
貴金属、高価なものと言えば金を思い浮かべる人も多いでしょう。美しい光沢を持つ金は価値あるものとして昔から取引されてきた。金は財産であり、投資にも使われている。
そんな金がどんな元素なのか、そんな歴史があるのかについて学ぶ。解説は化学系科学館職員のたかはしふみかです。

ライター/たかはし ふみか
実験にはげむ仕事大好き化学系科学館職員。元素周期表が好きで、よく元素や周期表の本を読んでいる。
金てどんな元素?周期表から見る金
金を知らない人はいないでしょう。金と言えば金貨、金の延べ棒(地金・インゴット)などいろいろなものが思い付きますね。
まずは金という元素について、その特性を確認しましょう。
金(gold)

image by Study-Z編集部
元素記号:Au
原子番号:79(第11族・金属元素)
密度:19.32g/cm3
融点:1064 °C
特徴:比較的重く、やわらかい金属
展性・延性に富んでいる
元素記号Auの由来はラテン語でAurum、太陽の輝きという意味です。
金は11族の元素で、同じく11族には銅Cu・銀Agがあります。ちょうどオリンピックのメダルと同じですね。金はその美しさからネックレスやリングなど高価なジュエリーにも使われています。
金は最も展性(平面に広げられる性質)・延性(伸ばすことのできる性質)に優れ薄く延ばすことができる金属です。例えば1gの金があれば、3000mの金線になります。また、0.0001㎜以下の厚さまで伸ばすことができるのです。金閣寺に貼られた金箔もこの性質を活かして作られているのですね。
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また銀や銅には及ばないものの、金には高い伝導率があり電気を通すことができます。金はその腐食しにくさと合金にすると強度が高くなることを利用し、電子回路の導線にも使われているのです。これは携帯電話やパソコンに使われています。金は実はゴミとして廃棄される家電製品の中にも大量に金は含まれているのです。これらのように実は都会に隠れている資源は都市鉱山と例えられています。
その輝きも金属ならではの特徴。金属が輝いて見えるのは自由電子が光を反射しているからです。自由電子が反射して輝いているのが金も一緒ですが、金には他の金属とは違うところがあります。それは金の自由電子は可視光の青から紫の色を吸収し赤から黄色の光を反射している、ということです。そのため金は独特な赤味がかった黄色に輝いています。
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高校化学で欠かせないイオン化傾向と金
イオン化傾向とは「金属の水や水溶液中での陽イオンへのなりやすさ」のことです。イオン化傾向が大きい元素は他の物質に電子を与え、自分は電子を失い陽イオンとなります。
イオン化傾向が大きい=酸化されやすい強い&還元力を持つ
という事を覚えておきましょう。
イオン化傾向は大きいものから次のようになります。
イオン化傾向
大 K>Ca >Na>Mg>Al>Fe>Ni>Sn>Pb>H>Cu>Hg>Ag>Pt>Au 小
上でも述べたように、イオン化傾向が高い金属は酸化されやすく陽イオンになりやすいのが特徴です。例えばナトリウム(Na)は水に触れるだけで激しく反応します。反応によって水素が発生し、反応熱によって火が付くこともあるのです。
2Na+2H2O→2NaOH+H2
ちなみにナトリウムは空気中の水分とも反応してしまうため、石油の中で保管します。もしナトリウムが由来で火災が起きたとしても、水をかけてはいけません。乾燥砂などで酸素を遮断し(窒素消火)、燃焼に必要な酸素を不足させることで消火します。
一方、金は最もイオン化傾向の小さな金属です。金は空気に触れても酸化しません。金が反応するのは王水だけ。王水とは濃塩酸と濃硝酸を3:1の体積比で混合したものです。この王水という名前は、イオン化傾向の小さな金や白金なども溶かすことができるために名付けられました。
反応することが無く、物質が変わらない金。その輝きが失われない、というのも金の魅力ですね。
金の用途

金と言えば指輪やネックレスなど高価な装飾品をイメージする人が多いでしょう。光まばゆいその見た目から美術品や宗教用具にも金でできたものがあります。しかし、金が使われているのは装飾品だけではありません。
例えば、金は化学実験の触媒として使われています。医療分野では金歯として、歯の治療に使われてきました。また先程紹介したように、電気伝導体として電子部品に使われています。
金が採れる場所

金は世界中の色々なところで採掘されています。世界的には南アフリカが有名です。世界の金の産出量の半分を占める南アフリカは、ダイヤモンドやプラチナ、ウランなどいろいろな鉱物資源があります。
もちろん、日本でも金の採掘が行われていました。有名なのが新潟県佐渡島の金鉱山です。佐渡金山は1601年に開山し、日本最大の金銀山として発展していましたが、資源枯渇のため1989年に閉山となりました。
北海道紋別市の鴻之舞金山は日本第3位の実績を持つ金山で、1915年から1973年まで金を採掘していました
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