今回は「花の匂い」というキーワードについて学習していこう。
小さいころ、バラやシャクヤクなど花には良い匂いのするものがたくさんあるよな。花はどうして匂いをだすのでしょう?花の匂いと受粉の関係、花以外の匂いの役割についても、これを機に学んで行こうじゃないか。
大学で生物を学び、現在は食品メーカーの研究員であるライター、ハナイグチに解説してもらおう。

ライター/ハナイグチ

大学で生物学を学び、現在は食品メーカーの研究員として勤務している。

サプリメントの広告を見るとついつい有効成分の含有量や作用機序を調べてしまう。

なぜお花は良い匂いがするの?

image by iStockphoto

お花の中にはとても良い香りのするものが多いですよね。なぜ花はあんなに良い香りをだしているのでしょうか。それは花が子孫を残すために他なりません。花の良い匂いや美味しい蜜、美しい花びらなどはすべて花の受粉効率を上げるための投資なのです!

それでは花の香について詳しく説明したいと思います。

良い匂いで虫を誘う花

良い匂いで虫を誘う花

image by Study-Z編集部

遠くに咲いている花同士が受粉して子孫を残すためには花粉を遠くの花まで届けなければなりません。その手段として虫や鳥などの体にくっついて運んでもらうパターンや風によって飛んでいくパターンなどがあります。虫や鳥はボランティアで花粉を運んでくれるわけではありませんので、花はこれらの生き物を自分の近くにおびき寄せる必要がありますよね。そこで花は花粉を運ぶ生物にとって好ましい匂いをだすことで、花に近づいてもらい体に花粉をくっつけることで運搬してもらおうというわけです。

良い香りがする花といえばバラやラベンダーなどが有名ですね。これらは人間にとっても大変好ましい香りであるため、香り成分を抽出して香水や精油としても利用されています。

ちなみに「バラの香り」や「ラベンダーの香り」などは単一の成分によるものではなく、様々な香り成分が混ざりあうことによって、特徴的な匂いになるのです。そのため、同じ種類の花でも品種によって微妙に香りが違います。

\次のページで「匂いのない花:ヤナギ科、ブナ科、イネ科」を解説!/

匂いのない花:ヤナギ科、ブナ科、イネ科

一方で風によって花粉の運搬をおこなう裸子植物やヤナギ科、ブナ科、イネ科などの植物は虫を引きつける必要がないため良い匂いもしなければ、他の虫を引きつける道具である綺麗な花びら、花の蜜などを持たないものが多いです。どうりでどこが花なのかわからないような地味な花のものが多いわけですね。また、風で花粉が飛びやすいということなので花粉症の原因になっている植物も多いのも特徴です。

良い匂い?変わった匂いを出す花

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基本的に花の匂いは人間にとっても良い匂いだと感じるものが多いのですが、中には人間にとってかなり嫌な匂いを発する花もあります。

世界最大の花として有名なラフレシアもその一つ。この花は死体のような臭いをふりまいて、ハエなどの虫をおびき寄せます。他にはザゼンソウが挙げられますね。花の姿が座禅を組むお坊さんに似ることから日本では「座禅草」と呼ばれていますが、アメリカではその強烈な匂いから「スカンクキャベツ」と呼ばれているんです。いったいどれだけ強烈な臭いなんでしょう…。意外ですがクロユリもなかなか人間にとっては好ましくない臭いを放ちます。ユリといえば良い香りがする花のイメージですがクロユリはハエを花粉の媒介者としているためトイレのような臭いがするようです。

省エネ!時間帯によって異なる香りの強さ

実は花の香の強さは常に一定ではありません。しかも、どの時間帯に香りが強くなるかは植物の種類によって異なります。これはなぜだと思いますか?

これはそれぞれの花の花粉を運んでくれる虫、これをポリネーターと呼びますが、彼らが活発に活動する時間帯に合わせて強く匂いを放つようにできているのです。

香り成分を作って放出するのも花にとってはコストとなるので、目的の虫がいない時間帯には節約しているということですね。

たとえばハチなどをポリネーターとしている花(ラベンダーなど)は昼間に強く香ります。一方ガなど夜行性の虫をポリネーターとしている花(ランなど)は夜間に強く香るのです。

機会があれば時間帯によって香りを嗅ぎ比べてみてください!

色によって香りが違う花もある!?品種改良の世界

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面白いことに同じ種類の花でも色によって香りが異なることがあります。これは品種改良が関係しているのです。

例えばフリージアは白や黄色では香りが強く、他の色ではそれに比べて香りが弱いことがしられています。フリージアの原種は白から黄色で他の色は品種改良によって作られたものです。色を目的に品種改良を行うと、香り成分が少なくなってしまうことがあるため、フリージアでは白や黄色以外の花の香りが弱いんですね。

昔はバラも見た目の美しさに重きを置いた品種改良が行われていました。その結果、香りのしないバラがとても増えてしまったそうです。このような見た目は華やかなのにもかかわらず香りのしないバラを「笑わぬ美人」などと表現されたりするほど。近年は香りの大切さも再認識され、見た目も香りも花やかな品種が色々生み出されています。

花以外から出る匂いの役割

植物からは花以外にも香りを放つ部位があります。場所によってどんな目的で香りをだしているのかが違ったりしますので見ていきましょう。

果実からでる匂い

完熟した果実はとても美味しそうな香りがしますよね。これも花の香と同様虫や動物を引き寄せるために放たれています。花粉も受粉するために虫や動物に遠くまで運んでもらう必要がらいましたが、そうして受粉してできた種をさらに遠くにバラまくためにも虫や動物の力を借りている植物がたくさんあるのです。そのような植物は種が十分に成熟すると同時に果実も完熟し良い匂いを放出します。その匂いにつられて来た動物たちが果実を食べて、種を糞とともに排泄することで遠くまで運搬することに成功するのです。

葉からでる匂い

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葉から出る匂いの役割は花や果実から出る匂いの役割とは異なります。花や果実は虫や動物に近づいてきてもらうことが目的ですが、反対に葉っぱはできるだけ虫に近づかれたり食べられたりしたくありません。ですので、葉っぱは虫が嫌がるような匂いを出しています。代表的なものはハーブです。葉の表面に匂い袋があり、虫が葉の表面を歩いたり葉を食べたりすると匂い袋が破れることで虫の嫌がる匂いが放出され、虫を追い払うことができます。ハーブの香りは人間にとっては良い匂いに感じますが虫に取っては嫌いな匂いなのです。天然の虫よけ剤としても重宝されています。

\次のページで「匂いは植物の生きる知恵」を解説!/

匂いは植物の生きる知恵

植物は花や果実、葉っぱなど様々な場所から目的に応じて多種多様な香り成分を放出しています。このように植物は匂い成分を使いこなすことで、受粉や種の運搬のためには虫を引き寄せ、食べられたくない葉っぱからは遠ざけるという器用なことをやってのけているのです。香水やアロマとして私たちの生活にも利用されている植物の香りは実は立派な生き抜くための知恵だったのですね。

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理科生物

花の匂いはどこから来る?受粉との関係や葉や果実の匂いについても食品メーカー研究員がわかりやすく解説

今回は「花の匂い」というキーワードについて学習していこう。
小さいころ、バラやシャクヤクなど花には良い匂いのするものがたくさんあるよな。花はどうして匂いをだすのでしょう?花の匂いと受粉の関係、花以外の匂いの役割についても、これを機に学んで行こうじゃないか。
大学で生物を学び、現在は食品メーカーの研究員であるライター、ハナイグチに解説してもらおう。

ライター/ハナイグチ

大学で生物学を学び、現在は食品メーカーの研究員として勤務している。

サプリメントの広告を見るとついつい有効成分の含有量や作用機序を調べてしまう。

なぜお花は良い匂いがするの?

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お花の中にはとても良い香りのするものが多いですよね。なぜ花はあんなに良い香りをだしているのでしょうか。それは花が子孫を残すために他なりません。花の良い匂いや美味しい蜜、美しい花びらなどはすべて花の受粉効率を上げるための投資なのです!

それでは花の香について詳しく説明したいと思います。

良い匂いで虫を誘う花

良い匂いで虫を誘う花

image by Study-Z編集部

遠くに咲いている花同士が受粉して子孫を残すためには花粉を遠くの花まで届けなければなりません。その手段として虫や鳥などの体にくっついて運んでもらうパターンや風によって飛んでいくパターンなどがあります。虫や鳥はボランティアで花粉を運んでくれるわけではありませんので、花はこれらの生き物を自分の近くにおびき寄せる必要がありますよね。そこで花は花粉を運ぶ生物にとって好ましい匂いをだすことで、花に近づいてもらい体に花粉をくっつけることで運搬してもらおうというわけです。

良い香りがする花といえばバラやラベンダーなどが有名ですね。これらは人間にとっても大変好ましい香りであるため、香り成分を抽出して香水や精油としても利用されています。

ちなみに「バラの香り」や「ラベンダーの香り」などは単一の成分によるものではなく、様々な香り成分が混ざりあうことによって、特徴的な匂いになるのです。そのため、同じ種類の花でも品種によって微妙に香りが違います。

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