今日は「卵焼きと玉子焼きの違い」について見ていきます。
卵焼きと玉子焼き、この2つにどんな違いがあるか言えるヤツはいるか?何となく違いがあるのを知ってはいても、意識していない人がほとんどでしょう。そもそもの「卵」と「玉子」の違いから理解することで、たまご焼きに対する愛情が倍増するかもしれませんね。
今回は、世界各国から食品の輸入を手掛ける現役商社マンMIYABIと一緒にこの違いを解説していきます。

ライター/MIYABI

某大手商社の食品部門に勤務する現役営業ウーマン。食材の特性や組み合わせを考えプレゼンするのが仕事であり、その知識を家事にも活かしながら料理を楽しむのを日課としている。

「卵焼きと玉子焼き」違いはその概念にあり!

image by iStockphoto

日本人の国民食と言ってもいいくらいの人気の料理「たまご焼き」。卵料理の代表格で、お弁当の定番ですね。お母さんの味として青春時代を思い出す人も多いのではないでしょうか。そのたまご焼きも「卵焼き」と「玉子焼き」の2つの書き方があり、よく考えるとどう違うのだろう?と思いませんか。ここでは、その表記にどんな違いがあるのかを探っていきましょう。

卵焼き?玉子焼き? 一般的なのは「玉子焼き」

「卵焼き」と「玉子焼き」、どちらも間違っていないような気がしますが、一般的に使用されるのは「玉子焼き」となります。なぜならば「卵」はあの殻のついた生の状態のものを指す場合に使用され、「玉子」は手を加えられた料理を指すことが多いからです。つまり分かりやすく表現すれば、『「卵」を使って「玉子焼き」を作る』という使い方をする、と言えるでしょう。

ただし、この漢字の使い分けについては定義があるわけではないため、「卵焼き」が間違いということではありません。あくまでも、ポピュラーな使い方が「玉子焼き」であるということです。

「卵」は生物学的に使われる

「卵」は生物学的な意味として使用される言葉です。「孵化」という漢字に表れている通り、卵をかえして育つ生き物に対し使われます。例えば、鳥が産むもの、カエルが産むものは「卵」と表記しますし、イクラや数の子は「魚卵」と呼ばれる通りです。また、料理に「卵」という文字が使用される時は、手を加えられる前の生の状態を指します。つまり鶏の卵であれば「殻を割って加工される前の素材」としての意味合いで用いられるのです。

「玉子」は食材的に使われる

これに対して「玉子」は、食材的に使用される言葉です。卵がすでに手を加えられ、調理された状態に対して用いられます。つまり、「卵と玉子」は「鳥(鳥類)と鶏(鶏肉)」と同じような関係性にあると言っていいでしょう。

\次のページで「「卵」と「玉子」はなぜ2つ存在しているの?」を解説!/

「卵」と「玉子」はなぜ2つ存在しているの?

image by iStockphoto

では一体、なぜこのように分かりづらい「卵」と「玉子」という2語が存在するようになったのでしょうか?そのルーツを紐解いていきましょう。

もともとは「卵」のみだった

「たまご」はそもそもは、「卵」という文字のみが使用されていたようです。殻に入っているたまごは「殻の子(かひのこ)」であり、平安時代には「かひご」「かいご」などと呼ばれていました。その呼び名に合わせて、「卵(かひ)」「卵子(かひご)」という漢字があてられて表記されていったようです。この時代には、たまごは食べものとしては捉えらえておらず、尊いものとしてお供え物などにされていました。

「玉子」が生まれたのは「蚕」と紛らわしいから

たまごが「かひご」「かいご」と呼ばれるにつれ、「蚕(かいこ)」と区別がつきづらく紛らわしいとされるようになりました。そこで、この「かいこ」との分かりづらさを避けるため、室町時代頃よりたまごは、丸い玉の中身として「玉の子」として呼ばれるようになってきたようです。そして江戸時代には遂に、呼び名・表記共に「玉子(たまご)」が広まってきました。これは、江戸時代以降に、たまごに対して食用の概念が少しずつ広まっていったせいかもしれませんね。

実際に「たまご」を使った言葉からその違いを実感!

image by iStockphoto

卵は「手を加えられていない素材の状態」、玉子は「調理された状態」を指す言葉であることは説明しましたね。では、実際の漢字の用例を見ることで、その理解を深めていきましょう。

「なまたまご」「ゆでたまご」は「生卵」「ゆで卵」

「なまたまご」「ゆでたまご」は「生卵」「ゆで卵」が一般的なようです。まず、「生卵」については、素材としての卵そのものであることが理由でしょう。「たまごかけご飯」も「卵かけご飯」とされることが多いのと同じです。「ゆで卵」に関しては、加熱されているとはいえ、素材そのままの形状を維持しているためでしょう。また、温泉卵に関しても同じような理由により、「卵」と記されていることが多いですね。

\次のページで「「味付きたまご」は「味付き玉子」」を解説!/

「味付きたまご」は「味付き玉子」

しかし一転し、ゆでた卵が味付きになると、「味付き玉子」とされることが多いようです。これは、ゆでた卵の殻をむき、それを醤油ダレに漬け込んで作るせいでしょう。よって、やはり調理されて加工されるかどうかというのが、卵と玉子を分けるラインであることは確かなようです。

料理のレシピには「卵」

料理のレシピを見てみると、材料名のところに「卵」と書いてあっても「玉子」と書かれていることは稀です。これはやはり、手を加えていない素材としての「卵」としての認識だからと言えるでしょう。しかし逆に、料理名には「玉子」を使用した名称もよく見かけます。

「たまご丼」は「玉子丼」

「たまご丼」については「卵丼」よりも「玉子丼」が一般的なようです。やはりこれも、加熱して調理しているからこそでしょう。「卵丼」と表記してしまうと、溶き卵を加熱したあの料理ではなく、生卵が乗っているかのような印象を持ってしまいますね。

豆知識:「たまごの日」が存在していた!

image by iStockphoto

「卵」「玉子」と論争が分かれるたまご。それだけ日本人の生活に欠かせない食べ物だということでしょう。そんなたまごには、ナント「たまごの日」があるのでした!豆知識として詳細を見てきましょう。

6月9日は「たまごの日」だった!

たまごには「たまごの日」がありました!6月9日がその「たまごの日」だそうで、これは愛知県の鶏卵業者が制定したものです。「卵」という漢字が数字の6と9に似ていることからだそうで、夏を前にたまごを食べて元気になってほしいとの思いから定めたとされています。私からすれば、「では9月6日でもアリなのでは…?」と思ってしまいますが…!なお、記念日と言っても政府が祝日法により定める日とは全く異なり、個人でも法人でも好きに謳うことができてしまうようです。

たまごを祝う日は他にもあった!

6月9日の「たまごの日」以外にも、たまごに関する日があります。11月5日は全国鶏卵消費促進協議会が制定した「いいたまごの日」だそうです。「いい(11)たまご(05)の日」という語呂から取り、たまごの普及を目的に定められました。他にも5月22日の「たまご料理の日」もあります。こちらは全日本うまいもん推進協議会が「たまご(05)ニワトリニワトリ(22)」から取って定めたそうです。様々な団体が商品の普及活動にたくさんの記念日を制定していますね。

なおこの記念日は、たまごに限った話ではありません。「アイスクリームの日」や「野菜の日」など数々の記念日が作られており、これらは企業のプロモーションなどとして活用されています。

\次のページで「「卵」でも「玉子」でもみんな大好きたまご焼き!」を解説!/

「卵」でも「玉子」でもみんな大好きたまご焼き!

たまご焼きは「卵」なのか「玉子」なのかを見てきましたが、一般的なのは「玉子焼き」でした。それは卵が生物学的なもの、生の素材を指す一方で、「玉子」は調理されている状態のものを意味する傾向にあるからですね。ただし、これには明確な定義があるわけではないため、どちらを使っても間違いということはありません。ただし、卵と玉子の概念を知ることで、たまごそのものに対する理解が深まったのではないでしょうか。

しかしそうとは言え、たまご焼き好きにとっては究極的には、「卵」だって「玉子」だってどちらでもいいのです。どう表記されていても、そして厚焼きだって、出汁巻きだって、甘くてもしょっぱくても、美味しかったら愛は全く変わりません!日本人にとってたまご焼きは、まさにソウルフードと言ってもいいかもしれませんね。

" /> 3分でわかりやすく解説!卵焼きと玉子焼きの違いはどこにある?概念や由来、用例までを食品のプロがわかりやすく解説! – Study-Z
雑学食べ物・飲み物

3分でわかりやすく解説!卵焼きと玉子焼きの違いはどこにある?概念や由来、用例までを食品のプロがわかりやすく解説!

今日は「卵焼きと玉子焼きの違い」について見ていきます。
卵焼きと玉子焼き、この2つにどんな違いがあるか言えるヤツはいるか?何となく違いがあるのを知ってはいても、意識していない人がほとんどでしょう。そもそもの「卵」と「玉子」の違いから理解することで、たまご焼きに対する愛情が倍増するかもしれませんね。
今回は、世界各国から食品の輸入を手掛ける現役商社マンMIYABIと一緒にこの違いを解説していきます。

ライター/MIYABI

某大手商社の食品部門に勤務する現役営業ウーマン。食材の特性や組み合わせを考えプレゼンするのが仕事であり、その知識を家事にも活かしながら料理を楽しむのを日課としている。

「卵焼きと玉子焼き」違いはその概念にあり!

image by iStockphoto

日本人の国民食と言ってもいいくらいの人気の料理「たまご焼き」。卵料理の代表格で、お弁当の定番ですね。お母さんの味として青春時代を思い出す人も多いのではないでしょうか。そのたまご焼きも「卵焼き」と「玉子焼き」の2つの書き方があり、よく考えるとどう違うのだろう?と思いませんか。ここでは、その表記にどんな違いがあるのかを探っていきましょう。

卵焼き?玉子焼き? 一般的なのは「玉子焼き」

「卵焼き」と「玉子焼き」、どちらも間違っていないような気がしますが、一般的に使用されるのは「玉子焼き」となります。なぜならば「卵」はあの殻のついた生の状態のものを指す場合に使用され、「玉子」は手を加えられた料理を指すことが多いからです。つまり分かりやすく表現すれば、『「卵」を使って「玉子焼き」を作る』という使い方をする、と言えるでしょう。

ただし、この漢字の使い分けについては定義があるわけではないため、「卵焼き」が間違いということではありません。あくまでも、ポピュラーな使い方が「玉子焼き」であるということです。

「卵」は生物学的に使われる

「卵」は生物学的な意味として使用される言葉です。「孵化」という漢字に表れている通り、卵をかえして育つ生き物に対し使われます。例えば、鳥が産むもの、カエルが産むものは「卵」と表記しますし、イクラや数の子は「魚卵」と呼ばれる通りです。また、料理に「卵」という文字が使用される時は、手を加えられる前の生の状態を指します。つまり鶏の卵であれば「殻を割って加工される前の素材」としての意味合いで用いられるのです。

「玉子」は食材的に使われる

これに対して「玉子」は、食材的に使用される言葉です。卵がすでに手を加えられ、調理された状態に対して用いられます。つまり、「卵と玉子」は「鳥(鳥類)と鶏(鶏肉)」と同じような関係性にあると言っていいでしょう。

\次のページで「「卵」と「玉子」はなぜ2つ存在しているの?」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: