
バレないように夫婦で協力
托卵を行う際、主役はメスだけではありません。仮親に托卵を気づかれないよう、オスも協力するんです。
托卵できそうな仮親(ここではモズとしましょう)を決めたら、托卵の姿がばれないようにオスとメスで交代で見張りをします。カッコウがモズの巣に卵を産み落とせるタイミングは、モズの産卵後です。モズは産卵を終えると卵を温め始めますが、時々エサを食べるために巣から離れる時があります。カッコウ夫婦はまさにその瞬間を狙っているのです。
見張りの仕方も面白いんですよ。カッコウは少しでもモズに姿がバレてしまうと警戒されてしまうため、少し離れたところから見張りをします。そして、相手が巣から離れた瞬間に「カッコウ!カッコウ!」とオスが鳴き声を上げてメスに知らせます。するとメスは親鳥のいなくなった巣で素早く産卵をするのです。
10秒ほどで産卵完了!
相手が留守にしている時間もそう長くはありません。ですのでカッコウのメスは急いで産卵を終えなければなりませんね。まず、モズの巣に降り立ったカッコウのメスは相手の卵を1つ加えます。こうするのは、間違えて自分の卵を排除してしまうのを避けるためなんです。そして産卵を終え、加えていた仮親の卵を食べて証拠を隠滅します。これらすべての工程をほんの10秒ほどで終わらせてしまうんです。間違いを防ぐための工夫といい、産卵の速さといい、これぞスゴ技ですね。
恐るべきヒナの生態
カッコウの卵はあらかじめ体内で抱卵されていることで、仮親の卵よりも早く孵化します。カッコウのヒナは本能的に自分の背中に当たったものを排除しようとする性質があり、後から生まれてくる仮親のヒナたちを巣から放り出してしまいます。カッコウのヒナは仮親のヒナよりも体が大きいため、エサを独り占めしないと十分に育つことができないんです。
仮親が絶滅しない理由は?

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こんなに計算高く行われる托卵ですが、実際のところ成功率はあまり高くありません。
その理由は、仮親たちも騙されまいと必死の攻防をしているからなんです。信州大学の研究では、托卵され続けた鳥は托卵する鳥を見破れるようになることがわかりました。10年以上カッコウに托卵され続けてきたホオジロは、カッコウの卵を見破れるようになったおかげで、カッコウの托卵は失敗するようになったと言います。長年の失敗を学びに変える力はすごいですね。
また、種が絶滅しないように生態系が絶妙なバランスを保っているという理由もあります。もし、カッコウが托卵ばかりしていたら仮親のヒナは排除され、仮親の種は絶滅してしまいますよね。しかし、仮親がいなくなると、カッコウが托卵できる巣もなくなってしまいます。するとカッコウは托卵のチャンスが減ることで、今度はカッコウの数が少なくなってしまうんです。こうして種の数が減ったり増えたりすることで、生態系は保たれているんですね。
鳥類以外の托卵動物
最後に鳥類以外の托卵をする動物たちを紹介しますね。
まずはフロリダアカハラガメというアメリカに生息するカメ。体長30センチメートルもあるなかなか大きな亀で、甲羅が大きなドーム状の形になっています。このカメの托卵相手はなんと、同じ地域に住んでいるアメリカアリゲイターというワニ。ワニの巣に産み付けられた卵は発酵熱によって早く孵化できるんです。甲羅の形はワニに襲われても大丈夫なようにこの形になっていると言われています。
次はシノドンティスというナマズの仲間。こちらはアフリカに生息しています。この魚はシクリッドという魚の口の中に自分の卵を産み付けるんですよ。我が子を他人の口の中で育てさせるなんて、すごい勇気ですね。
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