アルミニウムは化学を学ぶ上で重要な元素のひとつです。アルミニウムと聞いて思い浮かべるのはアルミ缶や1円玉でしょう。しかしアルミニウムは他にもいろいろな使い道がある。例えばアルミニウム合金としてジュラルミンがあげられるが、ジュラルミンは銅やマグネシウムとの合金で飛行機などが作られている。
アルミニウムについて周期表マニアの科学館職員、たかはしふみかが解説します。
ライター/たかはし ふみか
元素や原子、化学という言葉が好きな科学館職員。幼稚園児から小中学生、保護者と幅広い世代に科学を楽しんでほしいと実験の本を読み漁っている。基礎知識を求めて化学辞書を読むことも。
アルミニウムの単体は銀白色で比較的軽い金属です。アルミニウムは単体だとさほど強くありません。しかし銅や亜鉛などの金属と混合して合金にすると強い強度を持ちます。また腐食しづらいというのもアルミニウムの特徴です。
アルミニウムは両性元素であり、金属と非金属の両方の性質を併せ持っています。酸の水溶液とも塩基の水溶液とも反応し、水素を発生するのです。ちなみに両性金属には他に亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、鉛(Pb)が当てはまります。
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アルミニウムはどんな金属?
それでは他の金属と比べながら、アルミニウムの特徴を確認してみましょう。
金属は全て磁石につくの?
金属の特徴と言えば、磁石につくと思い浮かべる人も多いでしょう。しかし、実はむしろ磁石につくものの方が少なく、例えば鉄・コバルト・ニッケルくらいしかくっつきません。鉄のように磁石につく金属のことを強磁性体といいます。
磁性体とはどのようなものでしょうか。コトバンクを見ると磁性体は、次のように書かれています。
磁場により強く磁化され,磁場を除いても磁化が残る物質。鉄,コバルト,ニッケルとそれらの合金,フェライトなどが例。
そもそも何で磁石はくっつくのか?という事を考えてきましょう。原子は原子核の周りを電子が飛び回っています。通常、鉄の電子は回転する向きがばらばらです。そのたため、互いに磁力を打ち消し合います。しかし、磁石の力で電子の方向をそろうと、鉄は磁石となって近づけた磁石とくっつくのです。これが磁気を帯びた状態となります。強磁性体は、電子が揃いやすい金属という事なのですね。
さて、今回のテーマであるアルミニウムは磁気を帯びません。つまり磁石にくっつかないのです。磁場に影響されないため、電子医療機器などに使われています。
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同じく磁性体である鉄については、こちらの記事を参考にして下さいね。
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熱伝送率とは?
まず熱伝導率が何か確認してみましょう。熱伝導率とは簡単に説明すると熱の移動のしやすさのことです。コトバンクを見ると、熱伝導率は次のように書かれています。
熱伝導度ともいい,物質の熱伝導のしやすさの程度を表わす量。
アルミニウムは銀、銅、金に次ぐ熱伝導率の高い金属です。
27℃の場合、もっとも熱伝導率の高い銀が427であるのに対しアルミニウムは237。ここだけ見ると結構アルミニウムの熱伝導率は小さいな、と思うかもしれません。しかし、空気が0.03、水は0.61です。空気や水に比べると金属はとても熱を伝えやすい物質なのですね。
熱伝導率が高いという事は温まりやすく、冷めやすいという事です。アルミニウムは放熱性に優れているという事で、エンジンや冷暖房の部品にも使われています。
常温(27℃)での物質の熱伝導率[W/(m・K)]
銀 427
銅 398
金 315
アルミニウム 237
マグネシウム 156
水 0.61
空気 0.03
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電気を通す
金属といえば電気を通す、というイメージを持っている人も多いでしょう。電気の通しやすさを電気伝導率と言い、コトバンクで電気伝導率を確認すると次のように書かれています。
電気伝導度,導電率ともいう.物質の電気伝導性を表す量で,電気抵抗の逆数である.
金属の電気伝導率は
銀(61.4×106S/m)>銅(59.0×106S/m)>金(45.5×106S/m)>アルミニウム(37.4×106S/m)
となっています。
アルミニウムの電気伝導率が37.4×106S/mであるのに対して銅は59.0×106S/mと、アルミニウムの電気伝導率は銅よりも低いです。しかしアルミニウムの密度が2.70 g/cm3であるのに対して銅の密度は8.94g/cm3。圧倒的アルミニウムの方が軽いのです。そのため、同じ重さで比較するとアルミニウムの方が電気を通せ、電線として使われています。
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まだある、アルミニウムのいいところ
上記で説明した以外にもアルミニウムは無害無臭で体や植物に優しく医療機器などに使用できる、光や熱の反射性に優れ照明や暖房機器の反射板として活用できる、そしてリサイクルしやすいという利点があります。
アルミニウムはとても有能な素材なのですね。
金属についてはこちらの記事をどうぞ。
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アルミニウムとイオン化傾向
イオン化傾向とは「金属の水や水溶液中での陽イオンへのなりやすさ」のことです。イオン化傾向が大きい元素は他の物質に電子を与え、代わりに自分は電子を失って陽イオンとなります。イオン化傾向が大きい金属はナトリウムやアルミニウムで反応しやすく、小さい金属は銅や銀で反応しづらいのです。イオン化傾向が大きいと酸化されやすく、強い還元力をもつと覚えておいて下さいね。
イオン化傾向はそこそこ大きいアルミニウム。しかし、アルミニウムは濃硝酸・濃硫酸と反応すると不動体ができるため、それ以上反応は進みません。不動体とは金属の表面が酸化されてできる、酸化物の被膜のことで、この被膜が内部を保護します。この不動体ができるのはアルミニウムと鉄(Fe)、ニッケル(Ni)(ニッケルが不動体を作るのは濃硝酸のみ)のみです。
腐食しづらい金属、アルミニウム
一部の元素を除いて金属は、空気中でどんどんさびていきます。
アルミニウムはイオン化傾向が大きく、反応しやすい金属です。そのためアルミニウムは空気中で酸化されますが、内部まで酸化されることはありません。これは、アルミニウムの表面に酸化被膜ができるためです。この酸化被膜を人工的に付けた製品をアルマイトと言います。
4Al+3O2→2Al2O3
アルミはどこで採れる?
アルミニウムの原料はボーキサイトという酸化アルミニウム(Al2O3、アルミナ)を豊富に含んだ鉱石のことです。ボーキサイトはどこで採れているのでしょうか。ボーキサイトの主な生産国はオーストラリア、中国、ギニアです。まだボーキサイトは十分に埋蔵されており、リサイクル率が高いことも、アルミニウムの魅力と言えます。
ちなみにアルミニウムは酸素、ケイ素に次いで地殻に豊富に含まれた元素です。
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