも「ベーキングパウダー」を使けど…?実は重曹はベーキングパウダーとほぼ同じものです。

重曹はほぼ100%重炭酸ナトリウムでできていますが、ベーキングパウダーは重炭酸ナトリウムの他に酸性剤や遮断剤が入っています。重炭酸ナトリウムは酸性の成分と反応して二酸化炭素を出すので、反応を十分に進めるために酸性剤が入っているんですよ。

さらに、重曹を使うと、反応後に炭酸ナトリウムが生地に残ってしまい、生地がアルカリ性になってしまうんです。アルカリ性になると、苦みが出てしまうので、酸性剤で中和することで苦みを消すことができます。

そして、ベーキングパウダーを保存している最中に重炭酸ナトリウムと酸性剤が反応しないようにするための成分が遮断剤です。

重炭酸ナトリウムはお掃除にも使える!

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二つ目はお掃除です。重炭酸ナトリウムはお掃除でも活躍します。

汚れ落としは、汚れと反対のpHの洗浄剤を使うのがポイントです。重曹を溶かした水溶液は弱アルカリ性でしたよね。酸性のよごれを中和できるので、酸性の汚れを落とすのが得意なんです。たとえば、鍋の焦げや台所のベトベトした油汚れ、油は酸素と反応して酸化します。酸化した油は酸性なので、重曹を使うと汚れを落とすことができるんです。

一方で、水垢や石鹸カスなどのアルカリ性の汚れを落とすのは苦手なので、クエン酸などの酸性の洗浄剤を使ってあげると簡単に汚れを落とすことができます。

重炭酸ナトリウムは除草剤にも使える?

実は重曹は除草剤としても使えます。重曹は植物の細胞を壊死させることができるんです。なので、重曹を溶かした水溶液を雑草に散布するだけで、雑草は枯草になっていきます。

重曹を除草に使用するメリットは「安全性が高いこと」、「価格が安いこと」の2つですね。雑草は除草しても、毎年のように生えてくるので、定期的な除草が必要ですよね。重曹は簡単に利用できるため、繰り返し除草するときも費用を抑えることもできるんです。

テストによく出る?重炭酸ナトリウムのチェックポイントとは?

ここからは、テストでよく出題される重炭酸ナトリウムのポイントをご紹介していきます。ポイントは「熱分解」と「酸との反応」です。一つずつ紹介していきます。

\次のページで「重炭酸ナトリウムの熱分解をチェック」を解説!/

重炭酸ナトリウムの熱分解をチェック

重炭酸ナトリウムの熱分解をチェック

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一つ目は重炭酸ナトリウムの熱分解です。この反応はホントにテストでよく出題されますよ。重炭酸ナトリウムは加熱すると「炭酸ナトリウム」「水」「二酸化炭素」に分解します。これは食品添加物として使われていた反応でした。熱分解したときに出る二酸化炭素は炭酸ガスと呼ばれ、生地を膨らませるのに使われていました!

テストではもちろん反応式を書きなさいという問題も出ますが、実験装置もチェックしてください。試験管に重炭酸ナトリウムを入れて加熱すると、試験管の口付近に水滴がつき、管の先で気体が発生します。この水滴と気体の確認方法がよく出題されるんですよ…

反応式が書ければ水滴は「水」で気体は「二酸化炭素」とわかりますが、特定に使う試薬もチェックしておいてください。水は塩化コバルト紙が青色から赤色に変化することで確認、気体は石灰水を通すと白く濁ることで二酸化炭素と確認できます。

重炭酸ナトリウムと酸の反応をチェック

重炭酸ナトリウムと酸の反応をチェック

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次のポイントは重炭酸ナトリウムと酸の反応についてです。重炭酸ナトリウムは酸性の物質と反応します。この反応もテストではよく出題されるので、チェックしておいてくださいね。酸と反応すると、塩と水と二酸化炭素ができます。重炭酸ナトリウムと反応させる酸の種類によって、できる塩の種類が変わるんです。

たとえば、塩酸と反応させれば、塩化ナトリウムができますし、酢酸と反応させれば酢酸ナトリウムができます。

とっても便利な重炭酸ナトリウム

今回は重炭酸ナトリウムの「特徴」と「用途」、さらにテストでよく出題されるポイントをご紹介しました。

重炭酸ナトリウムは食品への添加や掃除道具としても使えるとっても便利な物質です。さらに反応はちょっと複雑なので、テストでも狙われやすいんです!ぜひチェックしてくださいね!

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化学理科

身近なアレ!重炭酸ナトリウムとは?食品から掃除まで使える物質を理系ライターがわかりやすく解説


「重炭酸ナトリウム」聞いたことあるでしょうか?
実は、この化合物にはもう一つ呼び方がある。それが「炭酸水素ナトリウム」だ!この名前なら聞いたことある人も多いでしょう。

重炭酸ナトリウムは生活の中に密接に関わっている物質で、テストでも頻出です。ぜひチェックしてほしい!

今回は重炭酸ナトリウムの特徴や用途、さらにテストでよく出題されるポイントを化学に詳しいリックと一緒に解説していきます。

ライター/リック

高校生で化学にハマり、大学院までずっと化学を勉強してきた化学オタク。今は化学メーカーで働きながら化学の楽しさを発信する。

重炭酸ナトリウムとは

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重炭酸ナトリウムと聞くと、どんな物質だっけ?とすぐに思い浮かばない方も多いと思います。重炭酸ナトリウムには別の名前があり、それが「炭酸水素ナトリウム」です。炭酸水素ナトリウムは聞き覚えのある方が多いんじゃないでしょうか?中学の理科の実験でも使われる薬品ですね。

重炭酸ナトリウムは、私たちの生活の中にも使われる便利な物質なんです。

まずは…重炭酸ナトリウムってどんな物質?

まずは重炭酸ナトリウムがどんな物質かご紹介していきます。

「重炭酸ナトリウム」はナトリウムイオン(Na+)と炭酸水素イオン(HCO3⁻)がイオン結合した化合物です。常温で白色の結晶で、水に溶けると水溶液は弱アルカリ性になります。

重炭酸ナトリウムはこうやって作られる!

次は、重炭酸ナトリウムの製造方法をご紹介していきますね。重炭酸ナトリウムは「ソルベー法」という方法で工業的に生産されていました。ソルベー法は炭酸ナトリウムを得るための方法ですが、重炭酸ナトリウムも反応の途中で回収できます。1861年にベルギーの化学者のエルネスト・ソルベイによって考案されました。炭酸ナトリウムはガラスの原料になるので、「ソルベー法」は歴史的に見て、とっても大切な生産方法なんです!

そんなソルベー法にも衰退の時はやってきます。1938年にアメリカでトロナという鉱物の巨大な鉱床が発見されました。トロナとは「重炭酸ナトリウム」や「炭酸ナトリウム」が混ざった鉱物です。トロナと精製することで、重炭酸ナトリウムが生産できるので、現在はソルベー法に代わってトロナを精製する手法で重炭酸ナトリウムは生産されています。

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