今回のテーマは「爬虫類と両生類の違い」というキーワードについて学習していこう。
爬虫類と両生類は脊椎動物に属するグループのことです。この2つのグループについて具体的にはいったい何が異なるのでしょうか?これを機会に爬虫類と両生類の違いについて、それぞれの生態や少し変わった進化を遂げたカメについても学んで行こうじゃないか。
大学で生物を学び、現在は食品メーカーの研究員であるライター、ハナイグチに解説してもらおう。

ライター/ハナイグチ

大学で生物学を学び、現在は食品メーカーの研究員として勤務している。

クジラがウシなどの偶蹄類の仲間だと知ってから生物の進化に興味をもっている。

爬虫類と両生類は何が違うの?

image by iStockphoto

爬虫類、両生類(両生類)の他に哺乳類、鳥類、魚類をまとめて脊椎動物と呼びます。これは背骨がある動物という意味ですね。今回は脊椎動物のなかで間違いやすい、爬虫類と両生類の違いについて解説していきたいと思います!

みなさんは爬虫類と両生類、いったい何が違うのか説明できますか?「子供の頃は水に住み、大人になると陸地で生活するのが両生類」、「なんとなく皮膚がしっかりしてるのが爬虫類、ツルっとしてて水がないと干からびてしまいそうなのが両生類」という印象が強いのではないのでしょうか。この章では生態の観点から爬虫類と両生類の違いについて解説していきたいと思います。

呼吸をする方法の違い

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一つ目の違いは呼吸の方法です。両生類はオタマジャクシとカエルに代表されるように、幼いころ、つまり幼生の時期は水中で生活し、大人、つまり成体になると陸で生活しますよね。このような生活場所の変化に適応するためには呼吸の方法を変える必要があります。

そのため、両生類の呼吸の方法は幼生の時期がエラ呼吸、成体になると肺呼吸や皮膚呼吸です。

本当ですね。実際にはどこかを堺に突然変わるのわけではなく、肺呼吸ができるようになってから、エラを退化させていきます。一方で爬虫類は生まれてから死ぬまでずっと肺呼吸です。ワニなど水中を泳ぐのが得意な爬虫類もいますが、呼吸方法は肺呼吸なので顔を自ら出して空気を取り入れる必要があります。

皮膚の違い

二つ目は皮膚の違いです。

先ほど解説した、両生類の特徴である皮膚呼吸ですが、これは生きている細胞を皮膚表面に露出させて空気の交換を行うことを指します。生きている細胞というのは水分が必要なので、常に湿っていなければなりません。両生類の皮膚は細胞を守るために粘膜層というヌルヌルに覆われています。実はこれが「両生類はなんだかヌルっとしている」理由なんですよ。

中には毒を含む粘液をまとって外敵から守っているものもいます。アマガエルやアカハライモリなどがそうで、この毒のある粘液が手についた状態で目をこすったりすると粘膜から毒が入ってしまうため、注意が必要です。だから両生類に触ってしまったら必ず手を洗った方が良いですね。

一方で爬虫類は皮膚は硬い角質や鱗、甲羅でおおわれており、乾燥しても問題ありません。つまり、水辺にいなくても大丈夫ということです。また、中にはヘビやトカゲなど古い角質を脱ぎ捨てる脱皮を行う生物がいます。

\次のページで「卵の違い」を解説!/

卵の違い

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最後は卵の違いについて解説します。両生類の卵には殻がなく、ゼリー状の膜で覆われているだけです。このため乾燥に弱く両生類の卵は水辺に生みつけられます。

一方で爬虫類の卵は羊膜(ようまく)で覆われているうえ、堅い殻で覆われていることが多いです。乾燥に強いため陸地に産卵されたものでも問題なく孵化します。

どっちかわかる?爬虫類・両生類の生き物

イモリとヤモリは片方が爬虫類、もう片方が両生類です。どっちがどっちかわかりますか?この章ではそれぞれに分類される生物についてご紹介したいと思います。中には少し変わった生態のものもいますのでぜひ見てみてください!

爬虫類に分類される生き物

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爬虫類に分類される生き物にヤモリ、トカゲ、カメ、ワニ、マムシなどのヘビなどです。イモリとヤモリ、名前もシルエットもそっくりですが、よくよく見るとヤモリの皮膚は硬く乾燥に強そうでイモリの皮膚は湿っていて乾燥に弱そうであることが分かると思います。爬虫類はずっと陸地で生活するものもいれば基本水辺で生活するものもいますね。体温が周囲の環境に影響されて変動する変温動物ですので、ペットとして飼育する際は部屋の温度管理が重要になります。

両生類に分類される生き物

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両生類に分類される生き物はイモリ、カエル、サンショウウオ、ウーパールーパーなどです。この中でウーパールーパーは少し変わった生態を持っています。両生類の子供はエラ呼吸で大人になると肺呼吸や皮膚呼吸になるんでしたね。ところがウーパールーパーはずっとエラ呼吸で生涯水の中で暮らします。ウーパールーパーのチャームポイントである左右3本ずつのフサフサ、実はあれはエラです。

実は揉めてた!?カメは何と似ているの?

実は揉めてた!?カメは何と似ているの?

image by Study-Z編集部

カメの分類について長年研究者の間で揉めていた、ということを知っていますか?

それはカメがめずらしい進化を遂げているからなんです。その珍しい進化というのが甲羅ですね。亀の甲羅は肋骨を変化させてできているものです。

肋骨を変化させると内臓や手足の動きに支障がでてしまうので、カメの他に肋骨を大きく変化させた生物はいないんです。カメは非常に歩みが遅くなる、という代償をはらってこの進化を遂げました。カメの動きが遅いのは甲羅が重いからだけじゃなかったんですね。

このようにユニークな進化をとげたがゆえに、カメの進化の過程について研究者の間で議論は続いてました。進化の過程が不明瞭ということは、カメが現存のどの動物と似た存在なのかわからないということです。

それは2013年に理化学研究所が明らかにしました!カメのゲノム解析を行った結果、カメがワニ・トリ・恐竜に近い生物であることがわかったのです。

それまでカメはヘビやトカゲに近いというのが通説だったのでその考えが覆りました。

鳥類は爬虫類の一部!?

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先ほどのカメの話でも説明したように、鳥類・ワニ・カメが主竜類と括られる仲間でトカゲやヘビは鱗竜類というまた別の仲間です。鳥類は一塊のグループにすっきりまとまっていますが、爬虫類は別のグループにまたがってしまい、なんだか違和感がありませんか?

実は現在の進化分類学では主竜類と鱗竜類をまとめて爬虫類としているんです!つまり鳥類は爬虫類の一部ということ。これは驚きですよね。しかしながら一般的に「爬虫類」と言われれば鳥類を含まない意味で使われることが圧倒的に多いです。

\次のページで「ずっと陸にいられるのが爬虫類、水が絶対必要なのが両生類!」を解説!/

ずっと陸にいられるのが爬虫類、水が絶対必要なのが両生類!

爬虫類と両生類の違いについて解説してきましたが、ひとつひとつの特徴については生物によって例外があることもしばしば。爬虫類と両生類の違いについて一言で述べるとするならば、「ずっと陸にいられるのが爬虫類、水が絶対必要なのが両生類」です。他にも生き物の生態や特徴について見てみると色々面白いのでぜひ調べてみてくださいね!

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理科生物

爬虫類と両生類の違いは何?それぞれの生態に加えユニークな進化をとげたカメについても食品メーカー研究員がわかりやすく解説!

今回のテーマは「爬虫類と両生類の違い」というキーワードについて学習していこう。
爬虫類と両生類は脊椎動物に属するグループのことです。この2つのグループについて具体的にはいったい何が異なるのでしょうか?これを機会に爬虫類と両生類の違いについて、それぞれの生態や少し変わった進化を遂げたカメについても学んで行こうじゃないか。
大学で生物を学び、現在は食品メーカーの研究員であるライター、ハナイグチに解説してもらおう。

ライター/ハナイグチ

大学で生物学を学び、現在は食品メーカーの研究員として勤務している。

クジラがウシなどの偶蹄類の仲間だと知ってから生物の進化に興味をもっている。

爬虫類と両生類は何が違うの?

image by iStockphoto

爬虫類、両生類(両生類)の他に哺乳類、鳥類、魚類をまとめて脊椎動物と呼びます。これは背骨がある動物という意味ですね。今回は脊椎動物のなかで間違いやすい、爬虫類と両生類の違いについて解説していきたいと思います!

みなさんは爬虫類と両生類、いったい何が違うのか説明できますか?「子供の頃は水に住み、大人になると陸地で生活するのが両生類」、「なんとなく皮膚がしっかりしてるのが爬虫類、ツルっとしてて水がないと干からびてしまいそうなのが両生類」という印象が強いのではないのでしょうか。この章では生態の観点から爬虫類と両生類の違いについて解説していきたいと思います。

呼吸をする方法の違い

image by iStockphoto

一つ目の違いは呼吸の方法です。両生類はオタマジャクシとカエルに代表されるように、幼いころ、つまり幼生の時期は水中で生活し、大人、つまり成体になると陸で生活しますよね。このような生活場所の変化に適応するためには呼吸の方法を変える必要があります。

そのため、両生類の呼吸の方法は幼生の時期がエラ呼吸、成体になると肺呼吸や皮膚呼吸です。

本当ですね。実際にはどこかを堺に突然変わるのわけではなく、肺呼吸ができるようになってから、エラを退化させていきます。一方で爬虫類は生まれてから死ぬまでずっと肺呼吸です。ワニなど水中を泳ぐのが得意な爬虫類もいますが、呼吸方法は肺呼吸なので顔を自ら出して空気を取り入れる必要があります。

皮膚の違い

二つ目は皮膚の違いです。

先ほど解説した、両生類の特徴である皮膚呼吸ですが、これは生きている細胞を皮膚表面に露出させて空気の交換を行うことを指します。生きている細胞というのは水分が必要なので、常に湿っていなければなりません。両生類の皮膚は細胞を守るために粘膜層というヌルヌルに覆われています。実はこれが「両生類はなんだかヌルっとしている」理由なんですよ。

中には毒を含む粘液をまとって外敵から守っているものもいます。アマガエルやアカハライモリなどがそうで、この毒のある粘液が手についた状態で目をこすったりすると粘膜から毒が入ってしまうため、注意が必要です。だから両生類に触ってしまったら必ず手を洗った方が良いですね。

一方で爬虫類は皮膚は硬い角質や鱗、甲羅でおおわれており、乾燥しても問題ありません。つまり、水辺にいなくても大丈夫ということです。また、中にはヘビやトカゲなど古い角質を脱ぎ捨てる脱皮を行う生物がいます。

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