この記事では「バイオマス燃料」について解説していきます。バイオマス燃料は聞いたことがあるか?今話題のSDGsの観点からも、バイオマス燃料は期待されているエネルギー源なんです。バイオマス燃料の種類や、これから解決していく必要のあるバイオマス燃料の問題点についても学んでいこう。
この記事ではバイオサイエンスや生物学に詳しい理系院卒ライターtomato1121と解説していきます。

ライター/tomato1121

大学と大学院で学んだことを元に、生物の楽しさを伝えたいと思いライターになる。生物学の知識を分かりやすく伝え、多くの人に興味を持ってもらえるように日々奮闘中。

バイオマス燃料は再生可能エネルギー

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バイオマスとは「生物によって生み出された、再生する事が可能な資源」のことをいいます。皆さんSDGsという言葉を聞く機会が増えたのではないでしょうか。

SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、「誰一人取り残さない(leave no one behind)」持続可能でよりよい社会の実現を目指す世界共通の目標

目標7 [エネルギー] すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的なエネルギーへのアクセスを確保する。

出典:持続可能な開発目標 (SDGs)と日本の取組(外務省)https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/SDGs_pamphlet.pdf

SDGsは17の目標で構成されており、目標7にはエネルギーに関する目標が掲げられています。この目標では持続可能、つまり再生可能でクリーンなエネルギー源を確保することが目指されているのです。バイオマス燃料は、このSDGsの観点からも注目を集めているエネルギー源といえます。

カーボンニュートラル

カーボンニュートラル

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バイオマス燃料が再生可能と言われる理由は「カーボンニュートラル」であるためです。カーボンニュートラルについて説明していきましょう。

エネルギーを生み出すためには有機物を燃焼させる必要があります。燃焼させると当然二酸化炭素が排出されますね。しかしバイオマス燃料は植物由来です。植物は成長段階で二酸化炭素を吸収して有機物を合成する光合成を行いますね。バイオマス燃料の使用によって二酸化炭素が排出されても、二酸化炭素排出量は光合成で大気中から吸収した量と同等と考えることができます。

カーボンニュートラルは二酸化炭素排出量と吸収量を差し引きゼロにする、つまり大気中の二酸化炭素量を増加させない、ということを意味するのです。

化石燃料との比較

化石燃料には石炭や石油、天然ガスなどが含まれます。地質時代の有機物(生物の遺骸)が堆積して、長い年月をかけて作られたもの。バイオマスと同様に生物由来の燃料ではありますが、光合成により二酸化炭素を吸収していたのは、それらの生物の生存していた数億年前の話です。

化石燃料を使用することにより、現代の大気中の二酸化炭素排出量は増加する一方となります。カーボンニュートラルとはいえませんね。

\次のページで「なぜバイオマス燃料が必要とされているか?」を解説!/

なぜバイオマス燃料が必要とされているか?

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バイオマス燃料が必要とされている理由は2つあります。1つは化石燃料には限りがあること、2つ目には二酸化炭素排出量の増加による地球温暖化問題解決のためです。

化石燃料には限りがある

化石燃料は大昔の生物が堆積してできたもの。石油の場合は現時点で約50.6年分使用できるとされていて、すぐに枯渇する心配はありません。しかし無限に使える、というわけではないですよね。

しかも日本で使用されているエネルギーは約85.5%が海外から輸入している化石燃料に依存しているのが現状です。将来的には化石燃料に頼ることなく発電する仕組みを目指していきたいですね。

出典:

経済産業省資源エネルギー庁 化学エネルギーの動向

https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2018html/2-2-2.html

経済産業省資源エネルギー庁 日本のエネルギー2020

https://www.enecho.meti.go.jp/about/pamphlet/pdf/energy_in_japan2020.pdf

地球温暖化問題解決のため

さらに、地球温暖化による世界的な平均気温の上昇が深刻化しています。地球温暖化の原因は二酸化炭素をはじめとした温室効果ガス。温室効果ガスの濃度が高まると「地表からの放射熱を吸収し、地上を再度放射する」という効果が強くなります。これにより気温上昇へと繋がるわけです。そのため二酸化炭素排出量の削減が世界的な目標となっていますね。

これらの理由により、持続可能なエネルギーであるバイオマス燃料への期待が高まっているといえます。

バイオマス燃料の種類

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ひとことでバイオマス燃料と言ってもいろいろな種類があります。原料にしているものも様々です。それではバイオマス燃料の代表的なものをご紹介しましょう。

木質バイオマス

木質バイオマスとしては、伐採後に使用されていない木材、建築現場で解体された時に発生する木材、製材現場で発生する残材などが使われます。日本では昔から薪を燃料として使っていましたが、現在では木質チップや木質ペレットに加工されて使用されることが多くなりました。この木質チップやペレットを燃焼させ、タービンを回して発電に利用されます。

個人的に注目しているのがペレットストーブ。直接ペレットを燃料として使うことができるのが魅力の一つです。一家庭でも木質バイオマスを取り入れることができるので、興味のある方は調べてみてはいかがでしょうか。

\次のページで「バイオエタノール」を解説!/

バイオエタノール

主にサトウキビやトウモロコシを原料として製造されています。サトウキビやトウモロコシのもつ糖を原料に酵母にアルコール発酵をさせてエタノールを生成するのです。一般的にガソリンと混合して自動車の燃料として使用されています。

ブラジルやアメリカではバイオエタノールの普及が進んでおり、世界の生産量のうち約7割が両国で生産されたもの。日本で使用されているバイオエタノールは、ほとんどがブラジルから輸入したものです。日本ではガソリンに3%だけ混合して使用することが認められています。

バイオディーゼル

バイオディーゼルは菜種油やパーム油などの様々な油脂が原料になるので、廃棄用の油を原料とすることもできます。原料の油脂にメタノールを反応させて、メチルエステル化することで製造されるバイオマス燃料です。

軽油を燃料とする自動車やバスで、日本では軽油に5%混合して使用されます。日本では地方自治体によっては、家庭から使用済みの食用油を回収してバイオディーゼルに再利用する取り組みが行われている所もありますね。

バイオガス

バイオガスは廃棄食品や家畜の排せつ物、紙ごみなどを活用して製造します。原料とする廃棄物をメタン発酵により分解し、発生したメタンガスを利用してタービンを回し発電する方法です。廃棄するはずだったものを利用して発電するので、廃棄物量を減らすことができ、その分二酸化炭素排出量を減らすことに繋がります。

バイオマス発電の問題点

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ここまでバイオマス燃料のメリットを説明してきましたが、やはり問題点もあります。バイオマス燃料をカーボンニュートラルなエネルギー源として普及させるために、解決すべきポイントについて解説していきましょう。

食糧問題

バイオエタノールを製造するには原料となるサトウキビやトウモロコシの栽培が必要です。トウモロコシは人間の食料としてだけでなく、家畜の飼料としても生産されています。またサトウキビは砂糖の原料ですね。サトウキビやトウモロコシがバイオエタノールの製造に使われることで、食糧価格の高騰に繋がっていることが問題となっているのです。

そのため食糧と競合しない原料を用いることが大きな課題となっています。

\次のページで「コストの問題」を解説!/

コストの問題

バイオエタノールで食糧と競合しない原料を使うため、例えば廃棄される木材の利用や植物の繊維などを原料とする技術の開発が進められています。ただそのような木質バイオマスを酵母が発酵できる状態にするためには、前処理が必要。前処理にコストがかかることも問題となっています。

また、木質バイオマスでは木を伐採して運搬・加工するため人件費や運搬費、加工費等が必要。雇用が生まれる側面もありますが、バイオマス燃料はコストが高くなることも多く、普及に繋がりにくい一因となっています。

バイオマス燃料の製造過程での問題

木質チップやペレット、バイオエタノール、バイオディーゼルと、いずれも燃料をつくるために施設を建てる必要があります。工場の建築、工場での加工・製造、運搬過程で化石燃料を使用し二酸化炭素を排出しているという問題も事実です。また、海外では木質バイオマスの原料調達のための、森林伐採が議論になることも。

こういった観点から「バイオマスはカーボンニュートラルではない」という意見もあります。あくまでもカーボンニュートラルの考えを第一に、できるだけ二酸化炭素を排出しない工夫が今後の課題となりますね。

エネルギー問題について、私たちにできること

バイオマス燃料について解説いたしました。現在日本では輸入した化石燃料がなければ成り立たない生活をしています。バイオマス燃料はまだ問題点もありますが、この現状を打破する切り札になるかもしれません。

私たちにできることは、まずは小さなことかもしれませんが電気を大切に使うこと。そしてバイオマス燃料を含め、再生可能なエネルギーについて興味をもつことではないでしょうか。私たちの意識が変われば、少しずつ世の中の仕組みが変わっていくかもしれませんよ。

イラスト使用元:いらすとや

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理科生物

バイオマス燃料とは?カーボンニュートラルで再生可能エネルギー?種類、問題点も理系院卒ライターがサクッとわかりやすく解説!

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ライター/tomato1121

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バイオマス燃料は再生可能エネルギー

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バイオマスとは「生物によって生み出された、再生する事が可能な資源」のことをいいます。皆さんSDGsという言葉を聞く機会が増えたのではないでしょうか。

SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、「誰一人取り残さない(leave no one behind)」持続可能でよりよい社会の実現を目指す世界共通の目標

目標7 [エネルギー] すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的なエネルギーへのアクセスを確保する。

出典:持続可能な開発目標 (SDGs)と日本の取組(外務省)https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/SDGs_pamphlet.pdf

SDGsは17の目標で構成されており、目標7にはエネルギーに関する目標が掲げられています。この目標では持続可能、つまり再生可能でクリーンなエネルギー源を確保することが目指されているのです。バイオマス燃料は、このSDGsの観点からも注目を集めているエネルギー源といえます。

カーボンニュートラル

カーボンニュートラル

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バイオマス燃料が再生可能と言われる理由は「カーボンニュートラル」であるためです。カーボンニュートラルについて説明していきましょう。

エネルギーを生み出すためには有機物を燃焼させる必要があります。燃焼させると当然二酸化炭素が排出されますね。しかしバイオマス燃料は植物由来です。植物は成長段階で二酸化炭素を吸収して有機物を合成する光合成を行いますね。バイオマス燃料の使用によって二酸化炭素が排出されても、二酸化炭素排出量は光合成で大気中から吸収した量と同等と考えることができます。

カーボンニュートラルは二酸化炭素排出量と吸収量を差し引きゼロにする、つまり大気中の二酸化炭素量を増加させない、ということを意味するのです。

化石燃料との比較

化石燃料には石炭や石油、天然ガスなどが含まれます。地質時代の有機物(生物の遺骸)が堆積して、長い年月をかけて作られたもの。バイオマスと同様に生物由来の燃料ではありますが、光合成により二酸化炭素を吸収していたのは、それらの生物の生存していた数億年前の話です。

化石燃料を使用することにより、現代の大気中の二酸化炭素排出量は増加する一方となります。カーボンニュートラルとはいえませんね。

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