今回は「電圧降下」について解説していきます。

電圧降下は、高圧送電線から身近なコンセントなどを含む家庭における配線に至るまで、様々なところで見られる電気に関する現象です。今回の記事では、この現象のメカニズムを解明していきます。難しい話のように思われるかもしれないが、中学校で学ぶ理科の知識のみで理解ができるものになっているので、安心してくれ。ぜひ、この機会に電圧降下についての理解を深めてくれ。

中学時代に独学で第二種電気工事士免状を取得した理系学生ライターの通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

小学生のころ、電子工作にドハマリし、中学時代には独学で第二種電気工事士免状を取得した。電気について独学する機会が多かったこともあり、電気の学習がいかに難しいかということもよく理解している。

電圧降下について学ぼう

今回の記事では、『電圧降下』という現象について解説していきます。多く方にとって馴染みがない用語だと思われますが、実は電圧降下というのは身近な現象です。皆さんが暮らしている家の中でも、電圧降下という現象は毎日のように発生していますよ。

この記事では、電圧降下がどのような現象であるかを説明するのはもちろんのこと、メカニズムや関連する話題についても述べます。関連する話題では、近年普及してきた再生可能エネルギーについても触れますよ。それでは早速、解説をはじめますね。

電圧降下とは?

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はじめに、電圧降下とは一体どのような現象であるのかを学びましょう。電圧降下は、大容量負荷を回路に接続した際に末端電圧が下がってしまう現象のことを指します。この現象は、皆さんの家の中でも起こりうるものです。

実際、消費電力の大きい機器(ドライヤーなど)を使用すると、コンセントの電圧は低下します。これがまさに電圧降下なのです。コンセントの電圧低下は、電球などが若干暗くなるといった現象から感じ取ることができますよ。また、冷蔵庫のように突入電流が大きな機器をコンセントに繋いだときに、照明が一瞬ちらつくという現象も電圧降下によるものです。

電圧降下のメカニズム

ここからは、電圧降下のメカニズムについて詳しく学んでいきましょう。難しい内容のように思われますが、中学校の理科の授業で勉強する知識があれば、電圧降下のメカニズムは簡単に理解することができますよ

ここでは、3つのステップに分けて、メカニズムを説明していきます。いずれのステップにも重要な事柄が含まれているので、すべてに目を通しておいてくださいね

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導体の電線にも電気抵抗が存在する

導体の電線にも電気抵抗が存在する

image by Study-Z編集部

電気配線に使用される電線は、銅などの導体で作られています。導体は電気をよく通すので、抵抗値をゼロとして扱うのが一般的です。しかしながら、実際に使われる電線には、わずかながら抵抗が存在しますよ

電線の電気抵抗は、素材、断面積、周辺温度、劣化度などによって変化します。そのため、一元的に電線の抵抗を表すことはできません。ただし、いずれの場合も極めて小さな値になります。例えば、家庭の屋内配線に使われるVFFケーブルは1[km]あたり5[Ω]程度の電気抵抗があることが知られていますよ。

抵抗をもつ電線に電流が流れる

抵抗をもつ電線に電流が流れる

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続いて、抵抗をもつ電線に電流が流れたときの挙動を考えてみましょう負荷を接続したとき、電線の抵抗成分の影響を受けて、電位差が生じますよ。この電位差はオームの法則に従います。

電線の電気抵抗をR[Ω]、電線に流れる電流をI[A]とすると、電位差はRI[V]となりますよね。このとき、電線から発生するジュール熱はRI2[W]です。この熱が原因で電線は発熱するのですね。

末端電圧が下がる

末端電圧が下がる

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一般的なコンセントは2つの電極が存在するため、電源と機器は2つの電線で輪になるように結ばれます。図のような電気抵抗がR[Ω]の電線に、電流I[A]が流れた場合を考えてみましょう。このとき、上下の電線における電位差の和は2RI[V]となりますよね

それゆえ、電源電圧をE[V]とすると、末端電圧はE-2RI[V]となります電源電圧よりも末端電圧のほうが小さな値になっていますよね。これがまさに電圧降下なのです。また、電流I[A]が大きな値であるほど、電圧降下が大きくなることもわかります。つまり、消費電力の大きい機器を接続すると、電圧降下が顕著になるということなのです。

\次のページで「電圧降下に関する話題」を解説!/

電圧降下に関する話題

ここまで、電圧降下とは一体どのような現象であるかということを、そのメカニズムを含めて説明してきました。以下では、これらの事柄を踏まえて、電圧降下に関係のある話題をいくつか紹介します

このような話題を知ることで、電圧降下という現象についてより本質的に理解できるようになりますよ。ぜひ最後まで記事を読んでみてくださいね。

電圧が高いほど送電損失は少なくなる?

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電圧降下は送電中の電力損失につながります。それゆえ、電圧降下はできるだけ小さくすることが望ましいのです。電圧降下を小さくするための対策として、送電電圧を高くするというものがあります。なぜ、電圧が高いほど電圧降下が小さくなるのでしょうか?

先ほど、電圧降下の大きさは電流の大きさに影響を受けることを述べました。同じ電力を送り届ける場合、電圧を高くするほど、電流は小さくなりますよね。そのため、高圧送電のほうが送電損失が少なくなるのです

電圧降下と真逆の現象もある?

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電圧降下は電源電圧よりも末端電圧の大きさが小さくなる現象ですが、それと真逆の『電圧上昇』という現象も存在します。電圧上昇は、電源電圧よりも末端電圧が大きくなる現象ですこのような現象は、電流の向きが末端から電源に向かうようなときに発生します

具体的には、太陽光発電を設置している家庭などから、逆潮流によって電気が逆流する際に発生する現象ですよ電圧上昇は再生可能エネルギーのような分散電源の普及に伴って増加すると考えられているのです。過度な電圧上昇は、配電網に深刻な影響を及ぼします。そのような事情から、最近では電圧上昇を緩和するための技術研究が盛んに行われているのです

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電圧降下について学ぶ意義

学校のテストや入試で出題される電気の問題では、電線の電気抵抗を0として扱うことがもはや当たり前のことになっています。ですが、現実はそのようにはなっていません。配電網や屋内配線の設計では、電線がもつわずかな電気抵抗による電圧降下の影響を無視することはできません。

このような事柄は、授業や参考書を通した勉強だけでは身に着けることができませんよね。単純化した理論を知るだけではなく、現実はどのようになっているのかを学ぶことも、サイエンスの素養を育てるうえで重要です。ぜひ、この機会に電圧降下について詳しく学んでみてくださいね。

" /> 配電網などに影響を与える電圧降下とは?メカニズムを現役理系学生ライターが5分で徹底わかりやすく解説! – Study-Z
物理理科電磁気学・光学・天文学

配電網などに影響を与える電圧降下とは?メカニズムを現役理系学生ライターが5分で徹底わかりやすく解説!

今回は「電圧降下」について解説していきます。

電圧降下は、高圧送電線から身近なコンセントなどを含む家庭における配線に至るまで、様々なところで見られる電気に関する現象です。今回の記事では、この現象のメカニズムを解明していきます。難しい話のように思われるかもしれないが、中学校で学ぶ理科の知識のみで理解ができるものになっているので、安心してくれ。ぜひ、この機会に電圧降下についての理解を深めてくれ。

中学時代に独学で第二種電気工事士免状を取得した理系学生ライターの通りすがりのぺんぎん船長と一緒に解説していきます。

ライター/通りすがりのペンギン船長

小学生のころ、電子工作にドハマリし、中学時代には独学で第二種電気工事士免状を取得した。電気について独学する機会が多かったこともあり、電気の学習がいかに難しいかということもよく理解している。

電圧降下について学ぼう

今回の記事では、『電圧降下』という現象について解説していきます。多く方にとって馴染みがない用語だと思われますが、実は電圧降下というのは身近な現象です。皆さんが暮らしている家の中でも、電圧降下という現象は毎日のように発生していますよ。

この記事では、電圧降下がどのような現象であるかを説明するのはもちろんのこと、メカニズムや関連する話題についても述べます。関連する話題では、近年普及してきた再生可能エネルギーについても触れますよ。それでは早速、解説をはじめますね。

電圧降下とは?

image by iStockphoto

はじめに、電圧降下とは一体どのような現象であるのかを学びましょう。電圧降下は、大容量負荷を回路に接続した際に末端電圧が下がってしまう現象のことを指します。この現象は、皆さんの家の中でも起こりうるものです。

実際、消費電力の大きい機器(ドライヤーなど)を使用すると、コンセントの電圧は低下します。これがまさに電圧降下なのです。コンセントの電圧低下は、電球などが若干暗くなるといった現象から感じ取ることができますよ。また、冷蔵庫のように突入電流が大きな機器をコンセントに繋いだときに、照明が一瞬ちらつくという現象も電圧降下によるものです。

電圧降下のメカニズム

ここからは、電圧降下のメカニズムについて詳しく学んでいきましょう。難しい内容のように思われますが、中学校の理科の授業で勉強する知識があれば、電圧降下のメカニズムは簡単に理解することができますよ

ここでは、3つのステップに分けて、メカニズムを説明していきます。いずれのステップにも重要な事柄が含まれているので、すべてに目を通しておいてくださいね

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