皆は酸化還元反応という言葉について聞いたことがあるか?化学の授業で習ったやつも多いでしょうが、実は身の回りにありふれたメジャーな反応だって知っているか?
今回は化学反応の一角をなす酸化還元反応について、理系出身で物体の性質にも詳しいライター、ふっくらブラウスとともにおさらいしていこう。

ライター/ふっくらブラウス

理系単科大学で機械系を専攻。金属をはじめとして様々な物体の性質や化学についても学習した。化学や物理、数学のほか、歴史など様々な分野の雑学を集めるのが趣味。

酸化還元反応って?

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皆さんは酸化還元反応という言葉になじみはあるでしょうか?むかし化学の授業で勉強したけど、難しくてなんとなく流してしまった人もいるかもしれませんね。実は、酸化還元反応は私たちの身の回りにありふれた現象なんです。

酸化還元反応は化学反応のうち、酸化反応、還元反応という互いに逆の反応が同時に起こっている反応のことを指します。酸化還元反応は反応前後で酸素・水素・電子の受け渡しのいずれかが発生するのが特徴です。

酸素・水素の受け渡しによる定義を拡張したものが電子の受け渡しの定義になります。それでは、酸化還元反応について、酸素・水素のやりとり、電子のやりとりに分けて具体的に見てみましょう。

酸素のやりとりから見る酸化還元反応

元々、酸化反応は物質が酸素と結合し酸化物を形成する反応、還元反応は酸化物が酸素を失う反応と定義されていました。後に紹介する水素および電子による酸化還元反応の定義は、元々の考え方を拡張したものになっています。実例として、酸化銅と水素の化学反応式を使って整理していきましょう。

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反応前後で、水素分子が元々酸化銅と結びついていた酸素と反応して水が生成していることがおわかりでしょうか?水素分子視点でこの反応を見ると、水素分子が酸素原子と結合しているので、水素分子は酸化されたことになります。

一方で酸化銅に着目すると、反応前の段階では酸化銅だったのが、反応後は銅単独で存在している形になっていますね。同様に考えると、酸化銅から酸素が取り除かれた形になるので、酸化銅は還元されたことになります。

例からもわかるように、酸化反応と還元反応は同時に起こることから、合わせて酸化還元反応と呼ばれているのです。

\次のページで「水素のやりとりから見る酸化還元反応」を解説!/

水素のやりとりから見る酸化還元反応

酸素ではなく、水素のやりとりによって酸化反応および還元反応を定義することもできます。結論を先に述べると、水素を失う反応を酸化反応、水素を得る反応を還元反応とする方法です。なぜ酸化還元反応に水素が関係してくるのか、メタンと酸素が結びつく反応、つまりメタンガスの燃焼を例に考えてみましょう。

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炭素原子に注目すると、反応前後で酸素と化合して二酸化炭素となるので、炭素原子は酸化したと言えます。

ここで重要なポイントとなるのは、炭素原子は酸化するときに、酸素と結合すると同時に水素原子を失っていることです。反応によっては酸化の際に元の原子が水素を失うことがあるため、水素を失う反応も酸化反応と定義したんですね。

失われた水素は自然に消滅することはないので、別の原子が水素を得ることになります。そこで、酸化反応と逆の反応として、水素を得る反応を還元反応として合わせて定義が可能です。このように考えると、水については酸素が水素を得たと見なせるので、還元反応も同時に起こっていることになります。

水素によって酸化還元反応を定義すると、酸素が関わっていない反応でも水素の変化を手ががりに反応を考えることができますね。

電子のやりとりから見る酸化還元反応

しかし、これまでの方法では酸素も水素も関わらない反応について、酸化還元反応なのか考えることができません。そこで、酸化還元反応という現象の本質的な部分は何なのかをふまえた定義が考え出されました。

酸化還元反応の本質的な点は、反応前後で電子の受け渡しが存在することです。電子のやり取りと酸化還元反応の間にどんな関係があるのか、銅の酸化反応を例に具体的に解説しましょう。

この定義を理解するためには、水素や酸素といった原子が電子を持っていること、電子が特定の数集まると物質が安定するという前提知識が必要となります。酸化還元反応に触れる前に、電子と化学反応の関係についておさらいしましょう。

安定する電子数と電子の共有

安定する電子数と電子の共有

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原子は原子核を中心に、一定の個数ごとに電子が殻を作って覆っているという構造です。

原子は外側の殻に電子が全て入っている状態が安定した状態となります。一番外側の電子を最外殻電子とよび、物質が結びつく(化合する)現象の一部は最外殻電子の数を満タンにするために起こるんです。

実は水素原子や酸素原子といった原子が2個くっついて分子を作る理由も、結合により最外殻電子が安定した数になるためなんですね。

酸素原子は自身が持っている6個の最外殻電子のうち、2個をほかの酸素原子と共有して分子を作ります。酸素原子の最外殻はL殻なので、電子を最大数の8個維持できるように共有するかたちを取るんです。このような結合形態を共有結合と呼びます。

電子のグループ(電子殻)
・一つ目の核:K殻(最大電子数2個)
・二つ目の核:L殻(最大電子数8個)
・三つ目の核:M殻(最大電子数16個)

以下原子が持つ電子が多くなるごとにN殻、O殻……と電子殻が増えていきます。

酸化還元反応と電子の関係

原子と電子の関係がおさらいできたところで、酸化還元反応と電子の動きにどのような関係があるのか具体的に見ていきましょう。

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銅の最外殻電子数は2個であり、酸素原子の6個と合わせてピッタリ安定する8個になるんです。このため、酸素原子が銅の電子を吸収する形で、銅は酸素と結びつき酸化します。

銅の立場からみると、酸化したときに電子を2個失っていることがわかるでしょうか?このように物質が電子を失う、放出する反応を酸化反応と新しく定義したんです。

また、酸素原子は銅から電子を2個受け取った形になります。酸化反応に合わせて、このように物質が電子を受け取る反応は還元反応として定義されました。

放出された電子は自然消滅することなく、他の原子に取り込まれるので、やはり酸化反応と還元反応は同時に起こるものと言えます。

\次のページで「酸化還元反応の見分け方」を解説!/

酸化還元反応の見分け方

電子のやりとりによる定義のおかげで、より広い範囲の化学反応について酸化還元反応を当てはめることができるようになりました。しかし、長い複雑な化学反応式だとはたして酸化還元反応なのか別の反応なのか判断が難しくなってしまいます。

そこで、それぞれの原子について電子がいくら移動したのかを表す酸化数という概念を使うことで、一つ一つの反応を暗記することなく、簡単に酸化還元反応かどうか判断できるようになるんです。

酸化還元反応をわかりやすくする酸化数

酸化還元反応をわかりやすくする酸化数

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酸化数の考え方を探るために、もう一度銅の酸化反応を例に見ていきましょう。

画像の式は、銅原子ひとつにつき電子を2個放出する酸化反応、酸素原子ひとつにつき電子を2個受け取る還元反応を示したものです。このようにどちらかの反応だけ抜き出した式を半反応式と呼びます。

ここでポイントになるのは、電子はマイナスに帯電していることです。プラスにもマイナスにも帯電していない銅原子が、マイナスの電子を2個放出するので、全体でみるとプラス側に2だけ優位となります。Cuの右上の+2とはこのことを表した記述です。

同様に、酸素原子はマイナスの電子を2個受け取るので、全体ではマイナス側に2だけ優位となります。Oの右上の-2は同じくこのことを表した記述です。これらCuおよびOの右上の数字が、この反応におけるそれぞれの酸化数であり、反応前後で酸化数が増加した物質は酸化された酸化数が減少した物質は還元されたということになります。

ただ、毎回電子の動きを式を立てて考えるのは正直面倒で困難です。そこで、簡単な酸化数の計算の仕方を解説していきます。

酸化数の求め方

先ほどの説明でCuおよびOに+2、-2がついた表記が出てきましたが、もしかしたら化学が好きな人は既に気づいているかもしれません。

実は半反応式で書かれていた過程は、原子がイオン化する過程と同様の流れであり、カリウムイオンといった単原子イオンの酸化数はその価数と一致するのが特徴です。

また複数の元素からなる化合物については、1価の陽イオンとなる水素原子などの酸化数を+1、2価の陰イオンとなる酸素原子などの酸化数を-2とおきます。なお、化合物が帯電していなければ、化合物全体の酸化数のトータルは0となることに注意してください。そのほか、水素分子などの単独の原子からできている物質は、電子の受け渡しをしていないため酸化数は0です。

これらのポイントをまとめると以下のようになります。実際の問題では、ポイントを駆使して各原子の酸化数を求め、酸化数が増加したか減少したかを調べる流れになりますね。

酸化数の規則
1:単独の原子からなる物質(単体)の酸化数は0
2:単原子イオンの酸化数は、その価数に一致する
3:化合物に含まれる水素の酸化数を+1、酸素の酸化数を-2とする(過酸化物のみ酸素の酸化数は-1)
4:化合物全体の酸化数は0、帯電していれば化合物の価数を酸化数とする

身の回りの酸化還元反応の例

ここまで酸化還元反応の定義および見分け方について見てきました。化学反応式がメインの難しめの話が続いき、結局酸化還元反応とは何なのかあいまいになっているタイミングかと思います。そこで、最後は私たちの身の回りで見られる具体的な酸化還元反応を取り上げ、イメージと理解をより深めていきましょう。

\次のページで「物体の燃焼」を解説!/

物体の燃焼

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最も身近な酸化還元反応はなんといっても物体の燃焼と言えるでしょう。酸素がなければ火が消えてしまうことから、燃焼には酸素が必須となります。燃焼とは、実は燃えている部分から熱を受け取って物質と酸素が結合する現象であり、酸化還元反応なんです

紙や木といった身の回りの可燃物は有機物、つまり炭素原子や水素原子から構成されています。このような構造の物質が酸素と結合するとどうなるでしょうか。

有機物が燃焼すると、それぞれ炭素と酸素から二酸化炭素が、水素と酸素から水が生成されます。木などを燃やした時にたまに見られる白い煙は、酸化により生成した水が蒸発したものです。

金属のさびと鉱石の精錬

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光沢を放っていた10円玉が、時間が経つにつれて輝きを失っていくのは誰もが見たことあると思います。それは、10円玉の原料である銅が、空気中の酸素と長い時間をかけて酸化してしまった姿なんです。

黒ずんだ10円玉をピカピカにするためにお酢で磨く実験について知っている方もいるかと思います。実はお酢含む酸は水素イオンを豊富に含んでいるため、酸化銅の酸素と結合し、酸化銅を元の銅の状態に戻すことが可能です。これは、水素イオンの働きにより、酸化銅が還元されたといえます。

これは、実は鉱石の精錬技術にも応用されている反応なのです。自然界に存在している鉄鉱石や銅鉱石は、長年空気に晒されているので既に酸化してしまっています。そこで、炭素と鉱石を混ぜて加熱することで、還元反応を促進する方法が、精錬の中心的な手法になっているんです。

生物のエネルギー生成(代謝)

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生物は呼吸をしなければ生きていくことができません。

呼吸により取り込まれた酸素は、体内の栄養(有機物)と結びつきエネルギーを発生させます。このようなエネルギーを得る酸化還元反応は、生存活動の要となる反応で、私たちが代謝と呼んでいるものです。

生物はエネルギー代謝の際に副産物を生成します。特に生態系の中でも分解者と呼ばれるもののうち、酸素を利用する好気性微生物の副産物は、環境維持に大きな役割をもつ物質です。

好気性微生物は代謝のときに、有機物に含まれる炭素や窒素と酸素を使用して、二酸化炭素や二酸化窒素など生態系が再利用可能な物質を再生産します

ちなみに、呼吸に酸素を使用しない嫌気性微生物は代謝のときに水素を使うので、メタンやアンモニア、硫化水素などを生産してしまうんです。この嫌気性微生物の生成物が、汚れたドブ川が臭う原因とされています。

酸素・水素や電子の受け渡しがある反応は酸化還元反応!

酸化反応は物質が酸素を得る、水素を失う、電子を失うのいずれかを満たす反応です。反対に、還元反応は物質が酸素を失う、水素を得る、電子を得るのいずれかを満たします。

酸化反応と還元反応は同時に起こるため、酸化還元反応と呼ぶことも可能です。また、酸化数という考え方を使用することにより、複雑な反応でも酸化還元反応かどうか簡単に見分けることができます。

身の回りの酸化還元反応では、物体の燃焼、金属のさび、生物の代謝といった現象が有名です。

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化学原子・元素有機化合物無機物質物質の状態・構成・変化理科

3分で簡単酸化還元反応!化学反応式をまじえて見分け方やメカニズムを理系出身ライターがわかりやすく解説!

皆は酸化還元反応という言葉について聞いたことがあるか?化学の授業で習ったやつも多いでしょうが、実は身の回りにありふれたメジャーな反応だって知っているか?
今回は化学反応の一角をなす酸化還元反応について、理系出身で物体の性質にも詳しいライター、ふっくらブラウスとともにおさらいしていこう。

ライター/ふっくらブラウス

理系単科大学で機械系を専攻。金属をはじめとして様々な物体の性質や化学についても学習した。化学や物理、数学のほか、歴史など様々な分野の雑学を集めるのが趣味。

酸化還元反応って?

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皆さんは酸化還元反応という言葉になじみはあるでしょうか?むかし化学の授業で勉強したけど、難しくてなんとなく流してしまった人もいるかもしれませんね。実は、酸化還元反応は私たちの身の回りにありふれた現象なんです。

酸化還元反応は化学反応のうち、酸化反応、還元反応という互いに逆の反応が同時に起こっている反応のことを指します。酸化還元反応は反応前後で酸素・水素・電子の受け渡しのいずれかが発生するのが特徴です。

酸素・水素の受け渡しによる定義を拡張したものが電子の受け渡しの定義になります。それでは、酸化還元反応について、酸素・水素のやりとり、電子のやりとりに分けて具体的に見てみましょう。

酸素のやりとりから見る酸化還元反応

元々、酸化反応は物質が酸素と結合し酸化物を形成する反応、還元反応は酸化物が酸素を失う反応と定義されていました。後に紹介する水素および電子による酸化還元反応の定義は、元々の考え方を拡張したものになっています。実例として、酸化銅と水素の化学反応式を使って整理していきましょう。

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反応前後で、水素分子が元々酸化銅と結びついていた酸素と反応して水が生成していることがおわかりでしょうか?水素分子視点でこの反応を見ると、水素分子が酸素原子と結合しているので、水素分子は酸化されたことになります。

一方で酸化銅に着目すると、反応前の段階では酸化銅だったのが、反応後は銅単独で存在している形になっていますね。同様に考えると、酸化銅から酸素が取り除かれた形になるので、酸化銅は還元されたことになります。

例からもわかるように、酸化反応と還元反応は同時に起こることから、合わせて酸化還元反応と呼ばれているのです。

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