この記事では元日と元旦の違いについてみていきます。どちらも正月を表す言葉だとはイメージできるでしょうが、2つとも同じ意味だと思っている人もいるんじゃないか?しかし、これらには明確な違いがあって会話や文中での使い方も変わってくる。今回はそんなめでたい日を表す言葉の違いを、漢字の意味から確認しつつ、具体例もまとめて日本語が大好きなライターおとのと一緒に解説していきます。

ライター/おとの

日本語を学ぶのが大好きな雑学オタクライター。いつも年末は「自分への1年間のご褒美」、年始は「今年を頑張るための景気付け」と称して財布の紐が緩みっぱなしになるので、そろそろそんな自分を戒めたいと思っている。

元日と元旦の意味を確認しよう!

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元日と元旦はどちらもお正月の1月1日を表す言葉ですね。会話の中では1月1日よりも言いやすい分、多く口にしているかも知れません。では、同じ日付を表す2つの言葉にはどのような違いがあるのでしょうか。ここでは辞書を使い、それぞれの意味と違いについて確認していきます。

元日:1月1日

まずは元日を調べてみましょう。小学館のデジタル大辞泉には次のように載っています。

がん‐じつ〔グワン‐〕【元日】

1年の最初の日。1月1日。国民の祝日の一で、年のはじめを祝う日。《季 新年》「—や上々吉の浅黄空/一茶」

(出典:デジタル大辞泉 / 小学館)

意味としては説明のままですね。新しい年の始まりを告げる1月1日はやはり特別なもの。おせち料理やお雑煮を食べて、おめでたい日をお祝いします。子供にとってはお年玉も欠かせない大イベントですね。家族や親戚が集まって団欒の時間を過ごすことも多いでしょう。元日は1月1日であれば、どんな場面を切り取っても利用可能な言葉です

元旦:1月1日の朝

次は元旦について確認しましょう。デジタル大辞泉の記載は以下のとおりです。

がん‐たん〔グワン‐〕【元旦】

元日の朝。元朝。また、元日。「一年の計は元旦にあり」《季 新年》

(出典:デジタル大辞泉 / 小学館)

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元旦の説明で注目すべきなのは、時間帯が指定されていること。これがまさに元日との違いです。元旦は1月1日の朝から午前中にかけての時間を指します。説明の中に「元日」とも書かれていますが、本来は元日と元旦を同じ意味で使うのは誤り。ただし、多くの人が混合して使用しているため、徐々に境界線が曖昧になってきたようです。同じ意味の言葉に歳旦もありますよ。

漢字の意味や成り立ちは?

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元日と元旦は漢字も似ていますね。「旦」の下の横線があるだけで意味が変わるようですが、これは何を示しているのでしょうか。この項では漢字そのものが持つ意味や成り立ちを確認し、元日と元旦についての知識を深めていきましょう。

元日:始まりの1日

「元」は元祖という言葉があるように、物事の始まりを表す漢字です。そして「日」は太陽を指す漢字。太陽が昇ってから沈むまでの24時間を意味します。単語でも今日や平日などのように、時間帯を決めずに丸一日を指すことが多いですよね。

つまり元日は、新年の初めの日である1月1日という意味となります。

元旦:始まりの朝がた

「元」については上記したものと同じなので、ここでは「旦」について解説しましょう。「旦」という漢字は地平線(水平線の説もあり)の上に日が昇る様子を表しています。ちょうどその時間帯である夜明けや朝がたという意味を持つのも納得ですね。ちなみにこの漢字一文字で「あした」とも読みます。本来はやはり朝がたを指していましたが、日常会話で「あした」というと大抵は翌日の朝だったことから、意味が変化して翌日そのものを表す言葉になったようです。

具体例で確認しよう!

新年の挨拶時にお正月の思い出話になることも多いですよね。その時に少しでも意識できるように、具体的な使い分けを確認したいと思います。ここではAとBの会話を用意しました。彼らの話を自分の体験に置き換えたらどうなるか、ぜひ考えてみて下さいね。

\次のページで「元日:1月1日の出来事全てに使える!」を解説!/

元日:1月1日の出来事全てに使える!

A「今年の元日はどうやって過ごしたの?」
B「前日の大晦日から親戚が集まって酒盛りしてたんだ。年齢の近い従兄弟と2人で盛り上がりすぎちゃって、寝たのは元日の昼過ぎ!おかげでそれ以降はずっと寝正月だったよ」
A「楽しそうだね。こっちはお気に入りのゲームでお正月イベントがあって、元日は1日中こたつでゲームをしてたよ」
B「実家には帰らなかったの?」
A「2日に帰ったけど、初売りセールに駆り出されて大変だったな」
B「ご愁傷様」

元日を話題にするときは、時間帯が限定されないため自由度の高い会話になりますね。「昼過ぎに寝た」「1日中ゲームをやっていた」というのは元旦では当てはまらない行動です。お正月というのは1年の中でも最大の行事。セールや限定イベントなど、多くの人が楽しめる催しが盛り沢山なので、筆者も自然とそわそわ、ワクワクしてしまいます。

元旦:1月1日の朝の出来事に使える!

A「どうしたの、その怪我!」
B「元旦に初詣をしたら、石段で滑って足を骨折しちゃった」
A「新年早々災難だね。一年の計は元旦にありって言うし、今年は注意深く行動した方が良いかも」
B「うん……張り切って朝一に行ったから、足元が凍ってたみたい。でもそのおかげで中学時代の親友と再会したよ。救急病院の医者だったんだ。話がはずんで、今度飲みに行く約束も出来たし良かったよ」
A「骨折が厄落としになったのかも!これから良いことが続くと良いね」

元旦についての会話で注意が必要な点はもうお分かりですよね。ここまでで確認してきた通り、これは1月1日の朝に起こった出来事というのが前提です。早朝に初詣をして災難に遭ってしまったBさん。皆さんも雪道には十分お気を付け下さい。「一年の計は元旦にあり」とはよく知られたことわざです。その年を有意義に過ごすために、元旦にしっかりとした計画を立てるべきとの教訓を説いています。もっとも、親友との縁を取り戻せたBさんにとっては「災い転じて福となす」出来事だったかも知れませんね。

年賀状に使えるのは元日?元旦?

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新年の挨拶である年賀状には、西暦や元号が印字されていたり、自分で記載したりすることがありますよね。その際、後ろに付ける言葉は「元日」と「元旦」のどちらが良いのでしょうか。

正解は、どちらでも間違いではありませんが、一般的なのは元旦。理由は諸説あるようですが、元日の朝に届く年賀状が多いことや、配送される時間帯に関わらず「早く新年の挨拶を差し上げたい」という相手への気持ちを表していることなどが挙げられます。ちなみに元日に間に合うように配送してほしい年賀状は12月25日までに投函する必要があるとのこと。それを過ぎてしまう場合、元旦と記入するのは避けて「吉日」などとするのが無難かも知れません。

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【おまけ】お正月はいつまで?謹賀新年と恭賀新年の意味は?

12月もクリスマスを過ぎると早くもお正月の準備。そして1月の半ばになってもお正月気分が抜けないというのはよくあることです。では、そもそもお正月とはいつまでを指すのでしょうか。ここではオマケとしてお正月の期間と、この時期に必ず目にする謹賀新年・恭賀新年の意味を解説します。

お正月は三が日までと思う人が多い!

実はもともと、お正月とは1月いっぱいを指す言葉でした。しかし現在では1月3日までをお正月と感じる人が多いようです。業者や企業によって異なりますが、1月4日から業務を再開するところが多いことが、気持ちにも影響しているのでしょう。また、松の内の間はお正月という人もいます。松の内とは門松を飾っておく期間のことで、関東では1月7日まで。関西では15日までというのが基本のようです。

古希が近い筆者の父親は「子供の頃は1月半ばまでは正月のゆったりした雰囲気が続いていた」と言っていました。コンビニが24時間空いていて、年末年始も買い物が出来るお店があることが当たり前になっている現代。日本人はもう少し、働くという行為にゆとりを持っても良い気がします。

謹賀新年と恭賀新年は賀詞の一種!

謹賀新年恭賀新年は年賀状や初売りセールをしているお店などでよく見かける四字熟語ですね。漢字からもイメージが付きやすいと思いますが、これらは「謹んで新年のお祝いを申し上げます」と「恭(うやうや)しく新年のお祝いを申し上げます」という意味。へりくだった表現なので目上の人に対しても使用できます。この熟語のなかにお祝いが込められているので、さらに「明けましておめでとうございます」等は付け足しません。

このようにお祝いを述べる言葉を賀詞と言います。「寿」「迎春」なども賀詞ですが、少しフランクな表現となるので親しい間柄で使いましょう。

お正月の意味を考え直そう!

先日、とあるサイトで「そのうち無くなると思う日本文化は?」というアンケートを見かけました。さまざまな選択肢があるなかで、1位に選ばれていたのは年賀状。確かに、筆者も年賀状を出さなくなって10年以上が経ちます。昔は元旦に届く友達からの年賀状が楽しみだったのに、いつの間にかスマートフォンでメッセージを送るだけになっていました。思えば、年々伝統的な行事や食事も疎かにしがちなっていたようです。本来、お正月は1年の抱負を決めたり、日々お世話になっている人へ挨拶をしたり、今後のために身体にしっかりと休息を取らせる日。仕事や家庭の関係で年末年始をゆっくり過ごせない人も多いでしょう。しかし、自分なりのお正月休みを決めて、ゆっくり満喫することもとても大切なのかも知れませんね。

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文化・歴史雑学

元日と元旦の違いはその時間帯?漢字の意味や具体例・お正月に関する豆知識まで日本語大好きライターが徹底わかりやすく解説!

この記事では元日と元旦の違いについてみていきます。どちらも正月を表す言葉だとはイメージできるでしょうが、2つとも同じ意味だと思っている人もいるんじゃないか?しかし、これらには明確な違いがあって会話や文中での使い方も変わってくる。今回はそんなめでたい日を表す言葉の違いを、漢字の意味から確認しつつ、具体例もまとめて日本語が大好きなライターおとのと一緒に解説していきます。

ライター/おとの

日本語を学ぶのが大好きな雑学オタクライター。いつも年末は「自分への1年間のご褒美」、年始は「今年を頑張るための景気付け」と称して財布の紐が緩みっぱなしになるので、そろそろそんな自分を戒めたいと思っている。

元日と元旦の意味を確認しよう!

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元日と元旦はどちらもお正月の1月1日を表す言葉ですね。会話の中では1月1日よりも言いやすい分、多く口にしているかも知れません。では、同じ日付を表す2つの言葉にはどのような違いがあるのでしょうか。ここでは辞書を使い、それぞれの意味と違いについて確認していきます。

元日:1月1日

まずは元日を調べてみましょう。小学館のデジタル大辞泉には次のように載っています。

がん‐じつ〔グワン‐〕【元日】

1年の最初の日。1月1日。国民の祝日の一で、年のはじめを祝う日。《季 新年》「—や上々吉の浅黄空/一茶」

(出典:デジタル大辞泉 / 小学館)

意味としては説明のままですね。新しい年の始まりを告げる1月1日はやはり特別なもの。おせち料理やお雑煮を食べて、おめでたい日をお祝いします。子供にとってはお年玉も欠かせない大イベントですね。家族や親戚が集まって団欒の時間を過ごすことも多いでしょう。元日は1月1日であれば、どんな場面を切り取っても利用可能な言葉です

元旦:1月1日の朝

次は元旦について確認しましょう。デジタル大辞泉の記載は以下のとおりです。

がん‐たん〔グワン‐〕【元旦】

元日の朝。元朝。また、元日。「一年の計は元旦にあり」《季 新年》

(出典:デジタル大辞泉 / 小学館)

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