「水は電気をよく通す」ってのは、当たり前ですね。ですが、そもそもなぜ水は電気を通すんだ?水がなぜ電気を通すのか、これを紹介していくぞ!
そして…実は「電気を通さない水」もあるんだ!それは、いったいどんな水なんだ!?

今回は水と電気の関係を化学に詳しいリックと一緒に紹介していくぞ!

ライター/リック

高校生で化学にハマり、大学院までずっと化学を勉強してきた化学オタク。今は化学メーカーで働きながら化学の楽しさを発信する。

水は電気を通すのか

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User:ARTE - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, リンクによる

アニメや映画で、こんな場面を見たことはないでしょうか?「水に濡れた人に電気を流したら、体中に電流が流れた!」。水は電気をよく通すっていうのは、一般的に知られてることですよね。

一方で、思い出してほしいことがあります。それは、水の電気分解の実験です。有名な理科の実験の一つですよね。水の中に電極を入れで電気を流すと、プラスの端子をつないだ陽極側から酸素がマイナスの端子をつないだ陰極側から水素が発生する。という実験でした。

この実験、電気分解を始める前に「水酸化ナトリウム」を入れませんでしたか?どうして水酸化ナトリウムを入れるのか…これってよくテストの問題で出るので、覚えてた!って人も多いんじゃないでしょうか?

水酸化ナトリウムを入れるのは、「電気を流しやすくするため」でしたよね。ここで一つ「水は電気を通すのに、どうして水酸化ナトリウムを入れるの?」って疑問に思いませんか。実は、純粋な水って、ほとんど電気を通さないんです。

電気を通すのは電解質が溶けているかどうか

image by iStockphoto

水は電気を通すのか…それは、「どんな水かによる」が答えなんです。水の中に電解質が溶けていれば電気は流れます。水の中を電気が流れるには、水の中を電子が移動する必要があるんです!つまり、電子を移動させるには、水の中に電解質が溶けている必要があるんです。「電解質ってどんなものなのか」はこの後解説していきますよ。

蛇口をひねれば出てくる水道水には、ミネラル分や不純物がたくさん溶けています。水の中に溶けているミネラルの多くはイオン化しているので、電荷をもってるんです。この電荷をもったイオンは水の中を自由に動けて、電子を運ぶことができます。なので、電子が水の中を動いて、電気が流れるんです!

私たちの周りにある水は、基本的に何か溶け込んでイオン化しています。だから、水は電気をよく通すというのが一般常識になったんです。

電解質とは

電解質は、水に溶かしたときに完全に電離する物質のことです。例えば水酸化ナトリウム。水酸化ナトリウムの化学式はNaOHですよね。水酸化ナトリウムを水に溶かすと、ナトリウムイオンと水酸化物イオンに電離します。なので、水酸化ナトリウムのことを電解質と呼ぶんです。電解質はほかにも、「食塩」や「塩化水素」などがあります。

水分子は電解質?

ここで、勘のいい方は思っているかもしれませんが…「水って電離しないの?」って疑問が生まれませんか?たしかに、水分子は電離します。水分子は電離すると、水素イオンと水酸化物イオンに分かれるんです!

ただ!その量はすーーっごくちょっとだけ。その量を計算できる水のイオン積という定義があります。水素イオン濃度と水酸化物イオン濃度を掛けた数は、それぞれの温度で決まっているという定義です。

ちなみに、25℃の水では水のイオン積KwはKw=[H+][OH⁻]=1.0×10-14(mol/L)2と定義されます。とにかくめちゃくちゃイオンの濃度が薄いんです。この濃度のイオンじゃ、電子を運ぶことができないんで、純度の高い水は電解質にはならないんですよ。

電気を通さない水の正体とは

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ここからは、電気を通さない水をご紹介していきます。

先ほども少しご紹介しましたが、実験で使う純水やさらに純度が高い超純水は電気を通しません。だから、純水に電気を流すには、水酸化ナトリウムのような電解質をとかしてあげる必要があるんです。

\次のページで「電気を通さない水は純水な水だけじゃない!?」を解説!/

電気を通さない水は純水な水だけじゃない!?

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なら、「水に何かが溶けていれば、電気が流れるんでしょ?」と思った方!ちょっと待ってください!実は、水に何かが溶けた水溶液でも、電気を通さないこともあるんです!それが、水に溶けても電離しない物質が溶けた水溶液です。

水に溶けても電離しない物質を非電解質と呼びます。

電気の通しやすさを判断する「電気伝導率」

電気の通しやすさのことを電気伝導率と呼んでいるんです。電気を通しやすい物質ほど電気伝導率が大きく、電気を通しにくいほど、電気伝導率は小さくなっていきます。なので、電気伝導率が大きいほど電解質になりやすく、電気伝導率が小さいほど、非電解質になりやすいんです!

つまり、電気伝導率が大きい物質ほど水に溶かしたとき電離しやすく、電気伝導率が小さい物質ほど電離しにくい特徴があります!

ちなみに、食塩は電解質としてご紹介しましたよね。一つ注意してほしいのが、食塩だけじゃ電気を通さないことです!固体の食塩にどれだけ電圧をかけても電気は流れません。食塩が水に溶けて電離することが大切なんです!

この水溶液は電気を通す?通さない?

ここからは、実際に例を挙げて紹介していきますね。

電気を通す水は海水や塩水、塩酸水溶液、水酸化ナトリウム水溶液などなどがあります。塩酸水溶液を例にして考えてみましょう!塩酸水溶液は塩化水素という分子が水に溶けると電離して、水素イオンと塩化物イオンに分かれます。なので!塩化水素は電解質で、電気伝導率が高いってことです!

次は電気を通さない水は純水や超純水、砂糖水、お酒(アルコール)などがあります。砂糖水はもちろん砂糖が溶けていますよね!砂糖はスクロースと呼ばれる分子からできています。スクロースは水に溶けても電離しません!なので、スクロースは非電解質で、電気伝導率が低いってことです!

電解質と非電解質の見分け方は?

電解質と非電解質の見分け方は?

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電解質か非電解質かを判断するには、「物質を構成している分子や原子がどんな状態なのか」みることが簡単で確実ですよ!イオン結合で作られた物質や原子同士で共有した電子が、どちらかの原子にめちゃくちゃ吸い寄せられている分子でできた物質は電解質です。

電子を引き付ける特性は元素ごとに決まっていて、それを電気陰性度って呼びます。電気陰性度が高いほど、原子殻は電気を引き寄せやすくなるんですよ!塩化水素は塩素がとっても電気陰性度が高いので、水素から電子を強烈に引っ張ていて、電離しやすいんです。2つの原子で共有している電子がどっちかに引っ張られてしまっている分子を極性分子とも呼びます。

極性分子のことは、別のところでご紹介しますね!

まとめ

今回は、水が電気を通す理由と水が電気を通すために必要な条件を紹介しました。

水が電気を通すって、一般的な常識だけど、純度がすごく高い水は電気は通さないんですよ!当たり前って思ってることにも、しっかりと理由があるんです。一つ一つ、ちゃんと化学で説明できちゃうんですよ!やっぱり化学は面白いですね。

" /> なぜ水は電気を通す?実は水自体は電気を通していない!電解質との関係についても元理系学生が詳しくわかりやすく解説! – Study-Z
化学理科

なぜ水は電気を通す?実は水自体は電気を通していない!電解質との関係についても元理系学生が詳しくわかりやすく解説!


「水は電気をよく通す」ってのは、当たり前ですね。ですが、そもそもなぜ水は電気を通すんだ?水がなぜ電気を通すのか、これを紹介していくぞ!
そして…実は「電気を通さない水」もあるんだ!それは、いったいどんな水なんだ!?

今回は水と電気の関係を化学に詳しいリックと一緒に紹介していくぞ!

ライター/リック

高校生で化学にハマり、大学院までずっと化学を勉強してきた化学オタク。今は化学メーカーで働きながら化学の楽しさを発信する。

水は電気を通すのか

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User:ARTE投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, リンクによる

アニメや映画で、こんな場面を見たことはないでしょうか?「水に濡れた人に電気を流したら、体中に電流が流れた!」。水は電気をよく通すっていうのは、一般的に知られてることですよね。

一方で、思い出してほしいことがあります。それは、水の電気分解の実験です。有名な理科の実験の一つですよね。水の中に電極を入れで電気を流すと、プラスの端子をつないだ陽極側から酸素がマイナスの端子をつないだ陰極側から水素が発生する。という実験でした。

この実験、電気分解を始める前に「水酸化ナトリウム」を入れませんでしたか?どうして水酸化ナトリウムを入れるのか…これってよくテストの問題で出るので、覚えてた!って人も多いんじゃないでしょうか?

水酸化ナトリウムを入れるのは、「電気を流しやすくするため」でしたよね。ここで一つ「水は電気を通すのに、どうして水酸化ナトリウムを入れるの?」って疑問に思いませんか。実は、純粋な水って、ほとんど電気を通さないんです。

電気を通すのは電解質が溶けているかどうか

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水は電気を通すのか…それは、「どんな水かによる」が答えなんです。水の中に電解質が溶けていれば電気は流れます。水の中を電気が流れるには、水の中を電子が移動する必要があるんです!つまり、電子を移動させるには、水の中に電解質が溶けている必要があるんです。「電解質ってどんなものなのか」はこの後解説していきますよ。

蛇口をひねれば出てくる水道水には、ミネラル分や不純物がたくさん溶けています。水の中に溶けているミネラルの多くはイオン化しているので、電荷をもってるんです。この電荷をもったイオンは水の中を自由に動けて、電子を運ぶことができます。なので、電子が水の中を動いて、電気が流れるんです!

私たちの周りにある水は、基本的に何か溶け込んでイオン化しています。だから、水は電気をよく通すというのが一般常識になったんです。

電解質とは

電解質は、水に溶かしたときに完全に電離する物質のことです。例えば水酸化ナトリウム。水酸化ナトリウムの化学式はNaOHですよね。水酸化ナトリウムを水に溶かすと、ナトリウムイオンと水酸化物イオンに電離します。なので、水酸化ナトリウムのことを電解質と呼ぶんです。電解質はほかにも、「食塩」や「塩化水素」などがあります。

水分子は電解質?

ここで、勘のいい方は思っているかもしれませんが…「水って電離しないの?」って疑問が生まれませんか?たしかに、水分子は電離します。水分子は電離すると、水素イオンと水酸化物イオンに分かれるんです!

ただ!その量はすーーっごくちょっとだけ。その量を計算できる水のイオン積という定義があります。水素イオン濃度と水酸化物イオン濃度を掛けた数は、それぞれの温度で決まっているという定義です。

ちなみに、25℃の水では水のイオン積KwはKw=[H+][OH⁻]=1.0×10-14(mol/L)2と定義されます。とにかくめちゃくちゃイオンの濃度が薄いんです。この濃度のイオンじゃ、電子を運ぶことができないんで、純度の高い水は電解質にはならないんですよ。

電気を通さない水の正体とは

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ここからは、電気を通さない水をご紹介していきます。

先ほども少しご紹介しましたが、実験で使う純水やさらに純度が高い超純水は電気を通しません。だから、純水に電気を流すには、水酸化ナトリウムのような電解質をとかしてあげる必要があるんです。

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