今回は「カドミウム」という元素について解説していきます。

カドミウムは人体に深刻な悪い影響を与える有害物質です。日本四大公害の一つであるイタイイタイ病はカドミウムに起因していることは多くの人が知っているでしょう。今回は、化学・環境工学の立場で、カドミウムがどのような物質であるかを解明していく。この記事を読めば、カドミウムがなぜ有毒であるかが説明できるようになるぞ。ぜひこの機会にカドミウムについて理解を深めてくれ。

化学に詳しいライター通りすがりのペンギン船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。資源材料学、環境化学工学、バイオマスエネルギーなども勉強中。

カドミウムについて学ぼう!

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皆さんは、カドミウムという言葉を聞くと、どのようなイメージを思い浮かべるでしょうか?多くの人が社会科の授業で学ぶイタイイタイ病をイメージすることでしょう。このように、カドミウムは有害であるというイメージが強くなっているはずです

今回の記事では、化学の視点からカドミウムについて考察します。そして、カドミウムがなぜ有毒であるのかカドミウムは何に使われているのか、といった点を考察していきますよ。カドミウムのことを正しく理解することで、必ずしも人間に害ばかりを与えるものではないということも見えてくることでしょう。それでは早速、解説をはじめますね。

カドミウムとは?

カドミウムとは?

image by Study-Z編集部

カドミウム原子番号が48元素記号がCd金属元素です。元素周期表の中ではカドミウムは亜鉛の真下に存在し、12族の典型元素に分類されます。単体のカドミウムは銀白色の金属光沢をもつやわらかい物質です。反応性も比較的よく、カドミウムは硫化物、酸化物としても存在しますよ

また、カドミウムは融点が320℃沸点が765℃となっています。この値は、金属元素の中でも比較的低いものなのです。そして、カドミウムは単体・蒸気・化合物のいずれも強い毒性をもつということが最大の特徴と言えますよ

カドミウムの産出国

カドミウムの産出国は、時代の変化とともに移り変わってきました1800年代後半のカドミウムの主要産出国はドイツなどを含む欧州の国々でした。その後、1900年代になると、カナダやメキシコなどの南北アメリカに属する国がカドミウムの産出量を増やしたのです

そして、2000年代に入ると、カドミウムの主要産出国は日本・韓国・中国などのアジア諸国になりました。カドミウムの産出国は、ヨーロッパ→南北アメリカ→アジアの順で移っていったことを頭に入れておいてくださいね。

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カドミウムの有害性

神通川 2006年7月4日撮影
RESPITE - photo by RESPITE, パブリック・ドメイン, リンクによる

ここまで、化学の視点でカドミウムの性質や特徴について学んできました。このチャプターでは、環境工学の視点でカドミウムの有毒性について学びましょう

具体的には、カドミウムが有毒である理由カドミウムによる公害カドミウムに関する規制という3つの項目について述べますよ。

カドミウムはなぜ有害なのか?

カドミウムは人間の体内にある腎臓に深刻な影響を与える物質です腎臓は体内に存在する老廃物や過剰な水分を尿として排出するという重要な機能を有します。それゆえ、カドミウムで腎臓が傷められると、体に老廃物が溜まってしまうのです

また、腎臓は骨を強くするために必要なビタミンDを活性化させる役割があるのですが、この作用もカドミウムの摂取により阻害されます。それによって、骨や関節に問題が生じたり、貧血をおこしたりするようになってしまいますよ

カドミウムに起因する公害

日本国内で発生したカドミウムに起因する公害としては、富山県神通川流域におけるイタイイタイ病が挙げられます。大正から昭和にかけて、神通川上流にある神岡鉱山から流出したカドミウムが、流域の水環境や土壌を汚染しました

そして、神通川流域で生産されたコメなどの農産物を食べた住民を中心にカドミウム中毒の患者が急増したのです。カドミウム中毒によって、骨や関節を痛めた患者が「イタイタイ」と症状を訴えたことから、イタイイタイ病と名付けられたそうですよ。

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カドミウムに関する規制

我が国では、イタイイタイ病の反省を踏まえて、カドミウムの排出基準を定めた法律が制定されました。また、これらの法律のもと、農林水産省は食品に含まれるカドミウムの濃度を定期的に調査していますよ。

そして、海外でも、同じような施策がなされています。EUで制定されたRoHS指令では、カドミウムに対する厳しい規制が定められているのです。以上のような措置により、カドミウムによる健康被害を防止することができるようになりました。

カドミウムの用途

最後に、カドミウムがどのような用途で使用されているかを説明していきます。カドミウムは有毒ではありますが、未だにいくつかの製品を作る際に使用されているのです。このようになっている理由としては、代替品が存在しないこと、代替品が高価であることといったものが挙げられますよ。

今回はカドミウムの用途として、ニッケルカドミウム電池CdSセルの2つをご紹介します。それぞれの製品がどのような場面で活躍しているのかに注目して記事を読み進めてみてくださいね

ニッケルカドミウム電池

image by iStockphoto

ニッケルカドミウム電池は、繰り返し充放電が可能な二次電池の一つです。電極には、オキシ水酸化ニッケルとカドミウムが使用されています。この電池の特徴は大電流の出力が可能であることで、電動アシスト自転車や電動工具などのパワーが必要な機器に搭載されていますよ

一方で、デメリットも存在します。ニッケルカドミウム電池を使用していると、見かけ上の蓄電容量が減少してしまうメモリー効果という現象が頻繁に起きるのです。このような欠点から、近年はリチウムイオン電池などへの置き換えが進んでいます

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CdSセル

image by iStockphoto

CdSセルは、硫化カドミウムを用いた光センサーですよ。CdSセルは周囲の光の量に応じて、電気抵抗値が変化する電気部品です。この部品は、暗くなったときに自動点灯する街灯などの中に組み込まれていますよ

半導体を用いた光センサーの登場により、この部品は使用頻度が下がってきています。しかしながら、一部の製品ではCdSセルの信頼性の高さなどを理由に、使用が継続されていますよ

カドミウムの光と影

カドミウムという言葉を聞くと、大半の人はイタイイタイ病などの公害をイメージするのではないでしょうか。もちろん、このイメージというのは正しいものですよね。しかしながら、カドミウムには工業的な価値もあり、影ばかりの物質とも言い切れないのです。

今回の記事では、光と影の両側面からカドミウムについて考察しました。このようにカドミウムについて正しく理解することで、この物質を私たち人類がどのように扱っていくべきかも考えることができるのです。ぜひこの機会に、カドミウムについて学んでみてくださいね。

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カドミウムとはどのような物質?なぜ人体に有害なの?現役理系学生ライターが5分でわかりやすく解説!

今回は「カドミウム」という元素について解説していきます。

カドミウムは人体に深刻な悪い影響を与える有害物質です。日本四大公害の一つであるイタイイタイ病はカドミウムに起因していることは多くの人が知っているでしょう。今回は、化学・環境工学の立場で、カドミウムがどのような物質であるかを解明していく。この記事を読めば、カドミウムがなぜ有毒であるかが説明できるようになるぞ。ぜひこの機会にカドミウムについて理解を深めてくれ。

化学に詳しいライター通りすがりのペンギン船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

現役理系大学生。環境工学、エネルギー工学を専攻している。これらの学問への興味は人一倍強い。資源材料学、環境化学工学、バイオマスエネルギーなども勉強中。

カドミウムについて学ぼう!

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皆さんは、カドミウムという言葉を聞くと、どのようなイメージを思い浮かべるでしょうか?多くの人が社会科の授業で学ぶイタイイタイ病をイメージすることでしょう。このように、カドミウムは有害であるというイメージが強くなっているはずです

今回の記事では、化学の視点からカドミウムについて考察します。そして、カドミウムがなぜ有毒であるのかカドミウムは何に使われているのか、といった点を考察していきますよ。カドミウムのことを正しく理解することで、必ずしも人間に害ばかりを与えるものではないということも見えてくることでしょう。それでは早速、解説をはじめますね。

カドミウムとは?

カドミウムとは?

image by Study-Z編集部

カドミウム原子番号が48元素記号がCd金属元素です。元素周期表の中ではカドミウムは亜鉛の真下に存在し、12族の典型元素に分類されます。単体のカドミウムは銀白色の金属光沢をもつやわらかい物質です。反応性も比較的よく、カドミウムは硫化物、酸化物としても存在しますよ

また、カドミウムは融点が320℃沸点が765℃となっています。この値は、金属元素の中でも比較的低いものなのです。そして、カドミウムは単体・蒸気・化合物のいずれも強い毒性をもつということが最大の特徴と言えますよ

カドミウムの産出国

カドミウムの産出国は、時代の変化とともに移り変わってきました1800年代後半のカドミウムの主要産出国はドイツなどを含む欧州の国々でした。その後、1900年代になると、カナダやメキシコなどの南北アメリカに属する国がカドミウムの産出量を増やしたのです

そして、2000年代に入ると、カドミウムの主要産出国は日本・韓国・中国などのアジア諸国になりました。カドミウムの産出国は、ヨーロッパ→南北アメリカ→アジアの順で移っていったことを頭に入れておいてくださいね。

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