燃焼範囲とは?引火点と発火点って何?原理や計算方法を機械系出身ライターが5分でわかりやすく解説!
今回は機械系出身で熱機関や燃料に詳しいライター「ふっくらブラウス」が、燃料範囲について、燃焼という現象自体にもふれながら解説していきます。
ライター/ふっくらブラウス
機械系出身の理系ライター。熱力学含む四力学のほか、エンジンなどの熱機関や物質の特性についても学習した。塾講師時代の経験をいかし、シンプルでわかりやすい説明を心がけている。
そもそも燃焼ってどういう現象?
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皆さんが日常的に使用しているガソリンや灯油。これらの燃料がどうして燃えるのか考えたことがあるでしょうか?
燃料が燃える条件には燃焼範囲というものが密接に関わっています。今回は燃焼範囲について解説していきますが、まず手始めにそもそも燃焼とは何なのか考えてみましょう。
焚き火に土をかぶせると消えてしまうように、ものが燃えるためには酸素(O2)の供給が必要です。また、ものが燃えると二酸化炭素(CO2)や水蒸気(H2O)などが発生します。
また、紙や木材、燃料といった身の回りの燃えるものは主に炭素(C)や水素(H2)から構成されている物質です。炭素、酸素、二酸化炭素…という流れをみてピンときた方もいるかもしれませんね。
実は、燃焼とは物質を構成する原子が酸素と結びつく現象の一種なんです。このように原子の結びつきが変わる反応を化学反応といい、特に原子が酸素と結合する反応を酸化反応といいます。
10円玉などの金属がさびる現象も酸化反応によるものです。しかし、10円玉がさびる様子はどう見ても燃えているようには見えません。そこで、燃焼という現象をさらに深掘りして見ていきましょう。
燃焼の持続と発熱反応
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燃焼は酸化反応の中でも、炎をともなう急激な反応となります。
炎とは気体が燃焼している状態です。紙や木材、燃料といった炎があがる物体は、それそのものではなく、熱によって分解・蒸発した気体が反応しているんですね。
では、その炎を形づくる熱や光はどこからやってくるのでしょうか。
これらの熱や光は化学反応により生成されています。実は、物質はそれぞれエネルギーを持っており、化学反応の前後で生じる物質のエネルギーの差が、熱や光として現れているんです。
図のように、反応前よりも反応後の方がエネルギーが低ければ、余分なエネルギーが放出され熱や光となります。反対に、反応後の方がエネルギーが高いときは、周りのエネルギーや熱が吸収される反応です。前者の反応を発熱反応、後者の反応を吸熱反応といいます。
また化学反応には、原子を移動、組み換えさせるためのエネルギーが必要です。そのため、可燃性ガスと酸素を混合しただけでは燃焼せず、反応のきっかけとなる高熱源・点火源が必要となるんですね。
一度反応が起こると、そのとき生じる発熱を点火源として、別の可燃物分子も酸素と結合していきます。このように酸化・発熱反応が素早く連鎖的に起こる現象が燃焼の正体です。
燃焼範囲とは?
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燃焼範囲とは、可燃性気体と空気が燃焼可能な混合比率範囲のことで、体積の割合を示す単位vol%で表します。酸素との比率ではなく、空気との比率であることに注意してください。
燃焼範囲は爆発範囲、爆発限界、可燃性限界とも呼ばれており、燃焼範囲の上限・下限はそれぞれ爆発上限界、爆発下限界といいます。
燃焼できる濃度に上限・下限がある理由は、さまざまな化学反応が複数同時に絡んでいるからです。
実際の燃焼では、物質の蒸発・気化、酸素との結合だけでなく、逆に酸化した物質が熱を奪って元の状態に戻る反応などさまざまな反応が絡んでいます。これらの反応にともなう発熱・吸熱のバランスがととのって初めて、燃焼が継続するんです。
燃焼範囲が変化する条件
燃焼範囲はいつでも一定なわけではなく、可燃物の種類、また周囲の環境から影響を受け変動するものです。主に温度、圧力、周辺の酸素濃度が変動の原因となります。
可燃物はそれぞれ分子構造が異なるため、燃焼中の発熱・吸熱反応はさまざまです。また、物質ごとに熱量に対する温度上昇(比熱)もそれぞれ異なるので燃焼範囲も個別の値をとります。
可燃物の温度が高いときは、粒子が熱運動は激しく高いエネルギーを持っている状態です。そのため、反応を継続させるための発熱も通常より少なくて済むので、高温下では燃焼範囲の下限も下がります。
一方、圧力による燃焼範囲の影響はバラバラで、範囲が広くなったり狭くなったりと安定しません。
また、酸素濃度による影響はほかの要因よりも大きく、酸素濃度が高くなると発熱反応である酸化が起きやすく燃焼しやすいです。逆に酸素濃度が低くなると燃焼しにくくなり、16%を下回ると燃焼しなくなります。
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