この記事ではイノシシと豚の違いについてみていきます。どちらも雰囲気が似ている動物というイメージがあるよな。同じように見えるかもしれないが、よく調べてみると成長速度や育つ環境などいろいろと違いがあるみたいです。
今回はそんなイノシシと豚の違いを、それぞれの関係性から確認しつつ、生き物好きライター田嶋と一緒に解説していきます。

ライター/田嶋あこ

生き物の観察が好きなWebライター。様々な生き物をモチーフにしたイラストなどを描いている。ちなみに料理も好き。生き物と食材という2つの視点から、違いを詳しく解説していく。

そもそもイノシシと豚って違う動物なの?

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イノシシと豚は見た目が少し似ていますよね。この2種類の動物にどんな関係性があるのか気になっている方もいるのではないでしょうか?まず、イノシシと豚は違う動物なのかどうかを調べていきましょう。

元は同じ動物

実はイノシシと豚は元を辿ると同じ動物なのです。豚という名称は、家畜として飼われているイノシシのこと指します。ざっくり言うと、豚もイノシシということになりますね。

人間は大昔、狩猟民族でした。その頃からイノシシは比較的簡単に狩ることができたので食料として重宝されていたようです。

しかし狩っていくうちにイノシシの数はどんどん減ってしまいます。そこで困った当時の人たちは、イノシシを飼うことを考えたようです。人が管理していく中で野生と家畜では違う特徴がでてきたため、家畜化したイノシシを「豚」と区別して呼ぶようになったと言われています。

遺跡から骨がでてきたことから、中国では約1万年ほど前からイノシシが家畜化されていたことがわかりました。また中東やヨーロッパでも、5000年〜6000年ほど前には家畜として飼われていたという説があります。

イノシシと豚の違いをチェック!

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元々は豚もイノシシでしたが、家畜として飼われるようになってから野生のイノシシとは様々な違いがでてきたようです。イノシシと豚の違いを詳しくご紹介していきます。

イノシシと豚の「見た目」の違い

一見するとイノシシと豚は見た目が似ていますよね。しかしよく見ると、育った環境によって違いが現れているのです。

\次のページで「イノシシと豚の「性格」の違い」を解説!/

イノシシの見た目

色:黒・茶色・褐色など暗めのカラー
毛:毛質はかなり硬く、たてがみがある
顔:鼻までの部分が長め
歯:犬歯が牙のようになっていて、下から上に伸びている
体型:前半身が発達している
しっぽ:真っ直ぐでしっぽの先がフサフサ

豚の見た目

色:黒・白(ピンク)・赤褐色・白黒・薄いグレーなど様々
毛:毛質は柔らかめ
顔:鼻までの部分は短め
歯:乳歯のときに切られているので牙がない
体型:胴が長い
しっぽ:切断されているのでしっぽの先がない

環境による見た目の違いでわかりやすいのは、色・歯・しっぽの3点。まず色を見るとイノシシは保護色になるような落ち着いた色合いですが、豚は明るめです。

豚は人間の管理下にいるため敵に襲われるようなことも少ないので、目立つ色の品種もいるのだと考えられます。

また、野生のイノシシにとって牙は武器として必要ですが、豚には必要ありません。むしろ牙があると仲間同士で戦ったときに傷ができ、病気になってしまう可能性があるからと切られることがほとんどです。

豚はしっぽも同じで、仲間にかじられて肉が傷ついたり病気になることを防ぐために切られています。似ている様ですがイノシシと豚は生きている環境が違うため、見た目にも違いがあるのです。

イノシシと豚の「性格」の違い

イノシシと豚は性格も少し違いがあります。イノシシは繊細で神経質な性格。警戒心が強いので、基本的に近づいてくることはありません。ただ知能が高く学習能力があるので、餌があるとわかったり慣れると大胆な行動をとることもあります。

パニックになって襲いかかってくることもあるので、道で遭遇したら距離をとるようにしましょう。足も速いので要注意です。

豚は好奇心が旺盛な性格で人にも近づいてきます。品種によって少し性格は異なり、黒や赤褐色の豚は警戒心が高いようです。基本的に穏やかな品種が多いですが、元々はイノシシ。稀にですが人間を襲うこともあります。

イノシシと豚の「成長速度・繁殖能力」の違い

イノシシと豚は成長速度も違いがあります。家畜として改良されてきた結果、豚はイノシシに比べて2倍ほども速く成長するようになったのです。成長速度と併せて、繁殖能力についてもチェックしていきましょう。

イノシシの成長速度と繁殖能力

大人になるまでの期間:1年ほど
出産できる大きさになるまでの期間:2年ほど
出産回数:1年に1回
平均的な子どもの数:5頭

豚の成長速度と繁殖能力

大人になるまでの期間:6ヶ月ほど
出産できる大きさになるまでの期間:1年ほど
出産回数:1年に2〜3回
平均的な子どもの数:10頭

豚が元々イノシシだったとは思えないほど差がありますね。豚は安定して出荷できるよう、速く大きく沢山育つように工夫されているのです。

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イノシシと豚の「味」の違い

食べているエサや運動量の違いなどから、イノシシと豚はお肉の味にも違いがあります。イノシシはお肉に弾力があり、赤身の味が濃いのが特徴。脂の質もよく、コクがあるのにスッキリとした味わいです。

ただジビエなので、処理の仕方・年齢・時期などによって独特な獣のくさみを感じることもあります。野生のイノシシは人間が成長を管理している訳ではないので、お肉の質など個体差も大きいです。

豚は甘みがあり、獣臭さもほとんどしません。エサなども管理されて育っているので個体差もあまりなく、安定した質のお肉を食べられます。

イノシシ肉におすすめな料理

独特のニオイが少し苦手な場合、味がしっかりした料理やお酒を使った料理に取り入れるのがおすすめ。基本的には豚肉と同じように使える。

・ぼたん鍋
・角煮
・カレー
・赤ワイン煮込み など

豚肉におすすめな料理

クセがほとんどないので、様々な料理で幅広く使える。

・とんかつ
・豚バラ大根
・ミルフィーユ鍋
・生姜焼き など

イノシシと豚の「栄養素」の違い

それぞれのお肉に含まれる栄養素は、ほとんど同じです。しかし違いもあります。どちらにも共通して言えるのがビタミンが豊富ということ。その中でもイノシシ肉はB12が、豚肉はB1が特に多く含まれています。

さらに細かくみると、イノシシはタンパク質・鉄分・不飽和脂肪酸が多いという特徴が。不飽和脂肪酸は悪玉コレステロールを減少させてくれる働きがあります。血液をサラサラにしたい方は、イノシシのお肉を食卓に取り入れてみるのもいいでしょう。

イノシシと豚に似ている「イノブタ」ってどんな動物?

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野生でも見かけるイノブタ。日本にも生息している動物ですが、見た目がかなりイノシシと豚に似ています。どんな動物なのか、さっそくみていきましょう!

イノシシと豚の間に生まれた動物

イノブタはイノシシと豚の間に生まれた動物です。ちなみに雑種を意味する「hybrid(ハイブリッド)」という言葉は、ラテン語でイノブタを意味する「hybrida(ヒュブリダ)」からきています。イノブタは雑種のなかでも代表格と言えるでしょう。

見た目や性格はイノシシ寄りであることが多く、家畜として管理するのは難しい動物です。

イノブタ同士でも交配できるので、混合の割合が様々な個体が生まれ続けています。

見た目や性格だけでなく、食用という観点でもイノシシと豚両方の特徴を持っているのがポイント。コクのある味わいはイノシシに近いですが獣臭さがあまりなく、豚のように柔らかい食感で肉の量も多いです。

日本でも和歌山県などで飼育されているので、質の高いイノブタ肉を食べることができますよ。

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イノシシと豚の違いは育つ環境にあり!

イノシシと豚の違いは育った環境によるものが多いです。見た目の細部や育つスピード、味やお肉に含まれる栄養素も違います。

同じ動物にも関わらず、ここまで別の動物のように育っていくなんて驚きですね。品種改良の技術の凄さがよくわかります。

今回ご紹介した違いを確かめに、動物園や牧場へ行って見た目を比べてみたり、料理に取り入れて味の違いを試してみるのもきっと楽しいですよ!機会があったらぜひチャレンジしてみてくださいね。

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生き物・植物雑学

イノシシと豚の違いは育つ環境にあった!?見た目・性格・味の違いなど生き物好きライターが詳しくわかりやすく解説

この記事ではイノシシと豚の違いについてみていきます。どちらも雰囲気が似ている動物というイメージがあるよな。同じように見えるかもしれないが、よく調べてみると成長速度や育つ環境などいろいろと違いがあるみたいです。
今回はそんなイノシシと豚の違いを、それぞれの関係性から確認しつつ、生き物好きライター田嶋と一緒に解説していきます。

ライター/田嶋あこ

生き物の観察が好きなWebライター。様々な生き物をモチーフにしたイラストなどを描いている。ちなみに料理も好き。生き物と食材という2つの視点から、違いを詳しく解説していく。

そもそもイノシシと豚って違う動物なの?

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イノシシと豚は見た目が少し似ていますよね。この2種類の動物にどんな関係性があるのか気になっている方もいるのではないでしょうか?まず、イノシシと豚は違う動物なのかどうかを調べていきましょう。

元は同じ動物

実はイノシシと豚は元を辿ると同じ動物なのです。豚という名称は、家畜として飼われているイノシシのこと指します。ざっくり言うと、豚もイノシシということになりますね。

人間は大昔、狩猟民族でした。その頃からイノシシは比較的簡単に狩ることができたので食料として重宝されていたようです。

しかし狩っていくうちにイノシシの数はどんどん減ってしまいます。そこで困った当時の人たちは、イノシシを飼うことを考えたようです。人が管理していく中で野生と家畜では違う特徴がでてきたため、家畜化したイノシシを「豚」と区別して呼ぶようになったと言われています。

遺跡から骨がでてきたことから、中国では約1万年ほど前からイノシシが家畜化されていたことがわかりました。また中東やヨーロッパでも、5000年〜6000年ほど前には家畜として飼われていたという説があります。

イノシシと豚の違いをチェック!

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元々は豚もイノシシでしたが、家畜として飼われるようになってから野生のイノシシとは様々な違いがでてきたようです。イノシシと豚の違いを詳しくご紹介していきます。

イノシシと豚の「見た目」の違い

一見するとイノシシと豚は見た目が似ていますよね。しかしよく見ると、育った環境によって違いが現れているのです。

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